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1)【記事】宮本輝の芥川賞選評における「差別発言」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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- 2017.8.21 Shuppanjin
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「真ん中の子どもたち」 (集英社)が芥川賞候補となった温又柔 が8月11日に次のようなツイートを投稿している。
「どんなに厳しい批評でも耳を傾ける覚悟はあるつもりだ。でも第157回芥川賞某選考委員の『日本人の読み手にとっては対岸の火事』『当時者にとっては深刻だろうが退屈だった』にはさすがに怒りが湧いた。こんなの、日本も日本語も、自分=日本人たちだけのものと信じて疑わないからこその反応だよね 」
https://twitter.com/WenYuju/status/896057759019302912
これは既報の通りだが武田砂鉄は「論男時評」で次のように書いている。
「宮本の評は、温又柔の小説での試みを根こそぎ否定したつもりなのだろうが、これは小説の否定ではなく人種の否定である。『文藝春秋』誌には受賞作しか掲載されないので、この差別的な選評だけで作品が把握されることはこの上なく酷である。だが、さすがに他の選考委員は、温又柔の小説に肯定的であっても否定的であっても、『対岸の火事』といった、だらしない評を下してはいない」
http://wezz-y.com/archives/49788?read=more
「ママたちの下剋上」(小学館)や「ひとかどの父へ 」(朝日新聞出版)などの作品で知られる深沢潮も温に同調している。深沢の父母は在日韓国人である。
「対岸の火事を書き続けますよ。この一件で、こうした空気が社会に蔓延し、このような人が文学界の重鎮であるからこそ、我々は書くしかないと思う。きちんと怒りを表明する温又柔さんを尊敬します。差別だと言語化してくれる方の存在にも励まされる 」
https://twitter.com/fukazawaushio/status/897948493116866560
https://ddnavi.com/news/237943/a/
「戦場のコックたち 」(東京創元社)の深緑野分のツイート。
「芥川賞の某選考委員による温又柔さん作品の選評から、私は違う立場だけど『日本人が日本人不在の西欧を描くことの是非』みたいな選評を書かれたのを思い出した。日本人日本人うるせえよと思うし、私が作家としても『沈黙』における『日本に生きるキリスト教徒』になるのならばそれもいいと思ってる 」
https://twitter.com/fukamidori6/status/896392061376536576
宮本の選評について「これはもう差別発言」とツイートした 星野智幸は「すばる」(集英社)9月号の書評で「真ん中の子どもたち」を取り上げている。
「ミーミーたちを追い詰めているのは、言語と国籍と血がすべてイコールで結ばれる単一民族国家幻想である。すなわち、日本人の親を持ち、日本国籍を持ち、正しい日本語を母語として話すのが、純粋な日本人、というアイデンティティのあり方である。このカテゴライズからはみ出す要素を持つ三人は、その線引きを突きつけられるたびに、アイデンティティの危機に突き落とされる。しかも、留学先の中国でも、幾重にも正統性を否定される羽目に陥る」
https://twitter.com/hoshinot/status/896253192123502592
http://subaru.shueisha.co.jp/books/1709_2.html
「イサの氾濫 」の木村友祐は星野の書評を踏まえたうえで次のようにツイートしている。
「『すばる』9月号の温又柔『真ん中の子どもたち』書評(星野智幸氏)。この全文、とくに写真の段落に書かれていることを、全面的に支持する。この作品に対し、『日本人の読み手にとっては対岸の火事』と言い放つ作家がいることに愕然したあとには、なおさら 」
https://twitter.com/kimuneill/status/896271803303067648
勁草書房編集部もこんなツイートを投稿している。
「今日の通勤読書。温又柔さんの『真ん中の子どもたち』。私には『対岸の火事』でも『他人事』でもなく、国籍や言語や自分の住んでいる土地、歴史、社会について考えたり想像したりするきっかけに満ちた刺激的な本でした。(せ) 」
https://twitter.com/keisoshoboedit/status/898463243487793153
宮本の「差別発言」は批判されて当然だろう。いずれにしても私は温又柔の「台湾生まれ 日本語育ち」(白水社)を読んだときの衝撃が忘れられない。その小説版が「 真ん中の子どもたち」なのではあるまいか。ここをどう評価するかだよね。東京新聞で「文芸時評」を担う佐々木敦も「温又柔『真ん中の子どもたち』(『すばる』4月号)は、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した『台湾生まれ 日本語育ち』の小説版というべき作品である」としたうえで次のように書いている。
「『国語』をめぐって語られるエピソードのひとつひとつが興味深い。一挙に十五年の歳月が経過した最終章で、或(あ)る人物が問いを発する。『母親から受け継いだ言葉』と形容されがちな『母語』は、本当に一つなのか。答えも提示される。一つではない。「母語」は複数の言語から成っている」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/jihyou/CK2017033002000286.html
中島京子と対談している映像が残っている。
https://www.youtube.com/watch?v=0drAGeH6YLI
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2)【本日の一行情報】
◎電通の7月単体売上高。マス4媒体は総て前年割れ。なかでも雑誌は前年比72.8%。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017092-0809.pdf
