【文徒】2014年(平成26)3月6日(第2巻42号・通巻244号)

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1)【記事】スター編集長だからといって「甘え」は許されない
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】スター編集長だからといって「甘え」は許されない

その昔、ある出版社でスター編集長出身の幹部社員が退任することになった。その編集長としての実績に加えて、広告の仕事もこなしていたことから将来の社長候補とさえ言われていた人物であった。
いったい何があったのかと、若かりし頃の私は取材に飛び回ったものだが、この元スター編集長が、その出版者とは資本関係にないスポーツクラブ関連の企業の役員陣に名前を連ねていたことが問題となっていたことがわかった。それは、その出版社にとっては利益相反行為になりかねないことであった。
少なくとも、この幹部職員はスポーツ関連の企業の役員陣に名前を連ねるのであれば、自分がつとめる出版社が副業を許可しているのかどうかを確認し、副業が許可されていないのであれば役員就任を断念すべきであった。
また、副業が許可されているのであれば、そのルールに則って社に報告すべきであったはずである。氏はスター編集長であったキャリアに甘え、労働組合から指弾されるようなスキをつくってしまったのである。
最近、同じようなケースがあった。その出版社のやはりスター編集長出身の幹部社員であるが、家族が代表取締役をつとめる会社に取締役として名前を連ねていることが発覚したという。
もちろん、この幹部社員がその家族経営の会社から報酬を受け取っていたわけではないのであろう(税金対策ということはあったのかもしれないけれど)。しかし、副業規定がどうなっているかである。
もし、副業が禁止されているのであれば家族経営の会社とはいえ、役員から外れるべきである。副業が禁止されていない場合でも、利益相反が疑われるような兼務となるのであれば、取締役を退任すべきである(出版社を辞めるという選択肢もあろう)。
出版市場が縮小するなかで、ともすれば「綱紀」に乱れが生じるということがあるのかもしれない。経営は「綱紀粛正」をもって対処すべし、である。繰り返す。スター編集長であったからといって、その栄光に甘えては決してならないのである。

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2)【本日の一行情報】

◎すくいらーくが米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のデータウエアハウス(DWH)クラウドAmazon Redshift」を採用し、運用をはじめた。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140303/540502/?top_tl1
アマゾンは出版の外側で肥大しはじめた。アマゾンにとって出版はワンオブゼムだが、出版にとっては、そうではない。彩流社のような専門書に近い書物を手がける出版社にとっても月次売上の15%を占めている。
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/

大日本印刷といえば「秀英体」である。何しろ明治時代から開発をつづけているオリジナル書体である。その開発過程を記録したiOS向けアプリ型電子書籍「一〇〇年目の書体づくり−『秀英体 平成の大改刻』の記録」を大日本印刷はリリースした。3月31日までは無料で利用できる。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1403/03/news089.html

京都府立総合資料館は、所蔵する国宝「東寺百合文書」のデジタル化資料をWebサイトで公開しているが、これは凸版印刷の仕事である。凸版印刷は図書館や自治体向けに書籍のデジタル化、保管、管理、公開を支援するサービス「Toppan Document Solution SAI-CHI」(SAI-CHI)を提供している。こういう仕事に絡むのは出版社ではなく印刷会社である。出版社の「怠惰」がもたらした結果である。
http://hatenanews.com/articles/201403/19306
印刷会社が出版の「下請け工場」であった時代は終わったのである。

集英社のドル箱「ONE PIECE」73巻が4日に発売されたが、初版400万部だったそうだ。これで10巻連続の400万超を果たした。累計3億冊突破を記念して、73巻を購入するとミニ複製原画をプレゼントする「ニッポン縦断!OPJ47クルーズ 書店フェア!」が全国の書店で開催されている。スピンオフ書籍も三点刊行された。「魚人島編」「パンクハザード編」の名言を収載した「ONE PIECE STRONG WORDS 2」、漢字にルビを振った低年齢層向けの名言集「ONE PIECE 最強でサイコーの名言集 STRONG WORDS みらい文庫版」、500問以上のクイズを収めた「ONE PIECE 500 QUIZ BOOK」がそうだ。
http://natalie.mu/comic/news/111172

小学館女性誌に「乱入」した「ドラえもん」がなかなかカワイイではないの。誰だ!女性誌の表紙に「ドラえもん」は似合わないと言っていたのは!!マンガのキャラクターと女性誌って実は相性が良いのかもしれない。「ジョジョ」の「シュプール」も格好が良かったものなあ。
http://mdpr.jp/news/detail/1333584

◎「週刊少年サンデー」の大反攻なるか。創刊55周年だから新連載55本を投下するという。以下、英語でお読み下さい。
http://cdn02.animenewsnetwork.com/news/2014-03-03/shonen-sunday-magazines-to-launch-55-manga-to-mark-55th-year

◎「ブルータス」が5年ぶりにラジオを特集。「なにしろラジオ好きなもので(2)」。
http://andronavi.com/2014/03/319150?utm_source=website&utm_medium=rss
「ブルータス」の編集力は、その反時代性も含めて、ある種の「芸」だと思う。

◎ビジネス書や就職関連の雑誌・書籍をつくることで知られる、社員数300人ほどの出版社」で20代社員を潰すに君臨する、30代半ばにして、長い髪の美人副編集長って誰だろう?
http://diamond.jp/articles/-/49579

