【文徒】2016年(平成28)年12月20日(第4巻237号・通巻924号)

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1)【記事】DeNAのサイトで記事を書いた“1円ライター”は「事後に検索して初めて自分の記事が載ったのが『WELQ』だと知った」と証言
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.12.20.Shuppanjin

1)【記事】DeNAのサイトで記事を書いた“1円ライター”は「事後に検索して初めて自分の記事が『WELQ』に載ったと知った」と証言(岩本太郎)

DeNAパクリ騒動では、徐々にそのDeNAが運営していたキュレーションメディアで仕事をしていた「1円ライター」たちによる告発も出てきている。毎日新聞では18日付で、アニメ情報サイトの『PUUL(プウル)』で仕事をしていたという男性に取材した記事を配信した。《ネット上の仲介業者を通じて1文字0.5円で受注した。経験などは問われなかった》というその30代の男性は以下のように述べている。
《問題の発端になった医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」でも、医師のブログの一部が勝手に使われ、誤った情報が加筆されていた。DeNAにはこうした原稿をチェックする編集部機能もなかった。 (略)DeNAは閲覧数を増やすため検索エンジン最適化(SEO)と呼ばれる手法を採用。文中に検索頻度の高い単語を入れて、記事が検索結果上位に表示されやすくしていた。これにより閲覧数が増え、DeNAの広告収入が増える、という仕組みだ。
男性も、DeNAから文中に入れる単語を指定され、「(同じ語で検索した時に)結果の1ページ目に表示されるサイトに掲載された情報や要素は網羅的に入れてほしい」と指示を受けていたという。
ライターは検索上位記事を参照するが、男性が証言するような過程で書かれたサイトの記事が多い。間違っていたり、つぎはぎされたりした情報を参照した記事が次々に再生産されることになる。男性は「正確性からはどんどん遠ざかると思った」と話す》
http://mainichi.jp/articles/20161219/k00/00m/040/023000c
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161218-00000034-mai-soci
同じく18日付の記事で『ねとらぼ』は、今回の一連の騒動の発端となった『WERQ』で記事を書いていたというライターに取材している。もっとも、その《これまで週刊誌などに寄稿してきた》というライターによると、自分が書いた記事が掲載されるのはどの媒体なのかを、仕事を頼んできたクラウドソーシングサイト(ランサーズとクラウドワークスの大手2社と2014年後半から契約していた)のディレクターが「それは言えない」と教えてくれなかったため、事後に自ら検索のうえ探してみて初めて『WELQ』だったと知ったのだそうだ。そのうえで彼は今回の問題についてはDeNAだけでなくそうしたクラウドソーシングサイトも共犯であると指摘する。
《ディレクターとはクラウドソーシングサイト側の編集スタッフのような感じでしょうか。20代から30代前半の人がメインで働いているという印象でしたが、中にはインターンと呼ばれる大学生もいました。そのディレクターが私たちライターに指示を与えるんですが、とにかくムチャぶりが多く、ライターを人扱いしていないようなディレクターも少なくないような印象でした。(略)
突然ディレクターがいなくなって別の人が現れたりする場合も非常に多いです。そうなると引継ぎされていない情報が多かったりして大変ですし、「明日までに50本の記事を書いてもらえないか」といったありえない仕事量を平気で要求してきたりします。おそらく抱えている案件とディレクターの人数が釣り合わず、仕事がパンクしているのだと思います》
《資料を確認したところ先ほどのような医療系の記事単価は1000文字で1600円、つまり、1文字1.6円です。さらにそこからクラウドソーシングサイトに手数料として20パーセント引かれてしまいますから、手元に入るのは1280円です。もう少しライトな美容系の記事だと1文字1円でしたね》
《それは(引用注:そこで記事を書いた)ライターにも責任があると思います。しかし原稿料は1280円です。さらにもしその記事が100万PVを達成しても報酬は変わりません。ですから感覚としては、責任がとれるのは1280円分という認識でした。それに私たちは、どの媒体で記事を書いているのかも知らされないんです》
《しつこく「どこの媒体の記事なのか」をディレクターに聞いても「それは言えない」と教えてくれませんでした。結局私は自分が書いた記事のテキストファイルを残しておいて、後日検索してみたらWELQだったと分かりました。こういうことがあるので、ライターはどういうトーンで記事を書けばいいのかが分からないんです。今回の騒動になるまでWELQの記事を書いていたと知らなかった人や、今も自分がWELQの記事を書いていたと知らないライターもいると思います》
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1612/13/news140.html

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎なおも労使間協議が続く中でKKベストセラーズは来年“創業50周年”を迎えるのだという。ただし同社を1967年に創業した岩瀬順三が1986年に52歳で死去した後、混乱の中で実権を掌握した会長(先日退任したと労組側は発表したが)の栗原幹夫は社史30年説を唱えているようで、同社公式サイトに記載されている設立年月日も「昭和61年12月3日」と記されている。登記上は確かに、今の会社そのものは1986年設立ということになっているらしい。
http://www.kk-bestsellers.com/company/
そうした中で同社労組「KKベストセラーズユニオン」の有志は12月22日に某ホテルにおいて、同社の50周年の“正史”を飾るべく「岩瀬順三研究会」を立ち上げるのだそうだ。来年にはシンポジウムなども企画しているという。
http://ameblo.jp/thebestblack/entry-12229036000.html

