【文徒】2014年(平成26)9月18日(第2巻177号・通巻379号)

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1)【記事】読売新聞の誤報は常態化しているのか?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】読売新聞の誤報は常態化しているのか?

朝日新聞の二大誤報により、読売新聞は随分と勢いづいているようだが、ここで確認しておきたいのは、誤報は何も朝日新聞の専売特許ではないということである。既に産経新聞の歴史的な誤報の数々は紹介したが、今回は読売新聞がしでかしてくれた誤報を見てみることにしよう。
やはり忘れがたいのは宮崎勤の連続幼女誘拐殺人事件で、宮崎のアジトを発見したという1989年8月17日付夕刊一面トップで報じた捏造記事である。宮崎の潜伏していたアジトを発見して来たという内容なのだが、ウイキペディアは次のように書いている。当時、私はよくもまあ!ここまで嘘がつけるものだと感心した記憶がある。これほどの捏造記事がさして話題にならなかったのは朝日新聞のお蔭でもある。朝日新聞のサンゴ損傷捏造記事の影にかくれることができたのである。
「記事ではアジトの詳細な様子が語られており、『奥多摩山中・小峰峠近くで発見』『自宅から南東へ約1.5キロ』『宮崎家の使用人だった男性が住んでいた小屋』『警察が多数の有力物証を押収』『遺体放置場所もこのアジト内』『遺体観察にかよう』『宮崎供述の矛盾、疑問点がことごとく解明』などと続き、アジトのある山小屋付近の地図まで掲載されていた」
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0CCMQFjAB&url=http%3A%2F%2Fja.wikipedia.org%2Fwiki%2F%25E8%25AA%25AD%25E5%25A3%25B2%25E6%2596%25B0%25E8%2581%259E%25E3%2581%25AE%25E5%25AE%25AE%25E5%25B4%258E%25E5%258B%25A4%25E4%25BA%258B%25E4%25BB%25B6%25E3%2581%25AB%25E9%2596%25A2%25E3%2581%2599%25E3%2582%258B%25E6%258D%258F%25E9%2580%25A0%25E4%25BA%258B%25E4%25BB%25B6&ei=_TEZVP7iGcG0uASPyYHoBw&usg=AFQjCNHeqTQ4lNPnGqEI8HsGwufKPtPHCg&sig2=Wt9iFzrUHGMVMsWoVyDnvA
2012年に山中伸弥教授のノーベル賞が決定したときには日本中が沸きあがったが、その3日後の10月11日付読売新聞の一面トップを飾った大スクープ「iPS心筋を移植 初の臨床応用 ハーバード大・日本人研究者 心不全患者に」も誤報であった。読売新聞は一面のみならず、三面も使って報じたし、その日の夕刊一面には、臨床応用を成功させた「ハーバード大の森口尚史客員講師」のインタビューを掲げて、世紀の大スクープに胸を張ったものだが、13日の朝刊では早くも「iPS移植は虚偽」と「おわび」を載せて、1ページ全面をつぶす検証記事を掲載したのである。このとき朝日新聞はちょうど今回とは逆に13日朝刊において、1面から社会面まで費やして、読売の誤報問題を取り上げた。新聞が他社の誤報を一面でデカデカと取り上げたのは、新聞史上、これが初めてだと言われている。
http://www.magazine9.jp/shibata/121031/
福島原発の事故報道でも誤報をしでかしている。「リテラ」は次のように書いている。
「2011年5月、一面トップで当時の菅直人首相が『海水注入中断』を命じ『震災翌日、55分間』の中断があったと報じたが、これを命じたのは東電の武黒フェローだったことが吉田調書から判明したのだ。しかしこの件について、読売は謝罪はおろか、何の説明もしないまま未だ無視し続けている」
http://lite-ra.com/2014/09/post-454.html
2012年7月22日付西部本社版1面トップで報じた「工藤会側に県警内部文書」も誤報であった。これは訂正記事を出している。
「7月22日付の『工藤会側に県警内部文書』、23日の『職質ルールも漏えいか』、24日付の『北九州市長「真相究明を」』の記事で、捜査手法に関する『本部長通達』が関係先の捜索で見つかった事実はありませんでした。おわびして訂正します」
http://www.data-max.co.jp/2012/08/08/post_16448_ynh_1.html
昨年5月21日付一面の肩記事「福岡市 健診数値で飲酒指導」でも誤報をおかしていると考えても良いようである。
「取材に応えた同課の加藤三貴課長は、『この記事については、読売新聞側に抗議しています』。やはり、正確な記事ではなかったということだ。同課長が明らかな間違い、として指摘したのは次の3箇所の記述である。
・《職員の飲酒による事件・事故の根絶を目指す市は、健康診断の数値を上司が確認してアルコール依存症の危険性が高い職員を見つけ、指導する方針を決めた》
・《市は、年に1度の健康診断後、所属長に対し、職員のγ(ガンマ)GTPなど肝臓の数値に異常がないかチェックするよう指示することを決めた》
・《「お酒の飲み方チェックシート」と会わせて所属長が一元管理し、所属長の判断で問題のある職員については産業医に記録を見せ、受診の判断を仰ぐようにする》
課長によれば、健康診断の結果から上司が確認できるのは、数値ではなく、注意が必要かどうかなどの包括的な所見のみ。方針を決めたのも昨年のことで、新たな方針決定など一切ないという。一元管理もなければ、所属長に対し、職員の肝臓の数値に異常がないかチェックせよとの指示などあり得ないと明言している。つまりは『誤報』ということだ」
http://hunter-investigate.jp/news/2013/05/post-364.html
この誤報を指摘した「ハンター」は「どうやら読売では、誤報が常態化して、『正しいことを書く』という感覚が麻痺しているらしい」とまで書いているのである。

