【文徒】2017年(平成29)年6月6日(第5巻104号・通巻1033号)

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1)【記事】全国各地で開局が相次ぐネット放送「ホンマルラジオ」
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】全国各地で開局が相次ぐネット放送「ホンマルラジオ」(岩本太郎)

出版の現在と未来を考えるとき、ラジオの栄枯盛衰とサバイバルはとても参考になる。
ご存じのようにかつてラジオは無線技術を一方向性のみにし、広告をつけることで無料となるビジネス(民間放送)のプラットフォームとなった。放送メディアの王者として、マクルーハンの解釈によれば、人々をホットにして世界大戦に駆り立てるまでのマザーメディアだった。
しかし、テレビの登場、そしてインターネットの登場で、マス3媒体の中でも、このところは忘れられた存在かのごとくだったかもしれない。ところが、ハガキや電話と結びつき双方向性と聴取者参加を武器に、現在も意外にしぶとくサバイバルしてる。(もっとも猛烈な合理化は不可避だったが)。そして、いまネットとの接続とインディーズ性で新しい局面を切り拓きつつある。
「ホンマルラジオ」というインターネットラジオ局が各地で次々に開局している。「ホンマル」とは「本気丸出し」の略で、2015年に愛媛県のIT企業が始めて以降、全国各地へと急速に広まった。公式サイトによれば現在までに開局しているのは関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄の計12局。都内でも青山、駒込、渋谷恵比寿を拠点に既に活動中。その膨大な放送のライブラリーは以下のサイトから聞くことができる。
http://honmaru-radio.com/
https://www.facebook.com/honnkimarudasi/
さる4日にも三重県四日市市で開局し、同市の商店街で公開収録を行ったそうだ。当地の場合は地元で飲食店や速読教室を展開する会社が運営主体となり、速読教室の会場に録音機材を持ち込んで仮設スタジオとして使い、《北勢地域や津市の助産師、バーテンダー、小説家ら十二人がパーソナリティーとして情報を発信する》スタイルで始まっている。《スポンサーは募らない。運営費はパーソナリティーやゲストも負担する》とも。
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20170602/CK2017060202000035.html
5月31日開局の香川県高松市では、地元の商店街振興組合や市議会議員なども出席した開局セレモニーが開催された模様。
http://pressrelease-zero.jp/archives/112453
東京の渋谷恵比寿では5月27日に開局。当日には開局イベントが、それに先立つ4月下旬から5月中旬にかけては「スタジオ見学会」や「新規パーソナリティ希望者説明会」も開催されたらしい。
http://radio-star.jp/
https://www.value-press.com/pressrelease/182960
名古屋と大阪では昨年8月上旬にほぼ同時開局。この時は名阪同時展開に際して《第一期パーソナリティを20人募集し、基礎トレーニングおよび番組制作後に各種のネットメディアで聴取者を獲得するノウハウを伝える『ネットパーソナリティ養成講座』を実施》したそうだ。《修了後は、パーソナリティページの管理費として月額9,600円が必要になりますが、番組は何回でも収録・公開が可能です。ゲストの出演費用は一回あたり7,400円となっています。収録データの販売は1本29,800円(いずれも税別)です》というから、ようするに出演者が金を払うシステム。いわゆるボランティアベースのネットラジオとは異なり、あくまでビジネスとして運営されているらしい。さらに、今後は以下のような展開を考えているとのことだった。
《当面ラジオのみでの展開となりますが、2016年中に第一期パーソナリティ20人の養成を完了し、2017年春には「ホンマルラジオペーパー大阪」を創刊、相乗効果を高め、2017年中にはパーソナリティのべ100人の獲得を目指します》
https://www.atpress.ne.jp/news/107992

