【文徒】2015年(平成27)10月27日(第3巻196号・通巻646号)

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1)【記事】丸善ジュンク堂書店経営判断は間違っている!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.10.27 Shuppanjin

1)【記事】丸善ジュンク堂書店経営判断は間違っている!

MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店が「自由と民主主義のための必読書50」というフェアを企画し、開催した。このファアについて「ジュンク堂渋谷非公式」という名称のアカウントが「この先イベントやフェアを次々ぶちかまして行く予定なので。年明けからは、選挙キャンペーンをやります! 夏の参院選まではうちも闘うと決めましたので!」とツイートしたところ、これが炎上してしまう。
朝日新聞によれば「共感が寄せられる一方で、安倍政権を闘う相手に想定しているとして『選書が偏向している』といった批判が続出した」ため、「店側は20日に非公式アカウントを削除し、21日夕にフェアの棚を撤去」するに及んだ。
http://www.asahi.com/articles/ASHBR5JQTHBRUTIL03R.html
丸善ジュンク堂書店の公式見解である。
「先日より弊社店舗におけるフェアについてさまざまな意見を頂戴しており、お客様及びお取引先各社様には大変ご心配をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
弊社は書店の役割は『さまざまな意見や考え方を幅広く紹介する場』であるという姿勢で営業してまいりました。
これからも変わりません。
この度、弊社従業員による私的なツイッターアカウントより、特定の意見を支持するツイートがありました。
これは弊社の公式な意思・見解とは異なる内容です。
どのような経緯でこのようなツイートが発信されるに至ったかを調査し、その結果、コンプライアンス違反が認められた場合は社内の規定に則り適切に対処致します。
また当該フェアにおいて、弊社方針のもとフェア自体は継続してまいりますが、本来のフェアタイトルの趣旨にそぐわない選書内容であったため、現在その内容について精査し選書を見直して再開する予定です。
お客様及びお取引先各社様よりお寄せいただいたご意見を真摯に受け止め、幅広い意見や考え方を反映した出版物を扱う書店のあり方を改めて見直し、多くの方にご満足いただける店舗を目指して参ります」
http://www.junkudo.co.jp/mj/news/detail.php?news_id=92
丸善ジュンク堂書店の決断は妥当なものであったのだろうか。私からすると「萎縮」を正当化しているだけの「見解」にしか思えない。そもそも「本来のフェアタイトルの趣旨にそぐわない選書内容」とは私には思えない。単に親会社が大企業であることが「萎縮」しやすい体質を醸成してしまったのかもしれない。
しかし、"ネトウヨから抗議があったので、フェアを中断しました"では済まされないのではないか。ことは「出版の自由」にかかわる問題である。菅野完の「ジュンク堂の決断について」を読んでおきたい。
「…企業としてのジュンク堂の判断は仕方ない面もある。『非公式アカウント』なるものが、『我々』などという言葉を使いあたかも社を代表するかのような言辞を弄することに対しては、社として、厳格な懲罰を下す必要はあろう。
しかし、しかしである。
その懲罰の結果、あるいは対処の結果、『わが国の首都を代表する大型書店から政権批判本の選書コーナーが撤去された』というのは、あまりにもでかい。
その点から、ジュンク堂の判断は、稚拙に過ぎると断ぜざるをえない。書店のレゾンテートルを自己否定しておる。『羹に懲りて膾を吹く』という言葉があるが、ジュンク堂の判断は、『物を噛むのがめんどくさいから、羹も膾も味噌も糞も一緒に捨ててしまう』ような判断でしかない。噛むのをいとお(う)て羹も膾も味噌も糞も捨て去れば、いずれ飢えるしかなかろう。これじゃ子供の使いだ」
http://noiehoie.tumblr.com/
丸善ジュンク堂書店は書店のレーゾンデートルについて熟考したうえで、今回の判断を下したと胸を張れるだろうか。映画作家想田和弘は次のようにツイートしている。
「もし今回の選書フェアが『偏ってるから撤去だ』ということを認めてしまうなら、『フェアに選ばれた本も偏ってるから店頭に置くな』という理屈も認めざるを得なくなる。それって全体主義国家と同じでしょう。だからフェアの撤去など、書店は絶対に認めちゃならんのですよ」
https://twitter.com/KazuhiroSoda/status/657724959956013056
藤本由香里のツイートも紹介しておこう。
丸善ジュンク堂渋谷店の『自由と民主主義』のフェアが、政治的に偏向しているというので中止になったという記事を読んで驚愕。批判があったからには…というが、嫌韓本とか嫌中本とかは、批判されても『売れるから…』という理由でどこも目立つところに置き続けたじゃない。そうとうおかしいぞ、日本!」
https://twitter.com/honeyhoney13/status/658400291340091393

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2)【本日の一行情報】

◎ハンティング ワールド ジャパンは、男性ファッション誌「LEON」との限定コラボレートバッグを販売している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000015989.html
ハンティング ワールドは「LEON」とコラボしたことを殊更強調していない。
http://www.huntingworld.jp/hw/goods/list.html?cid=special003

◎学研グループのデジタル事業会社であるブックビヨンドは、東京モーターショー2015の開催を記念して、主要電子書籍ストアにて、「ル・ボラン」と「BMW COMPLETE」のバックナンバー計29タイトルをオール100円(税込)で販売するキャンペーンを実施している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000208.000009949.html

KADOKAWAのマンガ誌「月刊コミックジーン」11月号(15日発売)が重版となった。若い世代に人気のフリーゲーム「殺戮の天使」のコミカライズ新連載と、同じく人気のフリーゲーム「獄都事変」の描きおろしクリアファイルの付録が功を奏したようである。
http://mantan-web.jp/2015/10/23/20151023dog00m200027000c.html

