【文徒】2017年(平成29)年3月14日(第5巻48号・通巻977号)

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1)【記事】DeNAがキュレーションサイト再開を「白紙」と断言。事実上の撤退宣言?
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】DeNAがキュレーションサイト再開を「白紙」と断言。事実上の撤退宣言?(岩本太郎)

DeNAのキュレーションサイト再開は「白紙」に戻ったのだそうだ。昨年末の『WELQ』に端を発した一連の不祥事に関して、第三者委員会による調査報告書が発表されたことを受けて13日に開かれた記者会見の席上、創業者の南場智子は次のように述べた。
《再開ありきではなく、どのようであれば、問題を起こさないサービスか検討を進めてきた。事実として、多くのユーザーが楽しんでいたサービスもある。復旧をしないのかというお声もたくさんある。(略)しかし、同じ形で再開することはあり得ず、どのような形ならありえるのか。メディア型にしても、編集体制、校閲体制、教育体制。社外の専門家にも聞くと、非常に奥の深いものであって、経験のない我々が形だけ整えてできるものではない。再開の目処が立っていない。いわんや、収益の柱などとするのはあり得ない》
https://www.buzzfeed.com/daichi/dena-namba?utm_term=.jnELVnG3e#.qiPoRPMAE
一方、調査結果が出たことを受けて南場は代表取締役に復帰。CEOの守安功の2人を代表取締役とするツートップ体制を敷くという。『MERY』以外の9サイトの責任者として、この間“主犯”のように目されてきた執行役員村田マリ執行役員は退任(DeNAには今後も在籍する)のほか、『MERY』運営母体のペロリ(DeNAの子会社)の代表取締役だった中川綾太郎と共に同社の取締役も辞任する意向を示したという。
https://japan.cnet.com/article/35097992/
また、著作権侵害の問題については以下のような見解だった。
《同社は現在、自社サイトで著作権侵害などの問い合わせを受け付けている。これらには補償も考えるとしているが、問い合わせのない事案について「画像ならどれが著作権侵害になるか、著作権者が誰なのかや連絡先をどう特定、判断するか非常に難しい」と守安社長は説明。問い合わせを受け付けている点を広く認知してもらうのが現状で最善と述べるにとどめた》
https://thepage.jp/detail/20170313-00000016-wordleaf
自分たちだけでの対応は難しく、キュレーションサイトの再開は白紙で「収益の柱にする気はない」。そして創業者は代表の座に戻る一方で、サイトの責任者だった人物2人は揃って退任――。問題が表面化してから既に約3カ月、DeNAの退場で俄かにぽっかり空いた市場に、既に既存マスメディアなど他のプレイヤーたちが参入に向けた準備を進めつつある中でのこの表明は、キュレーションサイトからの実質的な撤退宣言だったのだろうか。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

DeNA騒動に象徴されるネット上でのパクリ問題を精力的に追求してきた『BuzFeed』(日本版)は、一方でネット広告の特性を活かした事業展開にも意欲的に取り組んでいる。昨秋からはいわゆるネイティブ広告の一種である「スポンサード・コンテンツ」の販売も開始した。バズフィード・ジャパン社長の上野正博は毎日新聞のインタビューに応えて、年内に人員を現在の50人から70人まで増強する一方、広告面でのさらなる強化を図る意向を明らかにしている。
http://mainichi.jp/articles/20170309/mog/00m/040/004000c

◎承知の通り東京国際ブックフェア(TIBF)は今年の開催を休止することを決めた(2018年9月に開催の意向)。これについて『EBook2.0 Magazine』が「デジタルを嫌う出版社を素通りする市場」と題し、やはり1月の開催が最後になりそうなニューヨークのDigital Book World (DBW)と《直接の比較には無理がある》としつつも辛辣に言い切った。
《とはいえ、日本の場合は、電子出版EXPOがBFを支えるようになっていたし、一時は多くのスペースを占めていたほどだ。BFが開けなくなったのは、「電書」が方向性を失った結果だろう。2012年に始まったはずの日本の「電書紀元」は5年で終わり、大地震にも揺るがなかったブックフェアは休止に追い込まれた。わが国の出版の支柱であるマンガ市場がデジタルに移行しつつある中で、これは両方を捨てるようなものだ》
《出版業界は、エージェントよりも著者、読者と向き合わねばならない。書店の衰退、いまや全フォーマット市場で過半を占めるアマゾン・チャネルの拡大とともに出版ブランドの価値は低下している。DBW(あるいは電子出版EXPO)のような専門イベントは、「背水の陣」にある出版業界こそが有効に使うべき場だ。なぜなら「デジタル」はE-Bookという「新フォーマット市場」をめぐる問題などではなく、社会のデジタル転換のさ中にある出版の未来に関わることだからだ》
http://www.ebook2forum.com/members/2017/03/the-market-bypassing-traditional-

