【文徒】2016年(平成28)年11月29日(第4巻222号・通巻909号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】「編集者こそ『商談会』に参加せよ!」がなぜできないのか。
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「編集者こそ『商談会』に参加せよ!」がなぜできないのか。(岩本太郎)

11月8日に大阪市で開かれた「BOOK EXPO2016」について、フリーランス編集者であり、大阪でメディアイランドという小さな出版社を営んでいる千葉潮が『マガジン航』で《編集者こそ「商談会」に参加せよ》とのタイトルで当日の模様をレポートしている。
http://magazine-k.jp/?p=21381
http://book-expo.jp/
http://www.mediaisland.co.jp/
取次会社の壁にとらわれず、出版社と書店が直接向き合って行う商談会として2011年に始まったこのイベントも今年で6回目。盛会だったようだが、千葉のレポートでは書店を中心に今の出版界が置かれている状況を、会場内のあちこちで交わされた語らいを通じて描き出されている。
《ベストセラーや売れ筋の本は、大型書店を中心に新刊配本が行なわれ、町の書店の店頭までには回らない。営業マンだって来ない。本が配本されないからお客は大型書店に行ってしまう。小さな本屋の売上が減り、閉じる店も多くなるという悪循環。それを手をこまねいていていいのか。
版元の営業マンが店に来ないのなら、こっちから仕入に出かければいい。取次を束ねて一緒になって開催すればスケールメリットもある。なんども協議を重ねた結果がこのBOOK EXPOだ。
取次の壁をはずしたのは、このBOOK EXPOが日本で最初に取り組んだことだ。今年も多忙ななか、3月から月1回計8回の実行委員会を重ねた。実行委員は書店を中心に出版社、取次の計30名から成る》(実行委員である宮脇書店大阪柏原店店長・萩原浩司への取材を受けての記述)
《ウチなんて、自社物件やからようやく本屋をやれているんやわ、そやないととても町の本屋なんてでけへん。お客さんもだいたい70歳くらいやから。ぼけ防止に塗り絵が効果があるというんやけど、だいたい大人の塗り絵って細かすぎて年寄りには向かへんねん》(ブースに塗り絵本を求めに来た50代の書店員の談。大阪市の中心部から少し離れた市営団地が商圏とか)
《いまや東京,大阪だけでなく、札幌、福岡、岡山、四国でも同様の商談会が開催されるようになっています。BOOK EXPOは今、転換期を迎えていると思う。もっともっと工夫が必要です。ぼくは編集さんや著者がブースに立ってもらうとええと思うんや。書店にはあんまり来てくれへんでしょ。(中略)今年は、図書館司書の方に何人か来てもらいました。書店がアテンドするんやけどね。だからちょっとずつ開かれていってるんじゃないかと思います》(萩原浩司の談)
こうしたレポートを読んだり、あるいは当「出版人」の取材で出版社や書店を回って話を聞いたりする中でも、出版業界の中にある何となしの窮屈さを感じてしまう。もちろん、上記の記事や、そこで発言している人たちの多くもそこを実感しつつ何とか改善の方向に持っていこうとしているわけだが、それにしても大都市の大阪で開催される“取次の壁を外した”商談会に東京からも編集者がやって来て、上記の50代の書店員などと膝詰めで話し合うようなことがもっと普通に行われる業界であったほうがいいだろう。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎先の千葉大生集団強姦事件で容疑者3人の氏名が公開されないことについて、百田尚樹Twitter上で《犯人の学生たちは大物政治家の息子か、警察幹部の息子か、などと言われているが、私は在日外国人たちではないかという気がする》とツイート。これに対して津田大介が同じくTwitter上で《ツイッター社は然るべき警告した上でそれでもやめないようなら、この人のアカウント停止すればいいんじゃないかな》と批判。百田もさっそく《こんな言論さえヘイトスピーチなのか》と反論。
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/801441308774567936?ref_src=twsrc%5Etfw
https://twitter.com/tsuda/status/802111582599684096?ref_src=twsrc%5Etfw
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/802109819159134208?ref_src=twsrc%5Etfw
http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/26/hyakuta-talks-about-incident_n_13261214.html

北九州市のテーマパーク「スペースワールド」が11月12日から開催した「5000匹の魚を氷漬けにしたアイスリンク上でスケートができる」という演出がネット上で炎上。約5000匹を埋め込みながら氷を張った。死んだ状態で水揚げされた約5000匹の魚(サンマやイワシ、キビナゴなど)を埋め込みながら張った氷の上を利用者に滑ってもらうという企画だったが、「何でまたこんな悪趣味な事をするんですかね?」「氷漬けにした魚の死体を踏みつぶしながら遊ぶとか狂気の沙汰としか…生命への冒涜かな?炎上商法かな?」などの批判が続出。同施設の公式Facebookページに載った記事中の「おっ・おっ・・・溺れる・・・くっ・くっ・苦しい・・・」といった記述(既に削除)も火に油を注いだらしい。こうした事態を受けてスペースワールドは27日から営業を中止、Facebook上の当該記述も削除。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1611/26/news033.html
http://www.spaceworld.co.jp/
https://www.facebook.com/sw.spaceworld/posts/1028895807239270
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161127/k10010786201000.html
http://www.asahi.com/articles/ASJCW4GF7JCWTIPE002.html

