【文徒】2018年(平成30)3月28日(第6巻56号・通巻1230号)

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1)【記事】「素敵なダイナマイトスキャンダル」の末井昭編集長
2)【記事】長崎尚志は元「ビッグコミックスピリッツ」編集長
3)【記事】最後の「GINZA」中島敏子編集長
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.3.28 Shuppanji

1)【記事】「素敵なダイナマイトスキャンダル」の末井昭編集長

末井昭の自伝的エッセーを原作とした冨永昌敬監督の映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」に酔った。ステキな映画である。ちゃんと毒を孕んでいるしね。映画を見ながら私がブル新や商業出版に溶け込んだのは業界誌を介してであったことを思い出していたことは言うまでもない。
https://www.zakzak.co.jp/ent/news/180324/ent1803246046-n1.html
末井昭が次のようにツイートしている。
「母親がダイナマイト心中したときの小学校の担任だった小林定子先生から電話があった。今年95歳、お元気な様子で、昨日岡山のシネマクレールで『素敵なダイナマイトスキャンダル』を観てくれたそうだ。佑くんが僕に似ていて、末井くんと会っているようでそれだけでも嬉しかったとおっしゃっていた。涙」
https://twitter.com/sueiakira/status/976268199405666304
これが、ダイナマイト心中してしまった母親のお墓である。
https://twitter.com/sueiakira/status/977799374523613184
末井の「戦争絶対反対!」って実に奥が深いんだよなあ。
https://twitter.com/sueiakira/status/978410231544692736
「権力と戦うことが無意味だとは思わないけど、絶対に勝てない戦いでしょ。ましてや雑誌の検閲では警察に呼び出されるわけで、こっちはひとりですから。それに、性格的に人と戦うのがあんまり好きじゃないんだよね。相手が権力であってもなくても“戦い放棄”なんです、僕は」
http://wpb.shueisha.co.jp/2018/03/20/101761/
仕事では戦わなくとも、誌面では戦おうと主張する編集者が最近では増えているように思えてならない。今も昔も偏差値編集者が主流だけれども、横道やら裏道から「ひょんなこと」をきっかけにして編集者になってしまうというケースが昔に比べ今は減ってしまった結果なのかもしれない。

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2)【記事】長崎尚志は元「ビッグコミックスピリッツ」編集長

3月31日からWOWOWで放送される「連続ドラマW 闇の伴走者〜編集長の条件」は長崎尚志の小説「編集者の条件」(新潮社)が原作だ。長崎尚志は、元「ビッグコミックスピリッツ」編集長である。小学館は既に退社している。
https://natalie.mu/eiga/pp/bansosha2
http://www.shinchosha.co.jp/book/332173/
「謎の独立国家ソマリランド」の高野秀行が次のようにツイートしている。
長崎尚志『編集長の条件 醍醐真司の博覧強記推理ファイル』(新潮社)を読了。ミステリ部分より蘊蓄の方が面白い。日本の漫画文化のベースには紙芝居文化があったなんて初めて知った。漫画編集部のリアルなやりとりや企画の立て方も同業に近い者としてはひじょうに興味深い」
https://twitter.com/daruma1021/status/975548736163127296
長崎自身は「編集者の条件」について「週刊文春」で次のように語っている。
「じつはこの作品は私自身がマンガ誌の編集長をやっていたときにやれなかった、ある種の後悔が書かせた部分もあると思います。日常業務や目先の売上に追われてつい忘れてしまうのは、マンガ雑誌の本分は何か、創刊コンセプトは何だったのかという根源的なこと。改めてそのことを考える機会にもなりました」
http://bunshun.jp/articles/-/6591
「みふもとうとりあ」は小学館の現役編集者だ。
「元先輩でもある長崎尚志氏の新作小説「編集長の条件」読んだ。今作も面白く読んだが、いつもに増して漫画への愛に溢れている感じがした。これ、もっと若い頃読んでたら、すぐにでも青年漫画について、長崎さんにいろいろ聞きに行っただろうと思う。青年誌の漫画編集者は一読してみたらどうだろう」
https://twitter.com/izumonoari/status/972855670855774208
長崎は様々な名義、例えばプランダ村、空論(創作委員会)、江戸川啓視東周斎雅楽、ビッグ・オー、リチャード・ウーといった名義を使ってマンガの原作を書いて来たことでも知られている。マンガを読めばわかるけど長崎って政治好きだよね。

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3)【記事】最後の「GINZA」中島敏子編集長

「ほんやのほん」で高山かおりは次のように書いている。
「特にのめり込むようになったのは、2011年5月号、編集長が中島敏子さんに代わってからだ。あの時、手にとった瞬間に感じた、革命が起きた、という興奮を今でも鮮明に思い出すことができる。
女性ファッション誌は、当たり前だがファッション情報が中心の記事構成だ。だがこのリニューアル号で重きが置かれたのは、ファッションというよりも生き方だったように思う」
http://www.asahi.com/and_w/articles/SDI2018032355071.html?iref=andw_pc_top_lar_text002
中島敏子編集長の「GINZA」が時代の関心を集めたのはファッション誌のパラダイムから逸脱していたからである。中島を迎えての連続トークイベントが代官山 蔦屋書店で開催される。3月30日(金)と4月1日に開催され、ゲストは「Chaos / Balance」の水谷太郎と「BACON ICE CREAM」の奥山由之。
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2018/03/ginza-presents-special-night-vol2-ginza.html
広告業界的には「POCARI SWEAT」の奥山といったほうがわかりやすいか。
https://twitter.com/okuyama_333/status/974586861740965888
いずれにしても中島がマガジンハウスで異才を放ち得たのは「アンアン」の芸風に1mmも染まっていなかったからである。むしろ、中島はマガジンハウスを支えて来た男性誌の嫡子と位置づけるべきだろう。

