【文徒】2014年(平成26)4月18日(第2巻72号・通巻274号)

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1)【記事】株価急落!紳士服のAOKIに何が起こったのか!
2)【記事】産業革新機構から9億円が出資されるニューと提携する博報堂
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.4.18 Shuppanjin

1)【記事】株価急落!紳士服のAOKIに何が起こったのか!

九州を拠点とするニュースサイト「Hunter」が紳士服業界第2位の「AOKI」を批判している。事件の舞台となったのは福岡清水店。
AOKの詐欺行為が発覚したのは先月29日の土曜日。この春大学に進学する女子学生に送付した印刷物に、ブラウス、バッグ、靴、ストッキング、スーツ上下の5点セットを、土日祝の各日5組に『19,000円』で販売すると記しておきながら、実際には2組しか売れていないにもかかわらず、完売であると偽って高額なスーツを販売していた。一連の経緯から詐欺行為であることは明らかで、景品表示法にも抵触しかねない悪質な手口だった」
http://hunter-investigate.jp/news/2014/04/15-aoki.html
AOKIホールディングスのホームページで「株式会社AOKI 代表取締役 清水彰」名義で「福岡清水店の事案について」なる文章を発表。
平成26年3月29日、AOKI福岡清水店において、フレッシャーズ限定セット商品(各商品5点で19,000円セット。土日祝各日5セット限定の商品)をお探しのお客様に対し、当該店舗では商品在庫の確認ミスにより、完売前の商品を完売したと間違って回答するお客様対応をしてしまいました。当該お客様に対しては、今回ご迷惑をおかけした事を真摯に受け止め、当社より謝罪とご説明を行っております。
ただし、本事案はあくまで当該店舗の当該お客様に対する対応の問題であり、一部インターネット上の風評にある、当社が組織的に詐欺行為を行っているかのような内容は、一切事実に反するものであります」
http://www.aoki-style.com/upimages/whatsnew/278_1.pdf
ここで注目すべきは、この一件を契機にしてAOKIホールディングスの株価が急落したことである。
http://www.google.co.jp/url?q=http://www.data-max.co.jp/2014/04/16/aokihd_dm1806.html&sa=U&ei=TTZPU7axMYyF8gWjoIDgCQ&ved=0CB4QFjAA&sig2=dy1lHyp03dUf6HY57NaeWA&usg=AFQjCNHQPm6fOYhxg4WMep2mozO5KIcwnw

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2)【記事】河北新報の「緊デジ」批判!

民主主義とは「開かれた社会」にほかならない。そして、「開かれた社会」において問題が生じた際に「沈黙」をもって対応することは、「自由な表現」「自由な言論」を後退させる契機にさえなるだろう。出版業界が「自由な表現」「自由な言論」に加担しつづけるためには「問題」を突きつけられたならば正面から答える必要があるのは、このためである。
共同通信でも配信されたが、4月16日付河北新報の「コンテンツ事業、電子化完了せず 補助金適正化法抵触か」という見出しを掲げた記事は次のように書いている。
東日本大震災の復興予算を投じた『コンテンツ緊急電子化事業』が本来の事業目的と異なっている問題で、受託団体の日本出版インフラセンター(JPO、東京)が電子化したとする書籍6万4833冊のうち一部の作業が完了していないことが15日、関係者への取材で分かった。事業は2012年度末に終わっており、13年度以降に作業を持ち越した分の補助金が返還対象となる可能性が出てきた」
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140416_73013.html
JPOの責任者は河北新報に対し、「出版社から完了の報告を受けており、作業は終わっているはず」とコメントしているが、ここは当然、その証拠を提示すべきだろう。JPOの実務を担った民間企業の担当者が「コメントできない」としかコメントできない以上、河北の記者にしても、この記事を読んだ読者にしても納得できないはずである。少なくとも「電子化作業を終えていない出版社は大手を含めて複数ある。JPOの電子化書籍のうち、数千冊分はまだ流通していない」と証言する出版関係者が存在するのである。
同日付河北新報は次のようにも書いている。
「一部が未完了との指摘が出ているコンテンツ緊急電子化事業の作業期間は当初、対象書籍の募集を始めた2012年6月から同年度末までの約10カ月間だった。『そんな短期間で約6万冊を電子化するのは無理だ』。事業に携わった複数の制作会社から計画自体に疑問の声が相次いでいる」
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140416_73026.html

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3)【本日の一行情報】

◎「このボカロ曲がすごい!2014」。「〜がすごい!」と来れば条件反射的に宝島社の企画だと思ってしまうが、これは違う。版元は世界文化社なのだ!
http://kai-you.net/article/4704
宝島社からすれば「真似しやがって!」と怒り心頭であろうが、まあ昔からある出版の「方法」ではあるよね。

