忌花学廃人篇 七

口を吸ふことに恥らふ君散草
むらさきに古代を探す蝉時雨
恍惚のいつかどこかで春を焼く
ゆきゆきて花も紅葉も白き闇
五等辺四角形なる花迷路
様々に破戒せり余の末の秋
紅葉見の胸の乱れに魔羅さわぐ
月光は母の不倫の肌のごと
後の月父を三途の河の辺に
大きめの夢には小さき杏かな
ほらそこの殺風景の枯葉かな
もし夏がなければきつと自慰自殺
ワープロの画面に四季は死期とあれ
降る雪や石ころひとつの武装蜂起
デカルトの液のゆきつく雪月夜
花咲くも志士を知らざる空騒ぎ
初恋を季語に加へし初笑ひ
冷血の仏陀火達磨花盛り
神ひとりわれもひとりのわが忌日
はらわたを盗む速度の紅葉風
水澄むやわれを丸ごと捨てに行く
処女初潮般若心経初氷
短夜のわたしは無意味以下の意味
夜長し白濁液の未来死す
虚子編の新歳時記の蛆を飼ふ
麦の穂を揺らすグランドピアノ音