【文徒】2016年(平成28)2月18日(第4巻31号・通巻718号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】書店閉店ラッシュの現状
2)【記事】ニューヨーク市立大学ジャーナリズムスクール発の「実験企画」
3)【本日の一行情報】
4)【人事】3月28日付日経BP人事
5)【人事】2月15日付双葉社人事
6)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.2.18.Shuppanjin

1)【記事】書店閉店ラッシュの現状

太洋社が「自主廃業」を決め、友朋堂書店三店、ひょうたん書店、ブックランドあいむが閉店となったことは既に報じた通りだが、熊本のブックス書泉は太洋社の帳合だ。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20160217_01.html?s=rss
この一覧を見ればわかるように閉店しているのは独立系の「街の書店」ばかりではない。今年に入ってから、どんな書店が閉店(予定も含む)しているのか調べてみることにした。
有隣堂 ルミネ町田店(1月1日)
東文堂書店 深井駅前店(大阪 1月17日)
宮脇書店金津店(福井 1月20日
文真堂書店 狭山入曽店(2月28日)
ヴィレッジヴァンガード姫路フォーラス店(1月31日)
ブックランドとおの千林店(大阪 1月21日)
啓文堂書店 武蔵小金井店(1月17日)
啓文堂書店 京王八王子店(1月24日)
三洋堂書店春日井西店(愛知 2月21日)
TSUTAYA津久井店(神奈川 1月24日)
ブックマーケット福山松永店(広島 2月28日)
あおい書店 さんじの店(静岡 1月17日)
ザ・リブレット アピタ新守山店(大和書店 愛知 1月20日)
ザ・リブレット丸井静岡店(大和書店 1月31日)
TSUTAYA 仙台小田原店(2月14日)
田村書店 北千里店(大阪 1月31日)
BunGood高崎駅店(群馬 1月31日)
ブックハウスロッグ中津店(大分 2月7日)
ウイングブックセンター(柏 2月14日)
八重洲ブックセンター丸井柏店(柏 3月27日)
平坂書房天王町店(保土ヶ谷 1月31日)
ヴィレッジヴァンガードイオンモール太田店(群馬 2月21日)
Forma merceria イオン浦和美園店(2月11日)
リブロ西鉄平尾店(福岡 2月7日)
福家書店 厚木店(2月29日)
アシーネ君津(2月29日)
文芸書林(祖師ヶ谷大蔵 3月31日)
平安堂(新小岩 3月13日)
三省堂書店 都庁店(3月24日)
文教堂書店初石店(流山 2月21日)
ブックス書泉(熊本 2月20日)
本のがんこ堂 近江八幡駅前店(滋賀 2月25日)
閉店しているのは独立系の「街の書店」ばかりではない。大手やチェーンであっても総てが安泰というわけではない。大手やチェーンにとっても紙の出版市場が縮小するなかで不採算店の閉店は避けて通れないはずなのである。

                                                                                                                        • -

2)【記事】ニューヨーク市立大学ジャーナリズムスクール発の「実験企画」

ニューヨーク市立大学ジャーナリズムスクールでの実験企画」らしいけれど、これ、凄いよ。誰に対しても開かれている「市場」であり、「広場」として、ノンフィクションのプラットフォームを構築しようとしている。「大学の研究課題」にとどめておくのは、勿体ない。「実験」から「実践」へ、だ。実業こそムラ(堅牢であることによって狭隘なムラだ)に安住し惰眠を貪りながら疲弊するのではなく、蛮勇をもってその外部に冒険の旅に出るべきなのではないか。いずれにしても、とても刺激的な企画である。その名は「REPOFEED」。「志」の脈打つ全文を紹介しておこう。
「欧米では、すでにジャーナリズムに特化したクラウドファンディングサイトが登場し、一部は成功を収めていますが、ここでは日本固有の問題を解決するためにこのサイトをつくりたいと考えています。アドバンス制がなく、さらにエージェント制も敷かない日本の場合、これまで多くのケースでは(1)雑誌に短長期の連載を行うことで長編の執筆ペースをつかみ、(2)その間は単体の採算を度外視した取材費および原稿料支払いを行い、(3)編集者がその間の取材サポートと編集活動を行ってきました。ところが雑誌ビジネスが崩壊したことで、多くのジャーナリストは(1)(2)(3)のすべてを失い、長編ノンフィクションを執筆しようとすれば、あてのない書き下ろしでの執筆を強いられる事態になりました。初版部数は逓減傾向にあり、加えてアドバンス制もない状況下での長期執筆は困難なため、調査報道を必要とするジャーナリズムそのものが大変厳しい状況になっています。このサイトでは、編集者がプロジェクトの企画時点から立ち会い、(1)(2)(3)に代替する活動を行います。
多くのノンフィクションが、取材活動をベースとするものであるメリットを活用し、読者参加型のクラウドファンドを行います。プロジェクト継続中、つまりファンドを募集してから連載が完結するまで、読者は連載原稿を毎週あるいは定期的に受け取り、著者の活動に参加します。書籍発売までの大きなプロモーションにもなります。著者はファンドを受ける代わりに、約束された原稿を定期的に提出し、イベントに参加する義務がありますが、その範囲はあらかじめ著者が決めることができます。
日本には著者固有のエージェントシステムがきわめて稀なため、多くのケースでは著者が個人的な関係で複数の出版社と関係をもって出版活動を行っています。それゆえ、長期的な取材、執筆を要するノンフィクションの場合、口約束のみでアドバンス支払いなしで執筆活動を行うことが大きなリスクを孕むうえに、長期的な展望でのプロモーションが困難になっています。このサイトでは、ライターがプロジェクトにみあう編集者を見つけることも最終的には可能にします。
収入モデルについては、完全に編集者が請け負うパターン(編集作業、メルマガ発行、イベント主宰その他すべて)を想定して、全体の一定パーセンテージを受け取るパターンを標準とします。いわばプロジェクトベースのエージェント制をとります。このとき担当した編集者が基本的には書籍の出版権を優先的に持ちます。また、プロジェクトによっては広告モデルも採用します。
それぞれのプロジェクトは、ジャーナリストが企画を発表してから、連載が完結するまでの時限性で進みます。その間、読者は、連載記事が読めるほか、出資額によって、ニュースレター(著者の取材日記など)の購読や、定期的な編集会議への出席、特設コミュニティへの参加、著者との非公式のディナー、取材への同行などの形で取材に参加できます。書籍ができるまで、それぞれの連載記事にフィードバックを寄せ、実際に著者がそれを反映することもあり得るのが、この企画の醍醐味です」
http://www.reposeed.com/
編集力だけでは現在の情況を突破することはできないのである。ジャーナリズムとマネジメント力、マーケティング力の融合が問われているのである。こうした新しい芽を生かし、育てる出版業界であって欲しいものだ。どんな時代になろうとも歌謡曲の歌詞ではないが、煌々と自由の焔が燃えているのが出版業界であって欲しい。