◎学業の傍ら新聞配達をしながら生計を立てている新聞奨学生たちを取り巻く過酷な労働実態は、新聞販売店の経営が悪化する中でますます酷いものになってきているらしい。新聞労連傘下の新聞通信合同ユニオンは今月初め、産経新聞社や産経新聞開発、産経系列の金杉橋専売所に対し不当労働行為があったとして東京都労働委員会に救済の申し立てを行ったという。
http://www.kokusyo.jp/shinbun07/10600/
http://godounion.wp-x.jp/%e7%94%a3%e7%b5%8c%e6%96%b0%e8%81%9e%e5%a5%a8%e5%ad%a6%e7%94%9f%e3%81%ae%e5%8a%b4%e5%83%8d%e5%95%8f%e9%a1%8c%e8%a7%a3%e6%b1%ba%e3%81%b8%e6%95%91%e6%b8%88%e7%94%b3%e3%81%97%e7%ab%8b%e3%81%a6/

◎さる11月26日発売号を最後に休刊したヤンキー雑誌『チャンプロード』(笠倉出版社)の誌上で人気を博したコンテンツが、Donutsが配信するスマホアプリ『単車の虎』にて来年1月25日から無料連載されることが決定。このほど事前登録受付が開始された。
http://tantora.jp/nologin/tantora-champ/teaser
http://app.famitsu.com/20161125_901385/

◎大ヒット作となりつつある映画『この世界の片隅に』について、公開前の昨年に続き、このほどクラウドファンディングサービス「Makuake」を通じて再び資金の募集が始まった。今回のプロジェクトは監督の片渕須直が海外に赴くための渡航費用・滞在費用を集めることが目的。同作は既にイギリス、フランス、ドイツ、メキシコ、アメリカなど世界15カ国での配給が決定しているそうだ。
https://www.makuake.com/project/konosekai2/
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6221778

ボーイズラブ関連の出版物を主力とするリブレがpixivコミックで公開していたWEBマガジン『クロフネZERO』と『クロフネ百』が合体のうえ、新たに『クロフネ』として11月24日に新装刊された。リブレは2006年に倒産したビブロスボーイズラブ出版部門を継承した会社で、アニメイトが出資している。
https://libre-inc.co.jp/kurofune/
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/1124/ani_161124_1928876717.html

◎名古屋に本社を置く地上波民放の中京テレビ(日本テレビ系)がネット動画配信に参入。「Chuun(チューン)」という動画配信のプラットフォームを立ち上げ、地上波で既に放送された番組のほか、ネット独自番組も無料で視聴可能だ。
https://chuun.ctv.co.jp/
http://www.asahi.com/articles/ASJCC64RYJCCOIPE033.html
一般には殊更注目されることが少ないが、東京と大阪に挟まれた名古屋のテレビ局の番組制作能力は高い。最近は東海テレビのドキュメンタリー番組の映画化が話題を呼んでいるが、その東海テレビが数年前まで昼間に全国放送してきた“昼メロ”のドラマには根強いファンがいたし、ローカルバラエティの面白さでも放送業界内では定評があるだけに、こうした新展開の行く末には関心が持たれる。

◎今や日本は「もっともアップルを好意的に受け入れている国」なのだそうだ。『東洋経済ONLINE』でジャーナリストの松村太郎が書いているところによると、同社の決算サマリーの中で、2ケタ成長を続けている2つのカテゴリーのうちの1つが日本市場。今年の第3四半期は中国以外の世界中の市場でマイナス成長となっている中で日本市場だけは23%の成長を記録。同第4四半期でも、米国市場ですら7%減を記録する中、日本市場は10%の成長を確保しているそうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/146934

◎都内中野区でカウンセリングのLLC(有限責任事業組合)を営む夫婦が事務所を拠点として区内各地で放送を続けてきたミニFMまんてんラジオ」が、さる11月23日の放送で「開局5週年・通算200回」を達成。同日は終日に渡って記念放送を事務所から行い、筆者(岩本)も飛び入りで見学かつ放送に”出演”してきた。
http://www.visit.city-tokyo-nakano.jp/category/gurutto/gurutto_event/40603
http://air.ap.teacup.com/taroimo/1878.html
ミニFMとはコミュニティFMよりさらにエリアが狭い、半径せいぜい100m以内にしか届かない電波出力で行われる最も原初的な“放送”だ。この程度であれば放送免許も要らず、機材も数千円から数万円で一通り揃うため、地域の集まりなどの際に地元の住民やボランティアの人たちが独自に行っているケースが各地で見られる。無論、統計データなどはあるはずもないが。

NPOのインターネット放送局「Our Planet-TV」の代表・白石草が『日刊ゲンダイ』の連載「社長の本棚」に登場。同局のオフィスに放送評論家の故・青木貞伸が生前に所蔵していた書物を集めた「青木文庫」があることによるものだが、記事の表題の肩書きは「Our Planet-TV白石草社長」。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/194571
連載のタイトルに合わせたのだろうが、確かに「NPO代表」という肩書きは『日刊ゲンダイ』の記事見出しには今一つこないかもしれないな。もっとも白石はFacebookで記事を紹介しながら「おやじ系メディアを代表する 憧れの日刊ゲンダイに掲載されました!」と喜んでいた。「インタビュー時間の半分くらい、夕刊紙の危機的状況を聞かされましたけど」とも言っていたけど。

◎元『週刊朝日』編集長の山口一臣朝日新聞を退職。さりげなくTwitterで報告している。
https://twitter.com/kazu1961omi/status/802833363895652352

◎JR飯田橋駅で下車して東口の改札を抜けたところに、同駅最寄りの竹書房がこんな“自虐広告”(?)を掲出しているのを見つけた。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1148096218578270&set=a.380866768634556.88576.100001337077521&type=3&theater

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

「建前と本音が食い違う」実態を隠蔽するために「質実剛健」という言葉を使うのはよくない。