【文徒】2016年(平成28)8月3日(第4巻144号・通巻831号)

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1)【記事】 取次と書店はどうなるのだろうか?
2)【本日の一行情報】
3)【人事】光文社8月1日付人事異動
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】 取次と書店はどうなるのだろうか?

取次にしても出版市場が縮小し、売上高を減少させざるをえないなかで、利益をしっかりと確保していくためには、書店を直営することが利益確保につながるはずだ。大型書店の立場からすれば取次を直営することが利益確保につながるはずだ。こうした流れにおいて、街の書店の経営は更に追いつめられることになる。都心部の街の書店が生き残るにためには、金太郎飴的な品揃えを克服して、個性的専門的な品揃えに活路を見い出し、その品揃えに見合った兼業化を志向するしかあるまい。
この「THE PAGE」の記事のタイトルは「書店はなくなってしまうの? 最大の脅威はやっぱりアマゾン」とあるが、雑誌で利益を確保してきた街の書店にとって、最大の脅威はアマゾンではなくスマホである。とすれば書店の兼業化は、その書店でしか味わえない「リアルな経験」をいかに提供していくかという志向を踏まえてなされるべきである。
https://thepage.jp/detail/20160729-00000005-wordleaf
書店の閉店が相変わらずつづいている。
WAY和歌山MIO店が7月31日をもって閉店。8月1日(月)より「くまざわ書店」として開店。
https://twitter.com/hei_antenna/status/757329013836611586
練馬のにしよし書店が8月31日をもって閉店。44年間の営業に終止符を打つことになった。
https://www.flickr.com/photos/s-nerima/28206722360/
滋賀大学近くの本のがんこ堂FC石山店が8月20日をもって閉店。
http://oo24n.jp/close/gankodo-20160723.html
三省堂書店大丸札幌店が8月28日をもって閉店。
https://twitter.com/mamukai_jp/status/758901920421392386
https://www.books-sanseido.co.jp/news/4133
小田急ブックメイツ南林間店が8月31日をもって閉店。
「ついに南林間駅前に書架を並べた書店がなくなる。ファミマが駅前にあるが、ラックに雑誌がある程度で書籍の展示機能は皆無で、隣の町迄出ないと入手出来なくなる」
https://twitter.com/Kitajima_Gaku/status/757903635564990464
常陸太田市のミライア常陸太田が閉店。
https://twitter.com/revolution_cats/status/760046417918341120?ref_src=twsrc%5Etfw

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2)【本日の一行情報】

◎シンポジウム「『ヘイト本』と表現の自由」が7月30日に出版労連会議室で開催されたそうだ。「レイバーネット」は、次のように書いている。
福嶋聡さん(ジュンク堂書店難波店店長)は自身の書店で<NOヘイト!>フェアを開催した経験を報告。『個人的にはヘイト的な本は嫌いだが、店としては置かざるをえない。なるべくそれに対抗する本を応援したい』と語り、そしてあからさまのヘイト本よりもメジャーな人気作家の反動的言動のほうが怖いのではないか、とも」
http://www.labornetjp.org/news/2016/1469979721323left

◎漫才をする絵本作家として知られるキングコング西野亮廣は、秋に上梓する絵本「えんとつ町のプペル」は、クラウドファンディングとネットショップ「BASE」を活用することで予約販売2000部を達成したという。
http://mediagong.jp/?p=18514
https://wesym.com/ja/projects/nishino/
https://thebase.in/?from=google_SS_Brand&gclid=CjwKEAjw5vu8BRC8rIGNrqbPuSESJADG8RV0MO_TJaG08B1zLh7rRI8yMJX4vUdExeVKO-bCS-3x0RoC1jHw_wcB
http://lineblog.me/nishino/archives/4618364.html
出版社の販売は旧来の枠組にとらわれないチャネルを開拓すべきなのではないだろうか。

◎共和国は、いわゆる「ひとり出版社」だが、良い仕事をしているなあ。
「ドイツ文学者でファシズム文化論を専門とする京都大名誉教授の池田浩士さん(76)と、染色画家で京都精華大名誉教授の高谷光雄さん(74)が共著「戦争に負けないための二〇章」を出版した。安保関連法の施行を踏まえ、戦前生まれで戦後を生きてきた2人が、「戦争に直面しなければいけない今、どうしたら戦争に負けない自分であることができるか」との思いをタイトルに込めている」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160731/ddl/k26/040/442000c
「わたしたちの想像力をかたちにして、やがて来たるべき世界に、着実に居場所と自由を占拠していくつもりです」だぜ!
http://www.ed-republica.com/#!about/cjg9
共和国の書評紙における広告も一見の価値があるよ。

