【文徒】2014年(平成26)2月26日(第2巻36号・通巻238号)

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1)【記事】わが休日の読書録
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】わが休日の読書録

柄谷行人の「遊動論」(文春新書)を読んだついでに、講談社文芸文庫から刊行された「柄谷行人インタヴューズ1977〜2001」を寝っ転がりながら読んでいると、次のような柄谷の発言が目に飛び込んできた。
「だから、小出版社は、流通機構を解体して、アソシエーションという形態をとるべきなんですよ。しかし、流通機構がまだ徳川時代的ギルド体制で、それが出版そのものをゆがめています。その結果、本は売れないのに、どんどん出るということになっています」
http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784062902205.html
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166609536
民主党の菅政権で内閣官房参与をつとめた松本健一の「官邸危機」(ちくま新書)を読んでいると、意外なことに現在の安倍政権がいかに「心情倫理」に突き動かされているかがよくわかる。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480067630/
平野貞夫の「戦後政治の叡智」(イースト新書)を読み、前尾繁三郎の「政の心」(毎日新聞社)が読みたくなった。古本だと何と44000円もする!「政の心」には、こうあるそうだ。
「政治はあくまでも現実と権力の上に立たなければならない。しかし、理想と正義を忘れた政治は、もはやそれは政治ではない」
「日本の政治」は、どうやら前尾の言うような政治でなくなりつつあるようだ。「虚妄の戦後民主主義」を支えてきた「保守」が空洞化してしまったというべきか。安倍首相は「対象の臨在感的な把握」(山本七平)に躍起になっているとしか私には思えない。
http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=2013
船橋洋一の「原発敗戦」(文春新書)の「はじめに」の文章が印象に残った。
「私たちは、福島原発事故とその悲惨な結果をあえて敗戦と見なすことから再出発すべきなのだ」
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166609567
こうした「敗戦」を懲りもせず繰り返す日本が日本国憲法を改正することもなしに(国民の議論を経ずに)「集団的自衛権」を解放してしまって大丈夫なのかしら?青沼陽一郎の「フクシマ カタストロフ」(文藝春秋)も次のように書いている。
「戦争に負けるはずがない。原発も事故は起こりません。安全です。予想を超えるような大津波も来ませんよ。それで事故が起きたら、どうしようもなくなる。
退路を断っているから、負けた時にどうしていいかわからない。だから、兵を置き去りにしてしまった。安全と信じているから、事故が起きた時に、その場しのぎで成り行きに任せるしかない。住人も置き去り。事故後の対処を考えていないのだから」
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163900148

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2)【本日の一行情報】

◎KADOKAWAが三重県津市と組んで「津ぅウォーカー」を刊行。全国の市町村を営業相手にできる企画である。定価880円、津=つ=2にちなんで2万2222部を刊行。
http://www.asahi.com/articles/ASG2P3D74G2PONFB004.html

谷口ジローの「センセイの鞄」(原作・川上弘美)「冬の動物園」が韓国で、セミコロンを版元に翻訳出版された。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2014/02/23/0400000000AJP20140223001100882.HTML

◎「ゼクシィ」の創刊20周年記念「プロポーズ応援プロジェクト」はネスレサッポロビール、ワコールなどを巻き込んでいる。リクルートは相変わらず商売上手だ。こういうセンスを出版社も見習わなければならないはずだ。
http://www.recruit-mp.co.jp/news/release/2014/0217_1049.html
http://www.recruit-mp.co.jp/news/release/2014/0221_1050.html

◎電子雑誌出版社として知られるネクシィーズは社員130名のうち90名が(広告)営業だという。
http://itnp.net/story/611
デジタル業界のリクルートを目指しているそうだが、こういう歪んだ社員構成の企業を私は信用できない。IT「ブラック」企業の実態を紙のジャーナリズムに暴いてもらいたいものだ。

パピレスが運営する電子書籍サイト「電子貸本Renta!」と、Yahoo! JAPAN電子書籍サービス「Yahoo!ブックストア」は相互サービス連携を開始した。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140224_636630.html

