【文徒】2017年(平成29)12月27日(第5巻244号・通巻1173号)

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1)【記事】出版社を買収し続けるCCCの行方は?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2017.12.27 Shuppanjin

1)【記事】出版社を買収し続けるCCCの行方は?

「J−CASTニュース」が掲載した「『ツタヤ』が揺さぶる書籍ビジネス 雑誌巻き込み『メディア融合』」は次のように書いている。
徳間書店については、コンテンツ力もさることながら出版社としての『地力』に期待しているとみられる。例えば、CCCが制作にかかわった2018年1月公開の映画『嘘を愛する女』について、公開に先駆けて徳間書店が書籍化するという、メディア融合的な展開を進めている。こうなると書籍雑誌を巡るコングロマリット(複合企業)と言えなくもない」
https://www.j-cast.com/2017/12/25317123.html?p=all
CCCはユニクロのようなビジネスを確立したいのだろうが、だとすれば「マンガ出版社」であろう。むろん、徳間書店もマンガを擁しているが、それだけでは足りないはずだ。メインバンクが三井住友銀行でマンガ出版にそれなりの歴史があるとなれば……。
「CARトップ」(交通タイムス社)の創刊50周年記念として、「CARトップ 2018年7月号 TSUTAYA限定特装版」が刊行される。傘下に入れずとも、こうしたオリジナル商品の開発が増えそうだ。
http://top.tsite.jp/news/book01/campaign/38080974/?sc_int=tcore_news_recent
市場の現状からすれば、あらゆる書店の経営は厳しく苦しいはずだ。とはいえレンタルビデオに比べれば、まだマシである。そうCCCの運営する書店だからといって単純に儲かるかといえば、そうではあるまい。CCCは利幅の大きいプライベートブランドを投下し、書店事業の経営体質を筋肉化するとともに、書店を集客マシンとして再定義した商業施設の開発に注力したいのであろう。Tポイント事業の「質」という意味でも書店事業は重要な意味を持つ。
CCCは書店で儲けるというよりも、書店にはある意味でプロモーション機能を担わせるつもりなのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】

長谷川町子生誕100年「サザエさん長谷川町子2018」が季刊で朝日新聞出版より刊行された。オリンピックの2020年が生誕100年なのか。付録は長谷川町子が私信用につくっていた年賀状の復刻だそうだ。420円。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000340.000004702.html

◎スマートニュースのチャンネルプラスで、光文社の女性誌「VERY」「STORY」のチャンネルがスタートする。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000194.000007945.html

過労自殺した電通新入社員の母親が手記を発表した。
電通は1991年に社員の大嶋一郎さんが亡くなられた後に、『不幸な出来事が二度と起こらないよう努力します』と誓いました。しかしその後も電通は、改革を行うことなく法律違反やパワハラを続けて、何人もの犠牲者を出しています。そして、まつりも長時間労働パワハラとセクハラの犠牲となりました。まつりの死によって、不夜城といわれた電通の灯りは22時に消えることになり、会社は『労働環境の改革を2年でやり遂げる』と再び宣言しました。
立派な改革案が提案されていますが、いまだに電通社員は『自分たちは厳しい上下関係や深夜勤務を乗り越えて成長してきた』という成功体験に囚われていて、意識改革は遠く難しいと思います」
http://www.sankei.com/affairs/news/171225/afr1712250002-n1.html
電通社員は、決して怒ってはなるまい。そもそも、この問題で問われているのは電通ばかりではない。他の広告会社も、こうした手記を報道する新聞やテレビも、そして雑誌もラジオもインターネットも、マスコミにかかわる企業の総てに問われているのである。この手記にもあるが「ヨーロッパ諸国のように、11時間の勤務間隔を開ける勤務間インターバル」の導入を真剣に検討しなければならないし、AIの積極的な導入も必要になってくるはずだ。私に言わせれば「鬼十則」を断固として守り抜くための「インフラ」を確立することが課題なのである。

電通アイソバーが「隠れ残業」を繰り返していたようだ。東京新聞は次のように書いている。
「違法残業事件で有罪判決が確定した広告大手電通のグループ会社『電通アイソバー』(東京)で、電通が新入社員の過労自殺を受け労働環境改善に着手した昨年秋以降も、複数の社員が自宅に仕事を持ち帰り『隠れ残業』を繰り返していたことが二十五日、分かった。一部社員の加入する労働組合ブラック企業ユニオン』が共同通信の取材に明らかにした」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122602000133.html
繰り返し言う。電通だけの問題では絶対にない。

◎マガジン+シークというコンセプトで2000年にスタートしたEコマースの「マガシーク」は繊維商社のモリリンと組んでプライベートブランドの展開を自社通販サイト「マガシーク」とNTTドコモとの共同運営サイト「dファッション」で開始した。
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2017/12/pbpb.html

◎TBS系連続ドラマ「陸王」の最終回の平均視聴率は20.5%!
https://mantan-web.jp/article/20171225dog00m200000000c.html
市川右團次が良かったよね。

◎オプティムは、雑誌読み放題サービス「タブホ」に生活便利マガジン「オレンジページ」の提供を開始した。
https://www.optim.co.jp/wp-content/uploads/20171225_unlimited_tab.pdf

◎しかし、猫は売れ筋なんだねぇ。双葉社が「週ニャン大衆」を発売した。おいおい、「話題のニャンドルが決意のヘアヌード」なる袋綴じ企画までやっているわけ!これ売れるんじゃないの。雑誌を母胎とした猫本では一番インパクトがある。笑えてかわいいってのも正月向きだしね。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000014531.html
「VERY」ならぬ「にゃRY」ってどうよ。「キャンキャン」ならぬ「にゃんにゃん」てのも受けないかい?

