【文徒】2018年(平成30)1月30日(第6巻17号・通巻1191号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】NHKドラマ「赤報隊事件」主人公の朝日記者は革マル「テロ」の被害者だった
2)【本日の一行情報】

                                                                                • 2018.1.30 Shuppanjin

1)【記事】NHKドラマ「赤報隊事件」主人公の朝日記者は革マル「テロ」の被害者だった(岩本太郎)

あの1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件、いわゆる「赤報隊事件」を題材に先週末、二夜連続で放送されたNHKスペシャル「未解決事件 file.06『赤報隊事件』」はネット上でも大きな反響を呼んでいた。27日の第一夜は「実録ドラマ」(主人公の朝日新聞記者・樋口毅を演じたのは草なぎ剛)、28日の第二夜はドキュメンタリーという構成だった。
https://www.nhk.or.jp/mikaiketsu/
当時35歳の朝日新聞大阪社会部記者だった樋口毅は、事件後に真相解明のための「特命取材班」の一人に指名され、定年を過ぎた現在も大阪本社に籍を置きながら、なお未解決のままの事件の真相を追い続けている。事件発生からちょうど30年を経た昨年5月、TBS系の『 JNNドキュメンタリー ザ・フォーカス』で放送された「特命 赤報隊を追え?朝日新聞襲撃事件30年」(制作したのはTBS報道局で海外も含めた事件取材で実績のある秋山浩之)にも出演し「取材を止めたら赤報隊に敗北したことになる。だから取材を続ける」と、胸の内を語っていた。
http://www.tbs.co.jp/jnn-thefocus/archive/20170519.html
その樋口はかつて1970年代はじめ、早稲田大学を舞台に行われていた凄絶な闘争、いわゆる「第三次早大闘争」における「英雄」でもあった。1972年、当時第一文学部自治会を支配していた革マル派の活動家たちが、当時2年生の川口大三郎が中核派の活動家だとみなして暴行の末に殺害した事件をめぐって抗議の声を上げて立ち上がったノンセクト学生たちの中心人物だったのだ。
その樋口自身も革マル派に襲われて両足を骨折する大怪我を負っている。ビルマミャンマー)ほかの海外報道で定評のある制作会社「ジン・ネット」代表の高世仁が、昨年のTBSでの上記番組が放送された直後、上智大学で樋口も出席のうえ行われたジャーナリズム講座の際に樋口と会い、終了後の酒場で語り合った話などを混じえつつ述懐している。高世は樋口と同じ1972年に早大に入学している。
《文学部自治会を牛耳る革マル派は、文学部キャンパスで川口君を拉致、リンチして殺害。遺体を東大病院前に遺棄した。大学生がキャンパスで虐殺されるという異常事態を前に、早大生は革マルの暴力支配にはじめて声をあげ、革マルに私物化され資金源になっている自治会を自分たちの手に奪還すべく立ち上がった。「第三次早大闘争」と呼ばれる歴史的闘争で先頭に立ったのが樋田さんだった。結果、革マルの第一文学部自治会執行部はリコールされ、学生の圧倒的な支持を受けて、樋田さんが新たに委員長に選出された》
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20170521
《話はやはり45年前のことになり、「樋田さん、革マル派に鉄パイプで重傷を負わされたあと、どうしたの?」と聞くと、一度も大学に行かずに全部レポートで単位をとって卒業したとのことだった。(略)樋田さんは入学したその年の11月8日の虐殺事件から運動の先頭に立ち、1年生で自治会委員長に押し上げられ、翌年5月には革マルのテロでやられたから、キャンパスに出入りできたのはたった1年間しかなかったことになる》
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20170523
1971年に早大一文に入学した瀬戸宏(中国演劇研究者・摂南大学国語学部教授)は、2013年に開かれた「川口大三郎さんを偲ぶ会」に出席した時のことを自身のウェブサイト「電脳龍の会」に記している。そこにも樋口についての言及がある。
《昨年は逝去40年で全早大規模での偲ぶ会が開かれたそうですが、これには私は参加していません。昨年の会は人数も多く、必ずしも参加者の話をじっくり聞く雰囲気では無かったので、今年は一文だけの会を企画したとのことです。当時、私も運動に参加していたので、案内が届きました。
参加者は当時の再建自治会委員長樋田毅さんはじめ20名あまりでした。会は午後6時から始まり、全員がそれぞれの思い、その後の人生を語りました。
20数名全員が語り終わったところで午後9時になり、会は終わりました。
(樋田さんの名前を出すことは、本人の了承を得ています)》
http://www.asahi-net.or.jp/~ir8h-st/kawaguchi.htm
樋口自身も72年当時のことを、瀬戸が作成・管理しているサイト「川口大三郎君追悼資料室」で以下のように綴っている。
《私自身が革マル派に鉄パイプで襲われたのは、キャンパスに新入生を迎えた5月初めだった。学生集会を開くため、文学部キャンパスの大教室の前でマイクを持って新入生に参加を呼びかけていたところ、突然、見覚えのある革マル派の学生が現れ、「こいつが樋田だ」と指さして叫んだ。すると、見知らぬ数人の男たちが私を羽交い絞めにし、押し倒した。
「足を狙え」という声とともに、私の両足などをめがけて鉄パイプが何度も振り下ろされた。「学館(革マル派が拠点としていた施設)へ連れていけ」という声も聞こえた。私は近くの鉄柱にしがみつき、身体をエビのように丸めて、痛みに耐えていた。鉄パイプは腕と頭部にも振り下ろされた。男たちが去ったあと、私は救急車で日赤病院に運ばれ、入院した。両目は内出血で真っ赤になっており、両足の足首ははれ上がり、看護師さんから「ゾウさんの足のようだね」と言われた。》
http://www.asahi-net.or.jp/~ir8h-st/kawaguchi_016.htm
毎日新聞OBによるブログ「新聞記者になりたい人のための入門講座」にも「H君」と名前を伏せた形で、当時「警視庁第四方面記者クラブ(新宿警察署)」のサツ回りだったブログ主が早大まで取材に駆け付けて出合った際の樋口についての記述がある。
早大のキャンパスでは、内ゲバをなくそうとする動きが高まりつつあった。事件を引き起こしたセクトは、対立するセクトの策謀と反撃したが、取材する側の目から見ると、一般学生による内ゲバ追放運動が大きなうねりになっているのは明らかだった。そのような学生の中に、被害者とクラスメイトのリーダーがいた。小柄だがひげを生やし、仲間内ではひげの○×君と呼ばれていた。後に朝日新聞記者となる「ひげのH君」との出会いは、私にとって一生のものとなった》
http://blog.goo.ne.jp/kazupiro2011/e/7a1810281edc17bd39eb1a3e570baba6
《反内ゲバ、反暴力運動の先頭に立つH君の周りには、当然のことながら多くの新聞記者が集まった。私もその一人で、「川口君はどのセクトにも属していなかった」などと説くひげ面学生の一挙手一投足を細かく取材し、記事にして本社に送った。お互い顔なじみになり、彼の主張を分かりやすく書き、社会面トップの記事になったこともあった。その関係で、私が早大担当を離れてからもその学生との交流は続いた。》
《数年後、私が大阪本社に転勤していたとき、彼から朝日新聞記者として入社が決まった」と連絡があった。大阪に行く用があるとのことで、一晩、千里ニュータウンのわが家に招き、合格のお祝いをすることになった。そのとき、彼がしみじみと言った。大学4年生のときと次の年、私がいた毎日新聞を受験しようとしたが、経営難で採用中止のためチャンスがなかった。このため朝日新聞を受験し、合格したのだという。面接では本来、毎日新聞希望だったことなどを包み隠さず打ち明け、私から取材された経験なども話したという》
http://blog.goo.ne.jp/kazupiro2011/e/620b9fdf89add8f21374b5764e6b1809

