【文徒】2014年(平成26)3月7日(第2巻43号・通巻245号)

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1)【記事】「ガレキとラジオ」やらせ演出問題について
2)【記事】アカデミー授賞式とサムソン
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「ガレキとラジオ」やらせ演出問題について

ドキュメンタリー映画「ガレキとラジオ」に「やらせ」があった。ナレーターをつとめた役所広司は「今後二度と上映されるべきものではありません」。博報堂の企画・制作である。監督の一人、梅村太郎は博報堂の社員である。
私は「やらせ」があったことをもって「ガレキとラジオ」を糾弾しようとは思わない。誤解を恐れずにいえばドキュメンタリー映画に演出は欠かせないものである。「事実」を記録しただけでは、優れたドキュメンタリー映画とはならないのである。原一男小川紳介を踏まえて言えば、「やらせ」を乗り越えることで「真実」が見えてくるのが優れたドキュメンタリー映画というものである。
「ガレキとラジオ」は、どうであったか。その演出は単なる「事実のでっち上げ」にしか過ぎなかったのではないか。しかも、観客の涙腺を支配してしまおうという不純な動機が見え隠れする「事実のでっち上げ」なのである。その罪は万死に値する。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1403/05/news132.html
いろいろな意味で、この映画の罪は重い。その罪を晒すためにも、是非、今後も「ガレキとラジオ」を上映してもらいたいものである。テレビのドキュメンタリー出身の久保田直が青木研次の脚本を得て完成させた「家路」と見比べてみれば良い。
http://www.bitters.co.jp/ieji/
YouTubeには、こんなドキュメンタリー映画の傑作がアップされていた。
http://www.youtube.com/watch?v=Gx3JpsjIE2Q

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2)【記事】アカデミー授賞式とサムソン

第86回アカデミー授賞式で司会のエレン・デジェネレスは客席を歩き回り、出席したスターたちの写真を撮る姿が印象的だったが、使われたのは「ギャラクシーノート3」だった。韓国メディアは大喜びだ。
「『アカデミー授賞式の真の受賞者はサムスン電子だ』。
3日に第86回アカデミー授賞式が終わった後で米国の主要メディアが下した評価だ。この日授賞式の司会を務めた女性コメディアンのエレン・デジェネレスがサムスン電子の『ギャラクシーノート3』で撮影した団体写真がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で大人気となったためだ」
http://japanese.joins.com/article/566/182566.html?servcode=300§code=300
しかし、ネトウヨ諸君!安心するが良い。エレン・デジェネレスは「ギャラクシーノート3」の根っからのユーザーではなかったようだ。サムソン電子の仕掛けであった。そうプロダクト・プレースメントである。
「関係筋によると、ABC放送の授賞式中継のスポンサーとして、サムスンと広告代理店のスターコム・メディアバストは、サムスンスマホ「ギャラクシー」を授賞式に溶け込ませることを決めた」
「広告調査のキャンター・メディアによると、今年の授賞式の広告料は30秒で約180万ドル(約1億8300万円)と推定されている。つまり、サムスンは1800万ドルを支払った可能性があるということだ」
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304085204579419700492598102.html

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3)【本日の一行情報】

◎アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長によれば「企業や個人が出店する仮想モール事業に力を入れている」とのことだ。つまり、楽天にケンカを売っている。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ040B1_U4A300C1TJ2000/

◎「学研ストアハウス」は「プロメテウスの罠6 ふるさとを追われた人々の、魂の叫び」を配信開始。第一弾「プロメテウスの罠 明かされなかった福島原発事故の真実」を3月12日まで通常1100円を500円で配信する。それにしても不思議なのは朝日新聞社である。社史に残るような長期連載であるにも関わらず、紙も電子も子会社の朝日新聞出版社で出さないんだもの。
http://ghd.gakken.co.jp/news/digi/201403/20140304.html

角川つばさ文庫講談社青い鳥文庫を年間売上で追い越した理由を考察するブログ記事だ。青い鳥文庫は児童文学の常識や枠組に囚われすぎているのに対し、角川つばさ文庫は、そうした制約から自由であることが功を奏しているという見方は当たっていると私は思う。異端と流行を両輪とする角川に対して、正統と不易を両輪とする講談社ということになるだろうか。
http://ch.nicovideo.jp/meguru/blomaga/ar382624?cc_referrer=ch

時事通信社は、デジタル農業情報誌「Agrio」(アグリオ)を創刊。電子ファイル化した20頁程度の誌面を毎週、電子メールで届ける。月額4000円。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&rel=j7&k=2014030400601&utm_source=twitter&utm_medium=i_jijicom_biz&utm_campaign=twitter
時事通信社は商売が下手だからなあ。