文藝春秋から9月に「スクープ!週刊文春エース記者の取材メモ」(中村竜太郎)が発売される。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163905297

凸版印刷ソフトバンクは、コグニティブ・コンピューティングを実現するプラットフォーム「IBM Watson」の日本語版を活用した、BPO業務における顧客対応の品質向上と業務効率化を支援するサービス構築を共同で推進するそうだ。具体的には、「IBM Watson」にFAQデータや業務マニュアル、問い合わせ履歴などを継続的に学習させることで、自然言語による問い合わせ内容を理解し、最適な回答例を提示するBPO業務支援システムの開発を行う。第一弾はトヨタファイナンスの協力のもと、8月1日(月)から8月31日(水)まで、コンタクトセンター業務における「IBM Watson」を活用したオペレーター業務支援の実用性について、実証実験を実施する。
http://www.toppan.co.jp/news/2016/08/newsrelease160801.html
広告業界は、まさにデジタルシフトか死かという情況に突入する。

◎今年も「文春文庫の100冊 本の森フェア」が9月に開催される。イメージキャラクターは、「逢沢りく」で手塚治虫文化賞を受賞した、ほしよりこが描き下ろした「ブンちゃん」と「ハルちゃん」だ。「眠くなるまで本を読みたい」というコピーも良い。
http://bunshun.jp/bunko/hon-no-mori/?prnl

スクウェア・エニックスは、スマートフォン向け新作ゲーム「ドラマチックRPG 神つり」を近々配信するが、小学館が運営するコミックアプリ「マンガワン」でコミカライズ連載も決定した。
http://gamebiz.jp/?p=166267

講談社現代新書の青木肇編集長が東京新聞で次のように書いている。
「汚れっちまった悲しみに、なすところもなく今日も日が暮れていく、そんなサラリーマン編集者人生ではあるものの、かりそめにも新書の編集部に身を置いたからには、一冊一冊に正義の炎の芥子粒を籠めて世に放ち、この世界に多少なりとも良い流れを与えられたらという矜持ぐらいは持っていたい。しかし、理想と利益は往々にして一致しない。そのあたりがなんとも難しい」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2016080102000169.html
私は「正義」という言葉が大の苦手だ。スターリニズムにしても、ファシズムにしても「正義」に依拠した思想であったことを忘れてはなるまい。また、物事を判断するに際して、良いか悪いかではなく好きか嫌いかを優先するようにしている。良いか悪いかの二項で物事を考えてしまうと、「ほんとうのこと」が見えにくくなるのではないだろうか。あくまで私見だけれどもね。まあ、こういうタイプの編集者が棲息していることが、講談社の出版社としての特色ではある。文藝春秋や新潮社にはいないだろうからね。

池上彰を避けた鳥越俊太郎!「Business Journal」は次のように書いている。
〈アナウンサーは、「鳥越候補、あと5分くらいで到着するといわれているのですが」とレポートした後、「こちら(=テレ東)から、鳥越さんと池上さんの中継のリクエストを出しているのですけれども、今のところ、(鳥越氏サイドより)『ちょっと難しい』といわれています」と拒否されたことを明かした。
これを受けて池上氏は、「はい、そうですか。本人は出てくるのに、中継で私の質問は受けないということのようですね」「(鳥越氏は)惨敗といっていいと思うのですよね」とバッサリと辛口の評価を口にした〉
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16123.html
私などは宇都宮健児おろしにどうしてもソフトスターリニズムの影を見てしまう。

◎総合人材サービスのパーソルグループで、インテリジェンスが運営するアルバイト求人情報サービス「an」は、女子大生たちのリアルな声が集まる、女の子たちのおしゃべりWEBマガジン「Lisne」(リスネ)を創刊した。「Lisne」は、マガジンハウスが記事や各コンテンツの全体を監修し、「anan」と記事提携している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000016453.html

熊本日日新聞によれば熊本地震によって閉店に追い込まれた書店は4店に上る。金龍堂東バイパス店(東区)、Book&Cafe一心堂(中央区)、金書堂(東区)、コス・ナカガワ(宇城市)がそうだ。
http://this.kiji.is/132301792130467316

