【文徒】2014年(平成26)3月10日(第2巻44号・通巻246号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】小説の世界ではよくある制作手法?
2)【記事】NHK出版が河野逸人編集長を懲戒免職
3)【記事】国立循環器病研究センターが小学館にレシピ本の販売中止を求める
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.3.10 Shuppanjin

1)【記事】小説の世界ではよくある制作手法?

徳間書店から刊行されたホリエモンこと堀江貴文の小説「拝金」「成金」は本人の執筆ではなく、ゴーストライターが書いていたことをカバーイラスト担当の佐藤秀峰が暴露している。
「当時、担当編集者からは『小説の世界ではよくある制作手法で、何ら恥ずべきことだとは思っておりません』と言われましたが、やはり恥ずべきことであろうと感じます」
ゴーストの存在がバレてしまい一転「現代のベートーベン」から詐欺師に転落してしまった佐村河内守も音楽家ではなく小説家になっていれば、ここまで糾弾されることはなかったのかもしれない。
「この件については、徳間書店の文芸局長からご連絡をいただき、今後、読者への説明をする予定はないとのご回答をいただきました。『以後十分に配慮するべき事案であるとの認識を確認した上での判断』とのことで、組織としてそのような判断ももちろん理解できます」
http://ch.nicovideo.jp/shuhosato/blomaga/ar476796
出版社にとって、小説なんぞ、その程度のものなのだろう。

                                                                                                                        • -

2)【記事】NHK出版が河野逸人編集長を懲戒免職

NHK出版は、架空の校正業務を発注するなどして、約1350万円を不正流用していたとして放送・学芸図書編集部の河野逸人編集長を懲戒免職処分にした。
http://www.asahi.com/articles/ASG365HLTG36UCVL01V.html
河野の写真もアップされている。
http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/54760161.html
大河ドラマ関連の出版に深く関与していたようである。
http://www.salf.or.jp/wp/?page_id=20
確かに、こういうケースはNHK出版だけの問題ではなかろう。他の出版社でもキックバック絡みで不正流用が発覚したものの「依願退職」扱いにして有耶無耶にしてしまったケースが過去にあったことを私は承知している。しかし、それにしても最近、NHKの関連会社は不祥事が多過ぎる。
「最近、NHKの関連会社は不祥事続きだ。2月に『NHK放送研究所』の元研究員らがNHKから280万円をダマし取った容疑で逮捕された。今月初めには『NHKビジネスクリエイト』の女性営業部長が、不適切な経理処理で懲戒解雇されている」
http://gendai.net/articles/view/geino/148510

                                                                                                                        • -

3)【記事】国立循環器病研究センターが小学館にレシピ本の販売中止を求める

国立循環器病研究センターとセブン&アイ出版は、「『かる塩』『かる糖』料理帖」を刊行した小学館と著者の山脇りこに対して、「かる塩」という表示を行った経緯の説明と販売の中止と謝罪を求めた。「かるしお」は商標登録している言葉だそうだ。国立循環器病研究センターの言い分は、こういうことになる。
「『かるしお(R)』レシピは従来の減塩レシピ本とは一線を画し、生活の一部として美味しく食べ続けることができるよう、『塩を軽く使ってうまみを引き出す』という全く新しいコンセプトを特徴としています」
「当該類似書名本においては本文中184か所において『かる塩』という表現が用いられて料理が紹介されておりますが、いずれもその塩分量もエネルギー表示もなく、多くのレシピでは「塩ひとつまみ」という曖昧な表現になっています。このように『かる塩』という用語が、当センターの『かるしお(R)』レシピの趣旨とは全く異なった使用をされてしまうことで、当該類似書名本を当センター著作のものと混同・誤認した購入者が損害を被るとともに、『かるしお(R)』を商標・ブランドとする当センターの提案が誤解された形で広まってしまう恐れがあり、極めて遺憾であります」
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/006337.html
「『かる塩』『かる糖』料理帖」は代官山の人気料理教室・リコズキッチン主宰の山脇りこが自らの食生活を再現した一冊だという。
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784091037213
「かるしお(R)」と「かる塩」では違うような気もするのだが…。ソニーの「リーダー」の時にも思ったのだが、商標登録が表現を不自由にしてしまうこともある。

