【文徒】2014年(平成26)9月8日(第2巻170号・通巻372号)

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1)【記事】「慰安婦報道」をめぐる新聞のえげつない販売合戦
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「慰安婦報道」をめぐる新聞のえげつない販売合戦

朝日新聞はいとも簡単に池上彰には謝罪した。9月6日には東京本社報道局長の肩書を持つ市川速水が「池上彰さんの連載について おわびし、説明します」なる文章を発表した。
「掲載見合わせは、多様な言論を大切にする朝日新聞として間違った判断であり、読者の本紙に対する信頼を損なう結果になりました。改めておわびし、経緯を説明します」
「8月5、6日付朝刊で慰安婦問題特集を掲載して以来、本社には言論による批判や評価が寄せられる一方で、関係者への人権侵害や脅迫的な行為、営業妨害的な行為などが続いていました。
こうした動きの激化を懸念するあまり、池上さんの原稿にも過剰に反応してしまいました」
「私たちは3日、いったん掲載を見合わせた判断は間違いであり、読者の信頼を少しでも取り戻すためには池上さんの原稿を掲載しなければならないと判断し、出張中の池上さんの了解を得ました。その際、池上さんの意向も踏まえ、簡単な経緯を含めた双方のコメントを添え、4日付『慰安婦報道検証/訂正、遅きに失したのでは』の見出しで掲載しました」
「今回の過ちを大きな反省として、原点に立ち返り、本紙で多様な言論を大切にしていきます」
http://www.asahi.com/articles/ASG956K76G95ULZU019.html
このように池上彰に対しては平身低頭の朝日新聞であるが、しかし、池上が「新聞ななめ読み」で提起した「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」という問いには何も答えていない。朝日新聞は池上の「過ちを訂正するなら、謝罪もするべき」だという意見に関しては全く無視しているのである。朝日新聞は池上に謝罪できても、読者には謝罪せずに訂正だけで充分だという判断なのだろうか。
この機に乗じて攻勢に出たのが、読売新聞や産経新聞である。紙面で朝日批判を繰り広げるばかりではなく、販売面でも朝日排撃に踏み出しているようなのだ。「リテラ」は読売新聞支社の販売部から、新聞販売店に送られてきた内部文書を暴露している。
「地図にわかる限りのA 紙読者落とし込み実施。読者センターには連日、A 社への批判やA紙から読売への購読切り替え申込が寄せられています。A社、A販売店が一番苦しい時に徹底的に攻撃を仕掛ける!」
Aが朝日新聞であることは誰の目にも明らかである。読売新聞を購読している世帯には朝日の慰安婦報道検証に対する批判を読売の紙面から抜粋したチラシが折り込まれた。
「内容は朝日新聞慰安婦報道の問題点を指摘し、読売新聞に掲載された識者の声や社説の転載、8月5日以降に寄せられた読者の声(主に朝日への批判と読売への激励)で構成されている。見出しは『慰安婦報道検証 読売新聞はどう伝えたか』で、一貫して朝日新聞の報道内容を批判するものとなっている。朝日を購読している家庭にもポスティングされていたとの声もあり、この問題を契機に朝日の読者を奪おうという姿勢が伺える」
http://edgefirst.hateblo.jp/entry/2014/09/02/205328
産経新聞も負けてはいない。次のようの文面のチラシを配布しているようだ。
「…8月5日、朝日新聞従軍慰安婦報道での『誤報』を一部認めました。しかし、朝日新聞の報道が韓国の反日世論に火をつけ、国際社会で日本尾を貶めようとする勢力に利用されてきた事実を認めようとしません。この報道により、日本国民、そして子供から孫の世代まで汚名を着せた朝日新聞の責任は重く、大罪です。
産経新聞は、一貫して、『強制連行説』は事実ではない、と正当な報道をしてきました。まずは、産経新聞を手に取って見て下さい」
http://edgefirst.hateblo.jp/entry/2014/09/06/075718
必ずしも「一貫して」ではないような気もするのだが、読売や産経が営業的にも大攻勢に出ているのは事実のようである。要するに「従軍慰安婦」を商売のネタにしているのである。私には、それが「愛国」の心情に基づく行為だとは、どうしても思えないのである。恐らく、こうした動きを指して、市川は「営業妨害的な行為」と書いているのだろうか。読者からすれば「営業妨害的な行為」が何を指すのかサッパリわからない。こういうところにも実は朝日新聞の読者軽視が透けて見える。
広告業界からは、こんな声も聞こえて来た。
「朝日が『週刊文春』『週刊新潮』の広告掲載を拒否しましたが、ライバル紙は通常は全5段のところを料金は据え置きにして、全7段のスペースを用意したそうです」
もちろん、朝日新聞とて読売、産経の攻勢に防戦一方ではない。販売担当役員と編集担当役員が連名で「ASAのみなさまへ」なる、躍起になって事故を正当化する内容の、これまた内部文書を送っているようだ。ASAは朝日新聞の販売店である。
http://hosyusokuhou.jp/archives/40042855.html
読者との関係よりも、ジャーナリストとしての矜持よりも販売店対策が優先されるのが今も昔も変わらない新聞業界である。

