【文徒】2016年(平成28)10月27日(第4巻201号・通巻888号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】ローカルメディアの「潜在力」について
2)【記事】今こそ電通のなすべきことは?
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ローカルメディアの「潜在力」について

私たちは、雑誌は全国(=マスメディア)であると信じて来た。恐らく、雑誌を発行する出版社は東京に偏在しているがゆえに全国メディアとしてビジネスモデルを構築するしかなかったのだろう。しかし、全国メディアとしての雑誌がデジタル革命に直撃されるなか、出版社は雑誌も含めて旧来のビジネスモデルの見直しが迫られていることは周知の通りである。
誤解を恐れずに言えば、雑誌を全国メディアとして位置付ける常識は東京に本社を置く「大手」に分類される出版社の都合に過ぎなかったのである。
そうデジタル革命によって「ローカルメディア」の可能性が見えて来たともいえるのである。そういう意味で「マガジン航」で連載されている影山裕樹の「ローカルメディアというフロンティアへ」は、刺激的であり、また示唆的である。
「小豆島にはまた、『ローカルメディアのつくりかた』(学芸出版社)で取り上げた『せとうち暮らし』を発行する出版社、瀬戸内人(せとうちびと)に100パーセント出資する地元オリーブ会社・小豆島ヘルシーランドがある。この会社は、島内に複数のアートスペース施設を持つ『MeiPAM』をグループとして保有しており、瀬戸内国際芸術祭の会場にもなっている」
11月17日には、渋谷区神宮前の「devcafe@INFOCITY」でローカルメディアで〈地域〉を変える【第3回】「地域に根ざした企業メディア〜小豆島と近江八幡から」も開催されるそうだ。
http://magazine-k.jp/2016/10/26/frontier-of-local-media-04/
ローカルから発信して、グローバルに展開する「雑誌の未来」があっても良いように思う。山口昌男を踏まえて言えば周縁が中心を活性化するのである。

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2)【記事】今こそ電通のなすべきことは?

経団連榊原定征会長が「電通過労自殺についてはですね、誠に誠に遺憾なケースだと思っています」とコメントしている。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2899363.html
電通本社ビルは、24日から午後10時の全館消灯が始まった。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00339961.html
http://www.asahi.com/articles/ASJBT03KQJBSULFA03B.html
問題の本質は、こういうことではあるまいに。電通の元コピーライター前田将多が指摘するように午後10時消灯は「取ってつけた対策」に過ぎないし、逆に現場を疲弊させることになる。営業出身の石井直社長であれば、そんなことはわかっているはずだ。
https://www.bengo4.com/c_5/n_5271/
電通が今なすべきことは、まずもって経営責任を明らかにする記者会見を早急に実現することである。俣木盾夫や高嶋達佳、森隆一といった歴代の社長経験者や役員経験者は、石井直社長を「裸の王様」にしないためにも、適切なアドバイスをすべきである。
私は、どんな困難においても先手先手と働き掛けていくことを電通の、例えば新聞雑誌局から学んで来た。今こそ電通の原点に回帰すべきなのではないか。

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3)【本日の一行情報】

◎ケイウノと講談社の雑誌「ディズニーファン」の共同企画「夢のディズニージュエリー・商品開発プロジェクト」でグランプリを受賞した「happiness bell」の商品化が実現し、10月25日に発売された。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000008670.html
http://www.k-uno.co.jp/news/disneyfair201610

講談社集英社小学館白泉社の4社は11月1日(火)より、「この少女マンガがくる!2016 フェア」を開催する。
http://comic-sp.kodansha.co.jp/topics/yonsha/
http://cheese.shogakukan.co.jp/2016/10/4fair2016.html
http://www.s-manga.net/4-fair/

◎劇場版アニメ「君の名は。」の興行収入が164億円を超えた。
http://mantan-web.jp/2016/10/24/20161024dog00m200028000c.html

小学館はライフスタイル局から、訪日中国人に向けて、日本の情報を発信するインバウンドWEBメディア「微日伴」(ウェイリューバン)(英・日本名:「J life-pal」)を10月25日にローンチした。
https://www.atpress.ne.jp/news/114780
http://www.jlife-pal.cn/
デジタルシフトの時代において出版社に求められるのは「落穂ひろい」を辞さない木目細かさである。

