【文徒】2017年(平成29)10月3日(第5巻186号・通巻1115号)

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1)【記事】 休刊した常陽新聞の記者らがネットメディア「NEWSつくば」を創刊
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】休刊した常陽新聞の記者らがネットメディア「NEWSつくば」を創刊(岩本太郎)

今年3月末に休刊した茨城県の地方紙「常陽新聞」に代わって、同紙がエリアとしてきたつくば市土浦市の地域ニュースを発信するサイト「NEWSつくば」が1日にオープンした。
https://newstsukuba.jp/
運営するのは常陽新聞の元記者らが理事となって立ち上げたNPO法人つくば市筑波学院大学が同NPOと連携協定を結んだうえで学内の部屋を無償提供。スタート時点では常陽新聞の元記者7人が活動し、1日3〜5本の記事をウェブサイト(閲覧は無料)に掲載するという。運営の資金は市民や企業からの寄付で賄う大学構内で市民や学生対象の公開講座を開催し、新聞の読み方、取材の仕方、記事の書き方などを講義する。
http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15065185387121
https://mainichi.jp/articles/20170928/ddl/k08/040/178000c
さっそく来年1月からは《あなただけの「地域新聞」作ろう》と謳った公開講座を行う旨も告知されている。講師を務めるのはNPOの理事長で元常陽新聞新社社長の坂本栄と、副理事長で元常陽新聞編集委員だった米内隆。坂本はさかのぼれば元時事通信社経済部長、米内は元朝日新聞東京編集センター次長という経歴の持ち主だという。
https://newstsukuba.jp/?p=847
米国で、ネットの台頭による経営難から廃刊に追い込まれた地方紙の元記者たちが新たに設立されたNPOに活躍の場を移すといったケースはよく紹介されている。ただ日本国内の地方紙で、それもかつては日本新聞協会にも加盟していた新聞でのこうしたケースはおそらく初めてだろう。
また、常陽新聞の再スタートという意味合いでは実は今回が二度目になる。戦後まもない1948年に創刊された常陽新聞は経営難から2013年に廃刊。そこで「常陽新聞」の題号を買い取り、新たな会社を設立のうえ翌2014年2月に復刊させたのが、ソフトバンク出身でCS放送のJスカイB(後にパーフェクTVと合併のうえ現在のスカパーとして発足)の経営にも関わったというユナイテッドベンチャーズ社長の楜澤悟だった。印刷は毎日新聞への委託印刷、販売店契約も毎日新聞へと絞り込んでコスト圧縮に努める一方、スマホで読める電子版の提供も開始した。復刊時に『東洋経済オンライン』のインタビューに応じた楜澤は「地元密着メディアは十分に成り立つ。1年以上かかるとは思うが、まず発行部数1万部を目指していきたい」との意気込みを述べていた。
http://toyokeizai.net/articles/-/31841
しかしこれも3年後には結局頓挫。購読部数は復刊時の3000部から大きく伸びることがないまま、経営難から今春に2度目の廃刊。従業員18人は全員希望退職に応じ、そこから今度は元記者や市民らの呼びかけ、休刊間際の頃から電子版による新たなローカルメディア創刊に向けた動きが始まっていた。
http://mainichi.jp/articles/20170301/k00/00e/040/287000c
https://abematimes.com/posts/2093044#&gid=1&pid=1
https://mainichi.jp/articles/20170326/ddl/k08/020/073000c
茨城県は全国47都道府県の中で唯一県域の地上波民放テレビ局がない。また、いわゆる「第一県紙」の茨城新聞が県庁所在地の水戸市が本社であり、県南部のつくば市土浦市の地元メディアを望む声は以前から強かった。上記のスカパー開局後の1997年7月には地元出身者らが都内に設立した会社を委託放送事業者として「つくばテレビ」というチャンネルを開局したものの、半年間で実質撤退に追い込まれた経緯もある、地域メディア「鬼門」の地でもある。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎今年1月に東京MXテレビで放送された『ニュース女子』の沖縄米軍建設基地反対運動特集に関連して、同局が基地問題を再取材した報道特別番組「沖縄からのメッセージ 基地・ウチナンチュの想い」が30日夜に放送された。同局では事前に「検証番組ではない」と表明しており、番組中でも『ニュース女子』での当該特集には直接言及しなかった。なお、この特別番組はMXによるネット配信の「エムキャス」でも同時に流された。
http://s.mxtv.jp/company/press/pdf/press2017_460001.pdf
朝日新聞は《だが、批判を受けた部分を意識して制作したと思わせる場面が一部にあった》としつつ《1月の放送では「反対運動の参加者に日当が出ている」と伝え、事実と異なると批判が出た。今回の番組では、反対運動に参加する男性が取材に対し「金もらってやってるとかいう話が出るが、年配者が多く、昼飯を抜いたりしてみんなやっている」などと語った》と紹介。
http://www.asahi.com/articles/ASK9Z7FHWK9ZUTIL02K.html
毎日新聞は《「(活動場所に)通うため、みんな週に何日かは昼飯を抜いている」と否定する男性のコメントを紹介するなどしたが、批判された報道の検証はしなかった。MXは「ニュース女子」に捏造(ねつぞう)や虚偽があったとは認められないとし、検証番組は「予定はない」という》
https://mainichi.jp/articles/20171001/ddm/041/040/170000c
論説副主幹だった長谷川幸洋の出演が槍玉に挙がった東京新聞はその件には言及せず《運動の背景に基地負担集中への不満があることなどを伝えた。ニュース女子に関する謝罪はなかった》などと簡単に紹介。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017100102000107.html
産経新聞は《一面的な歴史観に基づく沖縄の近現代史の解説に多くの時間を割き、批判を受けていた事実関係の検証はほとんどなされなかった》《1月の放送で真偽が問われた「反対派による救急車の運行妨害」などについて、反対派へのインタビューなどで触れたものの、判断には踏み込まなかった》などの論評のほか、《番組関係者は「さらなる批判を受けないよう、反対派におもねる内容になってしまった」と明かす》と独自取材したらしいコメントもまじえつつ紹介している。
また「番組関係者は『さらなる批判を受けないよう、反対派におもねる内容になってしまった』と明かす」とも書いているが、影書房ツイッターアカウントは、この部分を捉えて「局としての反省ゼロだな」と呟いていた。周知のように影書房はアキノ隊員の「ぼくたち、ここにいるよ―高江の森の小さないのち」の版元であり、目取真俊の「虹の鳥」「眼の奥の森」の版元である。ちなみにアキノ隊員については先週紹介した阿部 岳の「ルポ 沖縄 国家の暴力」(朝日新聞出版)が詳しい。
http://www.sankei.com/entertainments/news/170930/ent1709300012-n1.html
https://twitter.com/kageshobo/status/914142150824140805
http://www.kageshobo.com/main/001.html
沖縄タイムスは番組の簡単な紹介のみで内容には深く言及していない。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150077
琉球新報は《新基地問題を巡る反対・容認双方の声を取り上げたりした。しかし、ニュース女子が報じた事実関係の真偽などには踏み込まず、訂正や謝罪などはなかった》《「救急車を止めた」という事実について、地元消防署が「誰が乗っているのかとの確認のために止められたことはある」としたコメントを紹介し、救急車の走行を妨害した事実はないことは報じたものの、コメントだけの内容にとどまった。日当についても、反対住民の「もらっていない」との発言を拾っただけだった。新基地建設への反発が強い民意にも触れたが、ニュース女子での報道には言及はなかった》
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-586226.html

