【文徒】2016年(平成28)5月17日(第4巻89号・通巻776号)

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1)【記事】田崎健太の光文社新書電通FIFA」を読み返す
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】田崎健太の光文社新書電通FIFA」を読み返す

今回の東京オリンピックをめぐる疑惑報道があったこともあり、今年の2月に刊行された田崎健太の光文社新書電通FIFA」を読み返す。
田崎はスイスに本拠を置いたスポーツマーケティング会社ISLの誕生から倒産までを活写しているのだが、主役は電通元専務の高橋治之であるといって良いだろう。田崎による高橋への長時間にわたったと推測されるインタビューなしに、本書は成立しなかったはずだ。
内容としては「電通FIFA」というよりも「高橋治之とFIFA」にほかならない。2月に読んだ際には、私が親しくしてきた電通マンにこのような「お喋り」はいなかっただけに、こんな「お喋り」が電通にいたことに驚きを禁じ得なかった。私の知る電通マンは、どんなにお祭り好きであっても、棺桶に入るまで黒子に徹することを美学としているタイプであった。
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039035
ISLはアディダスホルスト・ダスラーが電通と共同で1982年に設立した企業である。電通保有株式は49パーセントで設立されたが、1995年に39パーセントを売却してしまう。「電通FIFA」で田崎健太は次のように書いている。
「高橋が電通保有のISL株売却を持ちかけると、マルムスはすぐに食いついてきた。
『そしてどんどん値段をつり上げていった。電通としてはもの凄い利益が出たんだ。その利益の一部を電通はISLに払った。八億円ぐらいだったかな』
(中略)
折角の利益をどうしてISL社に戻したのですか、とぼくが訊ねると、高橋は手品の種明かしをするかのような顔をした。
『ロビー活動費という名目。なんのためのロビー活動かというと、二〇〇二年ワールドカップの招致。日本に持ってくるには活動費が必要になる。前から、ISL側から招致活動を手伝うのに金が必要だと言われていた』」
電通は6600万フランの銀行保証をしたにもかかわらず(田崎によれば「むろん担当者は高橋である」)、経営危機に瀕したISLは2001年に倒産してしまう。サッカーのワールドカップであろうと、オリンピックであろうと「ロビー活動(費)」なくして招致はままならないのであろう。しかも、ワールドカップに際しての8億円の使途に関しては、高橋も知らなければ、電通も知らなかった。田崎は次のように書いている。
「高橋は当時の電通会長、木暮剛平と会い、ISL株の売却、そしてロビー活動費として売却益の一部を同社に戻すことを報告した。
木暮は高橋の話を聞き終わると、こう言ったという。
『高橋君、そのお金をどう使うか、すべてISLに任せたほうがいい。日本では問題になるので、一切触らないように』」
しかし、私がどうしても解せないのは、2014年6月に東京オリンピックパラリンピック組織委員会理事に、2015年にIOCマーケティング委員会委員に就任する高橋治之が、時効になったからと個人的に判断して、こうも軽々とワールドカップ日本開催のロビー活動についてあけすけに発言して、あらぬ誤解を招くことになるとは考えもしなかったのだろうか。
いずれにせよ、ワールドカップにおけるロビー活動費が8億円とするならば、国際陸上競技連盟(IAAF)のラミン・ディアク元会長の息子、パパマッサタ・ディアクが関係するシンガポールの「ブラックタイディングス社」に支払われた総額130万ユーロ(約1億6千万円)など、カワイイものなのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】

◎「プレジデントオンライン」で橋下徹が言っていることは正鵠を射ていると私は思う。
「舛添さんのことばかり話題になっているけど、他はどうなっているのかの調査報道が弱い。これがまた日本の報道の弱さ。
だいたい舛添さんの公用車利用や出張費の高さについて、東京都庁記者クラブは何してやがったんだ? 記者クラブ解散だよ。
週刊文春の記者に特別席を用意してやれよ。週刊文春は個人的には大嫌いだけど、今、権力監視ができるのは文春、新潮ぐらいじゃないか」
http://president.jp/articles/-/18031

KADOKAWAを退社し、ストレートエッジを起業した三木一馬は、「日経ビジネスオンライン」で次のように語っている。
「うちの会社のビジネスモデル、そのインカムのひとつは、担当する作家さん方からのエージェント料です。これには、クリエイティブアシスト、スケジュール管理、プロモーション、リーガルコンサル、ビジネス戦略、マーケティングアドバイスなどなどを含みます。そして、出版社さんからは、いつもの編集作業を行いますから、フリー編集者としてその編集費をもらいます。これには、アニメの宣伝会議やイベント、マーチャンダイズ関連の監修費も含みます」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/284031/051100011/?P=1