                                                                                                                        • -

4)【本日の一行情報】

◎梶淳の「アイデアにセンスはいらない」(ダイヤモンド社)によれば、アイデアは(1)××って何なの?という問いかけを3回重ねる、(2)過去に自分が気になったものから参考になるものを探す、(3)気になるテーマをいろいろな人に問いかけるという三つのステップを踏んで生まれる。
http://animeanime.jp/article/2014/03/05/17699.html

◎福岡県古賀市の竹下司津男市長が、統一協会から言ってみれば分派して生まれた宗教団体「摂理」の元幹部であり、女性信者にわいせつ行為に及んだといった内容の記事を掲載した「週刊朝日」が竹下市長に損害賠償1000万円と謝罪広告の掲載を求められ、告訴されていた裁判で竹下市長の敗訴が最高裁で確定した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014030500729
週刊朝日」記事のタイトルは「仰天!あの「SEX教団」元幹部が市長になった」であった。
http://dailycult.blogspot.jp/2011/01/blog-post_21.html

ジャニーズ事務所を脱退した元「KAT-TUN赤西仁の仕事は激減するのだろう。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/240885/
タレントは何故ユニオンを結成しないのだろうか。プロ野球にだってあるじゃないのよ。竹中労の「タレント帝国 芸能プロの内幕」は未だにリアリティを持っている。

◎お笑いコンビ・マシンガンズ滝沢秀一が「かごめかごめ」(双葉社)で小説家デビュー。「E☆エブリスタ電子書籍大賞」で双葉社賞に選ばれたホラーサスペンスだ。
http://www.daily.co.jp/gossip/2014/03/06/0006756583.shtml

博報堂の社内専門組織「博報堂ダイバーシティデザイン」は、海外の低所得層の生活を独自の手法で調査し、結果を踏まえてマーケティング活動をサポートするプログラム「HAKUHODO DIVE」の提供を開始する。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/16243
広告のソーシャル化が問われている。

◎これ、ベネトンの広告なんだよね。尖閣諸島を舞台にビーチバレーを楽しむ日中の美女たち。ベネトンは「UNHATE」(憎まない)のキャンペーンを展開している。
http://www.youtube.com/watch?v=arSUUCgDwqs
このCMも凄い。シリアの子どもたちを救おう。広告主はイギリスのNGO
http://www.youtube.com/watch?v=RBQ-IoHfimQ

田中秀征が次のように指摘する通りである。
「それにしても抵抗勢力の先頭に立つはずの民主党はどうしたのか。一度政権に就いただけで指導者たちは骨抜きにされてしまった印象が強い。「ものわかりの良過ぎる野党」、「肝心なときに黙っている政治家」ではとても国民的信頼は得られない」
http://diamond.jp/articles/-/49721

◎宝島社も「艦これ」ブームに乗った。「日本海軍『艦これ』公式作戦記録」が売れている。ショッピングバスケットが付いた「LESPORTSAC 40th ANNIVERSARY 2014 SPRING/SUMMER style 1 ショッピングバスケット」も売れており、オリコン週間本ランキングの1位と2位を宝島社が独占した。
http://mantan-web.jp/2014/03/06/20140305dog00m200058000c.html
他の出版社も宝島社のフットワークを見習うべきだ。

白泉社文庫の創刊20周年記念フェアで、白泉社文庫200冊を一挙にプレゼントしてしまう企画を実施している。そのラインナップを見ると白泉社がいかに多くの名作を刊行してきたかがよく分かる。
http://www.hakusensha.co.jp/hb20th/

◎LINEを活用して女子中学生の売春を斡旋する輩まで現れた。
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201403/0006755863.shtml

ニューヨークタイムズが161年前の記事を訂正したと話題になっている。
http://jp.reuters.com/article/jp_socialmedia/idJPTYEA230AK20140304

朝日新聞に掲載された「週刊文春」の広告で一部が黒く塗りつぶされていた。「『慰安婦問題』A級戦犯●●新聞を断罪する」となっていたわけだ。朝日新聞の読者であれば、そこに「朝日」の二文字が入ることは容易に想像できるというもの。つまり、黒く塗りつぶすことは読者をバカにしているということに朝日新聞は気が付かないのが、私などからすれば不思議でならない。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140306/dms1403061207004-n1.htm

◎帯の惹句が良い。講談社+α新書の「女の悩みの9割は眉唾」の帯には「女性誌にケンカ売ります!セックスできれいになる?そんなアホな!」とある。このケンカを買う女性誌があると面白い。「アンアン」を念頭においての物言いだろうが、敢えて「フラウ」あたりが買わないかなあ。
http://news.ameba.jp/20140305-218/