ダイエーは2003年以来、累積2500万部を発行した20頁程度のフリーマガジン「おいしく食べて健康に」を3月1日から「dai-docoro」と誌名変更し、リニューアルを断行した。
http://www.daiei.co.jp/corporate/index.php/release/lists/detail/1001
中内功の「毛沢東主義」経営に支えられ、急成長を遂げたが、事業の多角化に失敗し、今やライバルであったイオングループの傘下にある。中内の多角化戦略によって「オレンジページ」も生まれた。しかし、その「オレンジページ」も現在ではJR東日本にぶら下がりながら何とか命脈を保っている。
閑話休題ダイエーが「おいしく食べて健康に」〜「dai-docoro」で培ったレシピを披露する「おいしいと言わせたい!ほめられごはん」はオレンジページではなく、主婦の友社から刊行される。転がる石のように時代は変わる。
https://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784072958407.html

ちばてつやと言えば代表作の多くは「あしたのジョー」をはじめ「週刊少年マガジン」で発表されている。しかし、「ちばてつやが語る『ちばてつや』」は講談社新書ではなく集英社新書として刊行される。
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-720739-2&mode=1

坪井安奈がたまりません。元小学館の美人編集者の坪井がお隣、集英社の「週刊プレイボーイ」でセクシーグラビアを初披露。
「…小学館を辞めるとき、いろんな方から頑張れって励ましてもらったので、たくさん活躍して、恩返ししたいなって思うんです」
その意気や良し。次は「週刊ポスト」のヘアヌードで恩返しだ!
http://wpb.shueisha.co.jp/2014/04/15/29094/2

◎それにしても古書店は魅力的な店舗が多い。重厚さにおいても、軽やかさにおいても、だ。「カモシカ書店」は大分にある古書店だ。
http://ameblo.jp/watashi-select/entry-11822831228.html
ホリエモンの「ロングテールは、それこそアマゾンに任せて、リアル書店はキュレーションに特化したほうがいい」という指摘は鋭い。そう古書店にはキュレーションがあり、新刊書店はキュレーションを欠如させているのだ。多くの新刊書店は金太郎飴書店なのである。
http://dot.asahi.com/news/domestic/2014041600009.html
優秀な書店員は多くとも、書店業界には優秀な経営者がいなさすぎるのだ。
http://dot.asahi.com/news/domestic/2014041600009.html

◎「週刊少年マガジン」連載の鈴木央七つの大罪」がテレビアニメ化されることになった。20号の表紙でデカデカと謳っている。注目すべきは資生堂とコラボしたスピンオフ作品が掲載されていることだ。いわば編集タイアップ。下手な書き下ろしよりも、人気作のスピンオフを広告と絡めるのは効果があると思う。現在、コミックスは8巻300万部らしいが、テレビアニメ化を契機に販売部門は「倍増戦略」をもって臨んでもらいたい。8巻500〜600万部程度の潜在力はある作品だと私は見ている。
http://news.mynavi.jp/news/2014/04/16/004/

総務省が「平成25年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を発表。10代と30代でメールに費やす時間よりもソーシャルメディアに費やす時間のほうが長くなっている。若者の視野狭窄が心配だ。ソーシャルメディアばかりに触れていると「世界」が狭く、浅くなってしまいかねない。
http://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/data/research/survey/telecom/2013/00h24mediariyou_gaiyou.pdf
「世界」の広さや深さを踏まえたうえでソーシャルメディアを駆使するならば、それは直接民主主義の道具にすら育て上げられるはずだ。

◎「双葉社漫画アクション』主催ミスアクション2014グランプリ」が決定。3人が選ばれたが、木内桃子のバストは93・。しばし写真に見とれる私がいる。
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2014/04/15/0006865806.shtml

リーブ21のWEBサイトが、第三者からの不正アクセスにより、一部サイトが改ざんされていたことが判明。リーブ21の顧客だと知られたら嫌だろうね。
http://www.reve21.co.jp/

ツイッターのまとめ「『小悪魔ageha』の出版社倒産と中條元編集長」。
インフォレスト倒産の一報を聞いて知り合いに連絡したら、今週から自宅待機を命じられ、校了した最新号は印刷所で刷られてもいないらしい。広告クライアントは怒り、スタッフにはギャラも支払われない。本当に身がよだつ」
倒産前からライターの原稿料は安く(オレんとこも安いけど)、支払いは3ヶ月以上も先(オレんところは翌月末払い!)だったという。
「【募集】小悪魔agehaなどインフォレストの雑誌でバリバリやってたけど現在はお仕事探し中の編集者の方、『メディアジーン』で働きませんか? ギズモードやライフハッカー、マイロハスなどをはじめ、各種Webマガジンを取り扱っております。もしご興味あればご連絡ください」
紙からデジタルへ人材流出が続くのだろうなあ。
小悪魔agehaが終刊するわけではなく出版物のコンテンツ売却を進めていくということなので形式的には生き残るんじゃないのかなーと思いますが。中條寿子編集長時代こそがagehaだったと思うので、インフォレストの倒産はやむなしですね…」
おっしゃる通りです。覚悟と志が編集長にとっての必要最低条件だと私は思っている。
http://togetter.com/li/655733