                                                                                                          • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎京大iPS細胞研究所助教が発表した論文にデータの捏造などの不正があった問題について、共同通信が1月25日に配信した「山中氏、科学誌創刊に深く関与か」と題された記事が、同日夜までに「山中所長が全額寄付」と題された別の記事に差し替えられた。
https://this.kiji.is/329123813377803361
当初の記事では不正論文が投稿された科学誌の創刊に山中氏が深く関わっていたことが報じられていたが、これが訂正や修正の告知もないまま同じURL上で全面的に書き換えられ、科学誌についての言及は後段で《山中氏は現在この科学誌編集委員の一人だが、既に不正問題とは関係なく理事長を退任している》と触れる程度に改められている。複数の研究者や大学教授などから「教授が科学誌の創刊に関わることは不思議なことではない」など、記事内容が論文不正事件と関係しないとの批判がTwitter上で上がっていたことを受けたらしい。共同通信は『ITMedia NEWS』や『BuzzFeed NEWS』の取材に対し《新たな要素を加えて記事を差し替えました。編集上、必要と判断しました。その他についてはお答えは控えさせていただきます》と回答。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1801/26/news120.html
https://www.buzzfeed.com/jp/kensukeseya/kyodo-ips-1?utm_term=.jwQ53y3Yj#.mop15Z5XO