◎日販は讀賣新聞社とともに、新聞紙面と全国書店との連動企画「ミステリーブックフェア」を、社団法人日本推理作家協会の後援のもと2月23日(日)より展開している。
http://www.nippan.co.jp/news/2014/0224-2.html
日販は讀賣新聞社と組むのではなく、雑誌を巻き込んで(出版社系週刊誌や女性誌と組んで)、こういう企画を実施しようとは考えないのだろうか。

日経BP社による「第3回ソーシャル活用売上ランキング」。スターバックスマクドナルドが首位となった。スタバはフェイスブックを、マックはLINEを使いこなした。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2302X_T20C14A2TJC000/

ハースト婦人画報社を退社した澄川恭子が、ファッションアプリ「アイコン(iQON)」を手掛ける「ヴァシリー(VASILY)」のエディトリアル・プロデューサーに就任した。紙の世界を弾かれた編集者がデジタルに「転進」するケースがこれから増えるだろう。
http://www.wwdjapan.com/business/2014/02/23/00010213.html

双葉社が「SNEAKER FAN BOOK」を刊行。
http://www.pronweb.tv/modules/newsdigest/index.php?code=3150
かつての大ブームから20年。30代、40代をターゲットとしたムックらしい。

筆坂秀世は日共出身であるだけに「軍」に詳しい。集団的自衛権問題で「賛成の立場も反対の立場も議論の出発点が間違っている」と喝破。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40018

◎JR大阪三越伊勢丹が6割強もの売り場面積を縮小したのは、JR大阪駅周辺には阪急百貨店うめだ本店、大丸梅田店が隣接し、出店テナントからすれば3店舗同時出店は無理であり、ブランドラインナップが貧弱になってしまったためである。伊勢丹流儀が大阪で通用しなかったわけではないようだ。
http://www.fashionsnap.com/the-posts/2014-02-24/jrosakaisetan/

◎「掃黄」という言葉は覚えておこう。エロ一掃のことだが、習近平は「掃黄」によって、公安利権を握る江沢民一派の排除に取りかかったのだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38447

◎インスタグラムを母胎にした出版に主婦の友社がチャレンジした。世界中に24万人のフォロワーを抱える山崎佳子の朝ごはん写真をまとめた「TODAY'S BREAKFAST」がそうだ。ネット書店で予約が殺到し、発売前に重版が決定したという。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/enterprises/release/detail/00077704.htm
インスタグラムを母胎にした雑誌は考えられないものか。

ドワンゴがアニメ製作出資事業を分割し、完全子会社のMAGES.に移管する。
http://animeanime.jp/article/2014/02/23/17575.html

フェイスブックがWhatsAppを買収した理由。次のような指摘に「なるほど」と思う。
「WhatsAppのビジネスモデルは広告に依拠していない。ユーザーからの利用料金の徴収である。Facebookの収益の90%以上は広告収入である。Facebookとしてもいつまでも広告に依存した収益構造を続けていくよりも、事業の多角化を図り『広告以外の収入』の拡大を目指していく必要がある」
http://wirelesswire.jp/compass_for_global_communication_industry/201402240600.html

産経新聞副社長であった名雪雅夫が亡くなっていた。若き日は毛沢東シンパであったという(菊池寛賞を獲得した「毛沢東秘録」は若き日の落とし前であったのかもしれない)。ノンセクトであったが三里塚強制代執行を現在は時事通信社解説委員の田崎史郎、小誌で好評連載中の「ラジカルチャー入門」の伊達政保らと戦ったキャリアを持つ。
http://www.jiji.com/jc/c?g=obt_30&k=2014021800650

はてなのサービスに不正ログインが行われた模様。ユーザーにパスワードの変更を求めている。
http://hatena.g.hatena.ne.jp/hatena/20140224/1393211701?utm_source=hatenamagazine&utm_medium=mail&utm_campaign=20140224

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3)【深夜の誌人語録】

怠惰であることが不満や不安を醸成する。努力することによってのみ不満や不安は解消される。