【文徒】2017年(平成29)年7月11日(第5巻129号・通巻1058号)

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1)【記事】 九州豪雨でもネット上に流れるデマ情報に対し打ち消しに奮闘する現場記者たち
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】九州豪雨でもネット上に流れるデマ情報に対し打ち消しに奮闘する現場記者たち(岩本太郎)

先週5日からの九州豪雨をめぐってネット上でも様々な情報が飛び交っている。今回もやはりデマ、あるいは予断に基づく未確認情報が流れているようだ。
阪神・淡路大震災以来よく言われるようになった「報道のヘリによる騒音が救助活動の妨げになる」といった批判もいまだにあがっているが、これは少なくとも現在はほとんど見受けなくなっている。
経済評論家の渡邉哲也が6日夕刻、《被災地でのメディアによるヘリコプター撮影禁止すべきです。救助活動の妨げになり、危険行為でもある》とツイートしたところ、《鬼怒川決壊のときもメディアのヘリコプターが救助ヘリコプターと接触事故すれすれ、今回も懲りずに傍若無人》《民法ヘリからの映像を報道するスポンサーへの不買運動と、局への直接非難(いつどの番組でどのように映像が使われたか?)を広めるのはどうですかね?》といった追随するツイートが相次いだ。
https://twitter.com/daitojimari/status/882875642928222209
が、一方で渡邉のツイートに対し、《「ヘリからの救助」という行動について、あなたを含めてほとんどの人が無知ようですね》と、一昨年の鬼怒川水害におけるヘリ運用についての具体的な報告を示して反論するものも表れた。《「世界で最も効率のよい」救助ヘリと「やるべきことをやった」報道ヘリ》と題されたその記事によると、「報道ヘリが邪魔」という意見は《救助ヘリの運用をまったく知らないか、理解をしてない人・・はっきり言って「モノを知らないバカ」の意見です》とのこと。
https://twitter.com/soranotomodachi/status/883255172541042689
http://blog.goo.ne.jp/papakuro623/e/d508e45a96d7a213e9df559b082a26a8
豪雨取材のため福岡県の被災地に入っていた共同通信記者の原田浩司も、上記のブログ記事を示したりしながら、渡邉に《貴方が、実際に現場を見て語っているのか疑問です。ぜひ、ご自分の目で確認してみて下さい》などと問い詰めていた。原田は1997年のペルー日本大使公邸人質事件の際、ゲリラに占拠された公邸に単身で取材に入って世界的なスクープを発するなど、戦場や被災地などハードな環境での取材を多数こなしてきた経歴の持ち主である。
https://twitter.com/KOJIHARADA/status/883423495589212160
https://twitter.com/KOJIHARADA/status/883427665788653569
https://twitter.com/kyodo_photo/status/883445695226793984
原田はその後も現地での取材の傍ら、ネット上に出回る真偽不明な情報を打ち消すべく、ネットに盛んにアクセスしながら発信している。例えば土砂で倒壊した家屋にいて亡くなった妊娠中の女性を報じた朝日新聞の記事をめぐって《通夜に乱入して取材させろ、遺族を出せ、と暴れた朝日新聞・・・》とのツイートが出たのに対して《事実でしょうか? 確認しました? ソースあります?》との反論が出てくるところまでマメにリツイート
https://twitter.com/0905262938455jp/status/884016436728836100
https://twitter.com/sspmi/status/884023175549378560
ちなみにこの件については朝日新聞の西部報道センターも打ち消しにかかっていた。災害報道に当たるマスメディア自身がネット上で風評被害に晒される事態があちこちで起こっているのかもしれない。
《九州豪雨災害で亡くなった母子のお通夜で、朝日新聞の記者が強引な取材をした、という趣旨のツイートが流れていますが、そのような事実はありません。朝日新聞社はお通夜の会場や、その周辺での取材はしていません》
https://twitter.com/asahi_seibu/status/883990019995705347

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎「Nyafoo!」という検索サイトが話題になっているそうだ。
http://nyafoo.com/
名称は言うまでもなく「Yahoo!」のもじりだろうが、もっぱらGoogleの検索機能への不満(まとめサイトやQ&Aサイトがノイズ的に多数引っかかってくることなど)を背景に出てきたものらしい。開発者の「NyafooJapan」も『ねとらぼ』の取材に「Googleがアテにならないときが出てきたため」と回答。実際にキュレーションサイトの類は検索結果として反映されない仕組みになっているようだ。
https://twitter.com/nyafoo_japan
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1707/03/news135.html
当のまとめサイトでもさっそく話題として取り上げられているが、《結構昔のインタビュー記事を読むことができるのは良いっすね》など、意外にもというか好意的な意見も。ただ、現状ではアクセスが集中して少々重たくなっている模様。
https://matome.naver.jp/odai/2149913858883603001
『ホウドウキョク』も4日の放送(記事は8日付)で紹介。出演した佐々木俊尚も「Google検索エンジンの質が低下していることの反動ではないか」などの見解を述べている。
Google検索エンジンを作りながら広告を表示するようになった。さらにアドセンスという、「まとめサイト」とかいろんなところに貼ってある広告を配信するようになった。そういう広告をたくさんの人に見てもらわなくちゃいけないので、自分の検索エンジンから「まとめサイト」に誘導するようになった。結局、自分で自分のしっぽを食うようなビジネスモデルを作っちゃったのが敗因じゃないかなって思います》
https://www.houdoukyoku.jp/posts/14676
もっとも、検索しても全然何も引っかかってこないというつまらなさもある。私(岩本)は実名でブログやTwitterもだいぶ以前から開設しているが、試しに自分の名前で検索してみたところ、Googleでは同姓同名(大塚製薬の元社長やテレビ朝日社員など複数いる)も含めて夥しい数がヒットするところが、「Nyafoo!」ではゼロ件だった。Wikipediaも除外されているようだ。