池上彰朝日新聞のコラム「新聞ななめ読み」で、解散・総選挙の話が突如浮上した9月17日付新聞各紙の1面トップ記事を比較検証。今回は読売と毎日がこの件で「特オチ」した。
http://www.asahi.com/articles/DA3S13156457.html

◎今年6月に発足した「ファクトチェック・イニシアティブ・ジャパン(FIJ)」の呼びかけで、今月22日投開票の衆院選に向けた「総選挙ファクトチェックプロジェクト」が行われることになった。プロジェクト参加希望者への説明会が、明日4日19時より渋谷区神宮前のスマートニュース本社を会場に開催される。
http://fij.info/archives/news_event/17100201

◎その衆院選について、東浩紀が《腹立ったので作ってみました。できればキャンペーンに賛同をお願いします》などとTwitter上で宣言しつつ、「積極的棄権」を呼び掛ける署名活動をサイトの「Change.org」で始めた。選挙後に衆議院議長に届けるのだという。
https://twitter.com/hazuma/status/913840122893811712
https://news.careerconnection.jp/?p=41281

ネット掲示板2ちゃんねる」を運営していた「Race Queen Inc.」が同掲示板の運営権を「Loki Technology, Inc.」へと譲渡したことが1日に後者より発表された。同時に掲示板の名称が従来の「2ちゃんねる」から「5ちゃんねる」へと変更されたことがネット上で話題を呼んでいる。元管理人の西村博之ひろゆき)との争いが背景にあるらしい。
https://www.5ch.net/
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1710/01/news031.html

◎『ヤングサンデー』で2000年から始まり、同誌休刊後は『ビッグコミックオリジナル』に移行したものの2010年以降は途絶えている山田貴敏の「Dr.コトー診療所」の連載が近々再開されるらしい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017100102000108.html

◎「泊まれる本屋」として話題の「BOOK AND BED TOKYO」の4店舗目となる「浅草店」が5日より雷門通りにオープンする。
https://news.walkerplus.com/article/123063/

◎「手塚治虫書店」の全国で4店舗目は岐阜市丸善岐阜店内に1日オープン。
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20171001/201710010854_30629.shtml

帯広市の書店「ザ・本屋さん」が、同市のベッドタウンでもある近隣の芽室町に「ダイイチめむろ店」内に新店舗を30日よりオープン。同社は1984年にも芽室町内に店舗を開いたが90年に撤退。エリア戦略の見直しに伴う再出店だ。
http://www.tokachi.co.jp/news/201709/20170930-0027589.php

末井昭原作の映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』は来年3月からの公開が決定。
http://dynamitemovie.jp/
https://ddnavi.com/news/402584/a/

◎”鬼畜系・電波系ライター”として知られ、ゴミ漁りについてのルポルタージュを著すなど鬼畜ブームの立役者となりながら2010年に刺殺されて亡くなった村崎百郎について、妻のマンガ家・森園みるく電子書籍サイト「めちゃコミック」などで連載中の実録エッセイ「私の夫はある日突然殺された」が話題に。『TOCANA』が作品の舞台裏に潜む村崎とのエピソードについて、森園にインタビューしている。
http://tocana.jp/2017/09/post_14564.html

トーハンの「ほんをうえるプロジェクト」が、書店店頭にIoTやAIなどの最新技術を導入しつつ集客と増売を目指す新施策「マクルーハンの本棚」を開始すると発表。電子ペーパーによるPOPのほか「AI書店員」と題したモニターも設置するという。マクルーハンの「メディアはメッセージだ」にちなんで書店店頭もメディアでありメッセージであるというわけだ。
http://www.tohan.jp/news/20170928_1071.html
http://www.excite.co.jp/News/release/20170928/Dreamnews_0000160835.html

黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』の電子版配信が9月29日より始まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001472.000001719.html