【文徒】2016年(平成28)2月19日(第4巻32号・通巻719号)

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1)【記事】MVP戦略で行こう!
2)【本日の一行情報】
3)【人事】2月18日付マガジンハウス 機構改革と人事異動
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】MVP戦略で行こう!

客 太洋社が自主廃業を決めたことで友朋堂書店の三店舗が閉店となり、「友朋堂ロス」と言われるくらいネットでは閉店を惜しむ声で溢れているね。
主 吾妻店など棚が充実していたことで知られていただけに閉店は本当に残念だよ。結局、棚や品揃えがしっかりしていて、充実しているからといって儲かるかといえば別問題なんだよな。品揃えが個性的であっても、そうだよね。街の書店も他の小売店が歩んで来た道を辿ろうとしているんだろうな。
客 どういうことだい。
主 オレの住んでいる街の商店街には、かつて鮮魚店青果店もあったけれどスーパーが二店進出したことで閉店に追い込まれた。書店だって、独立系の書店があったけれど、文教堂書店が真向かいに出店して来て、結局、閉店することになった。もちろん、独立系の中小零細書店でも生き残る書店はあるだろうけれど、その数は減りつづける。
客 大変な時代になったものだよなあ。
主 出版社、取次、書店で構成されている三角形が縮小しているのは間違いないけれど、出版社にしても、書店にしても、その外側が存在するということを忘れてはならないとオレは思っている。三角形の内側に閉じこもって、煮詰まるのではなく、その外側に思い切って出てみる必要があるのではないかと。
客 雑誌はデジタルシフトすべきだという主張もそういうことなんだね。
主 もう少しムラの論理から自由になろうよと呼びかけているわけさ。一つのルールにしがみついていると先細りするしかないんじゃないの。書店だってそうだし、編集者にしても編集力を過信するのではなく、読者が潜在的に有している編集力を借りれば良いんだよ。
客 現在の出版社の幹部は、紙の出版の絶頂期を経験しているから、その成功体験から、なかなか自由になれないんだよね。
主 編集者ばかりではなく営業だって同じだよね。時代に正面から向き合おうとしていない。ところでMVPって知っているかい。
客 Most Valuable Playerのことだろ。
主 違うんだなあ。Minimum Viable Productなんだよ。必要最低限の能力を兼ね備えたプロダクトを作り、ターゲットにそのMVPを実際に体験してもらった上で、ターゲットからフィードバックを得るということがスタートアップの基本になるという考え方なんだよ。今の出版に欠けているのは、まさしくMVPだと思う。オレの知り合いによればMVPに挫折はないと、なるほどなあと納得したね。従来の出版は「最大価値」を求めてやってきたけれど、「最小有望」で、まずはやってみることが大切なんじゃないだろうか。

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2)【本日の一行情報】

◎須原屋・春日部店が2月29日に閉店することになった。
http://www.suharaya.co.jp/information/?id=8

◎井澤由美子によれば「乳酸キャベツ」の作り方は簡単だ。
http://yumikoizawa138.jp/news/2677/
井澤の「乳酸キャベツ健康レシピ」はマガジンハウスから刊行されたが、同社のホームページで乳酸キャベツのレシピ投稿を募集している。
http://magazineworld.jp/books/lact-c/
こういう企画に広告を絡められないものか。

東洋書店が破産。ロシア語関連の書籍の版元として知られていた。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20160216_03.html
昨年、7月の段階で事業の継続を既に断念していた。
http://www.sankei.com/world/news/150704/wor1507040033-n1.html

