【文徒】2017年(平成29)12月28日(第5巻245号・通巻1174号)

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1)【記事】CAMPFIREと幻冬舎エクソダスを設立・経済のソーシャル化が進む
2)【本日の一行情報】
3)【人事】祥伝社12月18日付役員人事
4)【ご挨拶】

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1)【記事】CAMPFIREと幻冬舎エクソダスを設立・経済のソーシャル化が進む

CAMPFIREと幻冬舎は、クラウドパブリッシング事業を行う共同出資会社エクソダスを2018年1月末に設立する。仮想通貨におけるトークンを発行する「トークン発行型出版」も検討するらしい。社名を「旧約聖書」から持ってきているところなど、さすがである。「栄光への脱出」はイスラエル独立を描いた映画で原題をエクソダスという。脚本はダルトン・トランボ。ボブ・マーリーが暗殺未遂事件後にリリースしたアルバムも「エクソダス」である。「We know where we’re going/We know where we’re from/We’re leaving Babylon」という歌詞は出版業界にとって示唆的である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000094.000019299.html
幻冬舎が嗅覚に優れた出版社であるのは間違いない。市場が縮小するなか出版のソーシャル化がここまで進んで来たということだ。CAMPFIREの家入一真も早速次のようにツイートしている。
幻冬舎CAMPFIREはクラウドファンディングを活用した出版事業を手がける新会社を立ち上げる。本や収益の一部を支払うといった特典を事前に決め、本の企画段階から個人や出版社が資金調達できるようにする」
https://twitter.com/hbkr/status/945828242199425024
これは出版商品ではないが、梅田 蔦屋書店は、12月21日(木)より、クラウドファンディングサービス「Makuake」の人気プロダクトを展示・販売している。第一弾として、俳優・山田孝之と山口友敬がプロデュースする「FORIEDGE(フォリエッジ)江戸ガラス」だ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000009848.html
経済のソーシャル化も進みつつある。福島民報によれば南相馬市小高区在住の芥川賞作家柳美里は書店「フルハウス」の来年4月オープンに向け、クラウドファンディングで資金を募っているそうだが、これもそうだ。
http://www.minpo.jp/pub/topics/hotnews/2017/12/post_1596.html
私たち出版人もCAMPFIREを使いながら出版事業を進めてきたわけだが、今後は逆にCAMPFIRE以外のクラウドファンディングを使うことになるのかもしれない。特定の出版社の色がつくことは拒否したいのだ。

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2)【本日の一行情報】

石原さとみの写真集「encourage」(宝島社)が6刷15万部を突破。
http://www.musicvoice.jp/news/20171225083069/
写真集はデジタルシフトするのではないかと思っていたが、「紙」が強いんだよね。実は、この写真集はキューバで撮影されている。

紀伊国屋書店新宿本店の東二町順也のハナシ。
「・・・1937年に新潮社から出版された吉野源三郎君たちはどう生きるか』が80年後となる今年『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)となって出版されました。このヒットも今年から来年へと続くトピックスになるでしょう。未来に希望が持てるような本が出版され、2018年のヒットとなることを期待したいです」
https://withnews.jp/article/k0171226003qq000000000000000S00110501qq000016491A?ref=rnavi_os
吉野源三郎岩波書店の「世界」の初代編集長であり、「君たちはどう生きるか」は岩波文庫に入っていることから、当然、「君たちはどう生きるか」を出版したのは岩波書店だと思っていた人も多いのではないだろうか。むろん、私も「君たちはどう生きるか」は読んでいる。丸山真男的にいえば、吉野は倫理にとどまらず社会科学的な認識に一歩踏み出した問いを立てているということになり、一方、吉本隆明的にいえば、結局「往相」ばかりで「還相」を欠如しているということになるのだけれど。

◎ノンフィクション作家の萩原遼が亡くなった。萩原の「朝鮮戦争 金日成マッカーサーの陰謀」は、今では常識となっているが朝鮮戦争北朝鮮の先制攻撃によって戦端が開かれたことをアメリカ軍が手にした160万ページに及ぶ北朝鮮の資料を徹底的に読み込むことで明らかにした。そういう意味では歴史に残る一冊だと思う。実兄は「上方芸能」の木津川計である。萩原は日本共産党を除名されるが、長らく「赤旗」の記者をつとめていたことで知られる。
https://mainichi.jp/articles/20171226/k00/00m/040/041000c
しかし「朝鮮戦争 金日成マッカーサーの陰謀」は絶版かあ。こういう作品こそ文春学藝ライブラリーに残しておくべきではないのだろうか。木津川計講談社現代新書「上方の笑い―漫才と落語」も絶版!これがわが国の出版文化の「質」なのだろう。