◎第34回ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード”で、『くじらのまち』がグランプリとジェムストーン賞(日活賞)のダブル受賞を成し遂げた鶴岡慧子監督が、第23回PFFスカラシップ作品『過ぐる日のやまねこ(仮)』を製作するにあたり、クラウドファンディングを実施し、6月27日まで一般から支援を募る。支援は1000円から可能だそうだ。こういうのって昔のびあっぽくて良いなあ。
http://cinema.pia.co.jp/news/0/56828/

日産自動車YouTubeで公開している「NISSAN Presents HAPPY SURRISE」は鈴木おさむ編集長率いる日産ソーシャルメディア編集部が2.3万円(ニッサンでしょ!)であなたの企画をお買いあげしますとアイデアを募集し、そのなかから企画を選んで映像化している。
出版社の編集者はソーシャルメディアの出現によって編集力が解放されつつあることに未だに鈍感なのとは対照的である。30万回も再生されている動画があるという現実を編集者諸君はどのように理解しているのだろうか。小説がそうであるように小説を書きたい、実際に小説を書いている者が読者の核になりつつあることは投稿サイトを見ていればわかるが、ジャンルを問わず、ユーザー=読者は解放された編集力をもって、創造に積極的に関与したいと思っているのだ。その心情に応えることなくして「雑誌の復権」はあり得まい。
http://www.huffingtonpost.jp/yusuke-iguchi/-_105_b_5156435.html?utm_hp_ref=japan

ユニクロがLINEとコラボしたTシャツを発売。
http://news.mynavi.jp/news/2014/04/16/372/

長谷川三千子の立場と見解について、例えば松本健一はどう考えているのだろうか私は知りたい。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/04/15/michiko-hasegawa_n_5151277.html

◎これは行かなければなるまい。5月31日から横浜の神奈川近代博物館で「装幀=菊地信義とある『著者50人の本』展」が開催される。
http://www.cinra.net/news/20140416-kikuchinobuyoshi

幻冬舎総合財産コンサルティングとは名称からして得体の知れない企業である。「出版社だから集まる『最新の変化』『本質的な情報』を生かし、しがらみのない中立・公正な立場を大きな強みとして、個人・企業オーナー向け、法人向けに各種コンサルティングを行って」いると謳っているのだけれど。
http://gentosha-tac.com/
栃木県を中心に、東京都、埼玉県においても書店、TSUTAYAブックオフなど多数の店舗を展開している_文社やビブリを率いていた小山田昭仁は2013年12月、代表の引退を決め、M&Aによって事業の円滑な引継ぎ、継続を実現させたというが、これに噛んで一儲けしたのが幻冬舎総合財産コンサルティングであったことは理解できる。

◎「かわいさに悶絶」といってもエロ本ではない。ケツはケツでもハムスターのケツ!ハムスター好きのブロガーたちの「ハムケツ」を集めた写真集で、タイトルが「かわいさに悶絶 ハムケツ」、版元は世界文化社。ハムスターだから860円。
http://www.fashion-press.net/news/10698

集英社女性誌「ノンノ」6月号で専属モデルの本田翼が「週刊少年ジャンプ」の新人編集者という設定で「もしも翼が新人漫画編集者だったら着回し」という特集記事を組んでいるが、そこに「暗殺教室」の松井優征が登場している。集英社は雑誌同士が横に繋がる企画を得意としている。これは良いことだ。
http://natalie.mu/comic/news/114645

講談社の「Kiss」で連載されている東村アキコの「海月姫」が「あまちゃん」の能年玲奈主演で映画化されることになった。
http://news.mynavi.jp/news/2014/04/17/008/

ジャパネットたかたがテレビショッピングでスマホを販売する。
http://www.bci.co.jp/ryutsu/tv_radio/2014/1399.html

電通は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から、同組織委員会マーケティング専任代理店として指名された。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0417-003720.html
電通強し、と言うしかない。電通博報堂グループを比較するとわかるのだが、メディアに対する愛情において電通のほうが遙かに深い。

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4)【深夜の誌人語録】

言葉は沈黙に敗北しつづけるという自覚なくして言葉を商売にすべきではあるまい。