【文徒】2016年(平成28)7月1日(第4巻122号・通巻809号)

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1)【記事】「マス コンテンツ メディア」から「ニッチ コミュニティ サービス」へ
2)【記事】「週刊文春」が参院選自民党候補者の青山繁晴の金銭スキャンダルを報道
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.7.1.Shuppanjin

1)【記事】「マス コンテンツ メディア」から「ニッチ コミュニティ サービス」へ

実業之日本社が誇るブランドのひとつ「ブルーガイド」の村上真一編集長と築地を歩く、おさんぽ講座が7月9日(土)に開催される。地図ガイド雑誌「おさんぽマップ」の「東京下町版」を片手に西洋の文化の発信地となった明石町から、墨田川沿岸を散策。卸売市場の移転を控え変貌の著しい築地市場を歩くのだそうだ。これは面白そうだ。
http://www.j-n.co.jp/event/?article_id=354
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/55162a10-b8ee-23cd-1e1c-57160a27338b
編集者もまたブランド化する必要がある局面に私たちは立たされているのだ。雑誌を買ってもらっただけではサービスは完結しないということでもある。サービスの本質にして基本は動くことにある。
女性ファッション誌であれば、売り場と連動するコンテンツを提供するにとどまらず、編集者なり、スタイリストが店頭に立ち、サービスを提供するということまで想定する必要があるのではないか。
雑誌は書店で読者が買ってくれるのを待っているだけである。もともと動きはなく、それではサービスを完結させることができないのだ。こちらから動いていって初めてサービスは成立するのである。
メディアとか、コンテンツという旧来の枠組みに縛られていたのでは、デジタルシフトの時代を生き残ることはできないのである。編集者は「デスクワークの英雄」であってはならないのである。
冒頭の「おさんぽ講座」に関しても、もう一つ言っておくならば、意識的かどうかは別にして、ここにコミュニティ志向の萌芽を私などは見て取ってしまう。
以前にも書いたことだが、出版社は「マス コンテンツ メディア」から「ニッチ コミュニティ サービス」へと発想を抜本的に変更する必要があるはずだ。雑誌のデジタルシフトとは垂直軸のコミュニケーションに依拠したメディア業から水平軸のコミュニケーションに依拠したサービス業に転換することにほかならないのである。そう、デジタルシフトの時代において編集力とはサービス力なのである。

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2)【記事】「週刊文春」が参院選自民党候補者の青山繁晴の金銭スキャンダルを報道

参議院選挙の前でもなく、後でもなく、その真っ盛りに候補者のスキャンダルを暴く。これまで、こうしたケースはあったろうか。「週刊文春」が参院選比例区自民党公認で出馬した青山繁晴共同通信を退社したのは、経費の私的流用を指摘されてのことであることを明らかにした。
共同通信の記者だった青山氏は、1996年に発生したペルーの日本大使公邸人質事件を現地で約130日にわたり取材。当時を知る元同僚は小誌の取材に対し、次のように明かした。
『青山氏は、約1500万円の経費を使ったが、そのうちおよそ450万円に私的流用が指摘された。中にはペルーの乗馬クラブの利用代金が含まれていたり、ホテルのメモパッドに金額を書いた紙が領収書として提出されていたそうです』」
http://ch.nicovideo.jp/shukanbunshun/blomaga/ar1057788
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/6307
青山繁晴にとって最初の著書となる「平成」は文藝春秋から刊行されている。これ小説なんだよね。共著としては、それ以前に「お笑い日本の防衛戦略―テロ対策機密情報」(飛鳥新社テリー伊藤と共著)がある。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163211008
青山は放送法の縛りを受けないインターネットTVを通じて選挙妨害だと「週刊文春」の記事に反発している。それだけ必死なのだろう。青山は「平成」を文藝春秋から刊行したことで「週刊文春」の取材には無防備だったことを明かしている。「週刊文春」から献本を受けていたということも強調している。私の印象に残ったのは、その2点だけであった。
https://www.youtube.com/watch?v=eMCtnrU1krg
http://www.nicovideo.jp/watch/1467210924
青山は自らのブログで「週刊文春」に対して「すでに法的手続きを開始した。民事のみならず刑事も含めて告発し、徹底的に戦っていく」と書いている。
http://shiaoyama.com/essay/detail.php?id=418

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3)【本日の一行情報】

◎「東洋経済オンライン」が「女性管理職比率が増加した企業」トップ100を発表。1位はイオンフィナンシャルサービス。2位は第一生命保険。3位は三菱UFJニコス。4位セブン&アイ・ホールディングス、5位丸井グループ、6位アジレント・テクノロジー、7位はファンケルと和田興産。
http://toyokeizai.net/articles/-/124519

◎CCCメディアハウスは「フィガロジャポン(madameFIGARO.jp)」のウェブエディターを契約社員として募集している。「月額27万円以上(編集手当含む)」だそうである。
https://www.wwdjapan.com/career/recruit/620/

◎米Facebookは「Google Chrome」用の公式拡張機能「Share to Facebook」と「Save to Facebook」を公開した。「窓の杜」は次のように書いている。
「『Share to Facebook』は、『Google Chrome』で閲覧しているWebページを“Facebook”で共有するための拡張機能拡張機能のボタンのほかにも、閲覧ページの右クリックメニューから利用することも可能で、Webページのテキストを選択している場合はそれを引用して共有することもできる」
「一方、『Save to Facebook』の用途はプライベートなものだ。この拡張機能は閲覧ページを“Facebook”へストックし、あとで読み返すために利用するもので、“Facebook”を“あとで読む”サービスとして利用できるようになる」
http://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1007680.html

