【文徒】2017年(平成29)年3月15日(第5巻49号・通巻978号)

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1)【記事】「付録」について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「付録」について

リクルートマーケティングパートナーズのマタニティ情報誌「妊すぐ」春号の付録は北欧ブランド「Helmi」の「アルバム」「大判ポーチ」「マタニティチャーム」。リクルートは紙の雑誌は付録重視だ。デジタルメディアはモノを付録とすることは逆立ちしてもではない。
当たり前のことだが、とても重要なことである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000268.000010032.html
集英社の女性ファッション誌「BAILA」4月号の付録は「オデット エ オディール X BAILAコラボポーチ&ヘアゴムセット」。
https://baila.hpplus.jp/blogs/kato_wakako/9783
かつて婦人誌や少年誌が付録を競い合ったが、今や「付録戦争」の中心は女性誌だ。先行したのは周知のように宝島社だった。最初はトートバッグが多かったが、付録の内容は多岐に及ぶ。
宝島社の「リンネル」5月号の付録は「サリー・スコット」のマルチケースとミニレターセットが予定されている。宝島社の女性誌は付録によって支えられている側面があることは否定できまい。「SPRiNG」5月号はスローブ イエナの「リール付きパスケース & ストラップ2本セット」、「オトナミューズ」5月号はCOACHの「大人のステーショナリー 5点セット」、「GLOW 」5月号はツモリチサトの「猫の6ポケットバッグ」といった具合だ。
宝島社の付録戦略に真っ向から立ち向かっているのが集英社女性誌だろう。「ノンノ」5月号の付録は「JILLSTUARTジルスチュアート メイクケース」が予定されているらしい。また「シュプール」5月号は「LeSportsac オリジナル トリコロール トートバッグ」、「マキア」5月号は「オバジC セラム、新ベースメイク」と「毛穴消し美肌ブラシ」、「モア」5月号はsnidel スナイデルの「ピンクフラワー BIGトート」を予定しているようだ。
小学館も「CanCam」のテコ入れをはかるべく、5月号ではOTTI CANDY FACTORYの「虹色わたあめポーチ」を付録に予定しているし、講談社の「with」5月号は通常ミラ オーウェン オトナの「レザー調 トート」が付録として予定されている。しかも「with」は二色用意している。一人で二冊買う読者も想定しているのかもしれない。また「ヴィヴィ」5月号の付録は「jouetie」のミニウォレットだという。
女性誌の読者にとって付録は一大関心事であり、「雑誌付録・発売予定表【随時更新】 - 雑誌付録ダイアリー」や「ききらら 雑誌付録レビュー」「雑誌付録ラボ」といったWebサイトが存在し、人気を集めているのだろう。
こうしたWebサイトを見ていると、光文社やマガジンハウスの女性誌は付録に禁欲的なことも理解できる。
http://furoku.info/schedule/
http://kikra.ldblog.jp/
http://furoku.org/
付録は雑誌の原価高に直結し、出版社から体力を奪うことでも知られている。こういう言い方も可能である。宝島社の付録戦略は、人件費が抑制されているからこそ可能なのであり、また集英社の付録戦略は「少年ジャンプ」が莫大な利益を上げていればこそ可能なことだと言っても良いだろう。
そうは言っても付録は歴史的に雑誌文化の重要な一翼を担って来たし、デジタルシフトの時代においては紙の雑誌ならではのキラーコンテンツでもある。付録をどう位置付けるかは出版社にとって重要な問題である。更に雑誌業界として、付録付きの雑誌は法定再販商品として適格なのかどうか、明らかに紙の印刷物が従となるような商品がISBNコードを取得することは妥当なのかどうかといったことも本当は考えなければならないのではないだろうか。

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2)【本日の一行情報】

◎扶桑社から刊行された「夫のちんぽが入らない」(こだま)が4刷13万部。担当編集者は「単にタイトルの話題性で売れた本みたいな扱いになるのは悲しい」と言うが、このタイトルが最大の勝因であることは間違いあるまい。
http://bunshun.jp/articles/-/1657

◎日販は「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2017」のランキング上位10作品を発表した。
1位:「ヤリチン☆ビッチ部」(おげれつたなか/幻冬舎コミックス
2位:「ひだまりが聴こえる」(文乃ゆき/プランタン出版)
3位:「ペンデュラム−獣人オメガバース−」(羽純ハナ/フロンティアワークス
4位:「囀る鳥は羽ばたかない」(ヨネダコウ/大洋図書
5位:「マウリと竜」(元ハルヒラ/リブレ)
6位:「ジャッカス!」(スカーレット・ベリ子/新書館
7位:「春風のエトランゼ」(紀伊カンナ/祥伝社
8位:「クロネコ彼氏のあふれ方」(左京亜也/新書館
9位:「カーストヘヴン」(緒川千世/リブレ)
10位:「MODS」(ナツメカズキ/東京漫画社
http://www.nippan.co.jp/news/osusume_bl_2017/

◎「#俺マン2016」のデータをもとにした無料小冊子「ツイッターユーザーが惚れた200冊」が日販の協力のもと、全国450店舗超の書店に配布される。「俺マン」の第1位に輝いたのは高野ひと深私の少年」(双葉社)と梶本レイカ「コオリオニ」(ふゅーじょんぷろだくと)。
http://oreman.jp/news/11166/