◎NTTデータは「イマツイ ツイート大賞2017」を発表した。映画部門は112万ツイートを記録した「映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」がダントツであった。テレビドラマ部門では「おんな城主 直虎」が14万ツイートを超えてトップ。インターネットテレビ部門では「72時間ホンネテレビ」が何と181万ツイートだった。
http://imatsui.com/seasonal_topics/post_143/

自治省に入省して一年半後には宝島社に入社し、女性誌の編集者となり、それでは飽き足らず渡英してスタイリングを学び、帰国してファッションエディターとして「フィガロジャポン ヴォヤージュ」「流行通信」「マリ・クレール」などに関わり、「エル・ジャポン」のコントリビューティング・エディターをつとめてから弁護士を目指し、2016年に弁護士登録・・・。信じられないようなキャリアだ、林総合法律事務所の海老澤美幸弁護士は。
https://www.wwdjapan.com/525065

◎ヤフーとビューンは、雑誌100誌以上とマンガ10,000冊以上が読み放題になる、Yahoo!プレミアム会員向けの特典「読み放題プレミアム by ブック放題」の提供を開始した。
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2017/12/25a/
読み放題サービスが雑誌のメインストリームとなるのかもしれない。

◎出版科学研究所によれば、書籍と雑誌を合わせた2017年の紙の出版物推定販売金額は前年比7%減の約1兆3700億円となり、市場規模はピークだった平成8年の約52%まで縮小する見通しだ。13年連続で縮小している市場だが、落ち込み幅は過去最大となる見込みだ。書籍が約7150億円、雑誌が約6600億円で書籍は11年、雑誌は20年続けて前年を下回る。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25034050V21C17A2X12000/
言うまでもなくデジタル市場に移行した分はカウントされていない。単純な悲観は百害あって一利なしである。

日本経済新聞社テレビ東京ホールディングス、TBSホールディングス、WOWOWなど6社が出資する動画配信会社「プレミアム・プラットフォーム・ジャパン」は、4月に開始するサービス名を「Paravi」(パラビ)に決めた。料金は月額925円(税込み999円)。電通博報堂DYメディアパートナーズも出資している。
https://www.paravi.jp/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25022510U7A221C1916M00/

トーハンの「ほんをうえるプロジェクト」は、サンクチュアリ出版と協力し、絵本「ぜったいに おしちゃダメ?」の体験型読み聞かせイベント「きみは押さずにがまんできるか!?」を全国100書店で開催している。
http://www.tohan.jp/news/20171225_1126.html

トーハンは、「そらまめくん」や「くれよんのくろくん」等のシリーズで、かわいらしいキャラクターを生み出している人気絵本作家・なかやみわの画業20周年を記念したオリジナルフェアを全国約800書店にて開催する。
http://www.tohan.jp/news/20171226_1127.html

電通は、精度の高い「個人視聴推定モデル」を活用してテレビCMの効果を高めるツール「KPI運用型TVCMプランナー」を開発、サービス提供を開始した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/201712140-1222.pdf
個別のブランドごとにデジタル広告とテレビ広告の相乗効果を計量する。

電通は、米国100%子会社の電通エンタテインメントUSAを通じ、米国大手アニメスタジオ「ドリームワークス・アニメーション・テレビジョン」(ドリームワークス)と、日本発の人気フィギュア玩具「BE@RBRICK」(ベアブリック)を原作としたテレビ向けアニメの共同企画開発契約を締結した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017141-1225.pdf

◎学研プラスは、教具とワークブックがセットになった「キラキラ1ねんせいの さんすう・こくご おどうぐばこ」(価格3,700円+税)を12月29日に発売する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001429.000002535.html

