【文徒】2016年(平成28)年11月21日(第4巻217号・通巻904号)

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1)【記事】出版ビジネス・プロデュース局の局長人事について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】出版ビジネス・プロデュース局の局長人事について

既に周知のごとく電通の出版ビジネス・プロデュース局は2017年1月1日付で専任局長であった中村理一郎が局長となり、局長であった堀内善太は局長職として当面、出版ビジネス・プロデュース局にとどまることになった。
堀内局長のキャリアは雑誌畑を歩んで来た。グローバルブランドを扱う「ザ・ゴール」の初代社長や営業では資生堂も担当して来たが、「ザ・ゴール」は出版ビジネス・プロデュース局の前身である雑誌局から生まれた広告代理店であるし、資生堂は雑誌とは切っても切れない関係にあるクライアントであった。
一方、中村局長のキャリアはテレビ畑を歩んで来たと言って良い。WOWWOWに出向した後は、テレビ&エンタテインメント局 、コンテンツ局を経験し、コンテンツ局では局長に就任している。ただし出版業界と全く関係がなかったかというとそうではない。例えば集英社とは「劇場版NARUTO ナルト 大激突!幻の地底遺跡だってばよ」や映画「ヒロイン失格」を通じて、KADOKAWAとはアニメ映画「バケモノの子」を通じて、講談社とは実写版「進撃の巨人」を通じて、小学館とは「アイアムアヒーロー」を通じて関わりを持って来た。
こうした中村のキャリアを踏まえれば、中村局長のもと、出版ビジネス・プロデュース局が今後どのような方向性を志向するかは自ずと見えて来るだろう。
もちろん、ファッション誌関連の仕事を軽視するということではあるまい。出版ビジネス・プロデュース局が担う営業局としての役割を考えても、「ザ・ゴール」の存在を考えても、それは当然のことだろう。ただし、出版ビジネス・プロデュース局の成長戦略を描こうとするのであれば、そうした広告の売上高が全体としては減少傾向にある以上、それだけでは無理である。
中村局長が得意としているコンテンツ領域で出版ビジネス・プロデュース局の存在感を高めることが同局の成長戦略に直結するし、マンガや小説などの原作コンテンツやキャラクターの宝庫である出版社からすれば、電通の窓口を出版ビジネス・プロデュース局にワンストップ化できることによるメリットも期待できるだろう。

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2)【本日の一行情報】

◎「東洋経済online」に掲載された「テレビ朝日のスポット広告がフジを抜いた!」によれば、テレビ朝日は2016年度上期のスポット広告収入が日本テレビに次ぐ2位となった。開局以来初めての快挙だ。テレ朝は視聴率2位も維持している。ただし、「日テレの背中は遠い」。同社は「スポット広告は過去最高を更新し、民放におけるシェアも年々上昇し続けている」からだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/145410

◎「ずるい勉強法―――エリートを出し抜くたった1つの方法」か…ダイヤモンド社の書籍はタイトルの付け方が上手だ。東洋経済新報社に比べると、ダイヤモンド社は大和書房寄りであることがよくわかる。
https://www.atpress.ne.jp/news/116410

橋下徹大阪市長の出自にかかわる「週刊新潮」の記事で、大阪高裁は新潮社の控訴を棄却した。
http://www.sankei.com/west/news/161116/wst1611160107-n1.html

◎日本エンタープライズは、白泉社の約1500タイトルを、電子書籍サービス「BOOKSMART」で配信を開始した。
http://www.nihon-e.co.jp/ir/press/pr-20161115-01.pdf

集英社の女性ファッション誌「BAILA」はサマンサタバサとトートバッグをコラボした。33000円也。
https://baila.hpplus.jp/fashion/f_editors_eye/7590

◎米ファッション誌「VOGUE12月号の表紙をミシェル・オバマ米大統領夫人が飾る。
http://news.aol.jp/2016/11/16/michelle_obama/

KADOKAWA集英社は、11月26日(土)に新人・坊木椎哉のデビュー作を2作同時発売することになった。KADOKAWAから発売されるのは、第23回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作「きみといたい、朽ち果てるまで〜絶望の街イタギリにて」、集英社から発売されるのは第1回ジャンプホラー小説大賞銅賞受賞後第1作「最後のデートをきみと」である。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002828.000007006.html
協業して競合することで相乗効果を狙うというアプローチは増えるに違いない。

楽天は、ローソンと連携し、楽天が運営するオンライン書店楽天ブックス」で購入した書籍やCD・DVDなどの商品が、全国のローソン1万1922店舗で受け取ることができるサービスを開始した。
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2016/1117_01.html