◎これだけスクープを連発していると、その取材力に注目が集まるのは当然といえば当然か。ヴィベアータなる会社の社長さんである新田龍が「Business Journal」に「抹殺兵器・週刊文春、大スクープ連発の圧倒的強さの秘密…ベッキー不倫、清原覚せい剤」を掲載している。「週刊文春」の関係者Xにインタビューをしたのだそうだ。Xは、こんなふうに発言している。
「ちなみに昨年度は、年間8ケタの取材経費を使った記者が複数いましたよ。でも、彼らはそれなりの結果を出していたため、上層部から呼びだされはしたものの、苦笑されただけでした」
「文春は、ASKA事件のときでも情報提供者にお金を払ってません。別の某雑誌のほうがよほど払ってますよ。ある事件のときにインタビューした証人や、有名人の写真に対して数百万円払っていました」
新田はXの発言を踏まえてのことだろう、次のようにも書いている。
「文春が芸能系のスクープに強いのは、芸能事務所が交渉できないからだ」
「専属記者は他誌で10年以上経験したベテラン揃い。初心者は見向きもされず、他誌で実績を残した記者をヘッドハンティングするかたちで採用している」
「文春編集部では毎週木曜日に、デスク、社員記者、専属記者が集まり、プラン会議を行う。持ち寄る取材ネタについては『ひとり5本』というノルマがあり、一人ひとりがプレゼンをするかたちで会議が進んでいく」
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13829.html
親分(=編集長)の力量も大きいと思う。

集英社の「non-no」と主婦の友社の「Ray」の4月号で表紙をEXOが飾ることは既に報じているが、「non-no」は表紙がEXO版とモデル版の2パターンを発売する。
http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2038915

◎60年代マディソン・アヴェニューの広告業界を描く「マッドメン」は見ておいて損はあるまい。「エミー賞」と「ゴールデン・グローブ賞」の作品賞を3年連続でW受賞しているほど評価の高いドラマだ。
http://music-book.jp/video/news/column/112477

◎JR新宿駅改札内の壁面に「進撃の巨人」の日本最大級となるスクラッチポスターがPlayStation4用ソフトウェアの発売を告知すべく掲げられた。
http://www.advertimes.com/20160216/article217728/

◎中国は、電子書籍販売から外資を排除するそうだ。
http://www.sankei.com/world/news/160216/wor1602160058-n1.html
言論弾圧である。

◎メディアドゥが、2月23日に東京証券取引所市場第一部に上場する。藤田恭嗣社長は徳島県那賀町の出身なんだね。東証マザースからの市場変更だ。
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2016/02/2016_14556296950617.html
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1330571

◎タレントで塾講師の林修日本テレビの「林先生が鬼講義!女性が幸せつかむ新方程式 グサッとアカデミア〜オンナの現実学〜」で大和名瀬のBLマンガ「ちんつぶ」(実業之日本社)をコメディーとしての完成度が高いと評価したそうだ。
http://otapol.jp/2016/02/post-5699.html
http://www.j-n.co.jp/searchresult.html?keyword=%E3%81%A1%E3%82%93%E3%81%A4%E3%81%B6&x=13&y=11

高野苺のマンガ「orange」(双葉社)がテレビアニメ化されることになった。2月25日発売の「月刊アクション」4月号に「orange特別版」が掲載される。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1602/17/news070.html

◎日本出版販売の2015年の雑誌・書籍・コミック売上動向によれば、雑誌は6.5%減、書籍は2.0%減、コミックは4.9%減。
http://ryutsuu.biz/sales/i021705.html

日本新聞協会は東愛知新聞社(愛知県豊橋市)の会員資格を12カ月間停止する処分を決めたそうだ。朝日新聞は次のように書いている。
「同社は東日本大震災の復興支援を目的とした企画広告を2011年3月から計8回掲載し、広告料金の半分を被災地に送るとしていたが、送金していなかった」
http://www.asahi.com/articles/ASJ2K56BDJ2KUTIL038.html

トーハンは、ぴあとの共同事業「TOPIA PROJECT」の第2弾として、2月19日より「暁のヨナ 舞台×原作コミック連動キャンペーン」を実施している。首都圏の約200書店で関連書フェアを実施し、フェア商品購入者を対象としたプレゼントキャンペーンを展開する。原作の版元は白泉社である。ぴあは、舞台「暁のヨナ」製作委員会の一角を占める。
http://www.tohan.jp/news/20160217_686.html
またトーハンは「ほんをうえるプロジェクト」第6弾として、独特のタッチで描かれた大きなぬり絵「NuRIE」(ヌーリエ)の世界観を紹介したファンブック「FUN! FUN! NuRIE〜みんなで楽しむ大きなぬり絵の本〜」を宝島社とともに企画し、2月20日に発売する。
http://www.tohan.jp/news/20160216_685.html