朝日新聞社は「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」の著者である小川栄太郎と版元の飛鳥新社を提訴した。朝日新聞社の千葉光宏執行役員広報担当はコメントを発表している。
小川栄太郎氏の著書には、森友・加計学園に関する朝日新聞の一連の報道について事実に反する記載が数多くありました。本社には一切取材もないまま、根拠もなく、虚報、捏造、報道犯罪などと決めつけています。具体的にどう違うか指摘し訂正を求めましたが、小川氏は大半について「私の『表現』か『意見言明』への苦情に過ぎません」などとして応じませんでした。出版元も著者の小川氏任せで、訂正は今後も期待できません」
https://www.asahi.com/articles/ASKDT558VKDTUTIL01P.html
小川は正論新風賞に選ばれている。産経が次のように書いていることに注目したい。
「自由と民主主義のために闘う「正論路線」を発展させた言論活動に贈られる正論大賞に、文芸批評家の新保祐司氏(64)が決まった。また新進気鋭の言論人に贈られる正論新風賞には文芸評論家の小川榮太郎氏(50)と国際政治学者の三浦瑠麗氏(37)が選ばれた」
http://www.sankei.com/life/news/171205/lif1712050044-n1.html
新保は「文芸評論家」と呼ばれることを是とせず、小川は「文芸評論家」と呼ばれることを是としているということである。

文藝春秋は2018年1月1日にムック「週刊文春 黄金の昭和 今だから話せる48 セブン-イレブンでしか買えないスペシャル号」を発売する。スペシャル読者サービスとして、読者から15組30名を、文藝春秋のサロンに招待して、このムックの編集長・木俣正剛との茶話会を開催する。木俣さん、偉い!肩書ではなく、読者を招いての茶話会をいとも簡単そうに実現してしまうから偉いと言っているのだ。
http://7net.omni7.jp/detail/1106838301
講談社も負けてはいない。やはりムック「週刊現代Special もう一度、あなたに逢いたい」を1月1日にセブンイレブンに並べて対抗する。
http://7net.omni7.jp/detail/1106838300

紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめするベスト30「キノベス!2018」を発表した。
1位『R帝国』中村文則中央公論新社
2位『屍人荘の殺人』 今村昌弘(東京創元社
3位『あるかしら書店』ヨシタケシンスケポプラ社
4位『かがみの孤城辻村深月ポプラ社
5位『星の子』今村夏子(朝日新聞出版)
6位『うしろめたさの人類学』松村圭一郎(ミシマ社)
7位『騎士団長殺し村上春樹(新潮社)
8位『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』西原理恵子KADOKAWA
9位『SHOE DOG 靴にすべてを。』フィル・ナイト(東洋経済新報社
10位『騙し絵の牙』塩田武士(KADOKAWA
11位『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』川上和人(新潮社)
12位『バッタを倒しにアフリカへ』前野ウルド浩太郎(光文社)
13位『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』フランス・ドゥ・ヴァール(紀伊國屋書店
14位『魂でもいいから、そばにいて』奥野修司(新潮社)
15位『僕はロボット越しの君に恋をする』山田悠介河出書房新社
16位『今日の人生』益田ミリ(ミシマ社)
17位『終電の神様』阿川大樹(実業之日本社
18位『うらみちお兄さん』久世岳(一迅社
19位『こねてのばして』ヨシタケシンスケブロンズ新社
20位『無貌の神』恒川光太郎KADOKAWA
21位『オクトーバー 物語ロシア革命』チャイナ・ミエヴィル(筑摩書房
22位『最愛の子ども』松浦理英子文藝春秋
23位『弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま』喜多みどり(KADOKAWA
24位『劇場』又吉直樹 (新潮社)
25位『もぐ∞』最果タヒ(産業編集センター)
26位『探偵が早すぎる』井上真偽(講談社
27位『こわいもの知らずの病理学講義』仲野徹 (晶文社
28位『北北西に曇と往け』入江亜季KADOKAWA
29位『もし文豪たちがカップ焼きそばのつくり方を書いたら』神田桂一・菊池良(宝島社)
30位『デンジャラス』桐野夏生中央公論新社
https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201712229382/
「キノベス!2018フェア」は、2018年2月1日(木)より、全国の紀伊國屋書店で開催される。

◎「紀伊國屋じんぶん大賞2018 読者と選ぶ人文書ベスト30」も発表している。ベスト10は次の通りだ。
1位『中動態の世界 意志と責任の考古学』國分功一郎医学書院)
2位『ゲンロン0 観光客の哲学』東浩紀(ゲンロン)
3位『うしろめたさの人類学』松村圭一郎 (ミシマ社)
4位『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』 上間陽子(太田出版
5位『文学問題(F+f)+』山本貴光幻戯書房
6位『勉強の哲学 来たるべきバカのために』千葉雅也(文藝春秋
7位『ハンセン病療養所を生きる 隔離壁を砦に』有薗真代(世界思想社
8位『福岡伸一、西田哲学を読む』池田善昭・福岡伸一明石書店
9位『子どもたちの階級闘争ブレイディみかこ (みすず書房
10位『実在への殺到』清水高志水声社
https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201712229383/

◎CCCとヤマト運輸が、両社サービスの相互連携を開始することに合意した。CCCは蔦屋書店およびTSUTAYAが運営する直営店舗の一部にPUDO(=ロッカー)を設置する。ヤマト運輸はTポイントサービスを導入する。
https://www.ccc.co.jp/news/pdf/20171225_ccc_yamato.pdf

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3)【深夜の誌人語録】

失敗とは後味の悪いことである。