◎フィールズ総研が紙のマンガ雑誌とデジタルマンガの読者動向について調べた結果を「まんたんウエブ」が紹介している。ここ1年間で最もよく読んだマンガ媒体の第1位は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で22.2%と第2位を大きく引き離している。その第2位は「comico」で9.4%、3位は「LINEマンガ」で6.1%で、4位は「月刊コロコロコミック」(小学館)で5.7%、5位は「週刊少年マガジン」(講談社)で5.5%という順位になった。
「男女別では、男性は20代以下の若い世代がデジタルマンガを見ているものの、全体的に紙媒体を好む傾向だったが、女性は世代を問わずデジタルマンガが上位にランクイン。男女で好みがハッキリと分かれる結果で、デジタルマンガは女性を中心に人気を集めていることが分かった」
http://mantan-web.jp/2016/05/15/20160513dog00m200014000c.html

◎人気が急上昇しているトピックやハッシュタグを集めるフェイスブックの「トレンド」なる機能は、一部の英語環境で提供されているサービスだが、保守的な内容を意図的に削除していたという内部告発があったそうだ。「ギズモード(US)」のスクープである。
http://www.gizmodo.jp/2016/05/fb_condervativenews.html
http://gigazine.net/news/20160511-facebook-trend-biased/
http://www.cnn.co.jp/tech/35082313.html
「ギズモード・ジャパン」はメディアジーンが運営するが、「ギズモード・ジャパン」はフェイスブックインスタント記事を開始した。
http://www.mediagene.co.jp/2016/05/5385.html

◎オプティムは、ローソン(全国11,551店舗)、ミニストップ(全国2,214店舗)、サークルK・サンクス(全国6,289店舗)にて、雑誌読み放題サービス「タブホ」を2016年5月12日より販売開始した。「タブホ」を取り扱うコンビニが一挙に20,000店舗広がったことになる。
http://www.optim.co.jp/news-detail/19729

内田樹がフランスのネット記事「電通は日本のメディアを支配しているのか?」を翻訳している。
http://blog.tatsuru.com/2016/05/15_0947.php
私には内田と違って「ここに書かれていることは本当だ」と全く思えないんだよなあ。電通がそんなに凄い会社であれば高橋治之の「お喋り」を許すはずなどあるまい。

◎昨年「週刊ポスト」でも取り上げた「月刊住職」の切り口&タイトルが相変わらずジャーナリスティックである。
http://magazinesummit.jp/life/12816805061605514

◎KADOKAWAが全社で給与体系を統一した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO02250900T10C16A5TJC000/

ジェイムズ・エルロイにとって20年振りとなる警察小説「背信の都」が文藝春秋から上、下巻で刊行される。真珠湾攻撃前夜、LAで日系人一家惨殺を日系人鑑識官ヒデオ・アシダが捜査するという設定からして、読まずには済まされまい。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163904641
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163904658

片岡愛之助がブログで写真週刊誌に「盗撮は気持ち悪いですし、やめて頂きたいものですね」とお願いしている。
http://ameblo.jp/6ainosuke/entry-12159258880.html

◎福岡の天神に6月1日、ビールや焼酎が楽しめる書店「Rethink Books(リシンクブックス)〜本とビールと焼酎と〜 with Ploom TECH」(ウィズプルームテック)が「本屋B&B」(東京都世田谷区)のプロデュースにより期間限定でオープンする。
http://tenjin.keizai.biz/headline/5436/

日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が衆院予算委に参考人として出席し、シンガポールの「ブラックタイディングス社」とは電通に実績などを確認した上で契約したと発言した。「ブラック・タイディングズ社」が国際陸上連盟前会長のラミン・ディアクやその親族と関係するとは知らなかったとも発言している。
http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20160516/k00/00e/050/197000c
http://www.asahi.com/articles/ASJ5J45C2J5JUTQP00R.html

電通と米国のApp Annie(アップアニー社)が共同で調査を実施した「日本ゲームアプリ市場レポート」を発表した。これによれば、日本のモバイルゲーム市場では、Google PlayiOS App Storeと同じくらいマネタイズが好調で、収益は2014〜2015年の1年間に約25%増加したとしている。
http://go.appannie.com/report-understanding-mobile-gaming-japan-jp

◎アニメ映画「名探偵コナン 純黒の悪夢」がシリーズ初の興行収入50億円を突破しているが、ノベライズ本「名探偵コナン 純黒の悪夢」(小学館ジュニア文庫)も発売から1ヶ月で10万部と絶好調である。
http://www.oricon.co.jp/news/2071576/full/

Amazonプライム・ビデオのオリジナル作品として、小学館プチコミック」で連載された「はぴまり〜Happy Marriage!? 〜」を原作にした連続ドラマを、2016年6月下旬(予定)より、Amazonプライム向けに独占配信する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000019084.html

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3)【深夜の誌人語録】

物事を歴史的に考えるということは、未来を見据えるということである。