◎「ドワンゴ ニコめし運営チーム」がお詫びを発表した。
「2017年12月23日(土)に放送された、『【ニコめし】独りでも寂しくない!聖夜のクリスマス飯!!』番組内において、ご不快な思いをされたというご意見を多数頂戴いたしました。
パンツマンさまをはじめ、出演者の皆さま、ご視聴されていた皆さまがご不快な思いをされたことについて、深くお詫びいたします。
今後はこのようなことが無いよう、出演者さま、ご視聴者さまに楽しんでいただける番組作りを進めて参りたいと考えております」
http://ch.nicovideo.jp/nicomeshi/blomaga/ar1388197
ドワンゴがニコ生番組めぐり謝罪…原因は吉本芸人・ニューヨークか?」は次のように書いている。
「問題となったのは、番組中のニューヨークの態度である可能性が高い。番組中盤にパンツマンが鍋を調理するなか、ニューヨークが『遅っそ!』などと、やじを飛ばす。結果としてパンツマンは『お前がやれよ!』と怒りをあらわにし、ニンジンを投げつけていた」
http://news.livedoor.com/article/detail/14081388/
パンツマンこと神崎嘉宏が次のようにツイートしている。なお、パンツマンは芸人ではなく料理動画投稿者である。
「生放送をご覧頂いた皆様放送中にぶちきれて申し訳ないありませんでした。ニコニコ公式に出る機会を頂いてこのような結果で申し訳ありませんでした。 私も人間なんで料理で精一杯の時に罵声を浴びせられるとさすがに切れます」
https://twitter.com/pm8864/status/944615502084632576
この後、次のようなツイートがつづく。
「ニコニコ運営からは、謝罪をいただきました」
https://twitter.com/pm8864/status/945178373315166208
吉本興業から謝罪ありませんでした。 収録後ニューヨークは、すく逃げて帰った。一言も話をしてません。 私は、1時過ぎまで皿洗いなどしてからかえりました」
https://twitter.com/pm8864/status/945180246617178113
「あの芸人は土曜日の週録前に、蒼井さんには、Hな話をしないでください。とスタッフからいわれているのに酷いセクハラ発言でした。
生放送の内容の約束が守れないのは、プロとしておかしいです」
https://twitter.com/pm8864/status/945232690462072832

◎「DAYS国際フォトジャーナリスム大賞2018」を運営するためのクラウドファンディングを行っている。
https://imaonline.jp/news/others/20171226/

総務省の社会生活基本調査によれば主にしていた行動の他に同時にしていた行動として、スマホやパソコンPCの使用と答えた人の割合は21.5%と急上昇していた。前回調査から17.6ポイントも上昇しているのだ。朝食時であっても新聞や雑誌に目を通しながらではなくスマホだし、通勤時においてもラジオから1位の座を奪った。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.htm
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2504817025122017EE8000/
ラジオは聞くことしかできないし、新聞・雑誌は読むことしかできないが、スマホやパソコンは読めるし、聞けるし、見れるのだ。そうスマホを占拠することなしに既存メディアは生き残れないのである。まさに「ながらスマホ」の時代が到来しているのだ。

◎スマートニュースは、Web小説サイト「カクヨム」を運営するKADOKAWAと共同で、「スマートニュース×カクヨム 連載小説コンテスト」を2018年2月1日?3月31日を応募受付期間として開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000193.000007945.html

◎「週刊文春」「週刊新潮」「夕刊フジ」が貴乃花親方派で朝日新聞、読売新聞、日刊ゲンダイ相撲協会派という図式が成立している。
http://lite-ra.com/2017/12/post-3689.html
背景に八百長問題があると指摘しているのは週刊誌である。

大日本印刷横浜銀行は本人認証アプリを利用した顔認証サービスの開発に向けて、基本合意した。
http://www.dnp.co.jp/news/10142264_2482.html

◎ディーエムソリューションズが運営するウェブメディア「たま Goo!」は小学館ポスト・セブン局が運営する「NEWS ポストセブン」への記事提供を開始した。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1541935

◎「LINE GAME」の3マッチパズルゲーム「LINE ポコポコ」は「週刊少年サンデー」(小学館)に連載されていた「らんま1/2」とのコラボを開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000926.000001594.html

◎AOKIは、小学館の女性ファッション誌「CanCam」との共同開発第8弾となるコラボ商品を、12月27日(水)より、AOKI全店舗およびオンラインショップで販売を開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000151.000011795.html

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3)【人事】祥伝社12月18日付役員人事

代表取締役社長  辻浩明(書籍出版部、文芸出版部)
取締役      只野孝一(雑誌ビジネス部、企画事業部、業務部、総務経理部、編集総務部)
取締役(新任)   宮島功光(販売部、コミック出版部、デジタル&海外ライツ事業部)
取締役(非常勤)  相賀昌宏

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4)【ご挨拶】

今号をもって2017年の最後の配信となります。「文徒」も1174号を数えるまでになりました。これも皆さまの御支援の賜物と感謝しております。私がこの仕事を始めた1980年代にはデイリーの媒体が持てるようになるなどとは夢にも思っていませんでした。新聞などよりも情報を早く入手していたにもかかわらず抜かれるのは、とても辛いことでした。
しかし、今や夢にも思っていなかったことが実現してしまったのです。私でもデイリーの媒体を持てるようになったのです。別にデイリーではなく、それこそタイムリーに情報を発信することさえ可能になったのです。申し上げるまでもありませんが、出版人の社員は私ひとりです。たったひとりの会社でも小さいながらも月刊誌を出し、月2回刊のニューズレターを出し、デイリーでメールマガジンを出しているのです。
恐らく規模の大小にかかわらず雑誌はフル装備が問われているのではないでしょうか。紙の雑誌もあれば、紙の雑誌の電子版もあり、独自のウエブメディアを擁し、リアルイベントも主催するし、何らかのサービスそのものも提供する。もはや単純なブランド論では雑誌の未来を語ることはできないはずです。
そうした議論に際して少しでもお役に立ちたい。それが「文徒」の願いです。来年も何とぞ宜しくお願い申し上げます。