【文徒】2017年(平成29)年3月23日(第5巻54号・通巻983号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】「和樂」の脱「紙の雑誌」路線に注目したい
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2017.3.23 Shuppanjin

1)【記事】「和樂」の脱「紙の雑誌」路線に注目したい

クラシコムジャーナル」で「北欧、暮らしの道具店」の青木耕平代表が「和樂」(小学館)の高木史郎編集長に迫る。高木編集長の言葉のセンスが良い。読んでいて「そうだ!そうだ!」と思わず膝を叩いてしまった。「日本文化の民主化運動」に異議なし、である。編集長たるもの反逆のメロディーを口ずさめなければ本来、失格だという常識を私に思い起こさせてくれた。ちょっと「和樂」に注目しようじゃありませんか。
https://kurashicom.jp/1045
https://kurashicom.jp/1096
高木の率いる現在の「和樂」は六つのメディアから成立している。ひとつは隔月刊の雑誌「和樂」。2つ目はウェブメディアの「INTOJAPAN」。3つ目は「JAPANラボ」。高木はこう発言している。
「もともと、色んな企業の方から日本文化を取り入れたいけどどういう風にしたらいいかわからないと相談されることが多くて。これを、きちんとビジネスにしたいなと思いました。
今は、何人かの方が窓口になってくださって『和樂』がコンサルティングを請け負っています」
4つ目は「和樂」プロデュースの商品開発。通販で扱っているオリジナルの招き猫がそうだ。5つ目は「コンシェルジュサービス」。外部のコンシェルジュサービスと組んで、「『和樂』に載っていた旅先に行きたい」とか、「お茶会を開きたい」とかいったオーディエンスのニーズをコーディネートする。このサービスは今年の夏から始まる。6つ目は「七夕入札会」。オークションである。
コンシェルジュサービスやオークションを充実させるのであれば「和樂」は隔月刊どころか、季刊でも良いはずである。私はこういう考え方にしか雑誌の未来はないと思うんだけどなあ。紙の雑誌をビジネスの中核に考える昔気質の出版人には、きっと理解できないのだろうね。まあ、足だけは引っ張らないようお願いしたい。何度でも書く。メディアからサービスへは、時代が要請している力学にほかなるまい。避けがたい力学なのである。

                                                                                                                      • -

2)【本日の一行情報】

カルチュア・エンタテインメントが、徳間書店の株式を取得し、3月21日付けで子会社化することを正式に発表した。リリースには、こうある。
徳間書店は、『GoodsPress』、『食楽』などの魅力的なライフスタイルを提案する雑誌や、『Animage』といった日本のアニメクリエイターを発掘・輩出する雑誌などの出版・発行を行い、その企画・編集力で市場を活性化してまいりました」
そう「アサヒ芸能」の名前がない!
http://www.ccc.co.jp/news/2016/20160321_005213.html

◎「月刊実話ドキュメント」(マイウェイ出版)が、3月29日発売号をもって休刊する。「今月の逮捕」コーナーが名物企画だった。
http://myjitsu.jp/archives/18957
http://www.jitsuwa.net/

集英社の女性ファッション誌「non-no」創刊45周年記念イベントが21日、都内で開催され、同誌5大モデルの本田翼、新川優愛新木優子鈴木友菜西野七瀬が勢ぞろい。
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1795691.html
欅坂46渡邉理佐が専属モデルとなることも発表された。
http://mantan-web.jp/2017/03/21/20170321dog00m200019000c.html
創刊45周年を迎えるだけにいろいろと動きもある。集英社ブランド事業部が運営する「HAPPY PLUS」(ハピプラ)は、同社が発行する9つの女性誌の公式ウェブメディアプラットフォームだが、その中のひとつである「non-no」のウェブサイトを「non-no Web」(ノンノウェブ)としてリニューアルした。デイリーメディアとして強化を図ったのだろう。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000011454.html
https://nonno.hpplus.jp/
これは「non-no」に限った話ではないが、デジタル化を成功させるためには紙の雑誌を買う必要のないくらいコンテンツを充実させることが大切である。