◎「Yahooニュース」の「リアル書店は消えるのか、模索する現場の本音」で、丸善ジュンク堂代表取締役の工藤恭孝は次のように語っている。
「大型書店のシェアは業界全体の1〜2割程度。成長していると言われるネット書店の売上を加えても、中小書店が廃業していくことによって生じる書籍や雑誌売上の落ち込みをカバーするには至りません。もしこのまま地域の中小書店が消えてしまうようであれば、出版業界全体の売上は激減し、今の半分程度の規模になるでしょう。
では、そうした市場規模になった時、出版社は作りたい本を作ることができるのか。読者のみなさんが満足するような質と量の本を提供できるのか。私は難しいと思っています。『書店の危機』は、『出版文化全体の危機』です。日本の出版文化が崩壊する日を何としてでも止めたい。そう考えて、私どもは必死にあがいている。これが、リアル書店の現実です」
http://news.yahoo.co.jp/feature/436

◎いわゆる「ツタヤ図書館」について「Business Journal」の追及がつづく。「ツタヤ図書館、強引にCCCへ委託先決めた市教委委員長が新館長就任か…再び天下り人事疑惑」と題して、今度は岡山県高梁市立図書館を槍玉にあげている。
「新聞報道等で、新図書館の館長として名前が挙がったのは、高梁市教育委員会の委員長だった藤井勇氏だ。教育委員としての任期は、2013年11月16日〜17年11月15日までとなっていたが、任期を1年以上残して今年9月30日付で退任していた。
さらに取材してみると、10年3月に同市内の小学校校長を定年退職した後は長年、地元教育界で活躍されていて、『10月1日からCCC社員として入社したと聞いています』(市議会関係者)とのこと」
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17202.html

電通の社員手帳から「鬼十則」がどうやら削除されるようである。
http://www.asahi.com/articles/ASJCK6FDMJCKULFA02T.html
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161117/k10010772881000.html
では電通アイデンティティとは?電通の原点とは?
「Yahoo!ニュース個人」に掲載された「『鬼十則』よりも前に電通社員手帳から削除された『責任三カ条』が怖い 電通自死問題の本質は何か?」で常見陽平は次のように書いている。
「なお、今回の事件が起こった部署は、中途入社、出向者だらけの部署であり、いかにも伝統的な電通の部署ではない。(中略)一部の報道やエントリーが触れているが、むしろ問題は、新興の部署であるがゆえに、旧来の電通のやり方が通じない上、組織が不安定だったこと、顧客からの要望も厳しかったことではないか」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tsunemiyohei/20161119-00064602/
「東山凛太朗のブログ」によれば、元会長の成田豊は「残業が嫌なら辞めろ」「うちは労基署も裁判も怖くない」と主張して譲らなかったそうである。
東山「過労死や残業のさせ過ぎで問題になったらオオゴトですよ」
成田「まあそんなこと100%ないだろう。まずマスコミが流さん」
http://ameblo.jp/onmitsudoshintenpoji/entry-12219377319.html
「週刊闇株新聞編集部」が電通を取り上げている。しかし、新しい情報はなし。
「…海外のスポーツ利権に深く関わっていたのが専務取締役まで上り詰めた高橋治之で、2009年に電通を退社して顧問となったあとも海外がらみのスポーツ利権には必ず名前が出てきます。『イ・アイ・イ』総師だった故・高橋治則の実兄で、何と2020年東京オリンピックパラリンピック組織委員会(以下、組織委員会)理事に名前を連ねています」
http://diamond.jp/articles/-/108222
そう言えば「FACTA」の蒸し返しのような記事を掲載した写真週刊誌もあった。
http://friday.kodansha.ne.jp/archives/91025/

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、米国において多文化に対応した広告コミュニケーション・サービスを提供するニューヨークの総合広告会社「Gravity Media, LLC」(グラビティー・メディア社)の親会社であるFindr Group(ファインダー・グループ)の株式100%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016133-1117.pdf

電通は、国内市場においてデザインによる企業イノベーションと事業支援の拡充を図るため、世界有数のデザインファーム「Frog Design Inc.」(フロッグデザイン社)と業務提携した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016134-1118.pdf

◎平安堂長野店がながの東急百貨店の別館「シェルシェ」の2、3階に移転オープンした。「信毎web」は次のように書いている。
「2階は新刊本や雑誌、専門書、コミックなどのほか、歴史コーナーも設けた。3階は児童書、CDやDVD、文房具、雑貨を並べた。書籍の売り場面積は、旧店舗と同じ約1700平方メートルを確保。販売冊数も約30万冊で旧店舗と変わらない」
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20161117/KT161117ASI000003000.php

