【文徒】2015年(平成27)3月9日(第3巻44号・通巻489号)

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1)【記事】ソーシャルメディアの時代が孕む「怖さ」について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ソーシャルメディアの時代が孕む「怖さ」について

ディー・エヌ・エーツイッターの公式アカウントに3月3日、次のようなコメントを掲げた。
「本日(3/3)弊社の従業員を名乗るアカウントが差別的な発言をTwitter上でしているとのご指摘を受けましたが、プロフィール上の情報を元に調査したところ、弊社の従業員ではないことが確認できましたのでお知らせいたします」
https://twitter.com/DeNAPR/status/572618495420055552
これは、プロフィール欄にディー・エヌ・エーで統括的な仕事をしていると書かれたアカウントが川崎市の中一殺害事件をめぐってフォロワーと議論になった際に「在日基地外火病犯罪者の戯れ言w」「在日/…ガチホモ…くんよ〜 お前らノウノウと税金で刑務所暮らしだろ?」といった差別発言を次々と繰り返していたことに対して、ディー・エヌ・エーの従業員は無関係であることを正式に表明したツイートである。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1503/05/news035.html
いわゆる「なりすまし」アカウントによってディー・エヌ・エーは巻き添え被害を受けたわけだが、さすがにインターネットを舞台に事業を展開しているだけあって、ディー・エヌ・エーの反応は素早かった。
しかし、それでもディー・エヌ・エーの公式アカウントによる投稿を閲覧せず、「なりすまし」によるツイートしか閲覧していないユーザーからすれば、ディー・エヌ・エーのイメージは、「なりすまし」のツイートによって、民族差別に加担した企業として決定され、固定されてしまうことになりかねまい。「なりすまし」ツイートが独り歩きしてしまう事態もあり得るわけだ。誰もがメディアを持てる時代の、これは負の部分であろう。
では、こういうケースはどうであろうか。ひとりの中学生が川崎の中一殺人事件の容疑者宅をニコ生で実況中継してしまったのである。この中学生が自らの正当性を訴える「論理」を馬鹿にしてはなるまい。誰もがメディアを持てる時代に「報道」とは何か?を真剣に考える必要がある。この中学生は「報道」が新聞やテレビといったマスメディアのみが行使できる特権でないことを炙り出してしまっている。
http://4knn.tv/kawasaki-15years-media/

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2)【本日の一行情報】

川上量生の現状認識は鋭いと思う。次のような発言は着メロで継続課金の旨みを知る川上ならではのものだろうが、私もほぼ同意できる。
「大きなビジネスになりにくいなぁと思っていて、やっぱり固定制ですよね。月額固定のモデルというのが1番安定して本命だと思っているんですよね。電子書籍が例えばページをめくるたびに100円とられると、例えば次のページをめくるときに200円取られると。ソーシャルゲームみたいな仕組みだったら儲かるかもしれないんですけれども、そうではなくて誰でも同じ金額という良心的なモデルじゃないですか、そうすると特に雑誌は厳しいと思いますよね」
http://logmi.jp/39058

紀伊國屋書店梅田本店は人気ブロガーちきりんの「マーケット感覚を身につけよう」(ダイヤモンド社)の刊行を記念して、3月17日(火)に阪急グランドビル26階1・2・3号室でちきりんの講演会を開催する。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Umeda-Main-Store/20150304160627.html
梅田書店戦争。蔦屋書店が「ライフスタイルを提案する新しい書店」として5月上旬に出店する。旭屋書店は、かつて本店をここに構えていたが出店を断念したようだ。
http://www.asahi.com/articles/ASH2X525MH2XPTFC00M.html

樹なつみ「一の食卓」のコミックス第一巻が発売されるのを記念してジュンク堂書店池袋本店で3月15日にサイン会が開催される。また書泉ブックマート書泉ブックタワー書泉グランデで複製原画の展示が行われている。明治4年、東京・築地の外国人居留区のフェリパン舎に働く少女と元新撰組斎藤一を主役に据えた「時代マンガ」だが、テレビドラマ化されると、こういう作品は火がつくはずだ。
http://www.hakusensha.co.jp/sign/itsuki/

◎この宝島社のレシピ本は売れるだろうな。「ディズニー物語にでてくるおいしいレシピ」。作ってみたくなるもの、これ。
http://www.disney.co.jp/shopping/news/20150304_01.html

学研ホールディングスは、日本東ティモール協会の「東ティモールの小学生の理数教育の向上を支援する」という呼びかけに賛同し、住友化学と一緒に東ティモールの首都ディリにあるベボヌック小学校1年生約300人に対して教材を無償提供した。住友化学が教材持参用リュックを提供し、学研エデュケーショナルが学研教室で使用している算数教材(英語版)を現地の翻訳者が現地語であるテトゥン語に翻訳して提供した。
http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/news/2015/20150304.html
http://ghd.gakken.co.jp/csr/news/2015/20150304.html

◎韓国政府は、産経新聞の藤本欣也ソウル支局長に対し、申請が昨年9月18日にされているにもかかわらず、外国記者の身分を示す「外信記者証」を発行していないという。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/03/04/sankei-korea-soul_n_6803706.html

