【文徒】2017年(平成29)年6月8日(第5巻106号・通巻1035号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】マガジンハウスと犀のマークの晶文社
2)【本日の一行情報】
3)【人事】電通 出版ビジネス・プロデュース局 2017年7月1日付人事異動
4)【人事】電通 出版ビジネス・プロデュース局 2017年8月1日付人事異動
5)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】マガジンハウスと犀のマークの晶文社

今や伝説の雑誌に数えられる「relax」元編集長岡本仁の発言。
「インターネットに限らず、僕は新しい技術が楽だったら、そっちの方がいいんですよ。本が持っている質感に対して、過剰にロマンティックな感情は持っていないんです。印刷の世界でも、かつては活版がグラビアに変わっていったわけだし、時代が変われば新しい技術が生まれてくる。だから、ブログがあればブログでいいし、インスタグラムがあればインスタでいい」
http://www.asahi.com/and_M/articles/SDI2017060168551.html
「貸し切りバス」だと皆が同じ風景しかみないが、現地集合主義だと到着に至るまで皆が見る風景は違うという指摘も「さすが」である。岡本の「果てしのない本の話」(本の雑誌社)は編集者ならば読んでおいて損のない一冊である。「果てしのない本の話」は岡本が講談社のファッション誌「HUGE」に連載していたコラムを一冊にまとめたものである。
http://www.webdoku.jp/cafe/amou/20151015105246.html
私も片岡義男の「ロンサム・カウボーイ」が好きだった。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=3452
片岡義男ポール・ニザンが同居できる文化と言えば良いのだろうか。そうした文化が例えば「ポパイ」や「ブルータス」のような雑誌に結晶してゆくのである。ポール・ニザンの「アデンアラビア」は冒頭に「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい──」という一句を掲げていた。
こういうことだ。「ポパイ」の創刊編集長は片岡義男にスタッフになってくれないかと声をかけた。片岡はこれを断るのだが、「旅行のしかた―内側からタマゴを割る」の室謙二を紹介する。ちなみに「ロンサム・カウボーイ」もポール・ニザンの「アデンアラビア」も、「旅行のしかた―内側からタマゴを割る」も版元は晶文社であった。私は10代の頃、晶文社の本を片っ端から読んでいったものである。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=852
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001220538-00
晶文社を語るうえで忘れてはならないのは植草甚一。私が植草甚一の名前を知ったのは「平凡パンチデラックス」が組んだ特集によってだったと記憶している。私は植草を案内人としてコルトレーンに触れ(私の場合、植草甚一経由平岡正明行きであった)、ボリス・ヴィアンを読み、ヒッチコックを尊敬するようになる。「ジャズの前衛と黒人たち」「ぼくは散歩と雑学がすき」「映画だけしか頭になかった」というように植草の代表作の版元は晶文社であり、植草は晶文社から雑誌「ワンダーランド」を創刊する。
http://www.shobunsha.co.jp/?cat=-41%2C-42%2C-44%2C-46%2C-55%2C-77%2C-84%2C-86&s=%E6%A4%8D%E8%8D%89&x=0&y=0
この植草甚一の「ワンダーランド」の遺伝子を継いだのが、私に言わせれば「ポパイ」にほかならない。
やがて「ワンダーランド」はJICC出版局に譲渡され、「宝島」に誌名変更される。JICC出版局は宝島社の前身である。
古い話になるが、亡くなった中川六平晶文社で働くことを本人から聞いた私が中川に猛烈な嫉妬をおぼえたのは言うまでもあるまい。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062158343
室も中川もベ平連か…鶴見俊輔か…。