◎『少年サンデー』初代編集長の故・豊田亀市の公開されてこなかったインタビュー(2008年収録)後編。創刊当初に手塚治虫を専属にしようとした、あるいは『少年サンデー』の後に『少女サンデー』を創刊しようと思っていた、部下には「トキワ荘を握りなさい」と指示し、特に寺田ヒロオがキーマンになっていた、など草創期の興味深いエピソードが多々語られている。
https://mantan-web.jp/2017/07/08/20170630dog00m200033000c.html
ちなみに市川準の『トキワ荘の青春』の主人公も本木雅弘が演じる寺田ヒロオだ。

◎『日刊スポーツ』と『コロコロコミック』のコラボによる『コロコロ40周年新聞』が7月15日から全国で順次発売される。
https://www.nikkansports.com/corocoro/index.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp

小学館の青年マンガ誌『ヒバナ』は次の8月7日発売号をもって刊行終了。
http://hi-bana.com/
http://natalie.mu/comic/news/239795

◎東京MXは『ニュース女子』の米軍基地反対運動報道に関して再取材した「特別報道番組」を9月に放送する方針らしい。同局関係者によれば「検証番組」ではないのだそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20170707/k00/00m/040/073000c

◎昨日(7月10日)は岩波文庫の創刊90周年だった。
http://bunshun.jp/articles/-/3256

荒木経惟の個展「写狂老人A」が7月8日から東京オペラシティのアートギャラリーでスタート(9月3日まで)。 開始前日の日付が記された作品群「写狂老人 A 日記 2017.7.7」など、展示作品の大半は今回の展覧会のために制作された。7月7日は亡き妻・陽子との結婚記念日だそうだ。
https://www.operacity.jp/topics/detail.php?id=399
https://www.fashionsnap.com/news/2017-07-08/araki-shakyorojin-a-start/

岩手県盛岡市の繁華街「大通」にあるハンバーグ店「ベル大通店」(全国チェーン「びっくりドンキー」の1号店)の初代店長で、定年退職後もドアマンとして店頭に立ち続けた佐々木重政の初の著書『はつらつ人間力』が9日に発売され、同日に出版記念トークショーとサイン会が盛岡駅ビル「フェザン」の「さわや書店ORIORI」で開催された。佐々木が大通「さわや書店」本店の常連客で、店員と仲良くなったことがきっかけで地元のフリーライターも協力のうえ出版に至ったという。書店が客の中から書き手を発掘したわけだ。
https://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20170709_2
https://mainichi.jp/articles/20170709/ddl/k03/040/043000c

◎都内のJR西荻窪駅北口で、旅をテーマに新刊書・古書を販売している「旅の本屋 のまど」が15日で開店10周年。店長の川田正和は学生時代に沢木耕太郎の『深夜特急』を読んで海外の40カ国をバックパッカーとして旅行。旅先のあちこちで見かけた“旅の本屋”を自ら開きたいと考え、帰国後はリブロでの勤務を経て、吉祥寺の旅行会社が併設する「旅の本屋 のまど」に雇われ店長として転職。同店が閉店するのに伴い、名前を引き継ぐ形で2007年に独立、現在地で開店した。店内で月2回ほどトークショーやライブなども開催しており、今月の13・21・27日には記念イベントも予定している。
http://www.nomad-books.co.jp/
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201707/CK2017071002000141.html
http://www.mishimaga.com/hon-asobi/011.html

◎『ワセダクロニクル』と早稲田大学ジャーナリズム研究所の主催によるシンポジウム「ジャーナリズムとNGONPOとの連携を求めて 〜主流メディアを超えたチカラの台頭」が29日15時より同大学早稲田キャンパス 14号館B101教室で開催される。『ワセダクロニクル』シニアリサーチャーの加地紗弥香によるクラウドファンディング報告を兼ねた「財源モデルの開発とジャーナリズムの強化」などが予定されている。
https://www.facebook.com/WasedaChronicle/posts/253199211830142

中川淳一郎が新著『ネットは基本、クソメディア』(角川新書)を10日に上梓。『WELQ』に端を発したキュレーションサイトの問題についても、DeNAによる報告書などをもとに解説している。
http://shinsho.kadokawa.jp/product/p-321704000005/
http://blogos.com/outline/233498/

◎フランス通信(AFP)、ドイツのDPA通信、イタリアのANSA通信の3社が、欧州に関するニュースやデータを無料で配信する新しいウェブサイトを「European Data News Hub」(EDNH)」を共同で設立した。
http://www.afpbb.com/articles/-/3134888

◎日本とは逆にお隣の韓国・ソウルでは目下「独立書店」と呼ばれる個人経営の書店が週に1軒のペースで生まれているという。下北沢「本屋B&B」共同経営者でもある内沼晋太郎らが朝日出版社から6月に上梓した編著『本の未来を探す旅 ソウル』で、そうしたブームの担い手となっている書店経営者たちにインタビューを行っている。
http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010014/
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/208894

◎前日も一行情報で紹介した赤羽「青猫書房」での展覧会「ながやまのりおが のこしたもの−詩・無知の涙−」に行ってきた。永山の一般向けには刊行されていない幻の小説『死刑の涙』も、1988年発行のガリ版刷りの本が500円で販売されていた。永山が生前、自分に死刑が執行された後の未来社会を予言した小説だ。
なお、永山の死去から20年にあたる命日の8月1日には、同書房に近い「いのちのギャラリー」(北区志茂2-16-3  TEL.090‐9333-8807)で永山の「遺品資料室」資料公開も行われる予定である。
https://www.instagram.com/p/BWVAZO_lkvR/
http://aoneko-shobou.jp/overture.html