【文徒】2015年(平成27)1月16日(第2巻9号・通巻454号)

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1)【記事】雑誌はネットよりも信頼されていないのか!
2)【記事】「表現の自由」における「許容範囲」という背理
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌はネットよりも信頼されていないのか!

新聞通信調査会の「2014年メディアに関する世論調査結果」によれば、新聞の信頼感が高くなった人は3.9%、低くなった人は10.2%。低くなった理由のトップは、想像通り「誤報があった」。一連の朝日新聞「騒動」は、朝日新聞離れではなく、新聞離れを加速させているのかもしれない。
しかし、この調査で深刻なのは雑誌だろう。雑誌は信頼感が高くなった人が1.3%しかいないのに対し、低くなったと答えた人は16.9%に及ぶ。各メディアで信頼度のランクをつけると、1位「NHKテレビ」、2位「新聞」、3位「民放テレビ」、4位「ラジオ」、5位「インターネット」、6位「雑誌」という順番になる。人々が最も信頼していないメディアは雑誌という結果だ。
私たちはインターネットの情報は玉石混交であり、しかも石ばかりなので、玉を探すのは大変なのに対し、雑誌は編集力を介した選りすぐりの情報を提供できるなどと、あちらこちらで説明しているわけだが、普通の人々は、そうは考えていないらしい。新聞の「吉田証言」や「吉田調書」が誤報であったり、報道の内容が不正確であったことを最初に取り上げたのは雑誌であるにもかかわらず、だ。
もちろん、雑誌の場合、雑誌とひとくくりにできないほど、多様な内容の雑誌が存在し、雑誌総体として信頼感を調査しても意味はないと言えるだろう。しかし、雑誌としてひとくくりにしての印象が、インターネットよりも信頼できないメディアという結果になってしまうのは、信頼できると人々に思われている雑誌が少ないからだろう。
普通の人々にとってみれば、雑誌の多様性は玉石混交と理解されているということになるのではないか。それが誤解であることを雑誌の側はアピールしてゆく必要があるのではないだろうか。
http://www.chosakai.gr.jp/notification/pdf/report7.pdf

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2)【記事】「表現の自由」における「許容範囲」という背理

銃撃テロで編集長や作家らが殺害されたフランスの風刺週刊紙「シャルリエブド」の事件後第一号は、イスラム教の預言者ムハンマドが涙を見せながら「私はシャルリ」のメッセージを手にする「風刺画」が表紙を飾ったが、この「風刺画」を掲載した新聞は産経新聞東京新聞だけであった。朝毎読は揃って掲載を避けた。
「シャルリエブドは、テロ事件発生後、本社が使用できないため、左派系仏紙リベラシオンの社屋の一部の提供を受け編集作業を続けてきた」(東京新聞)
保守系ル・モンドやグーグルが今回の刊行に際して資金援助していることは既に触れた通りである。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2015011402000235.html
私は、宗教は抑圧された人々にとって嘆息なればこそ、宗教の本質はアヘンであると思いつづけている。その立場からすると、朝日新聞の徳山喜雄の次のような見解には違和感がある。それは日本流の空気を読む議論に過ぎないのではないか。
「ただ、違和感があったのは、下劣ともいえる絵を描き、イスラム教徒を傷つけることが「表現の自由」によって守られるのか、という点だ。違法でなければ何をしてもいいとは言えず、「妥当な表現」なのかどうかを、この機会に立ち止まって考えてみる必要があるのではないか」
http://thepage.jp/detail/20150113-00000010-wordleaf?page=1
「宗教」に対する批判の自由を認めないとなると、キリスト教原理主義化し、これが西欧社会を覆い尽くしたならば、どうするのだろうか。私は矢澤豊の次のような見解のほうが納得できる。
「テロの舞台となったフランスの風刺新聞のスキャンダラスな内容を指摘して「『表現の自由』の許容範囲を越える」と主張する人は、ではいかにしてその許容範囲の線引きをするかという議論と、そうした議論を通じたそれぞれ社会におけるコンセンサスの構築は、原則として「批判する権利」「風刺する権利」をみとめる「開かれた社会」においてのみ可能であることを再確認する必要があるでしょう」
http://agora-web.jp/archives/1628193.html
池内恵の「孤軍奮闘」も私は支持したい。
「「フランスのアラブ人には政教分離に賛同している人もいる」という議論で、イスラーム教の解釈は実は世俗主義に親和的だから、問題視してはいけない、批判してはいけないと議論する人がいますが、逆です。「フランス国民となるためには政教分離してください」と要求し続けてきたので、イスラーム教の教義では許されにくいにもかかわらず、一定数が政教分離を受け入れてきたのです。イスラーム教の教義を一切勉強せずにフランスのムスリム問題を語るような人が、話を混乱させています」
http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-entry-254.html
イランが今回の事件をどのように報じているかも「イランラジオ日本版」を通して見ておこう。300万人以上と世界の首脳がかけつけたデモについて、こんな記述があった。
「フランスのモスクの導師たちも、イスラム教徒に対して、このデモ行進に参加するよう呼びかけていました」
http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/51248-%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%90%84%E5%9C%B0%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%A2%E8%A1%8C%E9%80%B2%E3%81%AB%EF%BC%93%EF%BC%93%EF%BC%90%E4%B8%87%E4%BA%BA%E3%81%8C%E5%8F%82%E5%8A%A0