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2)【本日の一行情報】

◎日販は、自遊人とともに、ブックホテルを中心とした複合施設「箱根本箱」を2018年春に開業する。
「箱根本箱」は、日販が強羅温泉に所有する保養所「あしかり」を全面リノベーションするもので、ブックホテルを中心に、ブックストア、レストラン&カフェ、ショップ、コワーキングスペースなどを備えた複合施設である。
建物一階のブックストアは新刊のみならず古書や洋書も取り扱い、あわせて約2万冊を取り揃えるそうだ。
2017月4月に設立した日販グループ会社「株式会社ASHIKARI」が運営にあたる。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2017/06/honbako_hakone.pdf
ここは人気のスポットとなるなあ。オレもカネと暇があれば一週間くらい滞在したいもの。自遊人と組んだのも正解である。沖縄にホテルを擁する大手出版社もあるのだから、取次がこの手のビジネスに乗り出しても問題はあるまい。
自遊人は雑誌でありクリエイティブ・アソシエーションである。
http://www.jiyujin.co.jp/
http://www.jiyujin.co.jp/magazine/

渋井哲也の「『週刊新潮』の”汚れた文春砲”スクープ 関係者の反応は?」によれば、「週刊新潮」は「『文春砲』汚れた銃弾」をグラビア3ページ、活版で10ページを使って報じたが、これはの「ニセ赤報隊実名手記事件」以来のことだという。
〈こうして、4月16日発売(4月23日号)で「『週刊新潮』はこうして『ニセ実行犯』に騙された」という記事を掲載する。このときが、今回の特集と同じく10ページだった。 つまり、「週刊新潮」が一つの特集で10ページも割くというのは、異例中の異例で、それだけ力を入れた記事だった〉
http://blogos.com/article/227240/

博報堂DYメディアパートナーズ雑誌局業務推進二部の榎本洋行の発言。その通りです!
「今までは誌面を中心に、商品ターゲット層の閲読率が高い雑誌を選定するという、出稿プラニングを行ってきました。しかし、これからは雑誌ブランドが持つオーディエンスを見据えて、出版社とコンテンツを制作し、デジタルやリアルで拡散させて、いかにオーディエンスと接点を生み出していくかが求められます。さらに今後、潜在的読者が可視化されてデータが蓄積される動きが進めば、データを詳細に分析し、コンテンツ配信に活かす動きが加速しそうです」
https://www.advertimes.com/20170606/article252151/
私が付け加えさせていただきたいのは、コンテンツ制作にとどまらず、具体的なサービスの提供まで踏み込んでいくビジネスも加速させなければならないということです。放言ついでに更に言ってしまいますと、出版社の創造できるブランドは雑誌にとどまらないということです。カタチに囚われないということがとても大切なのではないかと、そう私などは考えております。コンテンツという考え方だと、どうしてもカタチに囚われることになるのではないかと危惧せざるを得ないのです。

◎「PRESIDENT Online」に掲載された「読売と産経は社説でも『政権擁護』を貫く」が指摘しているように読売新聞と産経新聞は社説でも安倍首相を「加計学園問題」で擁護する社説を掲載している。
http://president.jp/articles/-/22239
一昔前までは新聞の内容に大差なかったが、ここに来て違いが明確になって来たようである。新聞の主張が違うのは間違いなく良いことである。これも何度か指摘して来たことだが産経から東京までの主張の違いの幅こそがわが国の民主主義の到達点でもある。わが「文徒」の場合、最も引用が多いのは産経だが、それは何も産経の主張に同調しているからではない。私の「遊び心」がそうさせるのである。

◎オーストラリア政府観光局は、オーストラリアの食とワインの魅力に焦点を当てたグローバルキャンペーン「美食大陸 オーストラリア」の一環として、ハースト婦人画報社の「ELLE gourmet」7月号とタイアップし、別冊付録でオーストラリアグルメを特集した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000004793.html

電通社員がわいせつ容疑で逮捕された。時事通信は次のように書いている。
「無理やり女性の体を触るなどしたとして、警視庁大塚署は6日、強制わいせつ容疑で電通社員の高橋知也容疑者(29)=東京都新宿区山吹町=を逮捕した。『身に覚えがない』と容疑を否認しているという」
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017060600984&g=soc

エミール・クストリッツァは小説を書いていたのか!岩波ホールで「ジプシーのとき」を見たときの驚きが忘れられない。暴力と笑いを同居させてしまうクストリッツァの力量に感服させられたのである。短編小説集「夫婦の中のよそもの」が集英社から刊行された。
http://www.dreamnews.jp/press/0000154223/