◎『週刊文春』での「ユニクロ潜入取材」が話題を呼んだジャーナリストの横田増生に、『Exite Bit』が「なぜ名前を変えてまで取材するのか」「何が潜入取材に駆り立てるのか」とロングインタビュー。一連の取材は今秋をめどに文藝春秋より単行本化されるとのことだが、本人は今後について《潜入取材はしんどいんですよ。僕も50歳過ぎてますし、そろそろ若い人に任せたいです(笑)》とのこと。
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1488794690490.html

◎例の『ニュース女子』で司会を務めた東京新聞長谷川幸洋が、会社から3月1日付の人事で論説副主幹から論説委員へと降格されたことについて10日付の『現代ビジネス』で怒りの告発。これまで1ヵ月半に1度くらいのペースで担当してきた同紙コラム「私説」用に書いたものの会社からボツにされたという原稿「東京新聞の事なかれ主義」の全文を掲載しつつ《なぜ、東京新聞はこんなトンチンカンな対応をしたのか》と、舞台裏で体験した出来事について述べている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51173

◎「琉球新報沖縄タイムスを正す県民・国民の会」の「代表運営委員」だという我那覇真子のツイートによれば、3月26日には「東京MXTV問題の本質:辛淑玉氏等在日朝鮮人による反日反米工作を糾弾する国民集会」というのが行われるらしい。一方でMXTVを『ニュース女子』で批判している側も19日に文京区内で集会を開催する予定である。
https://twitter.com/ganaha_masako/status/840193904943149056

中川淳一郎が沖縄まで行き、高江や辺野古における反対運動の現場に足を運ぶなど現地の実情を見てきたそうだ。《これまでの沖縄記事を全部撤回したい気持ちになったし、もっと言うと、ほぼ全部の記事を撤回したい気持ちになった》とのこと。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51162

◎元・北海道警察釧路方面本部長(警視長)で、現在はジャーナリストとして北海道警察の裏金疑惑など様々な警察不祥事を追及し続けている原田宏二が、『東洋経済オンライン』で「なぜ記者クラブは警察批判ができないのか」を、警察官として取材を受けた経験もまじえながら具体的に述べている。
http://toyokeizai.net/articles/-/161573

◎その原田の記事の中にも名前が出てくる札幌の地元月刊誌『北方ジャーナル』と、同誌に執筆するフリーライターの小笠原淳は、新聞やテレビが報じない警察官の不祥事や違法行為への追及を続ける稀有の存在だ。ジャーナリストの清水潔(一昨年に日本テレビで「南京事件」のドキュメンタリーを手掛けて話題を呼んだ)が『文春オンライン』で紹介している。
http://bunshun.jp/articles/-/1690

◎「3.11から6年」企画には各媒体とも力を入れていたが、東北に編集部を一時移転する『クーリエ・ジャポン』は、震災で極限状況に置かれた被災地において「壁新聞」という形で新聞発行を続けた石巻日日新聞の当時の報道部長・武内宏之を訪ねて話を聞いている。
http://courrier.jp/blog/79417/

◎一方、被災地の模様を写真で収録するなどして脚光を浴びたネット上の震災アーカイブだが、その後の5年間で約6割がURL変更などによってアクセスできなくなったという。
震災アーカイブ「みちのく震録伝」を運営する東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授によると、権利処理などのコストを含めて写真1枚の保存に1000円かかるといった実態もあるとか。『withnews』がレポートしている。
http://withnews.jp/article/f0170312001qq000000000000000W00j10701qq000014817A

原発被災地取材にあたっているライターからも「なぜこれが署名記事じゃないの?」との声が上がった、Yahoo!ニュースの福島ルポ「東電は許せない。しかし…」。福島復興本社代表を務める東京電力の副社長と、震災で家族4人を亡くした南相馬市在住の44歳の農民との間に立場を超えていつしか生まれた交流を中心に描いている。
https://news.yahoo.co.jp/feature/534

福島第一原発からの20kmラインのすぐ内側の山中で、事故後も今日に至るまでずっと数百匹の動物たちと一緒に暮らしている坂本恵悟は「20Km圏内」の実態を住民の立場で現地から6年間発信し続けてきた稀有な人物だが、今年の3月11日、彼のもとにはマスコミ関係者を含めて誰も訪ねてこなかったそうだ。
https://twitter.com/keigo19550918/status/840469992927723520

那覇市出身で、東京との間を往復しながらPRやコミュニケーションを支援する会社を運営している女性・吉戸三貴が、かつて大学進学で最初に東京に出てきて挫折した際の経験も踏まえつつ書いた著書『内地の歩き方 沖縄から県外に行くあなたが 知っておきたい23のオキテ』を1月に上梓した。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/87193
http://www.borderink.com/?p=18740

京都市東山区京阪本線清水五条駅から徒歩10分の路地裏で月末の土日2日間限定でオープンする「只本屋」は、地元の美大などに通う講師や大学生が運営するフリーペーパー専門店。取り扱うフリーペーパーの数は800〜1000。学生、社会人を問わず日本全国からの持ち込み依頼が絶えず、利用客も外国人を含め、多い時は1日300人に及ぶそうだ。
http://tadahon-ya.com/
http://mainichi.jp/articles/20170310/dde/012/070/006000c

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