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2)【本日の一行情報】

大日本印刷は、複数部門がクラウド上で紙メディアおよびデジタルメディア向けのコンテンツを共同で制作できる多メディア制作支援システム「PROMAX NEO(プロマックス ネオ)」の発売を開始した。PROMAX NEOは、チラシやカタログなどの紙メディアに加えて、パソコン、スマートフォンタブレット端末向けの電子カタログ、デジタルサイネージ向けコンテンツなど、デジタルメディアに対応したコンテンツの制作をウェブ上で行うことができるシステム。
http://www.dnp.co.jp/news/10102408_2482.html

主婦と生活社の男性ファッション誌「LEON」(主婦と生活社)の表紙を創刊号から13年連続で飾りつづけるパンツェッタ・ジローラモが、男性モデルとして「連続して最も多くファッション誌の表紙を飾った数」(151回)でギネス世界記録に認定された。モデルとともに読者も年齢を重ねていく。「LEON」のメイン読者は50代後半と見るべきだろう。
http://mantan-web.jp/2014/09/04/20140903dog00m200038000c.html

◎フリーペーパー「ぴあclip!(クリップ)」2014年10月号が、全国のサークルK・サンクスで配布されている。
http://corporate.pia.jp/news/detail_clip10_k.html
セブンイレブンで配布されているのは「7(セブン)ぴあ」。
http://corporate.pia.jp/news/detail_791.html
「ぴあclip!(クリップ)」にはJTBプロモーションも一枚噛んでいる。

博報堂DYメディアパートナーズが実施した「TVCM× InStream動画広告のクロスメディア広告効果調査」によれば、一定金額を超える広告出稿規模の場合、「TVCM×InStream動画広告出稿」は「TVCMのみ出稿」に対し、広告出稿金額が同じでも、若い年代を中心としたターゲットにおけるリーチ効率を向上させることがわかった。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/09/HDYmpnews201409042.pdf

◎「本屋の中でプロレスを行う 『本屋プロレス』や、本屋の店先で野宿する『本屋野宿」』を断行」する!?下落合の伊野尾書店である。「伊野尾」というよりも「異能」と言うべきか。そんな伊野尾書店が地元の学校の先生、作家、漫画家、プロレスラー、ビジュアル系バンド、将棋棋士、バーテン、書店スタッフなど23名がおすすめの文庫を選ぶフェア「中井文庫」を開催している。西麻沙子(書籍編集者/新潮社)、梶原治樹(出版社営業/扶桑社)、古橋由美(栗田出版販売)も参加しているそうだ。
http://shinjuku.keizai.biz/headline/2041/
http://inoo.cocolog-nifty.com/

