【文徒】2016年(平成28)8月2日(第4巻143号・通巻830号)

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1)【記事】 毎日新聞「谷垣幹事長続投へ」と誤報。ほどなく記事を差し替えるも訂正告知は掲載せず
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】 毎日新聞「谷垣幹事長続投へ」と誤報。ほどなく記事を差し替えるも訂正告知は掲載せず(岩本太郎)

都知事選の結果も判明し月が改まった昨8月1日の早朝2時半頃、毎日新聞は同社ほかのニュースサイトに「自民党:谷垣幹事長続投へ」という記事を掲載した。
http://mainichi.jp/articles/20160801/k00/00m/010/109000c
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160801-00000011-mai-pol
これが誤報であることはほどなく判明し、毎日新聞も1日の午前中には当該記事を削除。12時33分には「自民 幹事長に二階氏 首相、谷垣氏の続投断念」という別の記事に差し替えている。したがって現在では上記URLの記事は見られなくなっているのだが、この誤報を指摘した日本報道検証機構代表の楊井人文(弁護士・元産経新聞記者)によれば以下のような内容だったらしい。
安倍晋三首相は、3日に行う内閣改造自民党役員人事で焦点となっている谷垣禎一幹事長について、続投させる意向を固めた。サイクリング中の事故で入院している谷垣氏は難色を示しているものの、最終的には首相の意向に従う見通しだ。
首相は、谷垣氏の手腕を高く評価しており、交代させれば政権運営に支障が出かねないと考えている。谷垣氏は事故で頸髄(けいずい)を損傷しており、まひが残る可能性もあるが、首相は幹事長職を続けることは可能と判断した。3日までに谷垣氏が退院する見通しはないが、9月中旬からの秋の臨時国会までの復帰を期待する。当面は細田博之幹事長代行が職務を担う。≫
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20160801-00060609/
ちなみに上記では誤報となった記事の担当記者名は明らかにされていない。ただ、削除されるまでの数時間の間で、既にこの報道を真に受けたネットユーザーたちが話題にしていた中で記者と思しき名前も挙げられている。1日朝刊の他紙が揃って「谷垣幹事長交替へ」と報じたほか、1日午前中の記者会見で菅義偉官房長官が幹事長人事に言及しなかったことから誤報だと次第に明らかになったようなのだが、その間は記事の真贋を巡ってネット民たちも混乱していた様子がうかがえる。
https://www.youtube.com/watch?v=yUJYv3eKmHU
http://bintan.ula.cc/test/read.cgi/daily.2ch.net/newsplus/1469987467/l50
楊井が指摘するように、毎日新聞は問題の記事は削除して差し替えはしたものの、訂正の告知は行っていない。自民党の幹事長人事を間違えて掲載したとなれば当然担当キャップのクビが飛ぶのは必至で、デスクや政治部長の責任も問われるなど社内的な大問題になっていることだろうから、このままこの誤報を「黒歴史」として封印してしまいたいというのが本音だろう。
もとより、今のネット民たちはそうした些細ではあるものの致命傷につながりかねないミスは決して見逃してはくれないわけだが。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

東京都知事選に出馬したものの落選に終わった鳥越俊太郎だが、その鳥越を目の敵にしてきたジャーナリストの寺澤有が投票日前の7月25日、『鳥越俊太郎の「オレはジャーナリストじゃない」宣言』という著書をamazonKindle本として緊急出版したことを明らかにした。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01J4PWQSA/ref=cm_sw_r_tw_dp_cdQNxbJMJJZHA
http://www.buzznews.jp/?p=2079048
http://news.livedoor.com/article/detail/11814169/
両者の間では、以前に寺澤が『フライデー』に書いた鳥越のスキャンダル記事に対して鳥越が警告書を送り付けてきたほか、2006年に鳥越が『オーマイニュース日本版』編集長を離れることをすっぱ抜いた記事(執筆者は当時『JANJAN』編集部にいた女性記者だったが、寺澤が背後で協力した)などをめぐって騒ぎになるなど、長きにわたる因縁が横たわっている(寺澤とは旧知の私も以前に彼から「鳥越を焼鳥にするまでやる」と聞かされた)。ちなみに上記書のタイトルは、その後に両者が直接会って一旦和解した際に鳥越が寺澤に言ったというセリフに由来している模様。
https://twitter.com/Yu_TERASAWA/status/758092770863149056
https://twitter.com/Yu_TERASAWA/status/755754206338830336

ビッグデータを分析するシステムを持つフリークアウトの子会社「インティメート・マージャー」に電通が新たに出資することになった。今後はインティメートから技術提供を受けつつ両者のオンラインデータを統合し、消費者への効果的なネット広告の配信を行っていくという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO05484260R30C16A7TJC000/

