【文徒】2015年(平成27)1月15日(第3巻8号・通巻453号)

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1)【記事】文藝春秋が投じた一石
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】文藝春秋が投じた一石

1月1日にセブンイレブン限定で発売された「週刊文春 お正月スペシャル号 丸ごと1冊タンマ君!」だが、昨年12月にこのことがオープンになるや否や版元の文藝春秋には書店からの抗議が殺到したという。
仄聞するに「社長を殺してやりたい」と言って来た書店関係者もいたから穏やかではない。
書店からすれば、利益源であった雑誌売上をセブンイレブンに横取りされたうえに、書店では扱えない商品をよりによって1月1日に販売するとは何事だ!という話になるのだろうが、もし仮に版元が書店で1月1日売りの企画を構想したところで、これに乗る書店がいったい全国で何店舗あるのだろうか?と手を胸に当てて考えてみる必要もあるだろう。
1月1日発売の雑誌を成立させるには、取次の協力、小売の協力、広告会社の協力が欠かせないのである。今回の場合、取次たるトーハンと小売たるセブンイレブンが親密な関係にあるうえに、文藝春秋や恐らくセブンイレブンとも親密な関係にある広告会社の協力なしでは絶対に成立しない企画なのである。何よりもセブンイレブンからすれば1月1日売りの雑誌を独占販売できるということに魅力を感じなければ手を出すことはできなかったはずである。
最近では「街の書店」を標榜しはじめたセブンイレブンである。文藝春秋にしてもセブンイレブン限定の発売でなかったならば、この企画の商品力から言っても刷り過ぎてしまうことになりかねなかったはずである。四者の利害が見事に一致した企画であったのである。
もちろん、書店の口惜しさとて理解できないわけではない。私からすれば文藝春秋に抗議したところで何もはじまるまい。
さすがにトーハン帳合のままで文藝春秋に抗議した書店はないだろうが、もしトーハン帳合の書店で今回の一件ではらわたが煮えくりかえっているのであれば、まずは帳合変更すべきである。
もし日販や大阪屋などが帳合の書店であればローソンやファミリーマートといったコンビニと手を組んで、トーハンセブンイレブンルートでは売ることの出来ない雑誌商品をお盆の時期なり、来年の1月1日でも良いから企画すれば良い。いくら腹を立てようとも、そうするしかないのである。
私は文藝春秋の次なるチャレンジ(柔軟性)に期待したいし、他の出版社のチャレンジ(柔軟性)にも期待したい。従来の常識(様々な硬直化した商習慣だ)に呪縛されたままでは雑誌は先細りするだけである。

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2)【本日の一行情報】

福士蒼汰がイタリアの男性ファッション誌「L'UOMO VOGUE」に抜擢された。何とカラー4頁にわたって登場。
http://www.oricon.co.jp/news/2047102/full/

ベネッセコーポレーションは、エフエム東京と共同で、高校受験・大学受験で合格を目指す受験生たちを応援する「受験生全力応援プロジェクト」を実施するが、そのシンボルイベントとして、受験を乗り越えた中高生、これから受験に立ち向かう中高生の卒業と進級をお祝いする「SCHOOL OF LOCK!×進研ゼミ presents Whistle Song」を 3 月 24 日(火)、幕張メッセイベントホールで開催する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000452.000000120.html

◎日販は、出版社向けマーケット情報開示システム「オープンネットワークWIN」を大幅にリニューアルした。リニューアルのポイントは(1)データ提供範囲の拡大、(2)リアルタイム分析の強化、(3)受注・在庫状況の開示、(4)複数銘柄の比較分析機能の導入、(5)パブリシティ情報の開示、(6)サービス時間の拡大。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2015/01/WIN_renewal_150113.pdf

◎イタリアのファッションブランド「ボッテガ・ヴェネタ」の2015年春夏広告キャンペーンに荒木経惟が起用された。日本のブランドは何をやっているんだ!
http://beauty.oricon.co.jp/trend-culture/trend/news/2047136/full/