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4)【本日の一行情報】

◎1969年の放送開始から「サザエさん」の番組スポンサーを務めてきた東芝が25日の放送を最後に降りた。4月1日の放送分から、アマゾンジャパンやベビー用品専門店の西松屋チェーン大和ハウス工業が新たにスボンサードすることになったが、実は美容外科高須クリニック」も番組スポンサーに名乗りを上げていた。日刊スポーツによれば高須克弥院長はスポンサーになれなかったことが未だに悔しいようだ。日刊スポーツが「高須院長サザエさんスポンサーに未練『悔しいなう』」を掲載している。
「番組スポンサーをめぐっては、高須氏が東芝の降板が明らかになった昨年11月にツイッターで『電通とフジテレビにすぐに連絡した。 高須グループのハウスagencyと値段交渉開始なう』といち早く名乗りをあげていたが、今年1月に入札で敗れてしまったことを報告。
『昨年 広告代理店に提示されたスポンサー料で1番にオーダーした。広告業界では電話一本で話が決まる 普通はこれで契約は終わりのはずだ フジテレビの営業も広告代理店も喜んでいた。鉄板で高須クリニックがスポンサーになると信じて疑わなかった』とボヤき、その後フジテレビ側から謝罪を受けたことを明かしていた」
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201803260000224.html

Netflixと包括的業務提携を締結した日本のアニメーション制作会社であるProduction I.Gボンズの社長が「日刊SPA!」のインタビューに答えている。Production I.G石川光久代表取締役社長は次のように語っている。
「アニメは当然権利ビジネスですから、関連グッズやイベントなどの二次的な展開も広げていきたい。でも、その内容や規模などのコントロールはすべて製作委員会に委ねられています。今回は作ったコンテンツの配信以外の権利が制作会社に残るので、ヒットしたときの利益率は大きい。しかも、自分たちの判断で二次展開も考えていくことができるんです」
https://nikkan-spa.jp/1462236

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の堀越耕平僕のヒーローアカデミア」の劇場版アニメ映画のタイトルが「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 〜2人の英雄(ヒーロー)〜」に決まった。公開は8月3日から。
https://j-mag.org/2018/03/26/heroaca_movie_news-2/

◎いよいよ「神保町ブックセンター with Iwanami Books」がオープンする。
「1階の『本喫茶』店内には現行販売されている岩波書店主要出版物をご用意。日中は本が読めて買える喫茶店として、さらに夕方以降は本に囲まれながらゆっくりとお酒なども楽しめる場として営業する。また、本に囲まれた空間で集中して作業ができるワークラウンジと会議室、サービスオフィスといったコワーキングスペースを『仕事場』として提供。ワークラウンジでは、岩波書店の書籍に関するイベントのほか、著者を招いたトークイベント、ワークショップやスクール(連続講座)、読書会などを定期開催する」(『FASHION HEADLINE』)
https://www.fashion-headline.com/article/19091
たとえ神保町が本の街であったとしても、岩波書店主要出版物を取り揃えているという程度の個性では書店専業では生き残れないということなのである。

小学館の「あなたの言葉を辞書に載せよう。2017」キャンペーンには4,335件の応募があり、厳正な審査により選ばれた、10の言葉の語釈(合計50)が発表された。順次デジタル大辞泉に掲載されるそうだ。「歴史」では「くり返されるもの。その大部分は失態。」という語釈が選ばれていた。歴史とは喜劇を繰り返す悲劇と解しては自虐史観と後ろ指を指されるのだろうか。
http://kotoba.daijisen.jp/2017/goshaku/

◎ロイターによれば「欧州連合(EU)は、インターネットにおける米グーグル(GOOGL.O)の独占的な存在に『深刻な疑念』を抱いており、同社解体の可能性を否定していない」そうだ。
https://jp.reuters.com/article/eu-google-antitrust-idJPKBN1H20HO

◎AbemaTVの「けやきヒルズ」で朝日新聞GLOBEの藤えりかは次のように語った。
「今のネットメディアは、いかにたくさんの人に見てもらうかが主なビジネスモデル。新聞の調査報道では、エース級の記者を一定期間、取材に専念させて、たとえしばらく何の成果が出なくても待つ、その間、ビジネスを別途回して支える。ネットメディアにできないというわけではないが、かなりの覚悟とインフラをもって、既存メディアも含めて目先のページビューなどにとらわれずに取り組むことが大事」
https://abematimes.com/posts/3923481

ハースト婦人画報社の女性ファッション誌「25ans」5月号は稲垣吾郎草磲剛香取慎吾の「新しい地図」の3人が表紙を飾る特別版も発売する。三人は記事にも登場するが通常版は4頁だが、特別版は12頁だ。通常版 800円(税込)、特別版850円(税込)。
https://www.hearst.co.jp/whatsnew/180328specialissue

Facebook最高経営責任者(CEO)ザッカーバーグは、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト、ウォールストリートジャーナル、ジオブザーバー、サンデータイムス、メイルオンサンデー、サンデーミラー、サンデーエクスプレス、サンデーテレグラフという米英の3月25日付け新聞複数紙に全面広告を掲載し、Cambridge Analyticaのデータ不正使用スキャンダルに関して謝罪した。
https://japan.cnet.com/article/35116641/
ただし、「謝罪文には具体的なアプリ名(thisisyourdigitallife)や研究者名(英ケンブリッジ大学のアレクサンドル・コーガン教授)、データの売却先(データ解析企業Cambridge Analytica)は記載されていない」(ITmediaニュース)。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1803/26/news060.html

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5)【深夜の誌人語録】

過去を大切にすることなしに今を充実させることはできまい。