【文徒】2014年(平成26)9月5日(第2巻169号・通巻371号)

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1)【記事】社内記者の大ブーイングに耐えかねた朝日新聞
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】社内記者の大ブーイングに耐えかねた朝日新聞

朝日新聞による池上彰の原稿掲載拒否問題が「週刊文春」によって明らかにされると、多くの朝日新聞記者が掲載拒否の判断は間違いだとツイートを開始した。こんな具合に、である。
「私は組織に忠実な企業内記者の一人ですが、夕方、このニュースを聞いて、はらわたが煮えくりかえる思いでした。極めて残念です(査定に響きませんように…)」(大阪本社・社会部 武田肇
「事実だとすれば極めて残念であり、憤りを感じる」「報道が事実であるかどうか、私の立場では知る由もありません。また、事実であったとして、その意思決定が誰によってなされたかも知りません。しかし、良心を持つ記者として、対立する意見を封殺するような行為があったとするなら、許せないということです」(テヘラン支局長 神田大介)
「池上さんの件。ネット上の罵詈雑言や週刊誌広告の煽情とはワケが違います。「善意の批判」までを封じては言論空間が成り立ちません。度量の広さを示すチャンスをみすみす逃したばかりか、発信力のある書き手を「敵」に回してしまった。何重もの意味で「らしく」ない、もったいない対応でした」(特別編集員 富永格)
「どうした、朝日新聞」(名古屋報道センター)
池上彰さんの連載中止の件。記者たるモノ、事実関係を確かめずに発言するのは嫌だが、もし本当なら言論機関の自殺行為だ。朝日新聞社の対応に私は個人として賛同しない。少なからぬ同僚記者たちもそう思っている」(社会部 谷津憲郎)
「池上氏の原稿掲載拒否に関する報道がありました。朝日新聞が大切にしてきたことは民主主義を担保する言論の自由表現の自由を守ることであったはず。池上さん、朝日新聞の読者、慰安婦検証においても朝日新聞を必要だと考え応援してくれた方々に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ごめんなさい」(社会部 斎藤祐介)
「もし事実とすれば極めて残念です。真摯なご批判は掲載して受けとめるべきだと考えます。「新聞ななめ読み」の趣旨にも反すると思います。以上、あくまで私見です」(デジタル編集部 広部憲太郎)
朝日新聞は、私みたいな勝手にツイッターやったりミクの動画ニュース作ったりといった物好きな人間を面白がって置いておき、そして例えば記者ツイッターを正式に始める段になると、その人間の経験をうまく生かすという組織としての懐の深さがあると思っています。今回の件はそれと真逆であまりに残念」(デジタル編集部 丹治吉順)
「なぜこんな判断に至ったのか理解に苦しむ」(ハフィントンポスト 吉野太一郎)
「今までツイートしてきた内容とはまったく違いますが、私も朝日新聞の記者なので一言。池上彰さんの連載原稿、これは掲載すべきだったと思います。非常に残念、というか怒りと情けなさでいっぱいです」(デジタル編集部 小林恵士)
「事実とすれば非常に残念。特集を組んだ時点で議論を呼ぶことは折り込み済みだろうし、むしろ議論されるべき内容。ななめ読みの趣旨からしても違和感があります。どういう経緯なのか、没原稿とともに掲載を望みます」(デジタル編集部 神崎ちひろ
「池上さんのコラムの件、非常に残念です。心ある記者やデスクたちは、みんな怒り、悔しがっています。私は、批判や反対意見に寛容で自由な社風がいいな、と思って朝日新聞に入りました。今からでも遅くないので、池上さんの原稿を掲載してほしい。そして、朝日らしさを取り戻してほしいと願っています」(文化部 神庭亮介)
「池上さんの件、昨日からもやもや考え続けていますが、やっぱりすごく悔しく、悲しく、憤りを感じます。厳しい批判も含めた池上さんのコラムを載せられる新聞であり続けてほしい。今からでも遅くないと思う」(名古屋総局 山本朱香)
「池上さんの件、事実関係を知る立場にありませんが、本当に残念です。どんな経緯だったのか、きちんと説明されるべきと思います」(編集委員 田村健二)
「池上さんコラムの件、私も同僚たちのツイートに同感です。掲載した上で、異論反論があるなら、紙面上で堂々と意見をぶつけ合えばいい。言葉には言葉で、それこそ読者は読みたいはず。いまからでも遅くない」(ニューヨーク支局長 真鍋弘樹)
「同僚や先輩たちもツイートしているように、池上さん原稿の不掲載と連載打ち切りはショック。今回の経緯も含め、掲載されると信じています」(デジタル編集部 吉田大輔)
「北京出張で体調を壊し、帰宅すると冷蔵庫が「自然死」していて中は腐臭が漂い、池上彰さんのコラムの問題で会社の姿勢に腹が立って眠れず。しかし、抱えた原稿の締め切りは迫る。腐ったモノは捨てる、間違った事は改める。そして、伝えるべきことを伝える。ひとつずつやろう」(編集委員 吉岡桂子)
「私たちは企業や政治家の不祥事が発覚したとき、徹底的に批判し、問題点を追及する。池上彰さんのコラムは朝日の慰安婦記事の問題点を問い質したものだ。その掲載を拒否するのは、これまで自分たちがやってきたことや、多角的に論評する本来のジャーナリズムの道を自ら閉じたようなもので、恥ずかしい」(東京社会部 今村優莉
http://matome.naver.jp/odai/2140967248185209001?&page=1
こうした社内の声に突き動かされてのことだろうか、4日付朝日新聞池上彰のコラムは掲載されることになった。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11332230.html
末尾には朝日新聞社の見解も掲載された。
「今回のコラムは当初、朝日新聞社として掲載を見合わせましたが、その後の社内での検討や池上さんとのやり取りの結果、掲載することが適切だと判断しました。池上さんや読者の皆様にご迷惑をおかけしたことをおわびします」
こんなに簡単に謝罪できるのに「従軍慰安婦」にかかわる誤報の謝罪ができないというのは、どういうことなのだろうか。この件についても朝日新聞の記者は積極的にツイートしてもらいたいものである。
4日付朝日新聞に今週の「週刊文春」と「週刊新潮」の広告は掲載されたが、「不正」「捏造」「売国」「誤報」の文字は黒く塗りつぶされていた。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2014/09/04/kiji/K20140904008869780.html
私が不思議でならないのは、「週刊文春」や「週刊新潮」がこうまでして朝日新聞に広告を出稿することに拘らなければならないのか、私にはサッパリわからない。「愛国」週刊誌としての矜持も問われよう。何よりも朝日への出稿を止めてしまったほうがコストカットになって良いと思うのだけれど。
蛇足ながら小誌で活躍してもらっている岩本太郎は産経新聞系列の「フジサンケイビジネスアイ」で連載打ち切りの憂き目にあっているそうだ。
http://wind.ap.teacup.com/applet/taroimo/msgcate19/archive