◎アマゾンは、近畿大学と同大学の教育、研究、学生サービス等の充実を図るため、互いに広く連携協力することを目指す連携協定を締結した。アマゾンが日本で教育機関との間で連携協定を結ぶのは、近畿大学が初めてとなる。
連携協定に基づく最初の取り組みとして、2014年後期から東大阪キャンパスにおける教科書販売を行うことが合意された。また、2015年前期から、近畿大学の各学部・大学院で発行されるシラバスや研究紀要をプリント・オン・デマンド(以下POD)で利用して提供することも合意した。
「さらに、Amazon.co.jpの学生向けの会員制プログラム『Amazon Student』に会員登録することで、よりお得に書籍を購入いただくことができます。今なら、Amazon Studentに会員登録するともれなく1,000 Amazonポイントをプレゼント。
近畿大学の学生なら9月4日から10月20日まで、さらに1,000ポイント、合計2,000ポイントをプレゼントするキャンペーンを実施します。また、通常、注文金額(税込)に対する10%のAmazonポイントを還元するところ、9月4日から10月20日までの期間中は、15%のAmazonポイントを還元いたします」
http://www.amazon.co.jp/gp/press/pr/20140904/ref=amb_link_69367229_2?pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=center-1&pf_rd_r=0CCZBEG1F5EYPK4J7EMC&pf_rd_t=2701&pf_rd_p=182477989&pf_rd_i=home-2014
日本の書店に15%ものポイント還元を実現する体力はなかろう。何よりも再販制はどうなってしまうのだろうか。
更にアマゾンは徳島県徳島県内における大規模な災害の発生に備え、避難所で必要となる物資の情報を公開支援することにより、必要な物資の調達をより迅速かつ的確に行われることを可能とするため、「災害発生時における支援に関する協定」も締結した。
http://www.amazon.co.jp/gp/press/pr/20140905/ref=amb_link_69367229_1?pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=center-1&pf_rd_r=0Z928XQD3WVZM1AHCNWD&pf_rd_t=2701&pf_rd_p=182477989&pf_rd_i=home-2014
アマゾンは社会的なインフラになろうとしている。アマゾンの「再販制逸脱」を批判できないような空気を形成するつもりなのだろうか。

◎小説はKADOKAWA、マンガは講談社という「おこぼれ姫と円卓の騎士」。
http://natalie.mu/comic/news/125329

角川アスキー総合研究所Twitter Japan協力の下で開発した「Tw-ePub」を、EPUBリーダーの「BiB/i」を使って再現したという言い値書店のサービス「EPUB to Twitter」はTwitter電子書籍を埋め込んで、誰でも読めるようにするサービスである。
http://www.iineshoten.com/blog/epub-embbeded-twitter/
電子書籍の世界は本当に何が起こるかわからない。

講談社女性誌「リリア」が第2号を発売。講談社からすれば、何とか定期刊に持っていきたいところだ。広告ビジネスとしては30代以上の女性ファッション誌が中心になるなか、講談社は「グラマラス」「グラツィア」の二誌を休刊してしまったため、広告ビジネスにおいて苦戦を強いられている。
http://www.joseishi.net/rillia

◎日産はカルロス・ゴーンの長期政権に嫌気のさした経営幹部の次々に流出している。ただし、流出しているのは日本人ではない。
http://newsphere.jp/business/20140905-2/

◎Twitpicがサービスを終了。Twitpic はTwitterを利用して画像の共有を可能にするサービスだったが、登録商標をめぐり、Twitterと折り合えなかった。
http://japan.cnet.com/news/service/35053370/

遠藤舞が雑誌編集者とともにバンドを結成。「えんどうさんと(株)リットーのひと」というバンド名からしてもわかるようにリットーミュージックの面々が結集した。
http://www.musicman-net.com/artist/39166.html

KADOKAWAのBLコミック誌「CIEL10月号増刊エメラルド 夏の号」が完売。緊急重版されることになった。
http://www.kadokawa.co.jp/emerald/news/notice/post-3.php

イーブックイニシアティブジャパンは、Windowsストアアプリ「ebiReader Lite」の配信を無料で開始した。電子書籍サービス「eBookJapan」で配信されるタイトルをストリーミング形式で閲覧するためのタッチ操作対応アプリである。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/reader/windowsstoreapp/
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140905_665444.html