紀伊國屋書店は、スイッチ・パブリッシングが刊行する村上春樹の短編をフランスのアーティストがバンドデシネ(マンガ)化した「HARUKI MURAKAMI 9 STORIES パン屋再襲撃」初刷り15,000冊の内、12,000冊を買切り、自社店舗および取次店を介して全国の各書店において、6月20日(火)から販売を開始する。B5変型、28ページ、本体価1,600円。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201706062435/

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3)【人事】電通 出版ビジネス・プロデュース局 2017年7月1日付人事異動

櫻井 啓太
旧:出版ビジネス・プロデュース局 局長補 (兼) 出版業務推進部長 (兼) 出版2部長
新:第3営業局 アカウントディレクション室 専任次長

田中 渉
旧:出版ビジネス・プロデュース局 電子雑誌サービス事業部 専任部長
新:コンテンツビジネス・デザイン・センター 映像・アニメ事業グループ 映像事業部 ディレクター

今泉 睦
旧:出版ビジネス・プロデュース局 専任局長
新:出版ビジネス・プロデュース局 専任局長 (兼) アカウント室長

種田 康幸
旧:出版ビジネス・プロデュース局 専任次長 (兼) 電子雑誌サービス事業部長
新:出版ビジネス・プロデュース局 局長補 (兼) 出版2部長

金原 亨
旧:出版ビジネス・プロデュース局 局長補
新:出版ビジネス・プロデュース局 局長補 (兼) 出版業務推進部長

内田 正剛
旧:出版ビジネス・プロデュース局 局長補 (兼) デジタル・データソリューション部長
新:出版ビジネス・プロデュース局 局長補 (兼) デジタル・データソリューション部長 (兼) 電子雑誌サービス事業部長

城山 知孝
旧:出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント2部 専任部長
新:出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント2部長

後藤 達之助
旧:出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室長 (兼)アカウント2部長
新:出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント2部 専任次長

岡本 正樹
旧:出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進部 関西雑誌課 専任部長
新:出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進部 関西雑誌課 部長職

内藤 有<既報>
旧:出版ビジネス・プロデュース局 IP・事業開発部 LC
新:デジタルプラットフォームセンター LC (cci出向) (兼)プラットフォーム1部

伊藤 彩
旧:出版ビジネス・プロデュース局 F&Bソリューション部 MC
新:第3営業局 峯尾部 MC

岩田 修平
旧:出版ビジネス・プロデュース局 IP・事業開発部 MC
新:MCプランニング局 ソリューション開発室 ソリューション2部 MC

鈴木 基伸
旧:第3営業局 大村部 LC
新:出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進部 LC

中村 一喜
旧:出版ビジネス・プロデュース局 IP・事業開発部 PC
新:出版ビジネス・プロデュース局 デジタル・データソリューション部 PC (兼) IP・事業開発部

松本 健
旧:出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進部 LC
新:出版ビジネス・プロデュース局 デジタル・データソリューション部 LC (兼) 出版1部

山下 秀國
旧:出版ビジネス・プロデュース局 出版2部 LC
新:出版ビジネス・プロデュース局 デジタル・データソリューション部 LC (兼) 出版2部

田村 與希
旧:出版ビジネス・プロデュース局 出版2部 LC
新:出版ビジネス・プロデュース局 電子雑誌サービス事業部 LC

綿野 雄介
旧:出版ビジネス・プロデュース局 出版1部 PC
新:出版ビジネス・プロデュース局 出版業務推進部 PC

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4)【人事】電通 出版ビジネス・プロデュース局 2017年8月1日付人事異動

坂口 隆章
旧:出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント1部 PC
新:出版ビジネス・プロデュース局 アカウント室 アカウント1部 スペシャリストシニア

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5)【深夜の誌人語録】

転ぶのは後ろを振り返っているばかりだからである(神代辰巳『青春の蹉跌』を思い出す)。