【文徒】2015年(平成27)3月11日(第3巻46号・通巻491号)

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1)【記事】3.11によせて
2)【記事】「日経ウーマン」4月号が回収のうえ発売延期に
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.3.11 Shuppanjin

1)【記事】3.11によせて

私が津波によって住宅をはじめ街そのものが押し流される映像を目にしたのは、その日の夜遅くになってからだ。
地震の激しい揺れは、当時勤めていた会社の8階にある事務所で経験した。大きな揺れが収まってから外に出た。その場で解散となったが、交通機関は総てストップしていた。しばらく駅の周辺をウロウロしていたが、もう飲むしかないと覚悟を決めて会社の女子社員とともに駅前の居酒屋に腰を据えた。何時間そこにいたのだろうか。相当量の酒精を胃袋に流し込んでいた。
銀座線が動き始めたことを知り、私は女子社員の姉が住む浅草のマンションに世話になることになった。その居間で津波の映像を繰り返し見ることになったのである。
それ以来、私は嫌というほど被災地の映像を、テレビを介して見ることになる。しかし、そこに人間の死は映し出されなかった。ただ数字のみが伝えられた。確かにメディアは生者によって死者を語らせた。お涙頂戴の物語に仕立てて!だが、結局、死者によって生者を語らしめる試みはなされなかったのではないか。
私はテレビや新聞が死者を映し出すべきだと主張したいわけではない。そんなことを興味本位にやってしまえば、それは人間に対する愚弄にほかなるまい。
ただ、これほどまで完璧にマスメディアによって死が隠蔽され、排除されてしまったことに私は違和感を感じた。映像から死を完膚無きまでに(それも人間的にではなく、機械的に、だ)消し去ることもまた犠牲者ひとりひとりの3.11に至るまでの「生」に対する愚弄ではなかったのか。そんな思いが今に至るも消し難く残っているのだ。
被災地を別にすれば急速に3.11のリアリティが消え始めているのは、私たちが「死」と向き合うことを避けてきた必然的な帰結なのかもしれない。メディアの「死」に対する機械的な配慮が私たちの「死」に対する想像力を著しく劣化させてしまったのではないだろうか。

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2)【記事】「日経ウーマン」4月号が回収のうえ発売延期に

「日経ウーマン」4月号に「編集上の不備」があったため、発売を3月19日(木曜日)に延期した。読者に重大な誤解を与えるほどの「誤った写真を掲載する不備」があったようだ。「すでに『日経ウーマン』4月号をご購入の場合は、修正版と交換させていただきます」ということは市場に出回ってしまっていたということだろう。「編集上の不備」が判明したのは6日であった。どこまで回収できるかである。
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/trend/20150307/201841/?rt=nocnt
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDG09HAX_Z00C15A3CR8000/
ツイッターで「後輩どもが回収されるはずの日経ウーマン囲んで『これちゃう?』『こっちちゃう?』と推理中」という投稿もあり、逆に読者の関心を集めてしまったという側面もある。しかし、そう簡単に読者は「編集上の不備」を発見することはできないはずだ。「日経ウーマン」の編集者だって気が付かなかったのだから!
実は問題となったのは、111頁に掲載されていた2cm×1.5cm程度の小さな写真なのである。そこでユダヤ教イスラム教といった一神教の宗教にかかわる教典に関してキャプションと違った写真を掲載してしまったようだ。その資料を提供していた研究者の指摘でわかったそうだ。

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3)【本日の一行情報】

◎「CD&DLでーた」(KADOKAWA)が10〜60代を対象とした「卒業ソング」ランキングを発表。
1位 卒業写真/荒井由実
2位 3月9日/レミオロメン
3位 贈る言葉海援隊
4位 my graduation/SPEED
5位 卒業/尾崎豊
6位 さくら/森山直太朗
7位 YELL/いきものがかり
8位 道/EXILE
9位 卒業/斉藤由貴
10位 乾杯/長渕剛
http://www.famitsu.com/news/201503/09073493.html
仰げば尊し」は今や「卒業ソング」ではないようだ。

電通マンは「何もわからず、意見せず、自分を褒め、気持ちよくさせてくれる女、そう、バカな女が好き」で、博報堂は「人に気を遣えて、自分を立ててくれ、礼儀正しい女性を好み」、ADKは「ノリが良くて、誘ったらすぐに誘いにのるような軽い女」を好む!本当かよ!
http://www.ca-girlstalk.jp/news/75161