電通は4月以降4か月連続してマイナス成長ということになるのか。もっとも、これはあくまでも電通単体の売上高の話。第2四半期連結業績の収益は4,394億85百万円(前年同期比11.8%増)、売上総利益は4,146億10百万円(同12.5%増)、調整後営業利益は643億54百万円(同6.2%減)、営業利益は453億7百万円(同22.8%減)、親会社の所有者に帰属する調整後四半期利益は410億10百万円(同5.9%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は307億12百万円(同14.2%減)。
M&Aの貢献により海外事業の売上総利益は、2,343億98百万円(前年同期比25.9%増)と大幅に増加している。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017093-0809.pdf
◎JALUXは、オリジナルトラベルファッションブランド「TABITUS(タビタス)」と、さまざまなブランドとのコラボ商品を、JALグループ機内誌「JALSHOP」やマイルがたまるショッピングサイト「JALショッピング」等で販売しているが、そのなかのひとつ「パッカブルジャケット」は、世界文化社の「MEN’S EX」の監修のもと、石川県のテキスタイルメーカー、カジナイロンのオリジナルブランド「Timone(ティモーネ)」とのコラボから生まれた贅沢なジャケットだそうだ。
https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201708164639/
◎ベルと主婦の友社はWEBメディア「Tokyo Cawaii Media」(TCM)の共同運営を開始している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000014644.html
ベルは「Tokyo Cawaii Media」のほかにも、「日刊Ranzaki」(ぶんか社)、「アンドガール」(エムオン・エンタテインメント)、「bis」(光文社)、「CYAN」(カエルム) のWebメディアを制作・運営している。
http://corporate.vell.jp/vell_media_guide.pdf
◎delyは、小学館の「週刊少年サンデー」で連載中の「銀の匙」(荒川弘)のコミックス最新14巻の発売を記念し、レシピ動画サービス「kurashiru」(クラシル)でコラボ動画の配信を開始した。
https://www.atpress.ne.jp/news/135536
◎ディスカヴァー・トゥエンティワンが主催する「第3回 本のサナギ賞」の大賞受賞作品「君のことを思う私の、わたしを愛するきみ。」(佐木隆臣)が発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000160.000018193.html
◎アイドルグループ「AKB48」の劇場公演「あおきー『世界は夢に満ちている』」は「FLASHスペシャル」(光文社)の編集長を務める“あおきー”こと青木宏行がプロデュースするそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20170816/dyo/00m/200/014000c
元「LARME」中郡暖菜編集長を光文社に引っ張って来たのも青木である。中郡は秋元康系の才能(時代精神=トレンドキャッチャー)ということである。
◎学研グループのブックビヨンドと学研プラスは、全国の幼稚園・保育園でお馴染みの月刊絵本「おはなしプーカセレクション」から5冊を電子書籍化し、主要電子書籍ストアから配信する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000347.000009949.html
◎LINEは博報堂DYデジタルとともに、LINEが提供する各種広告サービスにおける効果の最大化を目的として、「LINE」上での広告効果測定の精緻化を図る共同プロジェクトを開始した。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2017/1839
「LINE ビジネスコネクト」の販売代理店 は確か電通テックだったよね。
https://www.dentsutec.co.jp/digital-marketing/line/
◎ビジネス社から「沖縄を本当に愛してくれるのなら、県民にエサを与えないでください」が刊行されたが、「ビジネス社がひどいヘイト本の宣伝をして批判殺到してる模様」という「まとめ」サイトが早くも立ち上がった。
https://matome.naver.jp/odai/2150285383409867601
◎今頃になっても7月末に発売した「GLOW」9月号の付録「大人ネイル12点セット」が「豪華すぎる!」とSNSで話題になっている?!宝島社の女性誌は付録しか話題にならないようだ。
http://howcollect.jp/article/27392?nc=1
「紙」の部分に広告媒体としての価値はあるのだろうか?
◎「週刊ポスト」9月1日号のこの記事が話題だ。8月8日に日本テレビの目の前のビルから同局子会社のAD女性が「飛び降りた」という。命には別状はなかった。
「今年の『24時間テレビ』のメインテーマは『告白〜勇気を出して伝えよう〜』。女性スタッフの職場には悩みを告白できる環境がなかったのだろうか」
https://www.news-postseven.com/archives/20170818_605280.html?PAGE=1#cntainer
広告業界は働き方を変える過程でテレビ業界に学んで「二重構造」化を進めるのかもしれない。低生産性部門を下請けにアウトソースするという日本的な方法の導入だ。
◎「ITmedia ビジネスオンライン」に掲載された「電通の働き方改革はうまくいくのか」は次のように書いている。
「ところが日本では、電通のような企業がエージェンシーとメディアレップを兼ねており、メディアと広告主の仲立ちをする形になっている。
しかし、できるだけ安く出稿したい広告主と、できるだけ高く売りたいメディア側では、そもそも利害が一致しない。しかも、圧倒的なシェアを持つ電通は利害が対立する複数のクライアントを同時に抱え込むことになる。
一連の利害をうまく『調整』するのが日本の広告代理店の役割であり、そのためには膨大な労力が必要とされる。慢性的な長時間労働体質になっているのは、この辺りに根本的な原因がある」
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1708/16/news018.html
「調整」に欠かせないのは、私の経験から言っても「忖度」にほかならない。
◎リクルートの中古車情報誌「カーセンサー」10月号の特集は「だいすき!スーパーカー! 〜今月は子どもと一緒に自由研究〜」。子供向け特集なのである。表紙は「ぬりえ」!
