【文徒】2017年(平成29)年2月6日(第5巻22号・通巻951号)

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1)【記事】電通山本敏博新社長へのインタビューを大手各紙が一斉掲載
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】電通山本敏博新社長へのインタビューを大手各紙が一斉掲載(岩本太郎)

電通山本敏博新社長へのインタビューを大手各紙が一斉に掲載した。各紙とも自社サイトへの掲載時刻は同日の午前2時(共同配信記事をウェブ版のみで掲載した東京新聞は午前5時過ぎ)。紙の新聞記事とウェブとが連動する場合には降版協定と同様の仕組みが新聞・通信社サイトにあるが、朝刊の場合は午前5時のウェブ掲載が一般的なのでやや珍しい時刻での掲載だった。
ある新聞記者は「個別のインタビューゆえどこを“主見出し”に取られるかわからない、あるいは特定の社のサイトにアクセス集中させたくないとの判断も働いたのではないか」などと舞台裏を推察していた。
以下に、主要各紙における記事のポイント部分を列挙する。朝日新聞は経済面に掲載した。
《本氏は優先課題として「不適切な労務管理の根絶」を挙げた。これまで、社員が過去のCM映像を視聴したり、担当企業の資料を見たりする時間は「自己研鑽(けんさん)」として労働時間として認めてこなかったという。山本氏は「今から考えれば不適切な労務管理。すべて改める必要がある」と述べ、月ごとではなく、日ごとの勤務時間を把握する仕組みづくりを急ぐ考えを示した。》
http://www.asahi.com/articles/ASK225365K22ULFA016.html
毎日新聞は社会面に掲載した。
《山本氏は過労自殺問題の原因について、「(長時間労働が常態化していた)社内風土などさまざまな要因が複合して起きた。企業としてリスク認識が足りなかった」との見解を示した。労務改革について、「表面的では意味がない。法令順守や社員の健康を守ることが、仕事の質や業績の向上、最終的には電通の社会的な存在感の高まりにつながるという本質的な改革にしたい」と話した。》
http://mainichi.jp/articles/20170203/k00/00m/040/160000c
日経新聞は企業欄への掲載。
《山本社長は昨年11月に立ち上げた電通社内の労働環境改革本部の本部長にも就任。ただ、これまで同本部は概念上の組織にとどまっており、今月1日に東京本社の全社員が入れる階に場所を設けたという。「電通内にないものは外部からも借りてくる」と語り、今後、外部有識者を本部に登用する可能性も示唆した。》
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12473990S7A200C1TJC000/
産経は1面のほか、3面(総合面)で一問一答形式の長いインタビューを掲載した。
《ご存じのようにイレギュラーな状態で社長に就任した。そのミッションは平時と違い、“非常時社長”と思っている。社長の使命はたくさんあるが、その中でも飛び抜けて優先順位が高いのは改革断行だと認識している。“改革断行社長”と自ら思ってやっていこうと思う。改革は年限を区切る必要がある。2年で改革を成し遂げる。そういう使命だと考えている》
《(ネット広告不正では自身も処分を受けたことについて)ネットの不正問題に関して、私に責任があったことは間違いない。従って応分の処分を受けた。この責任があることはハッキリしており、私自身も自覚している。極めてその責任を痛感している》
《今回、石井前社長が期の半ばで、辞任を表明したこともあり、その後任社長の最大のミッションは冒頭、申し上げた通り、改革を断行することだ。それが明らかな上で、取締役会によって後任の人選が行われた。ちなみに私は取締役ではない。その人選の中にはいなかった。改革断行のテーマに最適な人選が行われたと聞いている。その結果、私が取締役会の総意で指名された。そのことを厳粛に受け止め、取締役会から託された使命を、全力で成し遂げる。それ以外、私が申し上げることはない》
《私が少なくとも現時点で取締役でなくても、業務執行に関しては私が社長。私にトップの責任と権限があることは間違いない。会社法的に言えば、取締役でもないし代表権も持たない。それにおける責任も権限もない。これも事実だ。これを前提に(代表権を持つ中本祥一取締役副社長と高田佳夫取締役専務執行役員と)役割分担でやっている。》
http://www.sankei.com/economy/news/170203/ecn1702030002-n1.html
以上のどの新聞にも書かれていないが、山本敏博の父親は講談社の出身だ。役員もつとめていた。華やかな雑誌担当の役員ではなく学術部門の担当であったと記憶する。講談社が周年事業で刊行した歴代の全役員名簿を山本社長に送付したところ、大変感謝されたようだ。山本社長は、この名簿を父親の霊前に供えたそうだ。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

集英社が1月31日付でメディアドゥに出資(比率は同社株の1.0%)。同社は小学館(同2.2%)講談社(2.0%)に続く上位3番目の株主となった。
http://www.mediado.jp/corporate/1401/

◎新潮社の季刊文芸誌『yom yom』が現在発売中の冬号で紙版の発行を終え、次号からは電子版に移行するとのこと(5月19日配信)。
https://twitter.com/yomyomclub/status/826653288590237696
ちなみに最初にこれを報じた『ITmedia NEWS』は当初「休刊」と書いたらしく、『yom yom』編集部からの指摘を受けて慌てて訂正した模様。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1702/02/news075.html
https://twitter.com/yomyomclub/status/827020743292522497

三島由紀夫が自決する約9か月前に行った対談の未公開録音テープの抜粋が、明日(7日)発売の『群像』3月号に掲載される。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20170203-OYT1T50017.html