毎日新聞に載った野中広務の訃報にあったコメントに、小川和久が噛みついていた。
野中広務さんが亡くなって、毎日新聞に「親交のあったジャーナリスト」のコメントが載った。「『普天間飛行場の移設問題では沖縄中を歩き回り、酒を酌み交わしながら県民の話に耳を傾けた』と悼んだ」 とある。よく言うよ。野中さんは酒を飲まないんだよ。親交があれば知っているはずじゃないの。》
https://twitter.com/kazuhisa_ogawa/status/957135370063237122
コメントの主は田原総一朗だ。さっそくtogetterに「まとめ」が立っていた。
https://mainichi.jp/articles/20180127/ddm/041/010/138000c
https://togetter.com/li/1193791

小学館は各少女マンガ誌の通販サイト「ブルームアベニュー」を29日にオープンした。『Sho-Comi』『Cheese!』『プチコミック』など各誌関連のグッズを販売。オープン当初から萩尾望都ポーの一族」の絵皿3種類を各柄100枚限定で販売するなどの企画も盛り込まれている。
https://bloomavenue.jp/
http://flowers.shogakukan.co.jp/news/news_20180128b.html
https://natalie.mu/comic/news/267164

◎2000年代の「まとめサイトブーム」以来の老舗格だった大手まとめサイトあじゃじゃしたー」が26日限りで閉鎖。同日に管理人が自身のTwitterアカウントで《ブログ閉鎖です》《移転もないし復活もしません》と突如表明した。ニュースサイトの『秒刊サンデー』が《まとめサイト終焉の始まり?》と、これを報じている。
https://twitter.com/ajyajya/status/956897622769336320
http://www.yukawanet.com/archives/5324088.html

◎『ニュース女子』の沖縄報道問題を問い続け、現在も東京MX本社前で抗議活動を続けている「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」が27日夜に都内文京区で同問題についてのシンポジウムを開催。MX出身の白石草(OurPlanet-TV代表理事)やジャーナリストの安田浩一らがパネリストとして登壇。約170人が参加した。白石は壇上、MXについて「きちんと考査できる体制になっていない」「番組の約半数は持ち込みだ。意見が分かれていたり、深掘りが必要だったりするテーマは持ち込みは駄目だという世論をつくるべきだ」などと発言。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-654670.html
私(岩本)も会場にいたので補足すると、白石は他にも「MXはDHCの代理店業務も行っている」「MXの役員にDHCの社長と極めて親しい人物がいる」「局内にこうした件についての問題意識を持てる人間がほとんどいない。経営判断も後藤(亘)会長にほぼ任せきり」「MXでは3月編成がぎりぎりまで決まらないので(番組の改廃についての判断に影響を与えるには)今が最後のチャンス」などの発言を行っていた。

◎第158回芥川賞受賞者の若竹千佐子と石井遊佳はデビュー前、同じ「小説講座」に通っていた。講師を務めているのは『海燕』『野性時代』の元編集長・根本昌夫。早稲田大学在学中から早稲田文学編集室のスタッフとして活躍。島田雅彦よしもとばなな小川洋子角田光代のデビューにも立ち会ってきたという実績の持ち主。『[実践]小説教室』(PHP新書)などの著書もある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018012802000136.html
https://www.php.co.jp/fun/people/person.php?name=%E6%A0%B9%E6%9C%AC%E6%98%8C%E5%A4%AB
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/38533

◎大規模見本市の会場として知られる東京ビッグサイトが、2020年の東京五輪に合わせて前後20ヶ月間は放送施設として活用されるために見本市の開催が不可能となり、参加企業である多くの中小企業にとっての死活問題につながりかねないとの問題を指摘してきた日本展示会協会などが、1月25日発売の『週刊新潮』『週刊文春』にカラー見開き2ページの意見広告を出稿した。『週刊新潮』ではセンター見開きに掲載されていた。
http://cc.nittenkyo.jp/?e=5r4sFt4SwN4qp2ZUUb6
https://twitter.com/2020eventtokyo/status/956834458849591297

◎ジャーナリスト・清水潔による『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』(新潮社・2013年刊)からの盗作疑惑が指摘され、新潮社からも17日に配信中止の申し入れを受けていたAmazonドラマ『チェイス』は19日に第6話が配信されたものの、26日に配信される予定だった第7話(最終話)は依然として配信されないまま。続きを期待していたユーザーからは不満の声も上がっている。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/01/27/kiji/20180127s00041000170000c.html
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/28/news018.html