                                                                                                                        • -

3)【本日の一行情報】

◎「J-CASTニュース」が息巻いている。「女性セブン、誤報にもかかわらず訂正を要求 チュート徳井『隠し子報道』お詫びの裏側」。「J-CASTニュース」は1月29日に「『チュートリアル』徳井の隠し子記事 松本人志に続く『女性セブンの誤報』と吉本興業が激怒」をアップしていた。
「だが、女性セブン側は『誤報』だとは考えていなかった。1月30日に、『必要な取材はすべて尽くしており、誌面で書いていることがすべてです。誤報という指摘は間違っており、非常に遺憾に思います』とする編集部のコメントを寄せ、見出しから『誤報』の文言を削るように要求。見出しが修正されない場合は法的措置も視野に入れた対応を検討するとした。だが、女性セブン側が出したのはJ-CASTに対する内容証明でも訴状でもなく、ウェブサイトへの『お詫び』だった」
http://www.j-cast.com/2016/02/15258526.html

◎窪田順生は「テレビや新聞には、なぜ『文春砲』のようなスクープがないのか」(ITmediaニュース)で次のように書いている。
「甘利大臣のスキャンダルが掲載された『週刊文春』の発売前日、『報道ステーション』がしれっとした顔で、『TPP立役者に重大疑惑  甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』と報道した。まともな報道機関なら、よそが膨大な時間と労力をかけた取材成果をパクり、自分の手柄のように触れ回ることなどしない。これはもはやテレビや新聞にとって、『文春の早刷り』は記者クラブのペーパーと同じ扱いになりつつあるということだろう。
事実、今回の文春スクープをコピペした新聞やテレビの報道は700件以上。共同通信のような記事配信事業をやっていればボロ儲(もう)けだが、文藝春秋や文春記者には1円も入らない」
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1602/16/news053.html
ただし、記者クラブを「GHQがつくった『日本型民主主義』の根幹をなす制度」と定義するのは、いかがなものか。GHQ記者クラブを解体しようとしたが、果たせなかったのである。

◎2009年にレズビアンであることを公表したタレントの一ノ瀬文香が現在のパートナー・杉森茜さんと結婚式を挙げるまでの半生を綴る「ビアン婚。〜私が女性と、結婚式を挙げるまで〜」が双葉社から刊行される。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000014531.html

◎「Rugbyぴあ2」。日本でのワールドカップ開催まではラグビーブームがつづくのだろう。「ぐでたま女子。2」もぴあの刊行である。
http://spobiz.info/?p=3926
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000163.000011710.html

放送倫理・番組向上機構BPO)の放送人権委員会は、昨年3月8日に放映されたフジテレビのバラエティー番組「ニュースな晩餐会」で人権侵害があったとした。
「社内でいじめに遭い、ストーカー被害を受けたと訴える女性社員の証言に基づいた再現ドラマや、同僚を隠し撮りした映像などを放送。同僚の女性が『いじめの首謀者とされたが、事実無根』と名誉毀損を申し立てた」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160216/ddm/012/040/156000c