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3)【本日の一行情報】

小林よしのりの次のような指摘も正鵠を射ている。
「確かに日本人は宗教のパロディをタブー視する感覚がゆるいようで、イエスブッダが俗っぽい若者となって下界に現れ、安アパートに住んで日常を送るという、ほとんどナンセンスなギャグ漫画がヒットするほどだ。
だがそんな日本でも、イスラム教のパロディだけは許されない状態になっている。1991年には、ムハンマドを題材にしたイギリスの小説『悪魔の詩』を翻訳した大学助教授が殺害され、犯人は未だ明らかになっていない。
上述の漫画でも、様々な宗教をネタにしているにもかかわらず、イスラム教に関しては言及すらしていない。
怖いからイスラム教に触れるパロディはやらないというだけのことなら、日本人はすでにテロに屈しているということになる!」
小林は公共の福祉に反しない限り、言論の自由は許されるとしているが、それはフランスでも同じなのではないだろうか。「表現の自由」を「国体」とするフランスは宗教批判を公共の福祉に反するとは考えていないのではないだろうか。
http://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar707098

◎「So-net」のメールアカウント1万8877件が不正アクセスされた。インターネットに安全はない。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/011300137/

KADOKAWAと森永製菓は、TVアニメ「デュラララ!!×2」の放送開始を記念して、TVアニメ「デュラララ!!×2」と森永製菓のチョコレート「DARS」のコラボ企画による特別パッケージ商品「デュラララ!!コラボダース3個パック <IZAYA>/<SHIZUO>」を、1月20日(火)より、数量限定&店舗限定で発売する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001222.000007006.html

◎「『徹子の部屋』 40周年 Anniversary Book」が、ぴあから発売された。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000011710.html
フリーペーパー「ぴあclip!」2015年2月号も、全国のサークルK・サンクスにて配布中。
http://corporate.pia.jp/news/detail_clip1k_1.html

学研教育出版が発行する小学生向けドリルシリーズ「毎日のドリル」が、コイズミファニテックと学習デスクを共同開発した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000416.000002535.html

◎マガジンハウスがデジタル戦略に前向きになってきた。私は評価する。スタートトゥデイが展開するファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」と「BRUTUS」が組んで企画した1冊まるごと「夢の値段」特集に掲載された全57アイテムの販売を「夢の値段 2015」の特設ページで開始した。
http://zozo.jp/brutus/
http://shopping-tribe.com/news/14337/

◎TBSラジオ、文化放送ニッポン放送の在京AMラジオがFM波で聴けるようになる。
http://www.asahi.com/articles/ASH1F6D3ZH1FUCVL034.html

◎「dマガジン」(128万)、「dヒッツ」(254万)、「dビデオ」(437万)、「dアニメストア」(152万)、「dキッズ」(29万)の5つからなる「dマーケット」サービスの契約数が、2015年1月11日(日曜)に合計1,000万を突破した。NTTドコモの底力である。
http://sp.oshiete.goo.ne.jp/club/view/7a9a2003ca3eef0ccc8f4a6abf57bfb9/

◎NHN PlayArtが運営するスマホアプリ「comico」が、リリースから約1年3か月で累計800万ダウンロードを突破した。KADOKAWAから単行本化され、出版される作品も出てきた。
http://markezine.jp/article/detail/21735

博報堂は、クロスボーダーの企業広報を得意とする英国の「Ashton Consulting Ltd.」(アシュトン社)の株式を65%取得した。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2015/01/20150114.pdf

◎「クレディセゾン」のテレビCMで、文字通り頭を使って瓦15枚を割ってしまう美人は、空手歴13年の武田梨花だ。「ワカコ酒」(BSジャパン)で連続ドラマの初主演に抜擢された女優だ。
http://news.livedoor.com/article/detail/9671221/

◎ヴィクトリア本店(御茶ノ水)とアウトドア専門店のエルブレス御茶ノ水店は、三省堂書店神保町本店とコラボして、美しいニッポンの雪国を快適に旅する「雪旅」を共通テーマにした異業種小売店企画を実施する。スポーツ小売業のヴィクトリアが、のんびりとニッポンの冬を楽しむ「雪旅」を提案し、三省堂書店が「雪旅」に関連する書籍を集積した特設コーナーを展開する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000257.000004149.html

◎スマートニュースが小学館の「Woman Insight」をチャンネルプラスに追加した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000007945.html

◎写真週刊誌「FRIDAY」御用達の代官山蔦屋書店。
http://toyokeizai.net/articles/-/57974

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4)【深夜の誌人語録】

近道を選択したからといって目的地に辿り着けるわけではない。