◎作家の辻仁成がWEBマガジン「デザインストーリーズ」を立ち上げた。辻は次のように書いている。
「人生を果敢に挑戦し続ける人々が、その人生の冒険の中で手に入れた感覚、英知、経験、哲学、愛、未来をここでは好んで取り上げていきたい。そこには生き続けることの生々しい真実があり、完成されない未来地図がある。これは内側を向いた参考書ではなく、ありふれた情報誌でもない。今を生きる人間のための生きた電子の書物なのである」
http://www.designstoriesinc.com/anotherstories/foundation/
当面は広告を入れないそうだ。「withnews」が次のように書いている。
「当面は広告を入れません。『収益が出るまではボランティアです』という辻さん。ビジネスモデルが注目されがちなウェブサービスの世界では、異例のスタートといえるかもしれません」
http://withnews.jp/article/f0161021006qq000000000000000W00810701qq000014142A
「女性自身」の取材に応じて次のように語っている。
「活字離れ久しいこの時代に、あえてもう一度物語の力を、と思い創刊しました。『デザインストーリーズ』は、人生を力いっぱい生きている人たちの“ライフスタイルマガジン”なのです。単なる情報ニュースよりも、そこに書き手の人生の“物語”を大切にしています」
http://jisin.jp/serial/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%A1/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%A1/26106
神奈川新聞も取り上げている。
http://www.kanaloco.jp/sp/article/207041/1/
「ヨミドクタープラス」も。辻はここで連載を持っている。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/network/20161021-OYTEW185462/

◎「白泉社鳥嶋和彦社長が、新部署『キャラクタープロデュース部』を7月に設立したことが明らかになった」そうだ。「まんたんウェブ」は次のように書いている。
「『キャラクタープロデュース部』は、15年11月に白泉社の社長に就任した鳥嶋社長が新設した。出版社の枠にとらわれず、マンガ家が作るキャラクターをマンガの紙媒体だけでなく違う媒体にも広げ、新しいビジネスの構築を目指すのが狙い」
http://mantan-web.jp/2016/10/24/20161024dog00m200006000c.html

◎フジテレビは、ニュース動画配信サービス「ホウドウキョク」を10月24日よりリニューアルした。コンテンツの表現方法は「テキスト記事」「ニュース動画」「動画とテキストを織り交ぜた解説」「VR動画」など幅広く、スマホを中心とした多様な視聴、購読シーンに対応する。
http://www.fujitv.co.jp/company/news/161024.html
テレビがネット戦略において、「テキスト記事」を取り込むのであれば、雑誌が取り組むべきことは「ニュース動画」「動画とテキストを織り交ぜた解説」「VR動画」を取り込むことである。

◎学研プラスと文化放送は11月3日、東京都立芝商業高校グラウンドで「NOK Presents KIDS EXPO 〜キッズ万博2016〜」を開催する。
http://resemom.jp/article/2016/10/24/34484.html

新聞通信調査会の「第9回 メディアに関する全国世論調査(2016年)」によれば、新聞朝刊閲読率とスマホやパソコンを利用したインターネットニュース閲覧率の時系列変化を見ると、新聞朝刊閲読率は2010年度の82.9%から70.4%に低下、一方、インターネットニュース閲覧率は2010 年度の57.1%から今回 69.6%に上昇し、両者の差がほぼなくなった。
また、将来の新聞について、「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる」と考える役割減少派は47.1%、「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい」と考える役割持続派は 35.6%となった。
http://www.chosakai.gr.jp/notification/pdf/report12.pdf

◎2016年4月、「EYESCREAM」編集長を退任と共にライスプレス株式会社を設立した稲田浩がフードカルチャー&ライフスタイル誌「RiCE」を創刊した。創刊号は「ごはん」を特集している。年4回で1600円。
http://eyescream.jp/tyo/blog/inada/103826/

ニューヨーク・タイムズは、創業5年のネット企業「ワイヤーカッター」(The Wirecutter)を買収する。
「ワイヤーカッターはギズモードやワイヤードの元編集者で、テクノロジー系ジャーナリストのブライアン・ラムが設立したメディア。様々なガジットに関する口コミ情報を掲載している」(「フォーブス日本版」)
http://forbesjapan.com/articles/detail/14025

トーハンは、同社の100%子会社で中間持株会社である有限会社ブックス・トキワが、あおい書店の発行済株式の全株式を取得することになった。
http://www.tohan.jp/news/20161025_845.html
名古屋を本社とするあおい書店が全22店舗のうち東京都や愛知県などの19店舗を分割して中野を本社とする別会社を設立し、トーハンがブックス・トキワを通じて全株式を取得するということのようである。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25HZ5_V21C16A0TI5000/

トーハンは、ナカバヤシ、河合出版と、受験生に定評のあるセンター試験対策参考書「黒本」シリーズ(河合出版)とコラボレをした「Mark sheet Note(黒本ノート)」を、トーハン独占販売のMVPブランド商品として全国約500書店で今年も10月中旬より販売している。
http://www.tohan.jp/news/20161025_843.html

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4)【深夜の誌人語録】

臆病だから萎縮するのではない。萎縮するのは準備が足りないからだ。