朝日新聞社は、世界初の国際月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」(グーグル・ルナー・エックスプライズ)に日本から唯一参加する「チームHAKUTO」(運営ispace)とメディアパートナー契約を締結した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000347.000009214.html
朝日新聞社は「体力」がある。

フェイスブックは、24時間でコンテンツが消える新機能「Messenger Day」を、日本版のアプリ(iOSAndroid)に追加した。狙いはSnapchatに対抗するため。LINEは、どうするのだろう。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1703/21/news059.html

高橋留美子の全作品が小学館によってデジタル化された。
http://natalie.mu/comic/news/225442

小学館の女性ファッション誌「CanCam」5月号は「名探偵コナン」の婚姻届けも付録だ。
http://animeanime.jp/article/2017/03/21/33026.html

◎グーグルは英国で「ユーチューブ」に投稿されたヘイト動画に政府や企業の広告を掲載した問題で謝罪した。
http://jp.reuters.com/article/britain-google-idJPKBN16R2O8
「フォーブス」は次のように書いている。
「世界6位の広告代理店ハバス(本社フランス)はユーチューブへの出稿を停止した。同社の英国オフィスはドミノピザやエミレーツ航空BBCなどを顧客に持っている。ハバスのユーチューブへの広告出稿額は年間1億7500万ポンド(約240億円)に達するが、これをすべて取り下げた。ガーディアン、ロレアル、ホンダ、大手スーパーマーケットのセインズベリーズらも出稿を停止している」
http://forbesjapan.com/articles/detail/15613
グーグルは即座に広告ポリシーの見直しを発表した。
https://japan.cnet.com/article/35098369/

ドワンゴが運営する動画サービス「niconico」の「ニコニコ静画」で、コア・コーポレーションが運営する漫画同人誌販売書店「COMIC ZIN」で取り扱う同人誌を電子書籍化し販売する「薄い本プロジェクト」がスタートした。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw2699545
こういうのバカにならないんだよね。

◎マガジンハウスの「&Premium」が、インテリアスタイリストの黒田美津子、東武鉄道が手掛ける分譲マンション「ソライエ」シリーズの最新物件「ソライエ成増」とコラボしたモデルルームを、3月末にオープンする。
https://www.atpress.ne.jp/news/124369
http://n-111.jp/

元木昌彦が「週刊文春」に厳しい。
「さて、毎度おなじみだが、このところの週刊誌はいただけない。特にといっては失礼だが、スクープを忘れたかのような文春には少しガッカリしている。
週刊誌の世界では、スクープは月に1度でいい。1回あればその1カ月は読者はついてきてくれる。だが、1カ月以上ないと読者は離れる。新谷編集長も長すぎるので勤続疲労が出てきたのだろうか。心配である」
http://www.cyzo.com/2017/03/post_32003_entry.html

◎知らなかった…神代辰巳の傑作「悶絶!どんでん返し」が小学館によってコミカライズされていたのか。
https://csbs.shogakukan.co.jp/book/?comic_id=21117
荒木一郎の「白い指の戯れ」もコミカライズされている。
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?comic_id=21116
「色情妻 肉の誘惑」も。
https://csbs.shogakukan.co.jp/book/?comic_id=21115
既に昨年、配信されていたのか。私の不勉強を痛感する。
http://www.oricon.co.jp/pressrelease/51895/
私が担当編集者であれば田中登日本映画監督協会新人賞奨励賞を受賞した「(秘)女郎責め地獄」や小沼勝の「箱の中の女 処女いけにえ」もコミカライズするなあ。

◎「ブラック企業やめて上海で暮らしてみました」(扶桑社)で著者の初田宗久が告発するパワハラの横行する老舗出版社ってどこだろう?「雑誌が廃刊になったら、担当の編集者はその責任を取らされ、雑誌の配送センターがある“埼玉の倉庫送り”というパターンが編集部内の常識でした。窓際族送り、つまり事実上のリストラ勧告です。過労死か窓際か。そんな恐怖心で編集マンたちは働かされていたのです」と初田は語っているんだよね。
http://www.sankei.com/west/news/170322/wst1703220003-n1.html

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

悔いの残らない敗北などあるまい。悔いを否定してはならないのだ。問われるべきは、この悔いを糧にできるかどうかなのである。