【文徒】2017年(平成29)年2月3日(第5巻21号・通巻950号)

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1)【記事】東京新聞がMX『ニュース女子』問題について2日付朝刊1面で「深く反省」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】東京新聞がMX『ニュース女子』問題について2日付朝刊1面で「深く反省」(岩本太郎)

1月2日に放送された東京MXテレビの番組『ニュース女子』が沖縄の米軍基地反対運動に関わる人々について「テロリストみたい」「何らかの組織に雇われているのでは」などと報じた件で、東京新聞は2日付朝刊1面(中日新聞は同日の社会面で)に《「ニュース女子問題」 深く反省》と題した記事を掲載。
同社論説副主幹の長谷川幸洋が上記の番組で司会を務めていたことに関連して、番組内容が《本紙のこれまでの報道姿勢および社説の主張と異なることはまず明言しておかなくてはなりません》《事実に基づかない論評が含まれており到底同意できるものでもありません》《本紙の沖縄問題に対する姿勢に変わりはありません》などとする見解を同紙論説主幹の深田実が公表した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000241.html
東京新聞は2日より《沖縄「ヘイト(憎悪)」言説を問う》と題した識者へのインタビュー連載も開始している。1回目に登場したジャーナリストの津田大介は『ニュース女子』の件の放送に関して《一から十まで事実に基づかない、ひどいものだった。同局がこの問題とどう向き合い、放送倫理・番組向上機構BPO)がどう判断するのかはっきりしないと、コメンテーターを務めている同局の番組には出られないと考え、今後の出演を断った》などと冒頭で述べている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000131.html
また、読者投稿欄「発言」の下の「読者部だより」では読者部長の榎本哲也が《読者の批判 重く受け止め 「ニュース女子」問題》と題した見解を述べている(ウェブ版には未掲載で、一部のみ以下に引用)。
《年明け以来、一カ月にわたり連日、ご意見が相次いでいることに、きょうまでお答えしていませんでした。まず、深くおわび申し上げます》
《厳しいご批判や、本紙の見解表明を求める声は、読者部にいただいた電話やファックス、メールや手紙だけでも二百五十件を超えました。重く受け止めており、きょうの一面に論説主幹の見解を掲載しました》
社会面の「編集日誌」にも《新聞をつくりながら、沖縄について皆で考え続けました。読者にどう伝えるべきなのかを考え抜きました。津田さんの言葉(3面)は編集局にも向けられていると受け止めました》とあった。自紙の幹部記者による他のメディアでの言動について「おわび」に追い込まれるという異例のケースに戸惑う様子がうかがえる。同紙は"朝日より赤い"をポジショナリー=売り物にしているだけにビジネス的にも収拾をはかる必要があった。
他紙もさっそく東京の「反省」に言及。朝日新聞は《東京新聞はこれまで、番組の問題点を何度も報じてきたが、長谷川氏については触れていなかった》などと、やはり少し前まで長谷川の件には触れようとしなかった自らを棚に上げるのがいかにもだ。
http://www.asahi.com/articles/ASK222GSQK22UTIL002.html
毎日新聞は《東京新聞はこれまで問題を取り上げた際、長谷川氏が司会を務めていることに触れず、先月27日朝刊のコラムで作家の佐藤優氏が「社論を明らかにすべきだ」と指摘していた》と、一応紙面での問題提起がなされていたことも押さえつつ紹介。
http://mainichi.jp/articles/20170202/k00/00e/040/198000c
産経新聞は淡々と紹介するのみだったが、記事の末尾で《同記事によると、長谷川氏が司会を務めた「ニュース女子」では、現地の反対派について「テロリストみたい」「雇われている」などと表現した》などと、番組内容につていて東京新聞の紙面を引用する書き方をしていた。
http://www.sankei.com/entertainments/news/170202/ent1702020006-n1.html
ちなみに東京新聞特別報道部記者の佐藤圭は《東京MX「ニュース女子」の沖縄ヘイト。東京新聞特報面で3回、私がデスクとして厳しく批判しましたが、本日2日の朝刊1面で、弊社の長谷川幸洋論説副主幹が司会を務めている問題につき、社の見解が示されました》としつつ自らのツイートで記事を紹介。
https://twitter.com/tokyo_satokei/status/826940074369572864
MXはいまだ見解を表明していない。2月6日の放送はどうなるか。
http://s.mxtv.jp/variety/news_joshi/
2017年1月2日(月)放送第40回の番組紹介は以下。
http://s.mxtv.jp/variety/news_joshi/episode.php?ep_id=6129_40
当の長谷川幸洋は自身のTwitterアカウントで2月3日朝8時の時点ではこの件について沈黙している。
https://twitter.com/hasegawa24

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎昨日の『文徒』でも紹介した「ワセダクロニクル」による、共同通信の医薬品に関する記事をめぐる問題は、毎日新聞のほかNHKも後追い報道した。共同通信社は取材に対し《記事は報じるに値すると判断して執筆したもので、共同通信社や記者は対価を受け取っていません》としつつ抗議文を送った旨を回答。共同通信社の子会社((株)共同通信社:通称KK共同)は《正当な事業として電通PRからの情報を共同通信社に紹介し、その対価として電通PRから報酬を受け取りました》とコメントしている。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170201/k10010861361000.html

百田尚樹『殉愛』の中の記述をめぐり、やしきたかじんの長女が版元の幻冬舎を名誉棄損で訴えていた裁判は二審の東京高裁でも幻冬舎が敗訴。賠償金額が一審より35万円増えた365万円。
http://www.asahi.com/articles/ASK214FHZK21UTIL012.html
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017020100715&g=soc