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2)【本日の一行情報】

◎「週刊文春」元編集長の花田紀凱が「週刊文春」に復活した。松井清人社長は「週刊文春」で花田編集長を支えていたし、木俣正剛取締役は「週刊文春」でもそうだが、「マルコポーロ」でも花田編集長を支え、休刊の原因となった記事の担当者でもある。そして6年間で80本もの朝日批判を展開した花田は朝日新聞社に請われて、同社で女性誌「uno!」を1996年に創刊する。それ以来、花田は文藝春秋の雑誌には一切登場することがなかっただけに感無量ではあるよなあ。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4315

デアゴスティーニ・ジャパンは週刊「仮面ライダーオフィシャルパーフェクトファイル」を創刊する。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1409/03/news066.html

ボイジャーの志が痛いほど脈打っているロマンサーは当然のことながら評判が良い。「ダイヤモンドonline」で吉田由紀子は次のように書いている。
「Romancerは、かなり高度なファイル作成機能を搭載しながらも、現在は無料で一般に開放されている。そこには、無名の作家が紙の本を出版できる機会がほぼ皆無に近くなっている出版業界の現状を踏まえ、出版を望む人を広く支援していきたいという思いがあるという」
http://diamond.jp/articles/-/58530

◎ 電子書店のBOOK☆WALKERは、フィギュアやCD、DVDなどのキャラクター関連グッズの販売を可能とする通販サービスを開始した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000575.000001227.html

◎プレクサスとユーフォニックは、写真家森山大道の私家版写真集「記録」最新作25 号を電子書籍としてリリース。これは欲しいなあ。
http://www.d-plexus.com/press_release_2014825.html