◎ロンドン発のファッション誌『ルラ(Lula)』の元編集長リース・クラークが2014年春に創刊したファッション誌『Violet Book』の日本版が来年4月から年2回刊で発売される。日本での版元は『NYLON JAPAN』や『MERY』などを発行するカエルム。創刊に先駆けて今年12月にデジタル版を本国イギリスと同時に開設し、動画も含めたコンテンツを展開していくという。
http://www.violetbook.co.uk/
http://www.fashionsnap.com/news/2016-08-01/violet-book-japan/

◎『地球の歩き方』のダイヤモンド・ビッグ社が7月29日に『南極大陸 完全旅行ガイド』を発売した。南極旅行のみを対象にしたガイドブックの発行は同社でもこれが初めてだそうだ。
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=73693

◎『ハリー・ポッター』シリーズの、前作からは19年後の世界が描かれた続編となる劇『ハリー・ポッターと呪いの子』が7月30日にロンドンで初公演。翌31日には英語の脚本も発売された。11月15日には日本語版の脚本も出版される予定とのこと。あの大騒ぎのような事態が再び沸き起こることになるのだろうか。
http://www.sankei.com/world/news/160731/wor1607310014-n1.html

マイナビ出版は、コンピュータ関連の電子書籍を販売する専門サイト『Tech Book Zone Manatee』を8月1日より開設した。
https://book.mynavi.jp/manatee/
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000016440.html

◎大阪の印刷会社「アピックス」が山梨日日新聞社ほかとの共同で、富士山の五合目を発行所にした『富士山新聞』の発刊を8月1日より開始した(発行元は山梨日日新聞)。紙版とソーシャルメディア版の両方を発行し、紙版は9月末までの2か月間限定で富士山五合目に開設した発行所で印刷のうえ販売(1枚1000円とか)。その五合目の発行所は標高2305mの位置にある「日本一高い新聞発行所」になるとのこと。
https://happylogue.com/fujisan/
http://www.sankei.com/economy/news/160727/prl1607270294-n1.html

◎その山梨日日新聞は富士山吉田口登山道の五合目から八合五勺までの全山小屋21軒に、富士通タブレット端末を1台ずつ置き、同紙の電子版などを登山客らに閲覧できるようにしたという。山の情報はデジタルと紙の双方とも親和性が高いようだ。
http://www.sannichi.co.jp/article/2016/07/31/00137349

◎かつてアマゾンで技術開発に携わったエンジニアと、ワーナー・ブラザーズなどでビジネス面を管理していた人物が組み、ネットを使って映画館に人を呼び込むアプリを開発。昨年から小さな市場でテスト運営を経て、7月初めよりロサンゼルス、アトランタナッシュビルなどで本格的に始動したという。友達を誘って映画館の席の予約から劇場内でのポップコーンやドリンクの手配、そして当然支払いもクレジットカードで決済できるほか、様々なサービスが付与されているらしい。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160731-00060576/

◎スペインのグラナダに近い小都市・フンでは、住民の半数以上がTwitterを使って市長や市職員との間で日常的にコミュニケーションを図り、そこから上がってきた要望をもとに市政を運営するシステムが採られているそうだ。
http://wired.jp/2016/08/01/jun-citta-governata/

◎ビデオ・アートの創始者として知られ、衛星放送を活用して世界を結ぶアートの実践を行うなど現在のネット社会を先取りするような活動を展開したことでも知られる現代美術家ナムジュン・パイクの没後10年を記念した展覧会が、東京都渋谷区のワタリウム美術館で10月10日まで開催中。大友良英宇川直宏らによるライブ、浅田彰らが出演するトークなども企画されている。
http://www.watarium.co.jp/exhibition/1608paik/event1608/event1.pdf
http://www.sankei.com/life/news/160721/lif1607210008-n1.html

◎母親の胎内にいた頃の記憶を持つ子供は結構多い。新潟県上越市の看護師がこのほど自費出版した絵本『思い出したよ』は、友人の長女が画家の個展会場で、母親の胎内をあかね色の布で表現した作品を見て突然「おかあさんのおなかには10個のドアがあったから、ピンクのドアに決めたんだ」などと語りだしたのを聞いたのがきっかけで生まれたそうだ。
http://www.niigata-nippo.co.jp/sp/news/local/20160727269707.html

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

相手が「前向きに対処いたします」と言ったら、それは「わかったから早く帰ってくれ(ただし何もしないけど)」という意味だと理解すべきだろう。