凸版印刷時価総額大日本印刷を上回ったと日経が報じた。「デジタル関連など事業の多角化で先を行く凸版が市場に評価されている」のだそうだ。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLZO9739711017022016DTA000

JALとベネッセは、青森空港花巻空港仙台空港で、各県内在住の小学生(4〜6年生)最大40名を対象に、空港内でのJALの仕事見学と、チャーター便による各県内外の体験飛行を組み合わせた1日ツアー(3月12日(土)、13日(日)開催)を実施する。このツアーは、JALグループの復興支援活動としてのツアーにベネッセが、プログラムの立案や企画の広報などの面で協力する形で実現した。
http://press.jal.co.jp/ja/release/201602/003661.html

フロンティアワークスとpixivはWEBコミック誌「Hugピクシブ」を2月23日に創刊する。
http://animeanime.jp/article/2016/02/18/27036.html

◎エブリスタと「ヤングマガジン」(講談社)が共同で運営するWEBコミックレーベル「eヤングマガジン」で連載中の「火葬場のない町に鐘がなる時」(原案:碧海景、漫画:和夏弘雨)が、累計発行部数14万4,444部を突破したことを記念して、ツイートのRT数によって同作品が無料公開される「死のRT」キャンペーンを実施している。キャンペーンであるとともにプロモーションでもある。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/economy/release/detail/00189857.html

講談社は「『おともだちピンク』2014 年 11 月号、『なかよし』2015 年1月号のふろく『マニキュア』と『ネイルカラー』に関するお詫びと使用中止のお願い」を発表した。
「『おともだちピンク』2014 年 11 月号(2014 年 10 月 15 日発売)のふろく「ピンクマニキュア」1 本と、『なかよし』2015 年1月号(2014 年 12 月1日発売)のふろく「グリッターネイル」2 本セットの1本から、国内の化粧品基準では配合が認められていないホルムアルデヒドが検出されました。小社出版物を信頼しお買い上げくださった皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけしますこと、深くお詫び申し上げます」
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20160217huroku.pdf
ネイル&リップセットを付録に予定していた「たのしい幼稚園」4 月号増刊「ひめぐみ vol.33」(3 月 15 日発売予定)の発売を中止することにした。
「3 月 15 日発売で進めていた「ひめぐみ vol.33」の付録は、ネイル&リップセットを予定しておりました。既に安全検査を 2 回行い、そのどちらでもホルムアルデヒドの検出は認められておりません。しかし、自社出版物の過去の付録からホルムアルデヒドが検出されたことを重く受け止め、読者のみなさまの安全を第一に考えた結果、万全を期して、「ひめぐみ vol.33」の発売中止を決定いたしました」
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20160218himegumi.pdf
この重い決断を私は支持する。

紀伊國屋書店そごう川口店が3月16日にオープンする。店舗面積は759m2。
http://ryutsuu.biz/topix/i021707.html

ジュンク堂書店池袋本店は3月15日(火)19:30 〜より、中島岳志島薗進によるトークイベント「『愛国と信仰の構造―全体主義はよみがえるのか』(集英社新書)刊行記念対談 ナショナリズムと宗教を問い直す」を開催する。
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=11481

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3)【人事】2月18日付マガジンハウス 機構改革と人事異動

〔機構改革〕
・デジタル事業部を廃止し、コロカル事業部、デジタル・ライツ事業部を新設する
ハナコママ事業部をクロスメディア事業局に移管する
・デジタル事業部アンアン総研をアンアン編集部に移管する

〔人事異動〕
デジタル・ライツ事業部部長兼コロカル事業部部長(旧デジタル事業部部長)
及川卓也

ハナコママ事業部部長兼デジタル・ライツ事業部課長(旧:ハナコママ事業部部長兼デジタル事業部課長)
北条大介

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4)【深夜の誌人語録】

手を動かし、足を動かすのだ。そうすれば頭も働くようになる。動きを止めるから思考停止に陥るのだ。