西尾維新の小説で、「荒川アンダー ザ ブリッジ」「聖☆おにいさん」のマンガ家である中村光がイラストを担当する「十二大戦」(集英社)がテレビアニメ化されることになった。
http://anime.eiga.com/news/104262/
ラノベからアニメへという手法はKADOKAWAの最も得意としているところ。そんなKADOKAWA流に西尾維新というビッグネームをもって集英社が挑むということだろう。

◎こちらはKADOKAWA流そのもの。シリーズ累計818万部突破の電撃文庫キノの旅」が再びテレビアニメ化される。もともと、このKADOKAWA流の原点はメディアワークスにある。メディアワークス角川書店を呑み込んでKADOKAWAとなった、そう私は考える。「電撃大王」連載のショートコメディ漫画「三ツ星カラーズ」のアニメ化も決定したそうだ。
http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1489307831

朝日新聞出版は新健康ライフスタイル誌「Re ライフマガジン ゆとりら」を創刊した。季刊を目指すのかな?
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000175.000004702.html

鹿島茂の「神田神保町書肆街考  ─世界遺産的“本の街”の誕生から現在まで」は私のように神保町で働く者にとって必読である。現在、神保町にある書店、出版社で最も歴史が古いのは有斐閣である。有斐閣の創業は明治10年。本書の定価は4200円+税と張るが装丁はソフトカバーである。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815323/
「在庫切れ中」となっているのが嬉しい。

講談社Yahoo!ブックストアが2014年6月より共同運営し、月額300円(税別)で読めるコミック配信サービス「女子コミ!」で10話連続閲覧1位となった浜名杏の「兄とあんこの恋みくじ」が単行本化された。
https://special-bookstore.yahoo.co.jp/event/joshicomi-anitoanko.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000604.000001485.html

高梨沙羅の兄はTBS。
http://www.asagei.com/excerpt/76763

◎それにしても凝った箱入りの装丁だ。新潮社から刊行された松浦寿輝の「名誉と恍惚」。税も入れると5400円にもなる。内容は1930年代の上海を舞台にしたハードボイルドであり、冒険小説と言って良い。通を唸らせる映画的知識や音楽的知識が過剰なまでに散りばめられているところは、ジル・ドゥルーズに学んだ松浦らしさと言うべきか。
http://www.shinchosha.co.jp/book/471703/
文学部唯野教授」の筒井康隆が絶賛している。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170228-00526950-bookbang-ent

◎「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞は「週刊文春」の「ベッキー31歳禁断愛 お相手は紅白初出場歌手!」に決定した。スクープ賞、話題賞、作品賞も「週刊文春」は獲得している。他の雑誌は獲得できても一つなのに!「週刊ポスト」は写真賞を獲得したが、「週刊現代」は無冠に終わった。
http://www.asahi.com/articles/ASK3F53V5K3FUCVL02B.html

◎私も元木昌彦と同じ印象を持った。
「現代の巻頭は『上げ上げの日本経済』と銘打ち、ついに春が来た、株価は2万円どころか3万円にと、なんの根拠もない浮かれ記事をやって、一人で酔っているようだ。
 トランプの120兆円公共投資で日本企業はウハウハ、賃金が上がる、給料も上がると一人酒盛り状態だが、勝手に浮かれとれ!」
http://www.cyzo.com/2017/03/post_31909_entry.html
最近では「フライデー」のほうが週刊誌っぽいものなあ。

主婦の友社から発売されたフランス発の絵本「おむかえパパ」が重版。アメリカ・メキシコなど世界6カ国で翻訳されている絵本だが、日本版の翻訳は日本の男性保育士資格取得者の第一号であり、絵本作家、シンガーソングライターとして活躍する中川ひろたかだ。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/newsrelease/11069/

◎昨年、「村に火をつけ、白痴になれ、伊藤野枝伝」(岩波書店)におけるノリノリの語り口で読者を魅了した栗原康が一遍の自伝に取り組んだ。河出書房新社から刊行された「死してなお踊れ」がそうだ。今度もノリノリ。まず書き出しからして度肝を抜く。
「わたしはセックスが好きだ。テクニックはない、うまいもへたも関係ない。たがいに素っ裸になって、精液唾液をたれながす。そんなセックスが好きだ」
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309247915/

◎TSUTAYA運営会社CCCが徳間書店の子会社化検討という。徳間は数年前から財務的にCCCの支援を受けてきただけに規定路線といえるだろう。CCCとしては阪急コミュニケーションズ(現CCCメディアハウス)や美術出版社など同様に版元を直接コントロールすることになる。
問題は、焼け跡闇市時代を発祥とする徳間の遺伝子をどう考えるかだろう。「アサヒ芸能」の"アサヒ"というパチモン臭さがいいんだよね。徳間康快の「二流にたえることは一流になるよりむずかしいことである」は金言だ。
http://www.asahi.com/articles/ASK3G54BKK3GULFA01T.html

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3)【深夜の誌人語録】

努力は力なり。