電通の海外本社たる電通イージス・ネットワークはフランスのモバイルエージェンシー「Lesmobilizers SAS」(レ・モビリザーズ社)の株式100%を取得する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/pdf/2014020-0304.pdf

武田薬品の「誇大広告」は根が深い。大学のあり方が問われてもいる。
「武田の高血圧薬と他社製品を比べた今回の研究では、実施機関である京都大学EBM研究センターなどに武田が40億円弱を提供した」
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO67714300U4A300C1TJ1000/

◎宝島社はプロ野球の選手名鑑も出しているのか。しかも「ベースボール、日刊、宝島3社のポケット判が、実売シェアの5割」を占めている。宝島社の出版社としての胃袋は相当強いようだ。宝島社は「異端」として出発し、今日に至るまで「正統」に帰順しなかったことが胃袋を鍛え上げたのだろう。とうの昔に心臓なんぞは犬に喰わしてしまっているに違いない。
http://news.ameba.jp/20140304-191/

資生堂の魚谷雅彦次期社長が「エリクシール」「マキアージュ」という主力化粧品に関して「時間がたてば価値が薄らいでくる。顧客の期待値を超える革新性が重要だ」とし、「もう一度価値をしっかり打ち出す必要がある」と考え、商品の大幅リニューアルや宣伝手法の見直しに取り組もうとしているのは、正しい選択である。問題は、その方法論である。質の高さと奧の深さだけでは駄目だと私は思う。それではコカ・コーラである。女性のみならず社会が共鳴する主張と社会が共振する感動を質の高さと奧の深さにおいて実現できるかどうかなのである。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2014030300745

パナソニックにしても、ソニーにしてもテレビに頼り切り過ぎたのである。時代の「尖端」から取り残されてしまった日本の家電メーカーの悲劇はまだまだ続くことだろう。パナソニックが4月1日付取締役・役員人事を発表した。
http://news.mynavi.jp/articles/2014/03/04/panasonic_executive/

◎ゲームアプリ「LINE クッキーラン」が、サービス公開から1ヶ月でダウンロード数が世界1,000万を突破。驚かされるのは、約8割が海外からのダウンロードであるということだ。
http://www.gamer.ne.jp/news/201403040019/

◎「mixi」の1万6972件のIDに対して不正ログインがあった。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140303/540651/

アメリカではソーシャルメディアを活用したチケット販売サイト「チケットフライ」が急成長を遂げている。
http://nyliberty.exblog.jp/22186741/

◎25歳以上のギャル誌「MajestyJAPAN」は誌名を30〜40代をターゲットにした季刊の女性誌「Upsee」として生まれ変わる。「MajestyJAPAN」は今後、クロスメディア媒体に特化することになる。
http://taiseisha.jp/magazine.html
版元の大誠社は「珈琲時間」といった雑誌も刊行しているし、韓流スターの写真集や介護関連の書籍も刊行している。
親会社は誠晃印刷である。
http://www.seiko-printing.com/

◎人気マンガ200作品が無料で読めるを「売り」にマンガサイト「コミックウォーカー」の創刊発表会が開催された。安彦良和の「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」や貞本義行の「新世紀エヴァンゲリオン」をフルカラー版で提供する。
http://mantan-web.jp/2014/03/03/20140303dog00m200055000c.html
ニールセンの調査によれば電子マンガの利用時間は1人あたり52分で、他の電子書籍サービスの利用時間、27分の約2倍という結果が出た。
http://aplista.iza.ne.jp/f-iphone/154359

博報堂はタイに「博報堂生活総合研究所アセアン」を設立。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/16165

福井新聞電子書籍総合サイト「電書の森」。
http://dkan.fukuishimbun.co.jp/ebook/
ここにある「D本」は福井新聞の連載をまとめて読めるように電子書籍化したもので、福井新聞D刊の読者は無料で読める。
https://dkan.fukuishimbun.co.jp/service/
地方新聞も生き残りに必死だ。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/ebook/48992.html

◎「戦後史の正体」の孫崎享が小説に挑戦する。外務省OBにして防衛大学教授をつとめた孫崎による近未来ノンフィクション・ノベル「小説 外務省-尖閣問題の正体」(現代書館)が刊行される。
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5730-6.htm

◎日経の人事などについて報じた週刊文春の記事で名誉を傷つけられたとして、文藝春秋に約1億7千万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁はウェブサイト記事の削除と計約1200万円の支払い、日経新聞週刊文春への謝罪広告掲載を命じた。
http://jp.reuters.com/article/kyodoNationalNews/idJP2014030401002125
「取材結果の冷静な評価を謝った」と名誉毀損を認めたわけだが、雑誌ジャーナリズムを萎縮させかねない判決である。ところで、こんなサイトを発見した。日経は知っているのだろうか。
http://kokusaipress.jp/archives/327

◎「ユリイカ」3月号が「週刊少年サンデー」を特集している。遅ればせながら購入。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791702688
私の「週刊少年サンデー」連載ベスト3は「銭ゲバ」「男組」「うる星やつら」になるのかなぁ。

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3)【深夜の誌人語録】

臆病とは失敗を恐れることであるし、成功をひけらかすことである。