【文徒】2016年(平成28)年12月21日(第4巻238号・通巻925号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】電通の特殊性は「悪」か
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.12.21.Shuppanjin

1)【記事】電通の特殊性は「悪」か

電通常務執行役員で新聞雑誌局を「本籍」とする藤原治は「文藝春秋」に「電通は本当に悪いのか」を発表。ここで藤原は電通の二つの特殊な企業体質を指摘している。「ユルユル体質」と「履き違えた自由体質」だ。藤原によれば「ユルユル体質」とは「通信社のDNA」ということになるが、もっとわかりやすくいえば、「新聞業界のDNA」ということになろう。電通は新聞業界を母胎にして生まれた広告会社である。
「ニュースを追いかける仕事は、製造業や小売業のように就業時間を明確に決めることは難しい。大事件が起きた日に「定時になったから帰ります」とは誰もいえない。仕事の成果が何より優先され、私生活を含めて多くのことを犠牲にするのが当然だと考える。
このカルチャーは広告専業になってからも色濃く残り、残業規制を含めた細かい管理を嫌う“ユルユル体質”になっているのだ」
「履き違えた自由体質」については、こう説明している。
「…テレビ局のような許認可事業は監督官庁に業務内容をチェックされるが、広告会社にはほとんどない。読売新聞社の顧客が約九百万いるのに対して、電通のクライアント企業は三千社前後だから誤差に等しい」「このように外部から監視の目が届かない組織だから“履き違えた自由体質”に陥るのだ。規制やルールに縛られることを嫌い、自分たちの好き勝手に行動しようとする」
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/2103
しかし、「ユルユル体質」を「柔軟性に富んだ体質」と言い換えることもできるし、「履き違えた自由体質」を「個性を縦横無尽に生かせる自由体質」と言い換えることもできるはずだ。電通の特殊性には両義性があることを理解しておく必要があるはずだ。
電通から「柔軟性に富んだ体質」や「個性を縦横無尽に生かせる自由体質」を排除してしまうと、もともとが体育会系カルチャーを土壌にしているだけに議論や異論を許さない上意下達のみが優先される官僚体質に蝕まれることになるだろう。

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

◎読売新聞の「【回顧2016】ベストセラー 角栄関連、『意外性』が人気」は次のように書いている。
「日本ABC協会の調査によると、今年上半期の調査対象雑誌(154誌)の紙での総部数は、1374万部。昨年下半期(155誌)より50万部減少した。それに対し、読み放題サービスのユーザー数は、今年上期は473万件(83誌)と、3割以上増えている」
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/news/20161213-OYT8T50008.html

◎フジテレビの社会部記者だった30代の男性社員が、暴力団関係者に車の名義貸をしていたことが発覚した。NEWSポストセブンによれば「12月19日夜に、フジテレビがその事実を公表する予定だが、12月21日発売の週刊ポストでは、フジテレビの発表に先駆けて問題の社会部記者A氏(31歳)に直撃取材を敢行しており、その詳細をリポートしている」とのことである。こうも書く。
週刊ポストの直撃取材、確認取材がなければ、フジテレビは何も発表せずに事態の収拾を図ろうとしていたのだろうか。報道機関としての姿勢が問われる問題だ」
http://www.news-postseven.com/archives/20161219_477312.html

◎映画の興行収入ランキング。
1位『君の名は。』205億円
2位『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』116億円
3位『シン・ゴジラ』81億円
4位『ズートピア』76億円
5位『ファインディング・ドリー』68億円
6位『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』63億円
7位『妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン』55億円
8位『ONE PIECE FILM GOLD』51億円
9位『信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)』46億円
10位『ペット』42億円
11位『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』41億円
12位『オデッセイ』35億円
13位『暗殺教室〜卒業編〜』34億円
14位『orange-オレンジ-』33億円
15位『007スペクター』29億円
16位『アリス・イン・ワンダーランド/時空の旅』27億円
17位『インデペンデンス・デイ/リサージェンス』26億円
18位『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』26億円
19位『聲の形』23億円
19位『デスノート Light up the NEW world』23億円
ベストテンのうちアニメ映画が7本を占める。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は実写映画として100億円を突破したのは実に6年ぶりになる。実写映画でも特撮を駆使したアニメ文化に隣接している作品がヒットしている。「普通の実写映画」は受難の時代を迎えているのだろうか。それにしても出版社のコンテンツを母胎にした作品の何と多いことか。
http://www.moviecollection.jp/news/detail.html?p=10636

