【文徒】2014年(平成26)2月27日(第2巻37号・通巻239号)

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1)【記事】SENSEの通販戦略について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】SENSEの通販戦略について

「SENSE」は30代をターゲットにしたストリート系のファッション誌。もともと主婦の友社から刊行されていたが、編集を請け負っていたラウンドハウスが2004年に発行権を主婦の友社から譲渡され、編集プロダクションから出版社へと業態を転換するとともに2006年、同誌の月刊化に踏み切る。社名を誌名と同じくSENSEとしたのは2009年のこと。編集長の守谷聡が社長をつとめている。こういう人物である。
http://rupo.en-japan.com/archives/30101/
「SENSE」が私を驚かせたのは、直営のオンラインショッピングサイトを立ち上げたことである。
http://www.blacksense.jp/
そんな「SENSE」が2月23日、国立代々木体育館で約8000人を集めてイベント「THE BLACK SENSE FESTIVAL 2014」を開催した。男性ファッション誌のイベントとして最大級の規模であったことは間違いない。テリー伊藤清春TMRホリエモン壇蜜中村獅童らが登場した。このイベントも物販に力点を置いているのが、SENSEらしいところである。
「会場内は物販スペースも充実させ、ショーに登場したアイテムの先行予約なども受け付け、更にイベントとしては珍しい試着をして買うことのできるシステムも導入。『マスターマインド・ジャパン エクストラ コレクション』は、スマートフォン用ショッピングアプリケーション『オリガミ(Origami)』内で、来場者限定でアイテムを販売。このアイテムは、26日から3月3日の期間に、「ザ・ブラックセンス・マーケット・イン・イセタン(THE BLACK SENSE MARKET in ISETAN)」でも独占販売をする」
http://www.fashion-headline.com/article/2014/02/24/5282.html
男性ファッション誌を擁する既存の出版社も労力を惜しんではならないはずだ。「既存」は決して「怠惰」を意味しないはずである。

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2)【本日の一行情報】

エムティーアイ電子書籍書店「yomel.jp」で、集英社の書籍1500作品の配信を開始した。これにより、読み放題コース向け作品、ストアコース向け作品を合わせた作品数が約4万点となった。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1402/24/news084.html
日本は電子書籍書店が多過ぎる。やがて淘汰が始まるだろう。

日本法令は「社労士V 音声講義付き【電子書籍社会保険労務士試験基本テキスト(iBooks版)」全9巻をリリース。音声講義が各巻6〜8時間収録されている。この手の電子書籍は増えるのではないか。1巻の定価が3800円はユーザーから安いと思われれば売れるはずだ。「教育」にかかわる出版は電子書籍に向いているのかもしれない。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140224/prl1402241310029-n1.htm

◎絵本もたまには良いものだ。高野文子の「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」(福音館書店)。
http://www.fukuinkan.co.jp/bookdetail.php?goods_id=23186
高野の「絶対安全剃刀」の衝撃から30年以上も時が経つ。右手に高野文子、左手に大友克洋という時代であった。

◎丸紅が本社だけでなく全世界のグループ会社も含めて、業務システムの全ITインフラを「Amazon Web Services」に全面移行することになった。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140214/536786/

百田尚樹の「海賊とよばれた男」が「イブニング」(講談社)でマンガ化連載が始まった。作画はマンガ版「永遠の0」でも組んだ須本壮一。百田の小説はマンガ化しやすいし、映像化もしやすい。池井戸潤にしてもそうだが、映像化を前提にしているかのような小説が売れる時代なのだ。百田は「探偵 ナイトスクープ」の放送作家であっただけに、そういう意味では手練れなのである。
http://evening.moae.jp/news/920
良い本と売れる本は違う。ごく稀に良い本が売れることがある。出版ビジネスの難しさである。

Z会は、講談社が運営する理系女子応援サービス「Rikejo(リケジョ)」とコラボした「リケジョ製作所 vs Z会」をRikejoサイト内に開設。講談社の「Rikejo」の試みは、出版社における広告ビジネスの新しいあり方を示していると私は評価している。
http://news.ameba.jp/20140225-99/

宇多田ヒカルの夢は引退したならば小さな本屋さんを経営することなんだそうだ。何んとなく嬉しい気持ちにしてくれる。実は私もいずれ書店を開業したいと夢見ている。ただし古書店だけれど。
http://www.cinematoday.jp/page/N0060858