ジャストシステムが10〜30代の女性を対象に実施した「フリマアプリの利用に関するアンケート」の結果を発表。現在、利用しているフリマアプリを尋ねたところ、「メルカリ」が88.6%でトップとなった。
http://news.mynavi.jp/news/2015/10/24/049/
「メルカリ」は1600万ダウンロードを突破している。
https://www.mercari.com/jp/

ちくま文庫から刊行されている三島由紀夫の長編小説「命売ります」が20万部を突破。「2015年7月から人気が爆発し、計17万部を重版」したそうだ。もともと「週刊プレイボーイ」に連載されていた作品だけに大衆性が潜在していたということでもある。
http://top.tsite.jp/news/book01/o/25939923/

◎「編集プロダクションフェア2015」が10月29日に市ケ谷の「コミュニケーションプラザ ドットDNP」で開催される。
http://ichigaya.keizai.biz/headline/2255/

◎扶桑社は文芸誌「en−taxi」(エンタクシー)を11月26日発売の46号で休刊することになった。もともとは電通とのコラボで誕生した異色の文芸誌だった。リリー・フランキーのミリオンセラー「東京タワー」も、「en−taxi」から生まれた。
http://www.fusosha.co.jp/news/info/info_article/142

ベルサール秋葉原で開催されたKADOKAWAの「ファンタジア文庫大感謝祭2015」においてラノベフルメタル・パニック!」のTVアニメ第4期が制作されることが発表された。
http://www.animate.tv/news/details.php?id=1445655002

◎日本は「ツイッター大国」である。ユーザー数は1980万人で、アジア地域のトップである。匿名の2チャンネルがソーシャルメディアの起点となった日本では、匿名でも投稿可能なツイッターが実名ベースのフェイスブックよりも好かれている、のだろう。
http://news.livedoor.com/article/detail/10745710/

◎「カップル共同垢」!?「カップル共同アカウント」のことである。
http://japan.cnet.com/sp/smartphone_native/35072250/
新しい言葉が生まれて来るメディアは強い。

◎ファッションイベント「ViVi night in TOKYO 2015〜HALLOWEEN PARTY〜」が10月23日、台場のZepp Divercityで開催された。
http://news.mynavi.jp/news/2015/10/24/083/

◎7人制ラグビーの男子日本代表ウィング松井千士が「CanCam」12月号(小学館)付録の「THEイケメンBOOK2」に登場し、モデルデビューを果たした。
http://www.hochi.co.jp/sports/ballsports/20151024-OHT1T50015.html

◎アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は米国3位の大富豪だ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWPC1P6K50Y401.html

◎「ヤングチャンピオン烈」(秋田書店)連載中の女子高生を主人公としたオートバイ青春マンガ「ばくおん!!」が2016年にTVアニメ化されることになった。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/1025/hwc_151025_7532651214.html

天皇が詠んだ詞に皇后が曲を付け、歌はソプラノの鮫島有美子、バイオリンは東京芸大音楽部長の澤和樹、三線人間国宝西江喜春による「歌声の響」が11月6日、CDブック(朝日新聞出版)として発売される。紅白歌合戦で歌われることになるのかどうか。
http://www.asahi.com/and_M/interest/entertainment/Cpettp01510250008.html

荒木飛呂彦のマンガ「ジョジョの奇妙な冒険」第4部の「ダイヤモンドは砕けない」がテレビアニメ化されることになった。現在は「ウルトラジャンプ」(集英社)でシリーズ第8部「ジョジョリオン」を連載中である。
http://mantan-web.jp/2015/10/24/20151024dog00m200025000c.html

◎米YouTubeが10月28日に開始する有料サービス「YouTube Red」は、月額9.99ドル。広告なしでYouTubeの動画を閲覧できるだけではなく、動画を保存してオフラインで閲覧したり、バックグラウンドで再生できるようになる。また、「YouTube Music」アプリも、「YouTube Red」会員であれば無料で利用できる。
http://internetcom.jp/busnews/20151025/ad-free-youtube-youtube-red-is-9-dollars-99cent-per-month.html

◎個性派書店として知られている模索社の榎本智至が選んだ「テロ」関連文献6選。栗原康「現代暴力論『あばれる力』を取り戻す」(角川書店)、「憂国か革命かテロリズムの季節のはじまり」(鹿砦社)、竹中労かわぐちかいじ「新装版・黒旗水滸伝」(皓星社)、笠原和夫他「昭和の劇:映画脚本家・笠原和夫」(太田出版)、鈴木邦男「テロ 東アジア反日武装戦線赤報隊」(彩流社)、マイク・デイヴィス「自動車爆弾の歴史」(河出書房新社)がそうだ。
http://tocana.jp/2015/10/post_7670_entry.html

西日本新聞によれば「ビッグコミックオリジナル」(小学館)に連載されている「深夜食堂」をイメージした店が、韓国・釜山で人気を集めているそうだ。
「国際市場などの繁華街から少し離れた路地裏。ひらがなで『めし』と書かれたちょうちんとのれんが目に入る。のれんをくぐると、コの字形のカウンター。深夜食堂の舞台である食堂『めしや』と同じだ。店内では金さんが、ドラマや映画化された日本でマスター役を演じた俳優小林薫さんと同じ紺色の格好で迎えてくれた」
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/203376

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載の仲間りょう「磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜」が30秒ほどのショートアニメ「豆アニメ」としてアニメ化され、また舞台化もされるという。
http://mantan-web.jp/2015/10/26/20151025dog00m200013000c.html
「豆アニメ」ということはネットで公開するのだろうか。

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3)【深夜の誌人語録】

根拠なき楽観主義は悲劇を招くものである。