◎マガジンハウスから刊行されている絵本「ティニー ふうせんいぬのものがたり」を原作に、2014年NHKにて「ふうせんいぬティニー」としてアニメ化することが決定。したが、これに伴いマガジンハウスを中心にソニー・クリエイティブプロダクツ、東宝NHKエンタープライズの4社でアニメ製作委員会を発足させ、商品化、企業キャンペーン、映像パッケージ、配信ビジネスに取り組む。
http://www.atpress.ne.jp/view/43803
そうマガジンハウスがキャラクタービジネスに挑戦するのだ。マガジンハウスは大きな一歩を踏み出そうとしているのだ。4社で国内で3年後に20億円、海外で3年後に10億円の市場規模を目指す。そま心意気や良し。もともと、「ティニーふうせんいぬものがたり」は「カーサブルータス」から生まれたものだが、「アンアン」や「ハナコ」でも、このキャラクターを活用すべきだろう。全社をあげて!が絶対に欠かせないはずである。

◎「おじさん図鑑」(小学館)とアストがコラボして「おじさまパンツ」を発売する。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140305/prl1403051408049-n1.htm
オレにはまだ必要のないグッズだ。

小学館の通信添削学習「ドラゼミ」の幼児向けコース「ぷちドラゼミ」は幼児誌「ベビーブック」「めばえ」「幼稚園」の3誌との連合企画「“ドラえもんとやってみよう!”ぷちドラゼミ 親子ワーク」を各誌の4月号より実施する。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/job/release/detail/00008760.html

◎恋愛ドラマアプリ「吉祥寺恋色デイズ」か…。こういう企画は出版社にやってもらいたかった。
http://suumo.jp/journal/2014/03/04/58983/

アメリカでも電子書籍の部数は秘密にされている。私は次のような指摘に全面的に同意したい。
「透明性は、著者にとっても、出版業界の誰にとっても脅威ではない。それは出版に関するどの決断が著者にとって正しいかの理解を助けるのに役立つものだ。データにきっちりと蓋をして恩恵を受けるのは、何かを隠したい人、あるいはさらに、全情報を持ちあわせない人たちから金を搾取する手段とする人だけだ」
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1403/05/news084.html

◎このタイトルは上手だ。光文社新書の「教室内カースト」(鈴木翔)。
http://blogos.com/article/81609/

◎「SENSE」の守谷聡編集長は精力的だ。伊勢丹メンズ館とコラボしてリアルショップ「THE BLACK SENSE MARKET in ISETAN」を展開中だが、3月1日には守谷自身が東京メンズブランド9人のデザイナーを相手にリレー形式でトークショーを行ったそうだ。
http://www.fashion-headline.com/article/2014/03/04/5385.html
編集長は雑誌の影にコソコソ(あるいは偉そうに)隠れているのではなく、読者の眼前に自らを晒す必要があるのではないだろうか。クライアントに行っているだけでは用を足したことにならないということだ。

◎アマゾンのジェフ・ベゾスが母校・プリンストン大学の卒業式でスピーチを行った。
http://logmi.jp/6726

きゃりーぱみゅぱみゅがテレビシリーズに続き、劇場版最新作「映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」の主題歌を歌うことが決定。
http://www.cinematoday.jp/page/N0061147?utm_source=gunosy&utm_medium=feed&utm_campaign=xchg

◎日販は「ウイスキー検定」を運営している。検定公式テキストは小学館が刊行する。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140305/prl1403050941008-n1.htm

凸版印刷は、スティック端末を活用することで既存のテレビモニターをデジタルサイネージとして、ネットワーク化し、多彩なコンテンツを数百から数千台にいたる大規模な運用管理に対応するデジタルサイネージ向けコンテンツ配信管理サービスを2014年3月下旬より販売開始する。
http://www.toppan.co.jp/news/2014/03/Newsrelease140303.html
一方、大日本印刷も、Philipsブランドのディスプレー販売を行うMMD Singapore PTE LTD.と、台湾の高輝度液晶ディスプレーを提供するLITEMAX Electronics Inc.,(ライトマックス社)のデジタルサイネージ用ディスプレーを日本国内で販売する。
http://www.dnp.co.jp/news/10096683_2482.html
大日本印刷はまた、O2O(Online to Offline)サービスに必要な各種機能をクラウド型で提供するプラットフォーム「PASSMART_(パスマート)」に地域の最新ショッピング情報を掲載するネットチラシをスマートフォンに配信する機能を追加し、4月から提供開始する。
http://www.dnp.co.jp/news/10096647_2482.html
二大印刷会社は広告ビジネスにおいてもプレイヤーとして、ますます重要な存在となりつつある。