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2)【本日の一行情報】

◎北海道の浦河は「TSUTAYA浦河店」が2012年5月に閉店して以降、書店のない街となっていたが、北海道ブックフェスの企画で9月28日、「希望者がブースを借りて1日限りの書店を開く本のフリーマーケット『浦河ワンデイブックス』をショッピングセンターMIO(大通3)で行う」そうだ。「くすみ書房」や「ブックカフェ風味絶佳」が出店する。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki/562907.html
「ブックカフェ風味絶佳」をチェックしておこう。
http://fuumizekka.com/books.html

講談社の男性ファッション誌「HUgE」が契約編集者を募集している。編集者の場合は「月額報酬22万以上45万円」、編集アシスタントは「月額報酬20万円以上」。
http://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-131578-5-3-1/?ty=nw

◎創刊1周年を迎えた「ニューズウィーク日本版e-新書」は、既刊16タイトルの価格50%OFFでの配信を期間限定で実施している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000313.000005179.html

◎「アゴラ」で北村隆司は次のように書いている。
「特に問題なのは、日本語では元気な保守(右翼)系の人物が、米国ではウンともスンとも言わず、帰国後に大声で相手を批判する傾向が強い事である」
この傾向は保守(右翼)に限らず、リベラル(左翼)でも同じように強いと思う。
産経新聞が、米国を「慰安婦問題国際世論の『主戦場』」と位置つけるのであれば、自分の主張に反対する論議にも紙面を与えるなど、もう少しフェアな記事を書かないと、事実をひん曲げて自分の結論を読者に押し付けた朝日の二の舞になる気がしてならない」
北村は古森義久の記事を例に読者をあらぬ方向に誘導する「捏造記事」に限りなく近いと警鐘を鳴らしている。
http://blogos.com/article/94576/