◎こ、このタイトル、す、凄い。「S Cawaii!」特別編集の「この先死ぬまで男に困らない恋愛とメイクの方法を教えます」(主婦の友社)。
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20150305/E1425517986700.html

楽天は、出版社向けに、オンライン書店楽天ブックス」と「楽天Kobo電子書籍ストア」で取り扱う書籍や電子書籍の販売管理ツール「楽天ブックス ダッシュボード」の提供を開始した。出版社が刊行予定の書籍の発売日や価格、おすすめコメントなどの情報をエクセル入力して専用のサイトにアップロードすると、書籍情報が自動的に「楽天ブックス」や「楽天Kobo電子書籍ストア」の商品ページに登録されるというものだ。
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2015/0305_01.html

◎「美術手帖」の版元として知られている1905年(明治38年)創業の美術出版社が3月4日、民事再生法の適用を東京地裁に申請。負債は2014年3月末時点で約19億6300万円。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4018.html

◎オーバーラップの白井勝也顧問が話題になっている。オーバーラップはリクルート系列だったメディアファクトリーがKADOKAWAに買収される際に「ポケモン」を担当していたスタッフが合流せずに設立している。実はメディアファクトリーの買収には小学館も手をあげていた。「おたぽる」は次のように書いている。
「オーバーラップの会社案内に記載されているのは、『顧問』の肩書きを持つ白井勝也氏。白井氏は1968年に小学館に入社後、マンガ編集者として数々の作品を担当。1980年に『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)が創刊されると編集長に就任し、以降10年間にわたって同職に務めた。その後は、2014年まで小学館の副社長などを歴任。2014年5月からは小学館の最高顧問となっている。確認できる範囲では、昨年7月時点でオーバーラップの会社案内に白井氏の名前は記されていなかった」
http://otapol.jp/2015/03/post-2578.html
http://over-lap.co.jp/Page/c01_2.aspx

講談社オウム真理教の教祖であった麻原彰晃の三女アーチャリー(松本麗華)の手記「止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記」を出版する。彼女、正大師だったんだよな。こういう出版社ならではのジャーナリスティックな仕事は嫌いじゃないんだよね、オレ。
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2015/03/05/daughter-of-aum-shinrikyo-founder-to-publish-memoir/
http://blog.asahara-kousoshin.info/

朝日新聞社デジタル本部の林智彦に深く同意。「ふわっとした」議論に流されるのではなく、データを細かく読み取っていくのであれば、活字離れは電子書籍の利用率が低い60、70代で顕著なものの全体としては、不読(本を読まない)率は下がっているのである。
http://japan.cnet.com/sp/t_hayashi/35061283/
インターネットの登場で「読み書き」の能力はかつてないほど高まっていると私は認識している。例えば投稿サイトの出現により、「作家のインフレ」が急速に進んでいるではないか。

◎「<ネット広告&通販の第一人者が明かす>100%確実に売上がアップする最強の仕組み」(ダイヤモンド社)の著者である加藤公一レオは三菱商事、Havas Worldwide Tokyo、アサツーディ・ケイを経て「売れるネット広告社」を立ち上げたという経歴だ。私はビジネス書が苦手である。社会人になってから殆んど読んでいない。
https://netshop.impress.co.jp/node/1306

産経新聞社は、ニュースサイト「産経ニュース」で、1月27日に掲載した記事「【スポーツ異聞】『真央ママ死亡』に泣いた心優しいソチ五輪メダリスト『コストナー』に降りかかった“ドーピング幇助疑惑”」に翻訳盗用の疑いがあるとの指摘を受け、同記事を削除するとともに記事作成の経緯など事実関係を調査しているそうだ。
http://www.sankei.com/affairs/news/150305/afr1503050054-n1.html

学研教育出版の累計400万部を突破している「白い本シリーズ」から、ファーブルやマリー・キュリースティーブ・ジョブズなど20人を取り上げる「10分で読める 発明・発見をした人の伝記」が刊行された。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000440.000002535.html

◎LINEでキユーピーちゃんキャラクターが大人気だ。「LINE スポンサード着せかえ」の第一弾だそうだ。
http://news.mynavi.jp/news/2015/03/06/094/
「LINE スポンサード着せかえ」は、企業のブランド・キャラクターをモチーフとした着せかえをLINEユーザーに配信することができる企業向け広告メニューである。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/961

◎KADOKAWA・DWANGO」が通信制高校を沖縄で開校する計画を進めていると3月7日付で琉球新報が報じている。
「2012年3月に統廃合で廃校になった、うるま市与那城の伊計島にある旧伊計小中学校を拠点にし、1年目は全国から5千人の生徒を募集する計画だ。市企画課によると、16年4月の開校を目指し、市と地元自治会との覚書締結の手続きを進めている」
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-239943-storytopic-4.html

◎KADOKAWAは、3月11日(水)に100万人以上にダウンロードされている無料のスマホアプリをムックにした「週刊ジョージア 特別号」を全国のセブン-イレブンで発売する。500円。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001343.000007006.html

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3)【深夜の誌人語録】

誰もが反対のしようがないことに安易に賛成しないようにしている。