日本テレビは定額制動画配信サービス「Hulu」の日本市場向け事業を買収。日本テレビは「先手」を打ったのである。
「米国では規制緩和によって従来型のテレビ局はほとんど姿を消していますが、日本のテレビ局は依然として独占状態が続いています。インターネットの動画配信サービスはこうしたテレビ局の独占構造を崩す可能性がありますから、テレビ局にとっては警戒すべき存在です。日本では優良コンテンツの多くをテレビ局が握っていますから、新しい配信チャネルさえ押さえておけば、従来の立場を維持できるというわけです」
http://thepage.jp/detail/20140304-00000009-wordleaf
日テレは生き残るに違いない。危ないのはフジテレビである。

博報堂DYメディアパートナーズが4月1日付で組織再編を断行。三つのセンターを新たに発足させる。
グループ内各広告事業会社のメディアビジネス成長に向けたプロデュース戦略・施策立案機能および個別戦略案件のプロデュース機能を有する「アカウントプロデュースセンター」。
次世代メディアビジネスの開発、商品・ソリューション開発を具体化・本格化させるべく、「メディアビジネス戦略局」の機能を拡大し、当社グループおよび博報堂DYグループの当該領域におけるハブ機能を担う「メディアビジネス開発センター」。
データドリブン型の次世代統合コミュニケーションを開発・推進し、社内組織、博報堂DYグループ各社の当該領域関連組織との強固な連携を明確化するために、「データマネジメントプラットフォーム部」および「統合コミュニケーションデザインセンターROIマネジメント部」を移管し、「データドリブンビジネスセンター」。
雑誌局では出版ビジネス部を廃止し、出版ビジネス戦略部を新設する。出版社のプロパティを活用した商品・ソリューション開発や新領域ビジネスの開発機能をより強化することが狙いだ。
http://www.advertimes.com/20140305/article149912/

ダイヤモンド社が著者養成講座を開催する。講師は5人のダイヤモンド社に籍を置く現役の編集者。一日5時間の講座を6回受講して25万円也。定員は20名。
http://drc.diamond.co.jp/seminar/past/pbschool/

◎アマゾンやKoboが消費税を納めていないことは周知の事実であり、消費税率が上がれば上がるほど、有利にビジネスを展開できる。数多ある電子書籍出版社にとっては頭の痛い問題であるが、イーブックスジャパンは粗利益を削って、アマゾン、Koboに対抗する。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1403/05/news086.html

奥田英朗の小説「沈黙の町で」が韓国の出版社・民音社から翻訳出版された。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/society/2014/03/05/0800000000AJP20140305000900882.HTML

◎「ホットペッパー」のリクルートライフスタイル、米モバイル決済システム構築のスクエア(カリフォルニア州)と提携し、スマホで、クレジットカード決済までできるPOSレジサービスを今月下旬から提供する。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140305/bsc1403051835005-n1.htm
クレジットカードが使えなかった中小零細規模の飲食店を囲い込むつもりなのだろう。

新潟市の市役所前にある40坪の北書店は「取次から自動的に商品が送られてくる“配本”は断って、自分で一点ずつ発注して本を仕入れてい」る。店内で「北酒場」と名付け飲み会を開催しているそうだ。佐藤雄一は北光社の最後の店長をつとめた人物である。
http://dotplace.jp/archives/8734

大日本印刷は、無料の専用アプリを使うことによって、エリア限定でデジタル雑誌の記事や特集を無料で読める配信サービス「チェックインマガジン・ゼロ」をスタートした。「ソトコト」「週刊ゴルフダイジェスト」「GQ JAPAN」「WIRED」「サイゾー」「自遊人」「GOLD」「Begin」「MEN'S EX」「ELLE _ table」「ELLE Japon」「ELLE D_COR」「Harper's BAZAAR日本版」といった雑誌のコンテンツが閲覧できる。
http://www.dnp.co.jp/news/10096743_2482.html

ジェイアール東日本企画とケシオンはマレーシアでデジタルサイネージ事業を共同で展開する。
http://www.newsclip.be/article/2014/03/05/20992.html

◎「第5回オーディオブックアワード」大賞は百田尚樹海賊とよばれた男」(講談社)に決定。百田にとって今が絶頂期。
http://newslounge.net/archives/118441

◎第48回吉川英治文学賞大沢在昌「海と月の迷路」(講談社)、東野圭吾祈りの幕が下りる時」(講談社)、第35回吉川英治文学新人賞は和田竜「村上海賊の娘」(新潮社)にそれぞれ決定。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/yoshikawa-sho2014%20release.pdf

◎米Flipboardは、米CNN傘下にあるライバルニュースリーダーアプリZiteを買収。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140306_638361.html

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4)【深夜の誌人語録】

何もしないことが怠惰なのではない。何も考えないから怠惰なのである。