◎佐々木紀彦と堀江貴文の「対話」。ホリエモンはニュースキュレーションメディアを次のように分類している。相変わらず鋭い手さばきだ。
「『グノシー』『SmartNews』『Antenna』『NewsPicks』と、うまいこと住み分けができてきましたよね。グノシーとSmartNews朝日新聞や読売新聞的な役割。Antennaは雑誌。そして、経済情報に特化したNewsPicksは日本経済新聞を狙ってるとか」
佐々木は米「タイム」も最初はキュレーションメディアとして立ち上がったという歴史を踏まえて次のように言っている。
「始めはいろんなところからニュースを集めるだけだったのが、どんどんオリジナル記事を増やしていって、世界一の週刊誌と呼ばれるまでになったわけです。だから、webメディアもそれと同じ道をたどるのではないかと思っています」
キュレーションメディアの方法論を駆使してオレが目指すのは日本一の出版業界誌。マジだよ、これ。
http://horiemon.com/talk/15731/

◎林智彦の主張。
「これまでの出版の美点を伸ばし、欠点を減らすために、『電子出版』のポテンシャルをどう活かすのか。電子出版が『出版』の姿を変えつつあるプロセスに、どう貢献し、産業をどう拡大していくのか。
そのような問いにコミットせず、ただただ昔話をするだけの『出版論』は、もう終わりにしてほしい。そう思うのは、私だけでしょうか?」
http://japan.cnet.com/sp/t_hayashi/35053789/

ピーター・バラカンDJのInterFM「Barakan Morning」が9月いっぱいで終了してしまうという。InterFMの迷走が始まるだろう。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/312573/

◎「BBCワールド・サービス・グループ」のディレクター、ピーター・ホロックスは次のように豪語している。
(記者によるソーシャルメディアの)「利用は必須だ。5年ほど前にあるスピーチをした。記者職全員がツイッターを使うべきだと述べた。情報源の1つとしてツイッターを使うべきだ、と。『ツイッターを使わないなら、この組織での立場を再考したほうがいい』と言ったのだが、いつのまにか『ツイッターをやれ、でなきゃ首だ』と発言したことになってしまった!」
こうも言っている。「ジャーナリズムの分権化」とは言い得て妙である。
「ジャーナリズムの分権化だ。ソーシャルメディアを記者個人が運用する権利を記者に与えているーすべての記者に対してではないが。記者自身が誰の指示も得ずに自分でつぶやくようにしたほうが早いし、他の人がチェックする必要はない。管理者側は記者を信じる必要がある。記者は利用に責任を持つ。あらかじめ提示された指針に沿っている限り、問題はない」
ジャーナリズムの分権化におけるプレイヤーは職業記者だけではないはずだ。誰もがジャーナリズムのプレイヤーになりうるのである。
http://toyokeizai.net/articles/-/47719
ちなみに日本最大の発行部数を誇る読売新聞にツイッター記者は一人もいない。ガラパゴス新聞は滅びると思うのは私だけであろうか。読売新聞のようにジャーナリズムの分権化に背を向けていては、ソーシャルメディアの時代に絶滅してしまうのは、いわば「自然史的過程」にほかなるまい。

◎LINE連載小説として生まれた川村元気の「世界から猫が消えたなら」はマガジンハウスから刊行され、70万部のベストセラーとなったが、佐藤健宮崎あおいというキャストで映画化されることになった。監督はCM出身の永井聡
http://www.cinemacafe.net/article/2014/09/16/25985.html

◎「対した」は「大した」だろうが、こういう人が増えたのは間違いあるまい。
「雑誌は嘘山盛りで夢見させてやりゃいいんだよ、提案したものを消費しなって殿様目線なの。今はネットでは色々わかるから通用しなくなったんだよね。書いてる人や企画立てる人も対(※)したことないってばれちゃった」(※=ママ)
編集者が自らをソーシャルメディアを通じて晒していくことで、こういう誤解を解かねばなるまい。むろん、「誤解」ではないケースもあるけどね。
http://inagist.com/all/511680038555910144/

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3)【深夜の誌人語録】

偉くもないのに偉そうに振る舞うことも最低だが、そもそも人間、偉くなったらオシマイである。