【文徒】2014年(平成26)12月5日(第2巻229号・通巻431号)

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1)【記事】日高恒太郎を偲ぶ会に出席
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】日高恒太郎を偲ぶ会に出席

一昨日、日高恒太郎を偲ぶ会が新宿で開かれ、私も参加した。
日高恒太郎の死を知ったのは、友人のIから伝えられてのことだった。後で確認すると朝日新聞に訃報が掲載されていた。
http://www.asahi.com/articles/ASGC663TSGC6UCVL00Z.html
故郷の鹿児島で自殺してしまったのだという。生還した特攻隊員を取材し、日本推理作家協会賞を受賞した「不時着」の冒頭部分を私は即座に思い出した。「不時着」は、自殺を覚悟した著者が船で故郷に戻るところからはじまる。その過剰な心情の吐露はノンフィクションとしては異質な出だしであるが、人生に不時着を果たした日高なればこそ、特攻隊員の不時着に向き合うことができたのだと、当時、私は理解したものである。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167717131
新宿の酒場に集まったのは、日高と仕事をした編集者が中心であった。その誰もが語る。事件を書かせては一級のジャーナリストであったと。日高は「週刊新潮」の「黒い報告書」の主要な書き手のひとりであった。その一篇でも読めばわかるように日高に小説家の資質があったことは間違いない。この日、集まった編集者も日高に小説もしくはノンフィクション文芸を期待していたことがわかった。
手元に「別冊歴史読本」として刊行された一冊の本がある。2005年に刊行された「殺人百科データファイル」である。
http://www.google.com/url?q=http://www.amazon.co.jp/%25E6%25AE%25BA%25E4%25BA%25BA%25E7%2599%25BE%25E7%25A7%2591%25E3%2583%2587%25E3%2583%25BC%25E3%2582%25BF%25E3%2583%2595%25E3%2582%25A1%25E3%2582%25A4%25E3%2583%25AB-%25E5%2588%25A5%25E5%2586%258A%25E6%25AD%25B4%25E5%258F%25B2%25E8%25AA%25AD%25E6%259C%25AC-05/dp/4404033052&sa=U&ei=RP9_VOjlFsLOmwW_rYKgCA&ved=0CBQQFjAA&sig2=VZkf6LjvT5t31vlEpgFBnw&usg=AFQjCNFFshy-JFthO622GBhVwBALILgO9A
日高は、朝倉喬司や日名子暁と並んで、この本の主要な執筆者のひとりであった。既に三人とも、この世にはいない。そして、私は、この本を通じて日高と面識を得ている。私も執筆者のひとりなのである。

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2)【本日の一行情報】

百田尚樹の「殉愛」の売れ行きが予想通り急失速。百田はやり過ぎたのである。作家として忘れられるのも案外早いのかもしれない。
http://dmm-news.com/article/900473/
林真理子が「週刊文春」の連載「夜ふけのなわとび」で「殉愛」騒動を取り上げない週刊誌や女性週刊誌に対して苦言を呈している。
「もうジャーナリズムなんて名乗らない方がいい。自分のところに都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるのであろうか」
http://lite-ra.com/2014/12/post-677.html

◎「Quartz(クオーツ)」のケビン・ディレイニー編集長が「ジャーナリズムとともに、広告にもイノベーションが来ています」と語っていることをブログ「メディアの輪郭」で知った。
http://media-outlines.hateblo.jp/entry/2014/12/03/100122
ジャーナリズムも、広告もこれまでの常識を破壊しなければ、生き残れないということである。

町山智浩菅原文太を語って最後に「総長の首」の主題歌で、ジョニー大倉の歌う「夕陽に走れ」をかけている。やるなぁ。町山の映画的知性はなかなかのものである。
http://miyearnzzlabo.com/archives/21459

◎下村文科相朝日新聞の記事「来年度無償化見送りへ 年収360万円未満の5歳児保育料 財源確保厳しく」に対して、これは選挙妨害であり、厳重に抗議すると表明したと「保守速報」が伝える。「保守速報」は安倍晋三首相がフェイスブックでシェアしたことでも知られるヘイトスピーチ擁護サイトとして知られている。
http://hosyusokuhou.jp/archives/41609695.html

朝日新聞元記者の植村隆ニューヨーク・タイムズの取材には応じている。日本のメディアで堂々と語って欲しいものである。日本には東京新聞だって、北海道新聞だってあるだろうに、こういう植村の姿勢に私は違和感を禁じ得ない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141203-00000569-san-soci
植村に欠けるのは朴裕河のような覚悟ではないのか?