毎日新聞「経済プレミア」で神戸国際大学教授の中村智彦は「ポケモンGOは、情報が「人の流れを変えられる」時代が本格的に始まったことを示しているのだ」と書いている。
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160729/biz/00m/010/033000c?fm=mnm

◎特化型キュレーションメディアは確かに雑誌系のメディアである。利用者が最も多いのはヘルスケア情報を提供する「welq」(ウェルク)の631万人、2位が20代の女性をターゲットとした「MERY」(メリー)の610万人、3位が大人の女性をターゲットとした「LAUGHY」(ラフィ)」の558万人、4位が旅行情報を提供する「Find Travel」の500万人、5位も旅行情報を提供する「RETRIP」の450万人。
http://www.advertimes.com/20160801/article231068/

ソーシャルメディアの時代において「いまの時代、編集部から漫画作品を発表し、大ヒット作を目指すというモデルは、漫画家が生き残る上で、非常に危険だといえるでしょう」という考え方も出て来るのも当然だろう。
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/o/29881605/?sc_int=tcore_news_recent
編集力だけでは作家を繋ぎとめられない時代なのである。出版社はバックアップ部門を強化し、やはり出版社に作品をあずけて良かったと作家に思われるような機能を充実させる必要があるだろう。

◎フジテレビは8月1日、動画配信サービス「フジテレビオンデマンド」において、月額888円(税別)で、同局制作のドラマ、アニメなどが見放題になるほか、雑誌の読み放題サービスも利用できる「FODプレミアム」の提供を開始した。
http://fod.fujitv.co.jp/s/special/premium_cp1/

BuzzFeed Japanは、世界で急成長しているフードソーシャル・コミュニテイ「Tasty」の7番目のグローバル・エディションとなる「Tasty Japan」を創刊。「Tasty Japan」は複数のソーシャル・プラットフォームで同時に配信する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000019238.html
https://www.facebook.com/buzzfeedtastyjapan/
こういうことを出版社もしなくちゃダメだよな。

岩手日報がコミックトレインを取り上げている。
日本出版クラブなど出版団体でつくる東京都の<大震災>出版対策本部(代表・相賀昌宏小学館社長)とJR仙台、盛岡両支社は31日、人気漫画キャラクターを全面にあしらったコミックトレインを花巻駅から釜石駅に走らせ、集まった子どもたちを喜ばせた」
https://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20160801_1

◎「週刊ポスト」による「東京都内『レアポケモンを捕まえるならここ!』リスト」。私はレベル23だが、ピカチュウを未だゲットしていない。
http://www.news-postseven.com/archives/20160801_434592.html

◎「産経ニュース」によれば、獅子文六が静かなブームを巻き起こしているそうだ。
筑摩書房が平成25年に復刊したユーモア恋愛小説『コーヒーと恋愛』(ちくま文庫)は17刷、累計6万7千部。読者のリクエストで27年に初文庫化したドタバタコメディー『七時間半』は7刷、3万4千部を発行。このほか、『てんやわんや』『娘と私』『悦ちゃん』も含め復刊5点がいずれも重版がかかる人気ぶりという」
http://www.sankei.com/life/news/160801/lif1608010016-n1.html

紀伊國屋書店は、新宿本店とBooks Kinokuniya Tokyoを8月にリニューアルする。新宿本店は売場面積と陳列スペースを拡張し、従来の在庫冊数の1割に当たる約10万冊の書籍を増強し、ブックトークセミナー・サイン会等のイベント開催回数を大幅に増やす。また、日本を紹介する外国語の書籍や日本らしさを感じる雑貨を集めて免税販売にも対応した「Books on Japan」コーナーを1階に新たに設ける。新宿南店は、独立した洋書専門店Books Kinokuniya Tokyoとして生まれ変わる。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201608013030/

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3)【人事】光文社8月1日付人事異動

新倉博史
新 メディアビジネス局企画広告部部長代理
旧 第三編集局Gainer編集長

笠松誠一郎
新 メディアビジネス局企画広告部部長代理 兼 第四編集局VERY編集部ブランド事業室編集長代理
旧 メディアビジネス局企画広告部部長代理

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4)【深夜の誌人語録】

小さな仕事を馬鹿にしてはならない。小さな仕事に価値を見い出せなければ、また小さな仕事の積み重ねなしには決して大きな仕事を達成することはできないのだ。