◎『月刊Hanada』(飛鳥新社)編集長の花田紀凱が、小川栄太郎『森友加計事件 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社刊)の出版広告が、同書の件で係争に発展した朝日新聞を含めた各新聞社から掲載拒否されていることを「これは言論弾圧につながる」と告発。
《訴えられると、その本の新聞広告ができないのだ。各新聞社には新聞社ごとに広告掲載基準というものがあることは知っていた。しかし、その中に「係争中の本の広告は不可」という項目があることは知らなかった。別に談合したわけでもないだろうが、各社に広告掲載を断られた、これは痛い》
https://news.yahoo.co.jp/byline/hanadakazuyoshi/20180127-00080943/

◎同じく花田紀凱が、古巣の一つであるKADOKAWAの「東所沢本社移転計画」に疑問を呈示。
《現在の千代田区富士見の本社ビルは貸しビルにし、角川書店としては超高級レストランを経営――》《こう書くといいことづくめのようだが、そういう体制でいったい出版産業の栄養源ともいうべきいい企画が生まれるのかどうか》
https://news.yahoo.co.jp/byline/hanadakazuyoshi/20180127-00080941/

◎かつて川勝正幸らと共に編集プロダクション「川勝プロダクション」を立ち上げ、その後も渡辺祐の編プロ「ドゥ・ザ・モンキー」などを通じて雑誌や書籍に関わり続けてきた編集者・辛島いづみの近頃のつぶやき。
《『ビックリハウス』と『宝島』が愛読誌だった高校生の頃。近所で入手できず父に東京の本屋で買ってきてとお願いしていた。ある日帰宅した父が「オマエの雑誌はもうなくなるぞ」。『ビックリハウス』は最終号。表紙には「いつまでもあると思うな本と親」とあった。いま私はそんな気持ちで雑誌を作ってる》
https://twitter.com/iedenodrippy/status/956723871930974214

◎『世界遺産の森 屋久島』(平凡社新書)のほか、写真家として数々の作品を手掛けてきた青山潤三は今年で70歳。現在は時々帰国しながら中国に在住し、日本を離れた事情と、急速な勢いで変貌しつつある中国内陸部の模様を『現代ビジネス』で綴っている。
《この原稿を書いている今も、必死で考えています。明日の便で香港に向かおうか、もうしばらく日本に留まるか。手元の現金は5000円を切りました。次に原稿料が振り込まれるまでの2週間、5000円でしのぐのは不可能です。
しかし中国に行けば、5000円あれば十分に暮らせる(飛行機代は、現地に住む中国人のアシスタントMにとりあえず借りる)し、仕事も進めることができます。筆者が日本で借りているアパートには、シャワーも炊飯器もないけれど、中国の拠点には大抵の生活必需品が揃っています。3万円あれば、1カ月は余裕で暮らせる…。
ということで、中国に行く「真の目的」は、ぶっちゃけた話、生活費が安いからなのです》
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54258

◎24日に行われたNHKの定例放送総局長会見で、同局の木田幸紀放送総局長は有料動画配信サービスのHuluが年末の『紅白歌合戦』に出演した安室奈美恵の「舞台裏映像」を独占配信したことについて、紅白の舞台裏撮影は子会社のNHKエンタープライズ(NEP)に委託しており、そのNEPが今回は安室の密着ドキュメントをずっと作ってきた制作会社に委託した……などと再度の説明。Huluが公式サイトで自社で撮影したとの趣旨を述べていることについては「向こう側の認識が違うのではないか」としたそうだ。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201801240000536.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp

テレビ山梨で放送事故。24日夜23時35分ごろから約40分間、放送機器の故障により映像や音声に乱れが生じ、県内全域の約29万世帯に影響が出た。
http://www.uty.co.jp/topics/info.php?no=1223
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26129580V20C18A1CR8000/

◎東京・大塚に56席のミニシアター「シネマハウス大塚」が開館。正式オープンは4月7日だが、それまでの期間「ホールお試し期間」として様々な団体や個人に開放しているそうだ。2月7〜9日には映画監督の比呂啓が収集した各国の王室、国家元首、首脳の肖像画コレクションを、大塚の上映スペースという政治的意味合い"ゼロ"の場所で公開するという「”ゼロ”プロパガンダン展」も開催。小川和也や綿井健陽など、映画監督や作家を招いてのトークショーも行うそうだ。
https://www.facebook.com/events/2002513686683673/
https://www.facebook.com/cinemahouseotsuka/