◎「FeBe」はオーディオブックを配信している。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1409/02/news065.html

◎千葉ットマンがイギリスのBBCで取り上げられたぞ。
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51863493.html

実業之日本社で学芸出版部ビジネス書編集長をつとめる酒井圭子がビジネス書選びのポイントについて語っている。
「現在の実業之日本社の売れ筋は、逆境をどう乗り越えるかを指南する『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!「レジリエンス」の鍛え方』(久世浩司著)だ。
『嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え』(岸見一郎・古賀史健著/ダイヤモンド社)のヒットにも象徴されるように、ここ数年「グローバル」や「勝ち抜く戦略」といった内容の本が多く出版されていた反動なのか、今年は他者と自分を切り離しながら、内省的に自らを見つめていく「ありのまま傾向」とも言える本が売れている。
時流を読むなら、こういったヒット作を一通りチェックしておくとよいだろう」
http://next.rikunabi.com/journal/entry/20140902
ビジネス書は私が苦手としているジャンルである。常見陽平中央公論新社から刊行した「リクルートという幻想」のようなパブ本ではない企業ものには目を通すけれど、前向き系のビジネス書は殆ど読まない。
http://yukan-news.ameba.jp/20140903-17328/
アレオレ詐欺」とは言い得て妙だよね。確かにリクルート出身者はアレはオレがやったというヤツが多い。

双葉社から刊行された鈴屋二代目の「あなたはなぜパズドラにハマったのか ソーシャルゲーム開発者が明かす舞台裏」によれば、ソーシャルゲームは1割のユーザーしか課金しておらず、しかも1%のユーザーが売上の半分を支えているそうだ。
http://www.value-press.com/pressrelease/130598
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-30723-8.html

日本経済新聞社は、英国の総合月刊誌「モノクル」の発行元として知られているウインコンテントAG(スイス・チューリヒ)との資本業務提携を発表した。日経は、こう書いている。
「ウインコンテントが世界各地に築いたモノクルの販路を活用し、アジア全域の経済情報をカバーする日経の英文媒体「Nikkei Asian Review(NAR)」の販売を加速させる」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ02H24_S4A900C1TJ1000/

ウイングアーク1stは、博報堂DYグループと、今後、継続的にマーケティング・ソリューションの共同開発を行っていくことについて業務提携契約を締結した。
http://www.wingarc.com/public/detail.php?id=620

◎スマートニュースは、朝日新聞社とのメディアパートナー契約を締結した。朝日新聞社のデジタル媒体「朝日新聞デジタル」「withnews」の記事を、ニュースアプリ「SmartNews」に供給開始。今回の提携により、SmartNewsのチャンネルプラスでは、朝日新聞・読売新聞・産経新聞毎日新聞の4大全国紙の各専用チャンネルが開設されたことになる。
http://www.smartnews.co.jp/2014/09/03/asahi20140903/

スマホ利用者の71.7%がLINEを利用している。10代では男性が86.2%、女性が93.8%も利用している。
http://internetcom.jp/wmnews/20140903/over-90-percent-of-teenage-women-use-line.html

◎ 「ELLE」がカナダの老舗デパートHudson's Bayと組んでオンラインショッピングサービス。AdGangが次のように紹介している。
「ユーザーは映像の中で、モデルが着用している服やアクセサリーなど気になる商品があれば、カーソルを動かして丸い印をクリック。するとそのアイテムに関する情報や値段などが、ポップアップで表示されます。そのままHudson's BayのHPに遷移して、オンラインで購入することももちろん可能です」
http://adgang.jp/2014/09/73790.html

イオングループ未来屋書店は、電子書籍アプリ「mibon」を、イオンが全国発売した「イオンスマホLTE」にプリインストールしている。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1409/03/news080.html

武田薬品は子会社の医学書出版社である日本臨床社をメディカルトリビューンに売却した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2014090300705

日本新聞協会の新聞広告賞「広告主部門・大賞」に集英社の「ONE PIECE」コミックス3億冊突破記念キャンペーン 「ニッポン縦断!OPJ47クルーズ」が決定。
http://www.pressnet.or.jp/adarc/pri/2014.html

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3)【深夜の誌人語録】

断念なくして希望なしである。