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

トーハンは5日、『週刊新潮』の中吊り広告が発売前に『週刊文春』側へ渡っていたとされる問題についての調査結果を発表。6年前から文春に広告を提供していたことなどを明らかにした。
《株式会社新潮社様の週刊新潮に係る中吊り広告取扱いの件について
株式会社トーハン
週刊新潮に係る中吊り広告の取扱いの件につきまして、当社の株主の方々や取引先様、関係先様に多大なるご心配をおかけいたしましたことを、重ねて深くお詫び申し上げます。
本件につきましては不適切な取扱であり、取引者間の誠実義務に欠けていたことを認め、いち早く新潮社様にお詫びをしております。
当社は、本件発覚後、速やかに新潮問題特別調査委員会を設置し、本件貸し渡しの全容解明に向け調査を継続してまいりました。
当委員会の調査の結果、以下のことが判明いたしましたので、ご説明いたします。
(1)週刊新潮の中吊り広告については、取引先書店様への販促物・拡材の一つとして、平成15年4月頃から当社担当者より新潮社様にお願いして発売日前々日午後にはご提供いただいていたこと。
(2)平成17年春以降には週刊新潮の中吊り広告を社内掲出していたこと。
(3)文藝春秋様の営業担当者から「勉強のため」、「自社は校了後であり内容変更できない」等の話を受け、求めに応じて、当初は、商談中に机上で週刊新潮の中吊り広告のメモを黙認するようになったこと。
(4)平成23年春頃から文藝春秋様の営業担当者からの求めに応じて、発売日前々日午後には週刊新潮の中吊り広告を当社担当者より文藝春秋様に貸し渡しする仕組みが形成されたこと。
(5)以降、平成29年5月8日まで、ほぼ毎週に亘って貸し渡しをしていたこと。
(6)当社担当者は、週刊新潮の発売日前々日午後に文藝春秋様に貸し渡しすることによって、内容変更が間に合うとの認識がなかったこと。
(7)内容変更が間に合うと知っていれば、貸し渡しは行わなかったこと。
これら事実関係について、新潮社様にご報告申し上げるとともに、改めて新潮社様に当社より謝罪を申し上げました。
なお、本件に関連して、当社担当者が金銭授受や饗応などの提供を受けていた事実は確認されておりません。
当社は、本件を受けて、全社的な業務の総点検を行うとともに、組織体制・法令順守体制(コンプライアンス)の強化に努めてまいります。
以上の通り、当委員会における調査に基づき、最終報告とさせていただきます。》
http://www.tohan.jp/news/20170605_987.html
これを受けて『週刊新潮』編集部は以下のような見解を発表したらしい。
文芸春秋側が事実と異なる説明で出版取次会社の担当者を欺き、中づり広告のメモやコピーを取るようになったことが明確になった。看過できない不正行為》(産経)
http://www.sankei.com/affairs/news/170605/afr1706050027-n1.html
《到底看過できない不正行為であり、ジャーナリズムの信頼性の根幹を揺るがす重大問題だ。文芸春秋には猛省を促したい》(日経=共同配信、NHK
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG05HB6_V00C17A6CR8000/
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170605/k10011007391000.html
なお、文春側は上記によれば《これまで発表したコメントの通りだ》(日経=共同)《情報の入手の過程についてはお答えできない》(NHK)。時事通信の取材に対しては5日夜時点で《現時点では新たなコメントはありません》と回答している。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017060501139&g=soc

茨城県守谷市の松丸修久市長が2日、市の公共工事をめぐって自身に不正疑惑があると報じた『FRIDAY』と講談社に対し、1100万円の損害賠償と謝罪文の掲載を求めて東京地裁に提訴。
http://www.sankei.com/affairs/news/170602/afr1706020027-n1.html

◎第39回講談社ノンフィクション賞の最終候補作は青木理『安倍三代』、奥山俊宏 『秘密解除 ロッキード事件――田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』、梯久美子『狂うひと――「死の棘」の妻・島尾ミホ』、中村計『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』、松方弘樹伊藤彰彦『無冠の男 松方弘樹伝』、本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』の計6作品。受賞作は 7 月 20 日に決定。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20170605nonfictionkoho2.pdf

集英社は『ONE PIECE』20周年記念のムック『ONE PIECE magazine』を7月から3ヵ月連続で刊行。7月7日発売の「Vol.1」では、作者・尾田栄一郎へのロングインタビューも載るそうだ。
http://www.oricon.co.jp/news/2091809/full/

小学館と「デジタルメディアのあり方の検討に関する基本合意書」を4月に結んだDeNAが、休止中のキュレーションサイト『MERY』の手法を小学館の『VenusTap』に提供しているのではないかと「はてな匿名ダイアリー」掲載の5月26日付記事が指摘。これに対してDeNA側は「VenusTapは当社とは一切関連がない。制作に協力している事実もない」と、『ITMediaNEWS』の取材に応えてこれを否定した。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1705/31/news118.html
http://anond.hatelabo.jp/20170526135814