◎「不時着」か「墜落」かで揉めている14日の沖縄でのオスプレイ事故では、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官が語ったとされる「県民、あるいは住宅や人間に被害を与えなかった。感謝されるべきだ。表彰ものだ」という言葉についても、《「Should be thankful that there was no damage」は「神に感謝すべき」と訳すべきで、米軍に対してではない》とのツイートが流れたのを発端に、「意図的な誤訳なのでご注意」などという別のツイートとともに誤訳説が拡散。朝日新聞が意図的に誤訳したといった説も出回った模様。
http://www.moeruasia.net/archives/49076629.html
それに対して「誤訳説はデマ」とする打消し情報も広がるなど、ネット上では混乱が生じたようだ。
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/osprey-crash-in-okinawa-debunking?utm_term=.um31JwL2o
ただ、ニコルソン調整官の件の発言は米軍に抗議を行った沖縄県の安慶田光男副知事が後に発言した中にあったものだが、上記の英語による原文(?)についてはソースがないらしい。『BuzzFeed News』の取材に対して沖縄県基地対策課の担当者は《「会談は非公開ですし、なぜ英文が出回っているのか、私どもとしてわからない」と説明した》そうだ。一方で最初に誤訳説をツイートした投稿者は《「沖縄副知事が確かに発言しているので、朝日新聞に謝罪します」とツイートしている》とか。

◎フォトグラファーの有賀正博は12月2日付の自らのブログで、同ブログに掲載していた写真を無断で使用した8つのサイト(キュレーションメディア5つを含む)に対して料金の請求書を送り、1社を除く全てのサイト(DeNAのサイトを含む)より使用料金の支払いを得たことを報告していた。17日付の続報によると、払わなかった1社とは「NAVERまとめ」を運営するLINEだったそうだ。
https://www.photo-yatra.tokyo/blog/archives/11079
https://www.photo-yatra.tokyo/blog/archives/11164

◎例のASKAのタクシー車内映像の流出は「フジテレビから求められたものだ」と報じたのは、タクシーやハイヤー、バス業界を対象とする専門誌の「東京交通新聞」12月12日付「ASKA容疑者ドラレコ映像流出 『責任負う』フジTV求める」という記事だった。同記事をもとにした『ねとらぼ』からの問い合わせに対し《取材の詳細についてはお答えしておりませんが、正当な取材活動の範囲内で、ご指摘の映像を入手しております。執行猶予中の容疑者の逮捕直前の映像であり、公共性・公益性があると判断し放送いたしました》と回答。映像を流した当のタクシー会社にも取材を申し込んだものの、《取材の申込みは多数受けているが、全て断っており、回答できない》と言われたそうだ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1612/16/news133.html

◎元『週刊文春』記者でジャーナリストの中村竜太郎が17日に放送された番組『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)に出演。江川紹子との対談の中で「一番失敬だなと感じるのは、入魂のスクープを出したんですけど、テレビで扱われるときは『一部報道によりますと』『一部週刊誌によると』みたいな表現をされる」と、テレビが週刊誌報道を取り上げる際の扱い方を批判したそうだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/12429394/

◎2004年に東京の日本橋から新潟県南魚沼市内の宿「里山十帖」に拠点を移した『自遊人』編集長の岩佐十良が、当地で米作りをしながら雑誌の編集を続けるようになった理由、そして現在の日常について、朝日新聞で語っている。インタビュアーはジャーナリスト川島蓉子。
http://www.asahi.com/and_w/interest/SDI2016120943771.html

公益社団法人新聞通信調査会」がこの秋に実施した「第9回 メディアに関する全国の世論調査」では、インターネットでニュースを見る人が約7割と、新聞朝刊を読む人の割合と肩を並べたという結果が出たという。
http://www.j-cast.com/2016/12/17286371.html

◎「MAG2NEWS」でメールマガジン『理央周の売れる仕組み創造ラボ』を配信するマーケティングアイズ株式会社代表取締役の理央周は、日経新聞で報じられたアマゾンの新サービス「Amazon ダッシュボタン」「Amazon GO」について《まるで、三河屋さんの御用聞きのように便利だ》と評している。『サザエさん』に登場する若い配達員が働く酒屋の店名がこれだけ浸透した日本で、確かに現代の「三河屋さん」といったポジションを上記2つが将来的に獲得できたとしたら強いだろう。もっとも、ああいう勝手口から現れる近所の酒屋というのも既にだいぶ減ったようだが。
http://www.mag2.com/p/news/231098
ちなみに理央はこんなことも言っている。名古屋生まれで静岡育ちの私としては、これは当たっていそうな気がする。「名古屋流ビジネスが成功する秘訣は『売ろうとしない』こと」。
http://www.mag2.com/p/news/230301

◎そのアマゾンのイギリスの倉庫付近では従業員がテント生活を行い、アメリカの本社では従業員が飛び降り自殺を図るなど、今やアマゾンは国際的ブラック企業ともみなされているようだ。現在、約200人が会社員限定の匿名SNSアプリ「Blind」を通じて自殺未遂が起きた理由や会社の対応について話し合っているという。
http://gigazine.net/news/20161214-amazon-employees-use-blind-app/

◎かつて固定電話には電話加入権というものがあり、これを質入れして借金ができる時代があった。今ではもはやなくなった風習だが、そうした往時に誰かが設定された加入権への質権がまだ残っているために固定電話の解約ができないケースが続出している、と産経が報じている。
http://www.sankei.com/west/news/161214/wst1612140004-n1.html

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

「無理」と「無茶」と「無謀」との区別もできないまま行動するのは「無知」であり「無恥」であり「無能」であり「無責任」である。