【文徒】2015年(平成27)3月10日(第3巻45号・通巻490号)

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1)【記事】講談社ハースト婦人画報社と業務提携を締結
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】講談社ハースト婦人画報社と業務提携を締結

先日配信した講談社ハースト婦人画報社の業務提携について、3月9日、神楽坂の日本出版クラブ会館で記者会見が行われた。今回の業務提携により、4月からハースト婦人画報社が刊行するすべての出版物の書店販売業務を講談社が受託することになった。
ハースト婦人画報社のイヴ・ブゴン社長&CEO、次いで講談社野間省伸社長がそれぞれ挨拶をした。
イヴ・ブゴン社長&CEO「厳しいマーケット環境にある中、出版は新しい役割を担い、また今までの概念にとらわれない新しいビジネスモデルを模索する必要に迫られています。両社とも老舗出版社ですが、イノベーションを推進することに関しても両社共通しているように感じています。様々な方法を検討する中で、今回の業務提携を実現し、講談社と共に将来の出版社の形を模索していけることを楽しみにしています。
今回の業務提携では、それぞれの強みを双方の会社で活用することでシナジー効果を創出することを目指していきます。提携の内容は様々な面での協議を検討していく予定ですが、まずはハースト婦人画報社が発行する出版物の書店販売業務を講談社に委託します。具体的には、4月6日発売の『ELLE a table(エル・ア・ターブル)』を皮切りに、弊社が定期刊行する14誌やムックの他、全ての出版物を講談社に業務委託していきます。
発行元は弊社、発売元は講談社という形になり、講談社には書店などの小売業者を通じた販売管理にかかわる業務をお願いすることになります。雑誌の販売促進活動に関しては引き続き当社が担っていきます。販売業務に関しては、多くのヒットを生み出す講談社の販売力、取次・書店との関係の深さが、今回の業務委託のメリットと感じています。常に業界を牽引する、出版業界のリーダーである講談社が販売業務を受諾してくださることでスケールメリットも享受できると考えています。
弊社はインターナショナル誌やラグジュアリー誌を発行し、そして扱う内容もハイファッションやライフスタイルを強みとしています。このパートナーシップにより書店における雑誌販売を活性化できればと思います。そしてそれぞれの出版社が持つ強みをかけ合わせることで、読者に楽しんでいただけるコンテンツを届け、広告主には非常に魅力的な企画を提案していきたいと考えています。」
野間省伸社長「ただいまブゴン社長からお話がありました通り、講談社は4月よりハースト婦人画報社と業務提携を行っていくことになりました。(中略)これによりまして講談社が販売する女性月刊誌は『ViVi』『with』『VoCE』『FRaU』に加えまして、『婦人画報』『ELLE JAPON』『25ans』『Harper's BAZAAR』の8誌となりまして、男性ファッション誌の『MEN’S CLUB』と合わせて9誌の月刊誌を販売いたします。
また『ELLE girl』をはじめとした隔月刊誌、『美しいキモノ』といった季刊誌、ムックも販売して参ります。10代後半から20代前半向けの女性ファッション誌から、今年創刊110周年を迎える『婦人画報』までと幅広い年代を対象とした女性誌グループとなります。
ハースト婦人画報社講談社女性誌グループには、純然たる競合誌がありませんので、今回の業務提携によって相互補完的で理想的なラインナップを創ることができました。講談社がこれまで築き上げてきました流通を活用してハースト婦人画報社の質の高いコンテンツをより多くの読者の方々に届けたいと思っています。
相互補完によって充実した女性誌ラインナップを活用して合同キャンペーンなどを積極的に展開しまして、書店店頭の活性化につなげ、女性誌市場、ひいては雑誌市場全体を盛り上げて参りたいと考えています。また、例えば講談社の強みでもあるコミックのキャラクターなどもハースト婦人画報社が発行する雑誌の中で取り上げ、そういったコンテンツ面での提携も視野に入れております。
出版業界、とりわけ雑誌を取り巻く環境が極めて厳しい状況に置かれているということは皆様ご認識の通りでございます。歴史、DNAの異なる両社ではございますが、今回の業務提携によってそれぞれの強み、またノウハウの共有を進めまして、コンテンツの伝え方を工夫、開発して新しい出版ビジネスのあり方を発表して参ります。今後も様々なジャンルで積極的に展開していきたいと思っております。皆様方のさらなるサポートをお願いしたいと思います。」
両社長の挨拶のあと、フォトセッションを挟んで質疑応答となった。

        • キャラクターをハースト婦人画報社の雑誌で使う以外に、コンテンツの共有について現時点で発表できることはありますか?