◎「別冊マーガレット」(集英社)で連載されていた高野苺の「orange」が長期休載を経て「月刊アクション」で復活した。高野には双葉社のペースが合っていると思う。
http://natalie.mu/comic/news/110591

ソーシャルメディアウィークにおけるコルクの佐渡島量平の発言。
アメリカでもIT企業とコンテンツが結びついていない。東京のベンチャーが世界中に本当のインターネット上のエンターテイメントを生み出していくのではないか。これからの時代の編集者は、紙だけでなく、ネット上のエンターテイメントを生み出していくことが仕事になる」
編集者はネットを戦場とせよ!である。私が佐渡島に好感が持てるのは「アメリカの夜」「ニッポニアニッポン」「シンセミア」の阿部和重や「文学のプログラム」の山城むつみを契約作家としていることだ。とても良い趣味だと思う。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38479

◎ぴあが企画し、主催する音楽イベント「uP!!!SPECIAL MUSIC COMPLEX 2014,Spring」(3月16日(日)東京・両国国技館)にウルフルズが出る。4年半振りのステージだけに話題を呼ぶことは間違いない。こういうイベントに「出版」もしっかりと組み込むことが大切である。
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201402240003

◎インターネットコムとNTTコムリサーチは「新聞の電子版」に関する調査を実施。その結果によれば紙の新聞を購読しているは62.1%。一紙の購読が9割を占める。電子版を日常的に閲覧しているのは15.3%。二紙以上を閲覧している人は44%にも及ぶ。ただし有料の閲覧は「すべて有料会員」の人が16.0%、「無料会員のものも、有料会員のものもある」人が6.4%にとどまる。
http://japan.internet.com/research/20140225/1.html

テレビ朝日は四年ぶりの大型改編。
http://mantan-web.jp/2014/02/25/20140225dog00m200033000c.html
一方、日本テレビはゴールデン、プライムとも14年ぶりの無改編。
http://mantan-web.jp/2014/02/24/20140224dog00m200024000c.html
好調な2社が対照的な改編である。テレ朝は更なるステップアップを目指し、日テレは現状を死守しようという目論見だろう。

ブルームバーグソフトバンクがLINEの株式取得を目指していると報じた。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N1J1CK6K50YZ01.html
これに対してロイターは親会社の韓国の検索サイト最大手ネイバーは、ソフトバンクから株式取得の正式な提示を受けていないと述べたと報じている。
http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPT9N0LF07J20140225
ソフトバンクからすればLINEは喉から手が出るほど欲しい企業だろう。ネイバーは売るのではないか。
「LINEの企業価値は最大約150億ドルに上る可能性がある」
http://blog.livedoor.jp/kabumage/archives/37310279.html
今年、LINEの周囲は騒がしくなるばかりだろう。LINEはノンフィクション出版や雑誌ジャーナリズムにとっても重要なテーマである。

◎「VERY」(光文社)は今や護憲リベラルの砦だったりして。私の周囲でも憲法座談会が話題になっているくらいだ。それにしても、商売が上手い雑誌だ。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-5292.html

◎新潮社は日本医師会が主催する「日本医療小説大賞」なんてのに噛んでいるのか。
http://book.asahi.com/booknews/update/2014022500001.html?iref=com_fbox_d2_05
これは新潮社にとってビジネスなんだろうなあ。ビジネスでなければ、こういう賞に関与すべきではないということだ。

◎日販は2013年12月27日より、日販PARTNERS契約店・MPDチャージ契約店約2,000書店の協力のもと、『乱反射』(貫井徳郎朝日新聞出版)の売り伸ばし企画を実施した。
対象となった『乱反射』は2009年2月に単行本、2011年11月に文庫が発売された、第63回日本推理作家協会賞を受賞しているが、刊行から年数が経ち、書店店頭で陳列される機会が減少していた。 _日販は、内容の面白さと販売データの分析から、「もう一度仕掛けることで再ブレイクさせられる」と判断し、通常よりも高マージンの「High−Profit企画」として、参加書店に本体価格_12%のインセンティブを設定したところ、 _企画開始直後から爆発的な売れ行きを示し、開始1か月半で4.5万部の増刷となり、累計部数は6.0万部から10.5万部に飛躍したという。こう日販は胸を張るのだが、私からすれば、この程度の取り組みで胸を張っているから取次は駄目なのだと思う。
http://www.nippan.co.jp/news/2014/0224.html

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3)【深夜の誌人語録】

大衆と逆の方向を向くことで大衆の心を鷲掴みにすることが出版のマーケティングの基礎のひとつである。