◎バーンズ&ノーブルは2010年以来、NOOKで10億ドル以上も損失しているという。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1403/06/news087.html
下手に電子書籍ビジネスに手を出さなければ良かったのだ。私が紀伊國屋書店の社長であったならば、電子書籍ビジネスに自ら手を出すような決断は絶対にしなかったことであろう。

◎「進撃の巨人」(講談社)が、コミックス発行部数累計3000万部突破を記念し、プロジェクションマッピングを用いて実物大の巨人を出現させるイベント「auスマートパス Presents 『進撃の巨人プロジェクションマッピング」を4月10、12、13日の3日間、神奈川県川崎市ラゾーナ川崎プラザ・ルーファ広場で開催する。
http://eiga.com/news/20140306/11/

◎無法地帯と化していた「全文ネタバレ」「画バレ」サイトが一掃されそうだ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1403/06/news086.html
http://shingekikyojin.net/archives/36784142.html

◎このインド映画、面白そうだな。「スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え! No.1!!」。
http://www.crank-in.net/movie/news/29740

宇野重規の「西洋政治思想史」(有斐閣)も面白そうだ。この土日に読もう。
http://www.yuhikaku.co.jp/static/shosai_mado/html/1403/08.html

水無田気流は女子の社会的自立と旧来の伝統文化規範からの逸脱を両輪とした社会現象を無頼化と名づけている。水無田の「無頼化した女たち」(亜紀書房)によれば、無頼化の源泉は保守化同様に「社会に蔓延する不安」だとしている。
http://www.akishobo.com/book/detail.html?id=572

◎村上裕一の「ネトウヨ化する日本」(角川EPUB選書)は「フロート」という概念を導入しているが、ネットデバイスの発達によって出現した「フロート」=「新中間大衆」に属する「普通の人々」がアニメやインターネットを介した過剰な共感を日常化させることでネトウヨ浪漫主義の暴走が始まるのである。私はセカイ系決断主義には与せず「重層的な非決定」でゆく。
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20140214/E1392318134378.html?_p=1
村上は「bonet」を運営する梵天の社長でもある。
http://bonet.info/all

◎立場を失うことを極度に恐れ、立場に与えられた役を必死に果たす、ある意味で「人格」よりも「立場」が優先される日本の立場主義は「江戸時代の『家』を中心とした思想の変形として成立」したものだが、実は立場主義は既に機能しなくなっている。多くの日本人は、この現実を受け入れることが恐くてできず、安倍内閣を支持しているというのが安富歩の「ジャパン・イズ・バック」の主張である。安倍政治とは、後戻りできないのに後戻りしようとしている「あがき」にほかならないということか。
http://www.akashi.co.jp/book/b166272.html

凸版印刷は2017年3月期に営業利益700億円以上を目指す。出版業界にお裾分けして欲しいものである。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNZO6787937006032014DT0000

◎それにしても大凸は色々なことに手を出す。凸版印刷はガチャポンの電子マネー決済まで商売にしようとしている。
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1403/06/news124.html

◎広告マンの特徴五つ。「テンションの高い体育会系」「自信があり俺様な言動」「付き合い始めだけはサプライズ演出をがんばってくれる」「簡単に浮気する」「割とノリで結婚してくれる(そして離婚率高い)」
http://news.mynavi.jp/news/2014/03/06/369/
確かに、そういう奴っているよな。

◎「Dモーニング14号」(講談社)より3号連続で、杉本亜未ファンタジウム」の二年ぶり書き下ろし新作が再始動。
http://morning.moae.jp/news/959
ネットはマンガにとって欠かせないメディアとなりつつある。

◎スピンズは20周年を記念して「うる星やつら」とコラボだっちゃ。「うる星やつら」デザインのスウェットやトートバッグなどが発売される。
http://www.spinns.com/news/uruseiyatsura/

◎「青木宏行応援スレ」なんてあるのかよ。青木は光文社の社員だが、一般的にはAKB48の一部だよなあ。
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/akb/1394115213/l50

電子書籍書店の「Reader Store」は「朝日新聞デジタルSELECT」レーベルの人気作品65タイトルを半額100円で4月6日まで提供する。
http://japan.zdnet.com/release/30065608/