◎『沈黙』の映画化でまたも注目が集まっている遠藤周作の講演音源(1966年)を新潮社がウェブ上で3月末まで無料公開している。
http://www.shinchosha.co.jp/book/112315/
https://youtu.be/ykJKaM3lfys
http://www.sinkan.jp/news/7517

◎新潮社はcomicoと合同による「新潮文庫 新世代ミステリー賞」も1日から始めている。
http://news.livedoor.com/article/detail/12620652/

◎同人誌界で大人気を獲得しつつ、扶桑社から1月18日に発売された『夫のちんぽが入らない』(こだま)が、2月に発売される村上春樹の最新作『騎士団長殺し』を押しのけ、1月22日〜1月28日のAmazon文芸書売り上げランキング第1位に輝いた。
http://www.bookbang.jp/article/525808

◎2001年に翻訳家の池田香代子らが書籍にまとめて大ベストセラーになった『世界がもし100人の村だったら』は2008年に発行の「完結編」まで5冊が発行されていたが、英国のEU離脱トランプ大統領就任などの情勢を受けての最新作「お金篇」が、1月30日にマガジンハウスより“緊急出版”された。
http://magazineworld.jp/books/paper/2902/
著者の池田香代子が『ガジェット通信』のインタビューに応えて、出版に至る経緯を語っている。
http://getnews.jp/archives/1618016

JR九州が今年秋に福岡市中央区九州大学キャンパス跡地にオープン予定の複合ビルに、核テナントの一つとして蔦屋書店が入ることを発表。
http://www.nishinippon.co.jp/feature/fukuoka_style/article/305504

◎一方で紀伊国屋書店は4月下旬に、同市天神のイムズに10年ぶりに出店の予定。天神にはジュンク堂やリブロ、メトロ書店、TSUTAYAなどが大型店を構えており、再び書店戦争が激化するのではないかと地元では噂されているらしい。
http://www.nishinippon.co.jp/feature/fukuoka_style/article/305523

◎昨年12月に青森県八戸市が市営書店としてオープンした「八戸ブックセンター」を、八戸出身でコピーライター(J・ウォルター・トンプソン・ジャパン元副社長)の関橋英作がレポート。今のところ当初予測を上回る来客で賑わっているらしい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atclcmp/15/070600027/012700007/

◎ファッション誌『FRUiTS』が昨年年12月23日発売号をもって月刊発行を終了。発行元のレンズの代表取締役で同誌の創刊編集長でもある青木正一によれば、理由は「オシャレな子が撮れなくなったこと」と、デジタルシフトが進む中で「紙媒体を月刊で発行していくスタイルが現代の若者のマインドに合わな」くなったこと。雑誌は今後不定期で発行し、一方で物販やイベント開催など新たな形態を模索してくそうだ。
http://www.fashionsnap.com/news/2017-02-03/fruits-stop/
http://fruitsshop.theshop.jp/

J:COMが加入者を対象に電子雑誌読み放題サービス『J:COMブックス』の提供を1日から開始した。
http://newsreleases.jcom.co.jp/news/80501.html
https://news.nifty.com/article/technology/mobile/12125-341621/

竹書房電子書籍の試し読み無料マンガ小冊子「竹書房スターターブック」(全7冊)の配信を4日からスタート。
https://www.value-press.com/pressrelease/177485

◎アニメスタジオのポリゴン・ピクチュアズkindle ダイレクト・パブリッシングで電子書籍の配信を開始した。第一弾はバイクに乗る若者を主人公にした青春小説『エリサとオールドノートン』(鷹屋七織)。
http://www.ppi.co.jp/news_release/ppipr20170201/
http://anime.eiga.com/news/104081/

◎全国で4館目となる“TSUTAYA図書館”が岡山県高梁市に開館した。
http://www.sankei.com/west/news/170204/wst1702040074-n1.html

◎過労死自殺した電通元社員・高橋まつりの母・幸美が、まつりが学生時代にアルバイトで働いていた『週刊朝日』のロングインタビューに応じた。
https://dot.asahi.com/wa/2017020100109.html

◎その高橋まつりの遺族代理人を務めた弁護士の川人博共同通信のインタビューに応じている。川人は1991年に自殺した電通社員の過労死訴訟(2000年に最高裁判決が確定)でも原告側代理人を務めている。
https://this.kiji.is/200144321109917705

ヤマハ河合楽器などが運営する音楽教室での演奏について、JASRAC著作権料を徴収する方針を固めたことに教室側が反発し、ネット上でも大きな話題になっている。
http://www.sankei.com/life/news/170202/lif1702020032-n1.html
http://www.asahi.com/articles/ASK213QYXK21UCVL00P.html
ヤマハ、河合などの7企業・団体は「音楽教育を守る会」結成してJASRACに対抗する姿勢を表明。さる2日に第1回目の会合を開いている。
https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201702038454/
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1702/03/news113.html
宇多田ヒカルがこの問題について《もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな。》とツイートしたことで、話題はますます拡散されて盛り上がっているようである。
https://twitter.com/utadahikaru/status/827795199040450560
http://dlvr.it/NHSS2H

◎元日本テレビディレクターで上智大学教授の水島宏明が、1月31日にTBSが放送した番組『白熱ライブ ビビット』の中で、多摩川河川敷に暮らすホームレスたちを「犬男爵」「人の皮をかぶった化け物」などと報じたことについて《現在、社会問題になりつつある東京MXテレビと同じくらいかそれ以上に相当に悪質な人権侵害といえる放送なのだ》と告発している。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20170202-00067273/

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

意見を違える相手にこそ最大限の敬意を払って接することが説得への第一歩である。