【文徒】2018年(平成30)8月17日(第6巻154号・通巻1328号)

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1)【記事】トーハンが三洋堂HDと資本業務提携、筆頭株主に。
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】トーハンが三洋堂HDと資本業務提携、筆頭株主に(岩本太郎)

既報の通りトーハンと三洋堂ホールディングス(HD)は14日付で資本業務提携を行うことについての契約書を締結し、同日に発表した。これによりトーハンの三洋堂HDにおける所有議決権割合は36.50%の筆頭株主となった。
http://www.tohan.jp/news/20180814_1255.html
第2位はそれまでの筆頭株主だった日和エステート(23.53%)、第3位は三洋堂HD社長で、三洋堂書店創業者の加藤一の子息である加藤和裕(10.15%)である。承知の通り、三洋堂は4年前にゲオホールディングス(ゲオHD)と資本業務提携を行い、レンタル映像用ソフトの一元化などの効率化を図ったが、この際には三洋堂HDからゲオHDに対して割り当てられた発行済み株式は6万株であり、ゲオHDは1.02%の株式を保有する第10位の株主となるにとどまっていた。
https://minkabu.jp/news/753409
以後もコインランドリー事業や教育事業などへの進出を通じて多角化を進めたものの、逆に投資のコストが負担になっており、同社が14日付で発表した資料でも今回の提携の「目的と理由」を以下のように説明している。
《新規事業として平成27年2月にコインランドリー事業に、平成28年10月に教育事業に参入をいたしましたが、現段階では投資回収が想定を下回る状況が続いたため、コインランドリー事業及び教育事業については店舗網拡大の意思決定を保留しております。
一方、平成29年11月にフランチャイジーとして1号店を開店したフィットネス事業(略)は、好調な業績が続いております》
《また、抜本的な店舗運営コストの見直しにつきましては、昨年度にレンタル専用セルフレジを自社開発し、当第1四半期連結会計期間末までに8店舗に導入しております。(略)その為、このフィットネス事業導入及び物販セルフレジ開発・導入を実現させるための設備投資資金について調達方法を検討してまいりました。今後の事業運営の安定化のためにも自己資本の充実と財務の健全性の強化を図っていくことが重要であるとの考えから、返済に伴うキャッシュ・アウトや金利負担によるコストの増加を招く金融機関からの借入ではなく、直接金融による調達を選択いたしました。その中でも、現在の資本市場の動向等を鑑みますと公募増資や株主割当増資、あるいは新株予約権といった手段では資金の調達時期が不明確になるなど、当社が意図する資金調達が行えるとは言い切れず、第三者割当による新株式の発行が望ましいと判断いたしました。
そこで、当社の大株主であり、人的関係も深いトーハンとの意見交換を進めてまいりましたが、その中で第三者割当増資にとどまらず、トーハン及び同社グループ書店との緊密な関係を築くことが、出版社などの仕入先からの商品調達やテクノロジーを活用した書店モデルの開発においても店舗数などのスケールメリットを生かした効果を期待できることから、今後の成長戦略を描く上で有効であり、中長期的に当社の企業価値の向上に資するものと判断し、本資本業務提携を実施することとしました》
http://www.sanyodohd.co.jp/wp-content/uploads/2018/08/20180814-03.pdf
前出の三洋堂HD社長の加藤は2000年に社長に就任。翌2001年には《「複合書店」を進化させ、我が国最大の複合メディア企業を作る。(略)2010年までに株式を公開し、2025年までに北海道から沖縄まで47都道府県に1,000店舗を展開する》との構想を掲げていた。2006年にはJASDAQに上場。2012年には持株会社体制に移行している。
http://www.sanyodohd.co.jp/businessinformation/history50/part2/chapter1/
2年前に朝日新聞のインタビューに応じて語った中でも加藤は、書店をめぐる環境が厳しくなる中で《『本を核としたバラエティーストア』という考え方だ。本やDVDなどの物を売ったり貸し出したりするだけでなく、ネットに奪われにくいサービスも展開していく》と、多角化への意欲を語っていた。
http://www.asahi.com/area/aichi/articles/MTW20160627241380001.html
しかし最終的にはそのための投資の回収も進まず、銀行からの借り入れもままならぬまま「本業」の主要取引先であるトーハンに頼らざるを得ないとの判断に至ったということではないのだろうか。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎2015年に閉店した札幌市「くすみ書房」店主の久住邦晴(昨年8月28日没。享年66)の遺稿を元に再編集した『奇跡の本屋をつくりたい〜くすみ書房のオヤジが残したもの』が、没後一周忌にあたる今月28日にミシマ社より発刊される。同社公式サイト「みんなのミシマガジン」では9日から特設コーナーでの連載を開始。発売日の28日には札幌市の「書肆吉成」で記念イベントも予定されているそうだ。
https://www.mishimaga.com/books/kiseki-honya/000397.html
https://www.mishimaga.com/books/kiseki-honya/000414.html
http://camenosima.com/

山口県周南市古書店「マツノ書店」の元店主・松村久が10日に膵臓がんのため死去。享年85。古書店経営の傍ら幕末・明治維新に関する文献の復刻出版に取り組み、2007年には第55回菊池寛賞を受賞した。
https://www.sankei.com/west/news/180814/wst1808140062-n1.html