◎アプリ「少年ジャンプ+」に連載されている台湾出身作家 彭傑(ポンジェー)の「時間の支配者」がTVアニメ化されることが決まった。中国の動画配信大手Youkuと、同じく出版大手ファンファン漫画によるアニメ化企画である。
https://www.atpress.ne.jp/news/118479

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載中の田畠裕基の「ブラッククローバー」がテレビアニメ化されることになった。
http://mainichi.jp/articles/20161218/dyo/00m/200/010000c

◎12月31日(土)を正月商品一斉発売日(沖縄、離島を除く)とする新たな試みが始まった。日本雑誌協会日本出版取次協会と連携して実現した。講談社小学館に比べて集英社は力が入っている。
http://www.j-magazine.or.jp/newyear2017/newyear.html
「ひとりっP」こと元「SPUR」編集長の福井由美子による「今日も世界のどこかでひとりっぷ」もそんな集英社から発売される一冊。これは買おうと思っている。
https://entabe.jp/press-release/2134533
Kindleでは「今日も世界のどこかでひとりっぷ 準備編」が無料で配信されている。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01MSZMCIB

◎「オレンジページ」読者が選ぶ暮らしのヒット商品ランキングで1位となったのはキリン「生茶」。
2位がロッテ「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」。
http://www.orangepage.net/daily/750

◎「朝日新聞出版×リイド社 時代物コミックスフェア」が書泉ブックタワー書泉グランデ・芳林堂高田馬場店で12月23日から開催される。
http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1481856516
ホント、競合よりも協働の時代だと思う。紙でも、デジタルでも競合相手との協働を模索すべきである。

小学館の「コロコロコミック」1月号は付録の魅力もあってアマゾンでは既に品切れだ。書店でも売切れ店が続出している模様である。
http://ddnavi.com/news/341091/a/

紀伊國屋書店は「キノベス!2017」を発表した。
【 1位】「翻訳できない世界のことば」(エラ・フランシス・サンダース/前田まゆみ(訳)、創元社
【 2位】「ハリネズミの願い」(トーン・テレヘン/長山さき(訳)、新潮社)
【 3位】「蜜蜂と遠雷」(恩田陸幻冬舎
【 4位】「夜行」(森見登美彦小学館
【 5位】「ガイコツ書店員 本田さん」(本田、KADOKAWA
【 6位】「また、同じ夢を見ていた」(住野よる双葉社
【 7位】「マチネの終わりに」(平野啓一郎毎日新聞出版
【 7位】「ジャッジメント」(小林由香、双葉社
【 9位】「コンビニ人間」(村田沙耶香文藝春秋
【10位】「このあと どうしちゃおう」(ヨシタケシンスケブロンズ新社
【11位】「暗幕のゲルニカ」(原田マハ、新潮社)
【12位】「家康、江戸を建てる」(門井慶喜祥伝社
【12位】「罪の声」(塩田武士、講談社
【12位】「〆切本」(夏目漱石ほか、左右社)
【15位】「文房具図鑑」(山本健太郎いろは出版
【16位】「プリズン・ブック・クラブ」(アン・ウォームズリー/向井和美(訳)、紀伊國屋書店
【17位】「みかづき」(森絵都集英社
【17位】「やがて海へと届く」(彩瀬まる、講談社
【19位】「小説 君の名は。」(新海誠KADOKAWA
【20位】「子宮の中の人たち」(EMI、KADOKAWA
【20位】「洗礼ダイアリー」(文月悠光、ポプラ社
【20位】「ジニのパズル」(崔実、講談社
【23位】「キリンビール高知支店の奇跡」(田村潤、講談社
【23位】「眩」(朝井まかて、新潮社)
【23位】「おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典」(今泉忠明(監修)下間文恵/徳永明子/かわむらふゆみ(イラスト) 高橋書店
【26位】「倒れるときは前のめり」(有川浩KADOKAWA
【26位】「村に火をつけ、白痴になれ」(栗原康、岩波書店
【26位】「明るい夜に出かけて」(佐藤多佳子、新潮社)
【26位】「テロ」(フェルディナント・フォン・シーラッハ/ 酒寄進一(訳)、東京創元社
【26位】「ジェリーフィッシュは凍らない」(市川憂人、東京創元社
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20161219124354.html
総じて納得できるランキングである。まあ、どんなランキングでもそうだが不満を言い出したらキリがない。