主婦の友社は、「キッコーマン総合病院監修 おいしい血圧対策レシピ」(キッコーマン総合病院・監修、検見崎聡美・料理 1500円+税)を刊行。主婦の友社は冠レシピ本を得意とし始めている。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140307/prl14030711290038-n1.htm

◎宝島社の「付録付き本」の2013年の売上は1170万部と、前年比3割以上も伸ばし、過去最高を記録した。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20140226-OYT8T00930.htm?cx_thumbnail=07&from=yolsp

ユニクロを経営するファーストリテイリングは、アメリカのカジュアル系高級ブランド「J.クルー」買収で動いているようだ。柳井正社長は中国市場とアメリカ市場を重視し、軸足を日本市場から海外市場に移そうとしている。「日本市場に将来的な需要増が見込めない以上、日本企業は『より日本的でなくなる』ことで活路を見出すしかない」として出版社は「例外」であり得るのだろうか。
http://newsphere.jp/business/20140306-9/

◎フジテレビが4月から大改編。キャッチコピーは「ヘンシン!新型フジテレビ」。しかし、魅力的な番組はない。
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/143089.html

スマートフォンで商品を撮影して販売価格を設定するだけで出品できるECサービス「LINE MALL」は出品・販売手数料を完全無料化した。
http://japan.cnet.com/news/service/35044851/

◎「Beppin」「すッぴん」「デラぺっぴん」「Chuッ」などのデザインに携わった有野陽一の「エロの『デザインの現場』」(アスペクト)が興味深い。「デザイン史には載らない、残らない革新的なアダルト雑誌のデザインを追求した一冊」である。
http://www.aspect.co.jp/np/isbn/9784757223103/

博報堂は、デジタル領域・ダイレクト領域などに強みを持つ社内クリエイターが中心となり、次世代型クリエイティブを開発する社内横断プロジェクト「スダラボ」を発足させた。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2014/03/20140307.pdf

◎この映画は必見だ。「アクト・オブ・キリング」。インドネシアで100万人にも及ぶ虐殺に加担した「英雄」に虐殺を再現させる。「ガレキとラジオ」のスタッフには特に見て欲しい。製作にウェルナー・ヘルツォークが名前を連ねていることからして普通じゃない。
http://www.aok-movie.com/

◎「VERY」(光文社)の憲法特集を東京新聞が取り上げている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014030702000121.html

Jリーグ浦和レッズのサポーターがコンコースに「Japanese Only」(日本人以外お断り)と書かれた横断幕を掲げていた。
http://derorinkuma.com/jleague-news/52662
浦和レッズの次のような文章は、どこか他人事のようである。「差別的と解釈されかねない発言と行為」という物言いには「差別意識」が潜んでいるのではないか。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0CDAQFjAB&url=http%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F%25E3%2582%25B5%25E3%2582%25AC%25E3%2583%25B3%25E9%25B3%25A5%25E6%25A0%2596%25E6%2588%25A6%25E3%2581%25A7%25E3%2581%25AE%25E5%2587%25BA%25E6%259D%25A5%25E4%25BA%258B%25E3%2581%25AB%25E3%2581%25A4%25E3%2581%2584%25E3%2581%25A6%2F&ei=j9obU_j2F4W9kQXQ1IHAAg&usg=AFQjCNGiZqrjejWOv4dPJEEGim6ECBp1kg&sig2=8TRZ-OUU4qiZ8EuOQFNGUQ&bvm=bv.62578216,d.dGI
実際、浦和レッズも「差別」に加担していた?
「この横断幕について、心ある浦和レッズのサポーター数人が、これはひどい外国人差別なのでやめさせるべきだとクラブチームの運営に申し出たところ、『今後改善する』ということを言いながらも、そのまま試合終了後まで放置したという。そればかりか、その差別横断幕を撮影しようとしたところ、『浦和にとってマイナスになるから』ということで止められたという」
http://rensai.jp/?p=67645
これは国際問題に発展するだろう。

ハースト婦人画報社の電子雑誌のアップストア内の「ニューススタンド」における売上が2月の段階で累計100万ダウンロードを達成。次の点は重要だ。
「紙の雑誌を定期購読した人に、同じ内容の電子版が無料で読める『デジタルストレージサービス』を始め、定期購読の更新率が10%近く上昇した」
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO67843110W4A300C1H1EA00/

                                                                                                                        • -

5)【深夜の誌人語録】

決断とは何かを断念することである。