野間社長「具体的に決めていることはありませんが、例えば、ハースト婦人画報社さんが出している雑誌の中から書籍を作っていくとか、デジタル面ではいろいろな協業ができるのではないかと考えています」

        • いつごろからこうした業務提携を検討されてきたのか。そのきっかけとなったことがあれば教えてください。

ブゴン社長「野間さんとは10年前から親しくしていて、定期的に会ったりしていましたが、具体的に販売の業務提携の話が出たのは半年くらい前です。野間さんとは同世代で、同じビジョン、即ち積極的にデジタルに取り組むことと紙媒体という文化を守ることは共通していました」
野間社長「定期的に会って、海外の状況も含め情報交換する中で、海外ではこういうことをやっている等の話から、今後まずは販売で業務提携していこうというところから今回の話になったわけです」

        • ハースト婦人画報社さんは販売業務を委託することで余剰人員が出るのではありませんか? リストラなど考えていらっしゃいますか?

ブゴン社長「そういうことはないし、考えていません」

        • ハースト婦人画報社さんは販売を移管することによって、どういった部分を強化するのかなど、具体的な戦略を教えてください。

ブゴン社長「基本的に2006、7年に取り込んだ戦略に大きな変化はありません。販売に関して日本のマーケットでナンバーワンの講談社と組むことで、デジタルにしろ紙媒体にしろ、スピードアップして積極的にやっていきたいと思っています」
(文責・田辺英彦)

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2)【本日の一行情報】

芳文社の「まんがタイムきららキャラット」で連載中の得能正太郎による4コマ「NEW GAME!」の主人公の台詞「今日も一日がんばるぞい!」がSNSで大流行し、単行本第1巻は売り切れる書店が続出しているそうだ。その電子書籍版第1巻を「コミックシーモア」が独占先行配信。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1503/06/news101.html

イマジニアは、「野球太郎育児」を創刊。星一徹・飛雄馬父子が表紙の日本初の野球育児雑誌だそうだ。販売は廣済堂出版が担う。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2015/03/07/kiji/K20150307009926210.html
http://makyu.yakyutaro.jp/post-1483/
イマジニアは、こういう会社。
http://www.imagineer.co.jp/index.html
代表取締役CEOの神藏孝之は松下政経塾の出身。野田佳彦博報堂松本薫と親しいようだ。
http://www.takayukikamikura.com/

◎「ファミリーマート啓文社 廿日市店」(広島)は、コンビニだけでなく書店コーナーも24時間営業に対応する。売り場面積は約41坪で書籍は売り場の約6割を占め、レジはコンビニと書店で分けている。
http://hiroshima.keizai.biz/headline/2054/

千葉市は、そごう千葉店9階の三省堂書店に、市の図書館などで貸し出した本の返却用ポストを開設。産経ニュースによれば、公立図書館の返却ポストが書店に設置されるのは政令市では初の試みとなる。
http://www.sankei.com/region/news/150307/rgn1503070052-n1.html

桜木紫乃の「起終点駅 ターミナル」(小学館文庫)が映画化される。
http://okmusic.jp/#!/news/70742

◎「東洋経済オンライン」によればベネッセに対する損害賠償請求訴訟で原告は増え続けているようだ。
「1月29日に原告約1800人で第1次訴訟を提起した『ベネッセ個人情報漏洩事件被害者の会』の原告代理人弁護士を務める松尾明弘氏は『最終的に原告は1万人程度まで増えそう』と見通す」
http://toyokeizai.net/articles/-/62015

グレンデール市の慰安婦像裁判はSLAPP訴訟と認定されてしまったという。「この裁判では、そもそも原告のGAHTらは『慰安婦問題は嘘である』とか『プレートの内容には虚偽が含まれる』といった主張は一切していない」そうだ。
http://blogos.com/article/107147/

電通の2月度単体売上高。マス4媒体は総て前年割れ。インターネットのみが好調。これは世界的な傾向である。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015022-0306.pdf
雑誌は雑誌に換算されない世界を他の媒体の内部に構築すべきである。