https://www.rbbtoday.com/article/2017/08/17/153937.html
◎こうの史代 の「夕凪の街 桜の国」「この世界の片隅に」(双葉社)の複製原画展が江戸川区立中央図書館で開催されている。「今回の原画展は、「夕凪の街〜」に感動した図書館の中高生向け広報紙の高校生スタッフが五年前、こうのさんの担当編集者にインタビューした縁で実現した 」(東京新聞)そうだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201708/CK2017081802000161.html
◎学研ホールディングスの第3四半期連結業績 。売上高が前年同期比3.1%増の766.66億円、営業利益が同2.4%減の27.48億円、経常利益が同2.6%減の29.42億円 。
注目すべきは売上構成比の約2割を占める医療福祉サービス事業が業績を拡大 していることだ。看護師向けe-ラーニング「学研ナーシングサポート」や直近1年間に9施設開業した サービス付高齢者向け住宅 、直近1年間に3施設開設した保育園などの事業を擁する医療福祉サービス事業 の売上高は前年同期比12.2%増の156.89億円、営業利益は同2.8倍の5.37億円 。
http://file.swcms.net/file/gakken/ir/news/auto_20170808451357/pdfFile.pdf
「出版」は教育関連に絞り、「出版」以外で成長していこうという考え方なのだろう。そうであれば手を広げ過ぎた「出版」の更なる整理は避けて通れないはずだ。
◎LINEはアップデートを行い、トークルーム内でライブ中継ができる「チャットライブ」機能の提供を8月16日に開始した。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2017/1841
◎沼田まほかるの「 ユリゴコロ 」が熊澤尚人監督により映画化され、9月23日(土)より 全国公開される。主演は吉高由里子 。また、亜月亮 によってコミカライズもされた。版元はともに双葉社。
https://abematimes.com/posts/2816881
◎中央日報によれば「辛東主(シン・ドンジュ、重光宏之)前ロッテホールディングス副会長(63)が執筆した父・辛格浩(シン・ギョクホ、重光武雄)ロッテグループ名誉会長(95)の一代記『私の父、辛格浩』が来週出版される 」というが、日本では刊行されるのだろうか。
http://japanese.joins.com/article/462/232462.html
◎サントリー の「角瓶」は80周年を迎える!「角瓶80周年記念 角ハイボールガーデン」 が8月31日〜9月3日 の期間限定で六本木ヒルズにオープンする。
http://www.suntory.co.jp/news/article/12977.html
角瓶のボトルをじっくりとながめて みるとわかるが、「角瓶」の文字は記されていない。
◎ブックリスタがプラットフォーム提供し、KDDI が運営する電子書籍ストア「ブックパス」では、毎日放送系ドラマ「伊藤くんA to E」の原作小説(柚木麻子著、幻冬舎刊)が期間限定で読み放題となるキャンペーンを9月17日(日) まで開催 している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000243.000006388.html
◎シネボーイが立ち上げ、フィルムアート社から発売された出版レーベル「PAPER PAPER」の第一弾は、映像と仕事をテーマにした対談集「トーク・アバウト・シネマ『特撮・CG・VFX』から語る映像表現と仕事論」だったが、同社は8月1日より電子書籍版を紙版の半額に当たる600(税抜き) 円でリリース した。
https://www.atpress.ne.jp/news/135417
◎創刊1000号 を迎えたKADOKAWAの情報誌「東京ウォーカー」の表紙を飾ったのは東京都知事の小池百合子。全盛期は週刊誌であったが、今は月刊誌である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003575.000007006.html
「東京ウォーカー」が有料で提供する情報と、ネットから無料で入手できる情報のどちらが信頼できるのか。正解は「ともに信頼できない」となるのだろうが、無料の情報には腹も立たないが、有料の情報には当然、腹が立つ!ということである。
◎主婦の友社の「魔法のパッド」シリーズ は累計150万部を突破しているが、このシリーズから「大山式 for WOMEN ZERO 美脚 」が発売された。価格は1980円+税 。
https://ddnavi.com/news/393940/a/
◎パンシェルジュ検定を運営する日販は、ぴあとともに9月16日(土)〜18日(月・祝)の3日間、横浜赤レンガ倉庫前イベント広場にて「パンのフェス2017秋 in 横浜赤レンガ」を開催 する。
http://www.nippan.co.jp/news/pannofes2017_autumn/
◎日販が「だし検定」を来年1月に実施する。
http://www.nippan.co.jp/news/kentei_dashi/
「だし検定公式テキスト 」は実業之日本社から9月に発売される。1500円+税 。
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3)【深夜の誌人語録】
一歩踏み出さない限り、前進も挫折も飛躍も失敗も何もない。