博報堂DYメディアパートナーズが開発のうえ始めた音声アプリ「ラジオクラウド」は、従来ラジオ各局が力を入れてきたものの、サーバー費用などの問題から昨年のTBSラジオのように撤退を余儀なくされてきたポッドキャストに成り代わるものでもある。コスト面の課題を解決することで音声コンテンツ配信の収益化を図り、なおかつリスナーの拡大につなげる役割が期待されているのだ。『マイナビニュース』で藤田真吾がレポートしている。
http://news.mynavi.jp/articles/2017/02/01/radiocloud/

◎日経電子版とYahoo!!ニュースにより1月26日に日本橋で開催されたイベント「Media×Tech2017」における、野間省伸講談社社長)と森川亮(女性向け動画配信サービス「C channnel」社長)が「デジタル時代の雑誌の未来」をテーマに行ったパネルディスカッションの内容が以下で公開された。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12387710R00C17A2000000/

ジャストシステムが男女15〜69歳を対象に行っている「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査」によると、昨年12月度調査の時点でLINEの利用率は61.9%と、昨年1月度調査時点より約15%も上昇。一方でFacebookは34.8%、Twitterは38.7%、Instagramは22.3%。LINEは女子高生では94.5%、女子大生だと96.6%もの利用率になるそうだ。
http://economic.jp/?p=71069
http://chosa.itmedia.co.jp/categories/marketing/91637

◎『ヤングジャンプ』が連載作品の新規アニメ化企画として公式サイトにて発表解禁までのカウントダウンを行っていたのは『潔癖男子!青山くん』(坂本拓)。2月2日午前0時に公表された。
http://kda-anime.com/
http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1485937373

小学館集英社プロダクションは、厚生労働省が今年1月から始めた「依存症への理解を深めるための普及啓発事業」活動の一環として2つの取り組みを始めた。1つは依存症への正しい理解を進めるために2月1日より厚労省の特設サイト内に新たに追加した「理解度チェック」のページ(声優の諏訪部順一氏が担当した音声メッセージなどオリジナルコンテンツのプレゼント企画もあり)。もう1つは本事業を応援するキャラクター『ウォンバットさんたち』を起用した啓発キャンペーンで、2月中旬より東京・名古屋・大阪の3都市で実施の予定とのこと。
https://www.atpress.ne.jp/news/120890

◎日本インタラクティブ広告協会(JIAA)は2月1日、米国のインターネット広告団体であるInteractive Advertising Bureau(IAB)と正式に提携し、43カ国目の組織になったと発表した。IABグローバルネットワークでの組織名は「IAB Japan (JIAA)」。
http://www.jiaa.org/release/release_iab_170201.html
http://web-tan.forum.impressrd.jp/n/2017/02/01/24952

◎故・立松和平の地元・宇都宮市の市立南図書館にある「立松和平文庫」が1日よりリニューアル。立松の命日にあたる8日から3月5日までは直筆原稿など、遺族から借り受けた遺品も同文庫にて展示されるという。
http://www.sankei.com/region/news/170202/rgn1702020026-n1.html

◎書泉が運営する芳林堂書店の全店(コミックプラザを除く)で今月1日から28日まで「町の本屋応援フェア」を開催中だ。
http://www.horindo.co.jp/2017/02/4724/
上記を紹介する『ドリームニュース』の記事には「フェア開催に寄せて」と題して同店高田馬場店の店長・宮山修によるこんなメッセージも。あの太洋社の自主廃業表明をきっかけに出版業界を震撼させた大騒ぎから早1年が経とうとしている。
《一年前のこの時期は、芳林堂書店全店にて新刊の入荷が滞り、お客様にご迷惑をおかけいたしました。
あれから一年、芳林堂書店は株式会社書泉の運営の元、地域に根差した町の本屋として皆様に喜んでいただけるよう新たな展開に取り組んでまいりました。
昨今厳しいと言われる書店業界ですが、本屋を愛してくれる方がいる限り、町の本屋はまだまだがんばれると信じて、今回のフェアを企画しました。
これは、私たち自身が書店を愛する気持ちを込めたものですが、同じような境遇で奮闘していらっしゃる全国の書店様へのエールにもなれば幸いです。》
http://www.dreamnews.jp/press/0000146725/

◎スカパーは昨年9〜12月までの3カ月間で契約者数が3%減。やはりJリーグ放送中止の件が影響しているらしい。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ01HYZ_R00C17A2TI1000/

◎オートバイ専門出版社のバイクブロス(2010年より名古屋市に本社を置く中古車情報サービスのプロトコーポレーションの傘下入り)が、ツーリングとドライブ情報の専門誌『ツーリング&ドライブ一度は走りたい絶景銘道2017』を2月2日に創刊。刊行ペースについては公表されていないが、「2017」とあるところを見ると年内の続刊予定はなさそうだ。
http://www.bikebros.co.jp/vb/
http://response.jp/article/2017/02/01/289826.html

◎【記事】で取り上げた『ニュース女子』の東京MXがもともとどんなテレビ局だったかについては先月末の『メディアクリティーク』でも触れた。開局時に「24時間ニュース専門局」を謳った面影など今やどこにも見当たらないMXだが、唯一「放送基準」だけは、開局前に村木良彦(元TBS。制作会社テレビマンユニオン創業メンバー)が作成したと思しきものが今なおMXの公式サイトに掲載されている。《前文》を手始めに《人権》《平和》《環境》《文化》と続いて末尾は《訂正》。こういうところから同局の現状への突っ込みを入れてみてもいいかもしれない。
http://s.mxtv.jp/company/basis.php

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

人の振りを見て見ぬ振りして、我が振り直さず尻隠さずなのは最低だ。