◎大相撲の元小結・板井圭介が死去。享年62歳。14日に墨田区の自宅で倒れているのを知人が発見したという。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018081500005&g=obt
板井といえば大相撲「八百長」告発が有名だ。1980年代から八百長問題をずっと追い続けてきた『週刊ポスト』では、現役時代に所属していた大鳴門部屋などを中心とした多くの「八百長」、さらには「相撲賭博」に関する証言を行うなど活躍。小学館から『中盆 私が見続けた国技・大相撲の“深奥”』も上梓している。『週刊現代』の八百長告発記事をめぐる日本相撲協会との裁判でも証人として出廷した。
https://www.news-postseven.com/archives/20110221_13235.html
https://www.news-postseven.com/archives/20110212_12585.html

集英社『SPUR』は8月号・9月号と2号連続で完売したそうだ。「SPUR.JP」は7月期で月間3781万PV、216万UUを突破。来年9月には創刊30周年と「SPUR.JP」開設10周年を迎える。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000011454.html

集英社キャラクタービジネス室はゲーム会社のエイリム、ソフトハウストライエースとの3社で展開する合同プロジェクト「MIST GEARS(ミストギア)」について15日付で発表した。スマホ向けゲーム、漫画、小説を中心に複数のメディアで同時に楽しむことができる完全オリジナルコンテンツで、天野洋一が手掛けたイメージボードも同日に公開された。
https://mistgears.jp/top.html
https://twitter.com/mistgears_pr/status/1029572924858986496
http://gamebiz.jp/?p=217903

◎メルカリに「甲子園の土」の出品が相次いでいるそうだ。大会に出場した高校球児らが持ち帰ったものが、ボトルや瓶に詰めた形で販売されている。メルカリの広報担当者は『ITmedia』の取材に《規定に違反していないため、土の出品は禁止していません。中身が本物かどうかは分からないですが、ユーザーには自己責任で取引していただいています》などと回答。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1808/15/news073.html

◎米Twitterが14日(現地時間)に「凍結を回避しようとした」アカウント(以前にルールに違反する攻撃的な行為を行い、永久凍結に備えて別のアカウントを作成したもの)の凍結を実施すると公表。その結果、日本国内でも15日の夜以降、「フォロワーが30人以上減った」といったツイートが続出し、「フォロワー30人」「凍結祭り」などのワードがトレンド上位に。実際に私(岩本)のTwitterアカウントもフォロワーが前日より約30人減った。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1808/15/news031.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1808/16/news052.html

徳島市徳島新聞による「阿波踊り」実行委員会により中止が決定されたクライマックスの「総踊り」が結局13日に実現するまでのドキュメントを、昨年以来『週刊現代』でこの問題を追い続けてきた小川匡則が報じている。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57017
小川に批判された徳島市長の遠藤彰良徳島新聞傘下・四国放送のアナウンサー出身)はテレビ番組に一緒に出演した小川の名を挙げ「それが本当だったら市長辞めますので。なぜそこまで言うか、その根拠を聞きたい」などと語ったそうだ。
https://www.daily.co.jp/gossip/2018/08/15/0011544453.shtml
毎日新聞は16日付で「阿波踊り どうして対立印象づける悪循環に陥ったのか」と題し、一連の騒動の発端となった元の「阿波踊り」主催者である徳島市観光協会(破産手続き中)の赤字問題に遡って言及した。
https://mainichi.jp/articles/20180816/k00/00m/040/170000c

◎『文春オンライン』が「集まれ『インターネット老人会』」と題した特集を実施中。《1990年代から2000年前後にかけてインターネットでハマっていたサイト、懐かしく感じる文化など、個性的でカオスな空間だったインターネット黎明期を振り返り、みなさまの個人的な思い出話を教えてください》と8月31日締め切りで読者に呼びかけている。
http://bunshun.jp/articles/-/8515
15日にはそこに赤木智弘が「1時間400円もかかっていたネット接続 最初は日本語サイトなんてなかった アングラな無法地帯で身につけたリスク感覚」と題して寄稿。まだ常時接続サービスもなく「パソコン通信」の時代だった1994年からインターネットを使い始め、「下水道」「あやしいわーるど」「Der Angriff」など初期のアングラ掲示板に出入りしていたそうだ。
http://bunshun.jp/articles/-/8617
しかし当時まだ20代で、その後の2006年に『「丸山眞男」をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。』を『論座』に書いて注目を集めた赤木ですら、ネットの世界では既に「老人会」入りなのだ。

慶應義塾大学SFC研究所と講談社小学館集英社KADOKAWAなどと共同で2017年に設立したAdvanced Publishing Laboratory(APL)が9月19日に「伝統を未来へ、組版の国際化」と題したシンポジウムを東京・三田の慶應大学で開催する。9月18、19日に開催されるW3C(World Wide Web Consortium=ウェブ上で使用される各種技術の標準化を推進する団体)の固定レイアウト国際会議の報告や、組版ルールの標準化動向などについての紹介が行われるそうだ。
https://kokucheese.com/event/index/532401/

◎オーストラリア生まれの国際的な飲料メーカー・レッドブルはラジオでの展開に長らく力を入れてきているそうだ。2005年には「レッドブルラジオ」を設立し、2014年からはそれを24時間放送のオンラインラジオ局へと変更。現在もストリーミング放送を継続しつつブランド構築を図っている現状を、『DIGIDAY』が報じている。いわば「オウンドラジオ」か。
https://digiday.jp/brands/red-bull-radio-focuses-brand-building-one-princess-nokia-song-time/