◎ふたば書房(京都)の洞本昌哉社長のツイートが話題になっている。ヘイト本に関して、顧客と直接やりとりをしている。
http://togetter.com/li/752852
早速、桜井誠が次のようにツイートしている。
「京都のふたば書房が在日の批判を受け拙著『大嫌韓時代』を店頭から撤去するとのことです。在日に都合の悪い書籍の焚書に書店側が堂々と協力するのですから何をかいわんやです」

◎空色が運営する「プリモード」は、1対1のチャットスタイルでプロのスタイリスト(約1000人のスタイリストと契約しているそうだ)が提携サイトたるアマゾンの約3000のブランドからおすすめのコーディネートを提案する無料の新サービスだ。
http://primode.jp/
http://www.fashionsnap.com/news/2014-12-03/primode-amazon/
アマゾンはファッション事業の強化をはかるつもりなのだろうが、こうしたアプローチは既存の女性ファッション誌にとって脅威となろう。空色は兵庫県芦屋に本拠を置くベンチャー企業である。
http://solairo.co.jp/

◎ベネッセは顧客の個人情報大量漏洩事件で被害の顧客から集団訴訟を起こされることになった。
http://mainichi.jp/select/news/20141204k0000m040053000c.html
500円という「おわび」は、いくら何でも安すぎる。訴訟を起こされないことを想定して算出された金額なのではないかと私などは疑ってしまうクチである。

主婦の友社は、累計96万部を発行する人気のムックシリーズの第3弾「S Cawaii!Beauty vol.3 ヤセてみえるヘアメイク」を発売した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000349.000002372.html
「即日、見た目−5kgを叶えます!」という惹句が凄いぞ!

◎柏原光太郎の「東京いい店うまい店2015ー2016年版」(文藝春秋)の出版記念パーティが大阪心斎橋大成閣で開催された。自筆サイン付きの本も販売したそうである。せっかくだから「大阪・京都・神戸いい店うまい店」をデジタル版だけで刊行すれば良いのではないだろうか。
http://ameblo.jp/cranz-keiko/entry-11960009843.html

フェイスブックジャパンの岩下充志代表取締役が「東洋経済オンライン」で次のように指摘しているが、全くその通りである。
「高年層向けスマホの充実、バッテリー持続時間の改善、格安スマホの登場などで、スマホの課題も徐々に解消されてきていますので、今後も着実にスマホの普及率は上がっていくでしょう。それに伴ってスマホがインターネット利用のメインストリームになっていくのは明白です」
http://toyokeizai.net/articles/-/54894
スマホは使えるけれど、パソコンは駄目だというスマホネイティブの若者が生まれる可能性があるのではないだろうか。

◎逮捕された漫画家のろくでなしこも、北原みのりもともに「週刊金曜日」に連載を持っているのか。
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=4860

電通電通子会社の電通テックは、デジタルテクノロジーを駆使した新しいノンヒューマン・タレント開発事業「デジタレ」をタレントのマツコ・デラックスをモデルにした「マツコロイド」をもって始動。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/1202-003884.html

電通は、英国のソーシャルメディア・マネジメント・エージェンシー「Tempero Limited」の株式100%を取得することにつき、同社株主と合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/1204-003896.html

◎宝島社の「MonoMax」1月号の付録は、BEAMSの「BIGレザートートバッグ」。これは売れるでしょ。オレも買う。といって、読まないだろうな、肝心な雑誌の中身は。いつもそうなんだよね。それで結構、売れれば良いという姿勢が宝島社にはあるはずだ。でなければ、こういう附録は考えないもの。
http://hatenanews.com/articles/201412/23093

◎「週刊文春」恒例の「ミステリーベスト10」で1位に輝いたのは米澤穂信の「満願」(新潮社)。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4606

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3)【深夜の誌人語録】

マンネリを大切にしたい。マンネリこそ基礎だし、基本なのだ。どんな独創もマンネリを土台にして生まれるものだ。