文藝春秋は、今日発売となる又吉直樹の「火花」の発売前の事前重版を決めた。初版15万部に事前重版部数3万部で18万部也。
http://www.oricon.co.jp/news/2049700/full/

KADOKAWA角川アスキー総合研究所が共同で実施した「子どもライフスタイル調査2015春」によれば女子小学生の65%が動画共有サイトを見たことがあり、10%が「毎日、ほぼ毎日」見ているという。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001351.000007006.html

サイバーエージェントは、テレビCMの効果と連携した動画広告の新サービス「アジャイル型配信モデル」の提供を開始した。
https://www.cyberagent.co.jp/news/press/detail/id=10102?season=2015&category=ad

日本ジャーナル出版がアラフォーをターゲットとした女性誌「素敵な女性」にチャレンジ。ファッション誌でないところに好感が持てる。アラフォー女性の建前ではなく本音に迫って欲しい。「婦人公論」の独身版みたいな雑誌になると面白い存在になるのだけれど。
http://www.nihonjournal.jp/web/sutekinajyosei_01/index.html

◎大日本印は、読書専用端末に電子書籍を収録した「honto pocket(ホントポケット)」の新商品4種を発売開始した。「吉川英治 歴史時代文庫名作集」(講談社) 31,800円、「光文社古典新訳文庫傑作集」53,800円、「三浦綾子 電子全集」(小学館) 49,800円、「ディック・フランシス 競馬シリーズ全集」(早川書房) 42,800円がそうだ。
http://www.dnp.co.jp/news/10108031_2482.html

◎「首都圏連続不審死事件」の木嶋佳苗の自伝的小説「礼讃」がKADOKAWAから刊行された。しかし、KADOKAWAのホームページを見ると早くも「在庫なし」と表示されている。これってどういうことなのだろうか。
http://www.kadokawa.co.jp/product/321408000175/

◎マンガ家のピョコタンKADOKAWAの「東京ウォーカー」の編集者に対してニコ生を通じて激怒している。この編集者は、ピョコタンと一度も会うこともなく、依頼から何から総てをメールのやり取りだけで仕事を進めている。そのことが私には信じられない。
http://buzz-plus.com/article/2015/03/10/buchigire/

ヨドバシカメラは、2015年3月下旬より、「ヨドバシ・ドット・コム」内に、電子書籍専門ストアをオープンする。17万品目を超える電子書籍を取り揃えるという。
http://www.yodobashi.com/ec/news/1000086898/index.html?kind=0001

◎「反戦米兵援助日本技術委員会」(JATEC)のメンバーだった阿奈井文彦が亡くなった。「漫画アクション」の匿名コラム「アクション・ジャーナル」の執筆者の一人だったんだよな。「諸君!」でも連載をしていたんだよ。
http://www.asahi.com/articles/ASH3934Z4H39UCLV002.html

辰巳ヨシヒロが死去。「劇画」の名付け親である。
http://www.sankei.com/entertainments/news/150309/ent1503090004-n1.html
「劇画漂流」(講談社漫画文庫)を再読することにしよう。
http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063709186
http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063709193

◎淡路島の洲本市中川原町中川原で男女5人を刺殺した平野達彦容疑者のツイッターフェイスブックが話題になっている。ツイッターのプロフィール欄に「日本に来訪の外国人や日本国民全員をスパイとして使用する為に、日本政府は何十年も前から各地で電磁波犯罪とギャングストーキングを行っています。日本政府は米軍ユダヤと共謀しています」とある。
https://twitter.com/jichitai_net
https://www.facebook.com/tatsuhiko.hirano.1?fref=ts

文藝春秋画廊ならびにザ・セラーの営業は平成28年4月2日をもって終了する。
http://www.bunshun.co.jp/info/150310/

◎「GINZA」4月号の特別付録として復活する「オリーブ」は144頁にもなったそうだ。広告的にも大成功したということだ。
http://www.fashionsnap.com/news/2015-03-10/otona-olive/

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4)【深夜の誌人語録】

自分の意見に自分で反対してみることを心がけている。そうすることで自分の弱点を知ることができるからだ。