◎確かに日本は「Instagram後進国」である。ネトウヨもそうだが、ソーシャルメディアは「主張」のために使われることが多い。その点、「Instagram」は「主張」よりも、このブロガーが指摘するように「遊び」に適しているといってよいだろう。
http://www.landerblue.co.jp/blog/?p=25169
最近、私も「Instagram」を始めた。フォロワーがたったの9人しかいない。
https://www.instagram.com/0702terumasa/

◎産経ニュースによれば、オーストラリアの新聞・雑誌大手フェアファクス・メディアは、紙から電子版に完全移行した場合、編集職503人のうち、約4割の205人の削減が可能になるという試算をまとめていたそうだ。
http://www.sankei.com/world/news/160215/wor1602150019-n1.html

◎そう簡単に紙の書物が滅びることはあるまい。アメリカでは電子書籍の売り上げが緩やかに減少しているそうだ。しかし、だからといって紙の雑誌が息を吹き返すかといえば、否である。これまで紙の雑誌が果たしてきた役割をスマホが次々に代替するという流れは止めようもあるまい。また、書物にしても同じタイトルであっても、紙とデジタルがともに手元にあることが理想というべきだろう。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/15/students-prefer-print-books_n_9240534.html

アルファポリスは、手軽に小説の投稿ができる Android 向けアプリ「アルファポリス小説投稿」の提供を開始した。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1330430
アルファポリス東証マザーズに上場している企業である。博報堂出身の梶本雄介社長は「『入口』である小説や漫画などを投稿してもらうポータルサイトの運営と、その中から人気作を出版する『出口』のビジネスを、共に手掛けるのは当社だけでしょう」と豪語している。
http://shikiho.jp/tk/news/articles/0/55283
同社のホームページには、そのビジネスモデルを次のように説明している。
「当社は、当社が運営しておりますインターネット上のWebサイトに投稿された小説・漫画などのコンテンツの内から、サイト内でのユーザー評価を参考に、書籍として出版すべきコンテンツを調達しております。調達後は、編集部において、コンテンツの品質・商品力を向上させた後、書籍として出版することで収益をあげております」
http://www.alphapolis.co.jp/company/business/
アルファポリス小説投稿」は出版申請も備えているということだが、新手の自費出版商法なのだろうか。

香川県小豆島の吉本弘文堂は100年つづく「島の書店」だ。「芥川賞直木賞受賞作でも来るのは1冊だけ」だそうである。毎日新聞が紹介している。
http://mainichi.jp/articles/20160217/ddm/015/040/028000c

◎「楽天ウェディング」は、ハースト婦人画報社の情報サイト「ザ・ウエディング」との連携を開始した。
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2016/0215_01.html
http://www.hearst.co.jp/whatsnew/Corp-160215-the-Wedding-and-Rakuten-Partners-to-Increased-Venue-Database
ハースト婦人画報社が元気だ。

◎湘南蔦屋書店 人文・哲学のツイッターが話題になっている。開店以来、ヘイト本や日本万歳本は置いていないそうだ。
嫌韓や嫌中本、日本万歳本は一昨年の出店以来置いていません。言論のアゴラという自由市場の原理があるからこそ、当店のあり方を主張する必要があると思っております」
http://matome.naver.jp/odai/2145534776749928801
2月11日のツイートもラジカルだ。
「『建国記念の日』に国家についていろいろ思う。私にとっての真正保守といえば、丸山眞男です。近代的な国民と国家の創出、それは同時に正当な手続きを経た憲法の創出も伴うのですが、そういう意味ではいまだ建国ならずということでしょうか」
https://twitter.com/SHONAN_T_philo/status/697769807081385985

                                                                                                                        • -

4)【人事】3月28日付日経BP人事

新実 傑
新:(株)日経BP 代表取締役社長
旧:(株)日本経済新聞社 執行役員 東京本社編集局総務

長田 公平
新:(株)日経BP 会長
旧:(株)日経BP 代表取締役社長

田中 信行
新:(株)日本経済新聞社 専務取締役(専務/労務/管財担当・電波統括)
旧:(株)日経BP 取締役

田村 俊和
新:(株)日経BP 取締役(マーケティング統括補佐)
旧:(株)日経BP 執行役員

影井 正美
新:(株)日経BP 取締役
旧:(株)日本経済新聞社 グループ経営室長

                                                                                                                        • -

5)【人事】2月15日付双葉社人事

総務局総務部 部長(旧:編集局第三編集部漫画アクション編集部)
庭野 国彦

総務局総務部(旧:編集局第三編集部アクションピザッツ編集部 編集長)
阿部 寛

編集局第三編集部漫画アクション編集部 編集長(旧:編集局第三編集部漫画アクション編集部)
平田 昌幸

編集局第三編集部月刊アクション編集部 編集長 部長(旧:編集局第三編集部漫画アクション編集部 編集長 部長)
野中 郷壱

編集局第三編集部アクションピザッツ編集部 編集長(旧:編集局第三編集部アクションピザッツ編集部)
金光 義幸

                                                                                                                        • -

6)【深夜の誌人語録】

抽象に逃げるのではなく、どこまでも「具体」にとどまって考えなければ、仕事とは言えない。