◎日販は、小説「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社)の映画化を記念して、全国約1,000書店にて関連書のフェアを実施している。
http://www.nippan.co.jp/news/bokuasu/

◎7人制ラグビーの竹内亜弥が新潮社を退社した。
http://www.nikkansports.com/sports/news/1753697.html

◎水島宏明の「ステマ疑惑!テレビ朝日の番組 あなたはどう考える?」。
岩手放送の言う『研究成果の提供』は、テレビ朝日に対してもあったのだろうか?
テレビ朝日の番組でも、『明治』という名前はエンドクレジットに至るまで一切出てこない。
なかったのだったら、こうしたデータは無断転用なのだろうか?
もし提供があったのなら、そのことを明示しないのはなぜなのだろうか?
ことは『健康』という視聴者の身体や命にかかわりかねない重大なテーマなのだ。
誰がどういう形で調査したデータなのかをきちんと明確に示さないことは放送局として重大な倫理違反だと考える。
テレビ朝日は、この点について説明する義務がある」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20161218-00065601/

◎在京民放5社が運営するキャッチアップ(見逃し配信)サービスのアプリ「TVer」のダウンロード数が12月17日に累計500万を突破した。スマートフォンタブレットからの利用が8割を占める。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1035822.html

講談社の美容誌「VoCE」編集部が選ぶ2016年“最も美しい顔”は桐谷美玲に決まった。
http://www.oricon.co.jp/news/2083262/full/

◎gooランキングは「これ読める?難読ファッション誌ランキング」を発表した。
1位 25ans
2位 SPUR
3位 Harper's BAZAAR
4位 ar
5位 L’OFFICIEL Japan
6位 eclat
7位 装苑
8位 VOGUE
9位 mer
10位 FUDGE
https://ranking.goo.ne.jp/ranking/category/028/vote_849/

◎アプリ「SmartNews」のチャンネルプラスにおいて、「ELLE JAPAN」チャンネル(提供元:ハースト婦人画報社)が開設された。
http://about.smartnews.com/ja/2016/12/19/20161219elle/

◎「週刊現代 合併特大号」(講談社)の目玉はフィギュアスケートの振付師として活動中の村主章枝のフルヌードだ。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20161218-OHT1T50208.html

芥川賞直木賞の候補作が発表された。芥川賞は新潮社と文藝春秋の一騎打ちである。直木賞文藝春秋幻冬舎、新潮社、祥伝社小学館と6社にバラけた。
http://www.sankei.com/life/news/161221/lif1612210002-n1.html

インターネットテレビ局「AbemaTV」は、1月1日(日)より、「HIPHOPチャンネル」を開設する。
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/info/detail/id=13114

KADOKAWAの「ヤングエース」で連載されている「ナナマル サンバツ」のテレビアニメ化が決まった。
http://animeanime.jp/article/2016/12/19/31834.html

◎メディアドゥは、徳島県のテック情報と、そのグループ会社である徳島データサービスとともに、電子書籍流通領域に関するシステム開発や業務アウトソーシングを目的とした合弁会社を子会社として設立することになった。
http://minkabu.jp/uploads/newsfeeds/pdf/776225/8575d65f8.pdf
藤田恭嗣社長からすれば故郷に錦を飾るということだろう。

◎「NARUTO-ナルト-」(集英社)がハリウッドで実写映画化されるようだ。
http://otapol.jp/2016/12/post-9092_entry.html

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

結果もまた過程であるということを肝に銘じておきたい。