◎新潮社から2月に刊行された村上春樹騎士団長殺し』について「五十万部以上が返本される可能性が取り沙汰されている」などと『選択』が報じている。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170605-00010000-sentaku-soci

◎ネットメディア「ガジェット通信」が全面協力するという写真中心のアイドル雑誌『アイドルヴィレッジ』が5月31日に創刊され、各地のヴィレッジヴァンガードHMV、有名書店で発売中。アイドルの写真を載せた「両面表紙」が売りの一つらしい。
ただ、両面表紙というと、かつて元『SPA!』編集長の渡邊直樹がアスキーに移って創刊した一般誌『週刊アスキー』で採用したものの、ほどなく同誌が全面リニューアル(というより渡邊も降板となり、実質的に休刊のうえ同じタイトルで週刊パソコン誌として復刊)に追い込まれたという故事が私には思い浮かんでしまうのだが。
部数が低迷する中で「表4なくして売り上げ減らしてどうするんだ」という不平がアスキー社内に充満していたものだ。
http://getnews.jp/archives/1764887

◎『図書新聞』の発行・発売元が6月1日より(株)図書新聞から武久出版(株)に移管された。
http://www.toshoshimbun.com/books_newspaper/
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170531/prl1705311342095-n1.htm

仲俣暁生が「市営の書店」として昨年暮れの開店時から話題を集めた「八戸ブックセンター」を訪問取材。
http://magazine-k.jp/?p=22385

◎経営難からクラウドファンディングによる資金募集を始めた大宅壮一文庫は専用の公式Twitterアカウントも開設している。
https://twitter.com/CrowdOyaBunko

◎6月初めの「世界卓球2017」の視聴率が好調だったテレビ東京が、ビデオリサーチによる週間のゴールデンタイム平均視聴率で「民放第3位」となる8.6%を記録。1964年の開局以来初の快挙だそうだ。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/06/05/kiji/20170605s00041000122000c.html

◎ABC(朝日放送)・テレビ朝日系で4日夜に放送されたバラエティ番組「めざせ!100% 地球ギャラリー コレクターズ99」で、CM中に画面がフリーズして86秒間にわたり“無音放送”となる事故が発生。
https://www.daily.co.jp/gossip/2017/06/04/0010253953.shtml

中部日本放送CBC)が公式サイトで連載している「民放ラジオ史の変遷」は読ませる。ラジオ、テレビも含めて日本の民間放送の歴史は1951(昭和26)年開局のCBCラジオ、すなわち名古屋から始まっているのだ。
https://radichubu.jp/culture/4991

電通は日本の文部科学省に相当する中国の「教育部」との間で「電通・中国広告未来人材イノベーション協同プロジェクト」(2017〜2020年)の調印式を1日に北京市で行った。中国を代表する6つの大学を対象に実施していた「日中広告教育交流プロジェクト」(1996〜2004年)に続いて、2005年から行ってきた「電通・中国広告人材育成基金プロジェクト」を改称したものだ。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0605-009306.html

◎学研プラスは人気のゲーム「マインクラフト」を使った小中学生向け「プログラミングキャンプ」(短期集中講座)を各地で催しているが、6月17・18日には三省堂書店の池袋本店で開催する。
http://ict-enews.net/2017/06/05gakken-tech/

◎1980年代に絶大なる人気を誇ったロックバンド「BOOWY」をめぐり新たなプロジェクトが動き出しているらしい。ハッシュタグ「BOOWY0807」がアナウンスされ、彼らの出身地・群馬県高崎市の駅などでは「BOOWY 20170807」とのみ記されたポスターが掲出されている。ファンの間では8月7日に再結成ライブが行われるのではないか(当日の東京ドームは空いているらしい)などの噂が飛び交っている模様。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1706/03/news019.html

◎大手アニメ制作会社のProduction IGが、アニメ視聴アプリ『タテアニメ』を正式稼動すると5日に発表。文字通りスマホを縦に持って視聴する、縦型表示のアニメ(長さは3分ほどで、1タイトルにつき5〜10本)を配信するのだそうだ。
https://www.tateanime.com/
http://www.appps.jp/265098/#QLYGAC2.twitter_responsive