◎BookLiveの電子書籍アプリ「Liveコミック」が10万ダウンロードを達成した。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1409/05/news099.html

◎韓国で村上春樹の「女のいない男たち」韓国語版がベストセラーランキングでトップに立った。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2014/09/05/0400000000AJP20140905001000882.HTML

朝日新聞がまたまた「誤報」!9月3日に発表した「特許、無条件で会社のもの 社員の発明巡り政府方針転換」に東大教授の玉井克哉がツイッターで次のように呟いた。
「日経は『条件付き』と。『無条件』とした朝日とはまったく逆。これ、日経が正しいというより、水曜の審議会を取材して書いてるということ。朝日は敢えて当日朝に観測記事を出し、誤報に終わった。功を焦ったか、誤った見通しで世論誘導を図ったか」
http://getnews.jp/archives/660147
その後、朝日はこっそりと軌道修正した模様。
http://www.asahi.com/articles/ASG9446LGG94ULFA00V.html
またまた玉井は呟いた。
「事実上の訂正記事。中身が前回の観測記事と違うのに『無条件』という言葉を別の意味で使っている。こういうことやるんだ」
https://twitter.com/tamai1961

◎9月10日発売の「文藝春秋」が「昭和天皇実録」のスッパ抜きをやるらしい。もっとも、これを察知した宮内庁記者会は9月9日に報道の解禁日を繰り上げたようだ。こういう時には朝日も、読売も、産経も一致団結する。もっとも宮内庁は記者会の要請に応じて1カ月も前からデータ提供していたというから、宮内庁記者会所属の記者ということになる?
http://biz-journal.jp/2014/09/post_5943.html

主婦の友社の「Como」が10月号より「ママ目線の暮らし情報誌」にリニューアルし、隔月刊に刊行サイクルを変更した。編集長の大隅優子も「イヤイヤ期まっさかりの2才児の母」である。こういうリアリティは大切だ。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140905/prl14090510220021-n1.htm

白泉社の「kodomoe」10月号の附録はは絵本とポータブルショッピングバッグ。
http://www.kodomoe.net/newissue/

◎総合電子書籍ストア「BookLive!」は「小学館 漫フェス2014秋」を9月12日より開催する。
http://booklive.co.jp/release/2014/09/051130.html

電通8月度単体売上高。マス4媒体すべてが前年を割るなかでインタラクティブ・メディアは前年比122.7%を記録する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2014069-0905.pdf

◎「Swich」に見開きの広告として出稿された大塚製薬の「POCARI MUSIC PLAYER」は、切り取り線のついた、3枚のレコード型をそれぞれ切り取って特設サイトを表示したiPadの画面に置くだけでミュージックビデオが流れるというものだった。確かに「雑誌というアナログな媒体でデジタルを使った新しくて面白い広告」であることは間違いない。
http://markezine.jp/article/detail/20680

THE ALFEEのデビュー40周年を記念した「THE ALFEE ぴあ」が9月30日に発売される。
https://dailymusic.auone.jp/news/60223

◎TBSラジオ&コミュニケーションズ、文化放送ニッポン放送の在京AMラジオ3社は、来春以降、番組をFMでも同時放送することになった。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140906/ent14090610130010-n1.htm

サントリーの缶コーヒーBOSSの新商品「プレミアムボス」のCMに「笑っていいとも!」のタモリが復活。
http://dentsu-ho.com/articles/1596

KADOKAWAジョニー大倉のソロデビュー40周年に先駆け、書籍、グラフィックブック、CD、DVD、Tシャツ、ポスターを収めた豪華BOXセット「JOHNNY ROCK’N’ROLL」を12月24日に発売する。2万円と高価だが、これは欲しいなあ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000912.000007006.html

高市早苗稲田朋美のネオナチ団体代表とのツーショットが話題になっている。
http://matome.naver.jp/odai/2140963578944305601

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3)【深夜の誌人語録】

始まりには終わりがあり、終わりには始まりがあって人生は続くのだ。