文藝春秋西岡力に対して朝日新聞元記者の植村隆が起こした名誉毀損訴訟だが、弁護団が170名にも及ぶ。植村の記事を「捏造」と書いた論者を次々に訴えていくらしい。いずれにしても「黒幕」の伊藤博敏の次のような指摘は頷ける。
「マスコミとネットの連動は、時間とともに容赦ないほど激しく、それが加速していく危険性に満ちていることを、私自身、報道現場にいて、常に感じる」
http://dmm-news.com/article/908809/

◎新聞のデジタル版の普及は環境問題からしても、もっと進んでも良いはずだ。
「ちなみに、日本製紙連合会の資料によると、新聞用紙は年間325万トン消費されており、印刷・情報用紙との合計の約4分の1を占める。新聞用紙のリサイクル率は非常に高いが、これだけの大量消費とそれに伴う物流エネルギーの削減は環境的にも極めて重要と思われる」
http://blogos.com/article/103361/

講談社メチエから刊行される佐谷眞木人の「民俗学・台湾・国際連盟 柳田國男新渡戸稲造」は、気になる一冊だ。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?code=258594&_ga=1.199273258.560406121.1399872948
私であれば「柳田國男新渡戸稲造牧口常三郎」という問題を設定するのだけれど。新渡戸宅で開催されていた郷土会には牧口も参加している。「人間は地上に生まれ、地上に棲息し、地に育てられ、地に啓発せられ、地上に活動し、地を利用し、ついに地に死骸を遺して逝く」と喝破したのは、牧口である。

KADOKAWAとWalker47は、スマホ向け地域情報メディア「Walker47」を“おでかけ&エンタメ情報サイト”「Walkerplus」に統合した。「Walkerplus」がスマホ対応するということでもある。これまで都道府県別に設置していたエリア情報ページを、市区町村単位にまで拡大するそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001221.000007006.html
http://news.walkerplus.com/article/54250/

◎2月7日(土)・8日(日)の両日、Cielo y Rio 5F イベントスペースを会場に「BOOK MARKET 2015」が開催される。
朝日出版社、アトリエ・ヴィ、アノニマ・スタジオ、Arne Books、北書店、京阪神エルマガジン社晶文社、新潮社 青花の会、誠文堂新光社、地球丸、夏葉社、ニジノ絵本屋、PIEインターナショナル、ビーナイス、古本ユニットricca、本の雑誌社、ミシマ社、港の人、ミルブックス、雷鳥社リトルモアなどが出展する。
http://millebooks.blog.so-net.ne.jp/2014-12-26-1
http://millebooks.blog.so-net.ne.jp/2015-01-08

今井書店の年間ランキング。
http://www1.imaibooks.co.jp/book/?p=782

◎「仏行進で『ちゃっかり最前列』サルコジ氏、ネットで嘲笑のネタに」とAFP。
http://www.afpbb.com/articles/-/3036330?pid=15069699

◎「歌会始の儀」の選者の一人である三枝昂之の代表的な一首を掲げておこう。「やさしき志士達の世界へ」に収められている。テルアビブ空港乱射事件の岡本公三を歌ったものだ。カミさんも選者なんだなあ。
「霜は花と咲きて凍れる冬の詩を星とならざる  射手にささげむ」
http://www.asahi.com/articles/ASH184HN2H18UTIL00P.html

◎北白川のガケ書房浄土寺に移転して「ホホホ座」に。
http://lmaga.jp/blog/news/2015/01/gake-syobou.html

◎深く、同意しちゃうなあ。
「だいぶ前からあちこちで言っているのだけれど、日本の新書、もう、出すのも読むのも止めたほうがいいかと。お手軽に知識を得たい読者がいるから需要があると思ってるんでしょうけど、あれこそが日本のノンフィクションをダメにしているんじゃないかと」
https://note.mu/lingualina/n/n7635c678e46a

◎山下書店東京ドーム店の「跡地」に開店した「オークスブックセンター東京ドームシティ店」の副店長は山下書店東京ドーム店閉店時の店長だ。
http://number.bunshun.jp/articles/-/822465

江川紹子のコラム「慰安婦と捏造」。
http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20150114_5

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3)【深夜の誌人語録】

人間関係において秘密が秘密で終わることは稀である。