◎紙の雑誌からウェブメディアに移行して4カ月が経過した「クーリエ・ジャポン」だが、編集部は7月の第3週目に四国の山里でサテライトワークに取り組むことになった。ウェブメディアになったことで音羽の会社にいなくても仕事ができることを証明する。
http://courrier.jp/blog/55559/
編集部は営業も兼ねて全国を転々とすることもできるはずだ。

◎「JJ」9月号の表紙は読者の投票で決まる。滝沢カレンの「カッコいい」を選ぶか、「女らしい」を選ぶか。オレは「女らしい」カレンが「カッコいい」と思うので、「女らしい」に一票!投票すると抽選で10名にカレン着用と同じ服がプレゼントされる。
http://jj-jj.net/special/201609_cover/

◎ニールセンによればスマホからEコマース関連サービスを利用する人は4,857万人。利用者数上位は、Amazon(3339万人)、楽天市場(3181万人)、Yahoo!ショッピング(1876万人)を三強に、ニッセン(786万人)、オムニ7(741万人)とつづく。スマホアプリの利用動向を見ると、Amazonは1608万人、楽天は1369万人、Yahoo!ショッピングは601万人。
http://www.netratings.co.jp/news_release/2016/06/Newsrelease20160628.html
スマホが「店頭」なのである。

トーハンは、書店の店頭活性化を図る施策として、自社が運営する電子書店「Digital e-hon」と、KADOKAWAグループが運営する電子書店「BOOK☆WALKER」の会員情報を連携させ、互いのサイトで購入したコンテンツを各々の本棚で読める「本棚(購入履歴)連携」と、両サイトの「ポイント交換サービス」を開始した。
http://www.tohan.jp/news/20160629_769.html

プロ野球の巨人が、原辰徳前監督の金銭問題を巡る週刊文春の報道で名誉を傷つけられたとして、発行元の文藝春秋に損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷は28日付で、巨人の上告を受理しない決定をした。巨人敗訴の2審判決が確定した。朝日新聞は次のように書いている。
「問題とされたのは2012年7月5日号の記事。当時の原辰徳監督が過去の女性問題を理由に1億円を要求されて支払った問題をめぐり、巨人軍が会見で、支払った相手を『反社会的勢力ではない』と説明したことについて「読売のウソ」などの見出しで報じた。
昨年12月の二審・東京高裁判決は『巨人軍側は会見当時、(支払った相手を)反社会的勢力だと判断していたのに、該当しないと説明した』と指摘。文春の記事の主要な部分は真実だと判断した」
http://www.asahi.com/articles/ASJ6Y5QYYJ6YUTIL03K.html

トーハンは、全国約650 書店で、「WOWOW開局25周年記念 映画『秘密 THE TOP SECRET』連動フェア」を実施している。
http://www.tohan.jp/news/20160628_768.html

トーハンは、マガジンハウスの人気雑誌14誌それぞれのカラーを散りばめたオリジナルマグカップ「MUGzine House」(マグジンハウス)をトーハン独占販売のMVPブランド商品として全国約80書店で販売している。
http://www.tohan.jp/news/20160629_773.html

◎日販は、幻冬舎ならびに全国の取引書店の協力のもと、今年1月の発売以降好調な売れ行きを示している石原慎太郎の「天才」のミリオンセラー化を目指した増売プロジェクトに取り組む。実施期間は7月1日(金)から2017年1月31日(火)までの7ヶ月間。
http://www.nippan.co.jp/news/gentosha_million_2/

光文社古典新訳文庫からマルクスの「資本論第一部草稿」が刊行されるが翻訳は正真正銘トロツキスト森田成也なんだね。
http://www.kotensinyaku.jp/nextnumber/

集英社が提供する「本屋さんアプリ」は書店店頭にあるBeacon(ビーコン)という発信機とセットでその機能を発揮する仕組みとなっており、本格始動第1弾は、7月1日(金)より、夏のコミックスフェア「ナツコミ2016」に参加する書店約5,500軒で実施する「真夏のマンガ全国統一検定」だ。
http://www.shueisha.co.jp/info/20160630.pdf

◎日経が明屋書店社長の小島俊一の「崖っぷち社員たちの逆襲」(WAVE出版)を紹介している。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASJB28H18_Y6A620C1LA0000/
好き嫌いでいえば、自らいけしゃあしゃあと「週刊ダイヤモンド 地方『元気』企業ランキング第1位の社長」と名乗れる男は好きではない。私は経営者に欠かせない資質の一つが謙虚さであると考えている。
http://land-eye.jp/archives/4212

◎かもめブックスの柳下恭平が取り組む「ことりつぎ」には注目したい。書店の兼業化が「ブック+」であるとすれば、「ことりつぎ」が目指すのは「+ブック」であるという。「+ブック」とは、生活者ファーストでもある。
「一言で言えば、誰でも本屋をつくることができる仕組みです。最近、本屋にカフェなどを併設して、本屋に来てもらうきっかけを広げようとする動きが増えていますよね。そうしたものが『ブック+』だとすれば、ことりつぎが目指すのは『+ブック』。本屋以外の業態でお店を構えているところに、気軽に本屋の機能を『プラス』できるサービスです。誰でもどこでも好きな本を自由に仕入れることができるように、本の仕入れや販売管理・在庫管理はアプリを通じて行い、さらには本棚のつくり方や見せ方もサポートします」
http://goo.gl/ZJMJcy

◎CCCメディアハウスの「いまだから、赤塚不二夫」を特集した「Pen+」の出来が良い。
http://natalie.mu/comic/news/192652

オレンジページセールスプロモーション企画営業の契約社員を募集している。
「月給225,000円〜」だそうだ。
http://next.rikunabi.com/company/cmi0489927006/nx1_rq0013484725/?fr=cp_s01810&list_disp_no=1

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4)【深夜の誌人語録】

偏っていない才能はない。偏っているからこそ才能なのである。