河出文庫から「山窩小説傑作選 サンカの民を追って」が刊行された。田山花袋岡本綺堂のサンカ小説が読める。解説「国民国家の裏の真実」は、私が書いている。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309413563/

コンデナスト・ジャパンは、「VOGUE JAPAN」4月号の別冊付録「VOGUE SHOPPING」と連動したECサイトをスタートさせたが、24時間テレビショッピングを放送する専門チャンネルQVCともコラボしている。期間は4月30日までだ。
http://www.vogue.co.jp/ecshopping/

◎「文學界」4月号の特集が「『図書館』に異議あり!」って、新潮社の「新潮45」が図書館を恫喝していたが、文藝春秋もこれに続いた?日本文芸家協会が2月2日に主催したシンポジウム「公共図書館はほんとうに本の敵?」の内容が収録されている。しかし、「文學界」にとって図書館がなくなったら大変なことになると思うけれど。ともかく読んでみようっと。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/
おっと産経も書いているじゃない。シンポジウム開催から1カ月以上も経過しているというのに。
http://www.sankei.com/life/news/150308/lif1503080028-n1.html
何か胡散臭いな。

◎駐日ブラジル大使が曽野綾子を批判している。
「2月20日付のジャパン・タイムス紙は、曽野氏が問題となった最初の記事の趣旨を説明する試みを掲載する。その中で同氏は南アメリカに於ける日系移住者専用の植民地について言及している。同氏はまた、日本国内に『ブラジル人移住者用のコミュニティーが存在』し、彼等は自ら進んでそこに居住していると述べている。これはブラジルに住む日系人にとっても、日本に居住するブラジル人にとっても事実の歪曲だと言える」
「ブラジルに渡った日本人移住者は全国に散り、ブラジルの文化を身に付け、現地の人と結婚して子孫をなした。要するに彼等は祖先の文化を放棄することなくブラジル社会に溶け込んだのである」
「一方では約17万人のブラジル人が現在、日本国内に居住する。その大部分が日系人であり、『自ら進んで隔離して住む』わけではない。ブラジルが日本人移住者に提供したのと同様の機会と度量を求めて彼等は来日したのである」
http://www.nikkeyshimbun.jp/2015/150307-61colonia.html

藤原書店社長の藤原良雄は新評論の出身。私にとってはアルチュセールの「愛と文体」を刊行した版元である。ブローデルの「地中海」はむろんのこと、「石牟礼道子全集」も藤原書店だし、小川和也の「鞍馬天狗とは何者か 大佛次郎の戦中と戦後」もそうだ。とても良い仕事をしている出版社だと思う。
http://mainichi.jp/shimen/news/m20150307dde041070048000c.html

小学館文庫の「付添い屋・六平太」シリーズの評判が良いようだ。著者の金子成人は「鬼平犯科帳」「剣客商売」から大河ドラマまで脚本家として数多くの時代劇を手がけてきた手練れだけに時代小説もしっかりとツボを心得ているのだろう。しかし、金子が青春映画の脚本を書いていることは、あまり知られていまい。小原宏裕監督の佳作「男女性事学 個人授業」がそうだ。中川梨絵の代表作でもある。「桃尻娘」も金子なんだよね。
http://www.sinkan.jp/news/index_5522.html
http://dyotonsei.blog39.fc2.com/blog-entry-28.html

◎アマゾンの「Amazon Studentプログラム」は学生を対象にした10%ポイントサービスであったが、例えば有隣堂ルミネ横浜店では、3月12日(木)〜3月17日(火)までの6日間、ルミネカードを利用すると書籍も雑誌も10%OFFになるという。有隣堂は再販制について、いったいどう考えているのだろうか。
https://twitter.com/yurindo_luminey/status/574744019856588800
Amazon Studentプログラム」は再販契約違反だとしてアマゾンに出荷を停止した出版社3社を支援するためフェアを開催したのは有隣堂であったんだよな!しかし、有隣堂のやっていることはポイントサービスどころか、堂々とした値引き販売である。
http://www.asahi.com/articles/ASG6L5FXVG6LUCVL00T.html

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3)【深夜の誌人語録】

熱を持て。熱を仕事に叩き込むのだ。その熱量の差が、やがて実力の差となる。仕事において傍観者を気取るなということだ。