講談社はマンガアプリ「マガジンポケット」のテレビCMを開始した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001166.000001719.html

◎「ファミ通App」の「『ポケモンGO』開発リーダー、コロプラ社長ら4人のスペシャリストが語るVRとARの未来」に書かれている次のようなところは押さえておきたい。
「360度動画の配信を手掛けるLittle Star Media, Inc.のMugavero氏は、テレビで編集されたナレーションや映像で情報を得るより、360度動画で見たほうがダイレクトにその場の雰囲気を感じ取れると、ジャーナリズムの分野での有用さを紹介。
同じように360度動画を配信する360Channelを展開しているコロプラの馬場氏も、『360度動画と体験系は相性がいい』と語っており、実際に360Channelでは、熊本地震での震災の模様やANA機体工場見学などの体験系の動画を配信していることを明かした」
http://app.famitsu.com/20161117_893250/
メディアからサービスへという時代の流れのなかで、ジャーナリズムのあり方にも変化が訪れるはずだ。

◎「2016年啓文堂書店文芸書大賞」はトーン・テレヘンの「ハリネズミの願い」(新潮社)に決定した。
http://www.keibundo.co.jp/award/prize/detail/2016_8.html
http://www.shinchosha.co.jp/news/article/265/

一迅社は、同社のコミック誌電子書籍版を書店発売日と同日に配信するようにしたそうだ。
http://japan.cnet.com/entertainment/35092449/

◎創刊30周年を迎え た小学館の「DIME」1月号の付録は「創刊号復刻版 」だ。創刊は1986年。えのきどいちろうが次のように書いている。
「例えば1986年のヒット商品にファミコンがある。そしてドラクエシリーズの最初のソフトが発売された。これは単なる『家電の新製品』とは違う。若い世代を新しい体験、新しい世界観に導くツールであった。遊びながらたぶん若い世代は来るべきインターネットの時代を学習していたのだ」
http://dime.jp/genre/313433/1/
オレはその前のインベーダーゲーム世代なんだよね。

◎沖縄が独自の出版文化を紡ぎ出していることは知っているが、ジュンク堂書店で三番目に大きい店舗が那覇店であることを韓国の「中央日報」で知る。
http://japanese.joins.com/article/706/222706.html

東京大学で12月10日に「集英社高度教養寄付講座 第8回講演会 中国語に敬語があるか −呼び掛けと微笑みのポライトネス 」が開催される。
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/event/shueisha20161210.html

実業之日本社から刊行される「Croak! 世界の不思議なカエル」は黒川宇吉の大学卒業制作作品をベースにしている。ツイッターで話題になり、こうして書籍にまとめられた。黒川はpixivにも投稿している。
http://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=72
https://twitter.com/w0o0w_ukichi

◎この「はてな匿名ダイアリー 」をエントリしたのは誰なのかと話題になっている。
http://anond.hatelabo.jp/20161116152814
川上量生本人のものではなく、「なりすまし」なのだろう。
http://getnews.jp/archives/1556966

◎「女子をこじらせて」(ポット出版) の雨宮まみ が亡くなった。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/17/mami-amamiya_n_13037446.html
社会学者の岸政彦(「断片的なものの社会学 」)が次のようにツイートしている。岸は雨宮と「愛と欲望の雑談」(ミシマ社)で一緒に仕事をしている。
「【 書店関係者様】雨宮さんの追悼フェアやってください。東京でも関西でも、やってたら行きますよ。(それかもうやってるかな?)まだ買ってなかったやつ、書店で買いたいです。あと『こじらせ』は買っても買っても学生がすぐ持ってっちゃうので、たくさん買いだめしときたい 」
https://twitter.com/sociologbook/status/799959491139641344
これに今野書店が応じている。
「急ごしらえですが雨宮さんのコーナーつくりました。『女子をこじらせて』から読んできて、反発したこともあったけどやっぱり目が離せなかったし、その言葉に救われたと感じる数少ない、本当に大切な書き手でした。彼女の本が多くの人に届きますように」
https://twitter.com/konnoshoten/status/800161189586030592
雨宮は栗原康の「村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝」 (岩波書店)を「シュプール」(集英社)で絶賛している。
「書店で見かけたら周りの本を全部なぎ倒したくなる。「今読むべき本はこれだけでいい!」と叫びたくなる。それぐらい、むちゃくちゃに面白い」
https://spur.hpplus.jp/culture/mamiamamiya/201606/20/cXmAM3A/

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3)【深夜の誌人語録】

焦りは更なる焦りを生むだけである。