【文徒】2014年(平成26)4月22日(第2巻74号・通巻276号)

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1)【記事】ウエブサイトをマンガが席巻しはじめた
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ウエブサイトをマンガが席巻しはじめた

無料のウエブサイトは今後も増え続けるだろう。「マンガボックス」を運営するDeNAエンターテインメント事業本部の川崎渉は讀賣新聞の取材に応えて次のように語っている。
「作品の単行本化やアニメ化、ゲーム化で収益を上げる方針です。原稿料や人件費はかかるが、紙の雑誌で必要な流通や印刷コストがいらないので、無料で公開できる」
もともとコミックビジネスはマンガ誌で儲けるのではなく、マンガ誌に連載された作品をまとめたコミックスで儲けてきた。無料のウエブサイトはマンガ誌の役割を果たしているのである。ところが、そのマンガ誌自体が部数減に直面している。讀賣新聞によれば
「出版科学研究所によると、コミック誌の推定販売額は18年連続で減少し、13年は1438億円と、ピークだった1995年の4割強に。前年比1・3%増の2231億円と堅調なマンガ単行本との差が広がる一方だ」
マンガボックスの樹林伸は次のように発言している。
コミック誌の部数が下がり、若い読者が減ったのは、雑誌の立ち読みがしにくくなったこととも関係する。新しい読者を引き込む立ち読み文化の復活が必要では」
5月からマンガボックスの単行本が講談社から刊行される。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20140408-OYT8T50173.html?from=ytop_os_tmb
コミックスが堅調だといっても売れるコミックスと売れないコミックスの二極化が進んでいることも間違いあるまい。そもそもコミックスにすらならない作品もあるのである。
ついでに「コミックウォーカー」(KADOKAWA)についても一言。コミックスが売れている段階で有料のプレミアム会員制を導入すべきではないのではあるまいか。

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2)【本日の一行情報】

◎日経がグーグル日本法人出身の起業家が増え、かつてのリクルートのようだと書いている。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ170C8_X10C14A4TJ2000/?dg=1
裏返して言えば…リクルートはこれまでのように人材輩出をしない凡庸な企業への道を歩み始めるのだろうか。

◎これまた日経の報道によれば、フェイスブックを母胎に生まれ、今では1450万人のファンを持つトーキョーオタクモード(米デラウェア州)が今月、海外で「ドラゴンボール」(集英社)の複製原画のネット通販を開始したという。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ1800J_Y4A410C1EAF000/?n_cid=TPRN0004
私の記憶に間違いがなければトーキョーオタクモードを立ち上げたのは電通の関連会社CCIにつとめる亀井智英。こんな記事を発掘!
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO44792180Q2A810C1000000/
これがトーキョーオタクモード。一度は覗いておく必要があるはずだ。
「世界に誇る日本のポップカルチャーコンテンツを、いち早く世界中に届けること。それがTOMの使命です」
http://otakumode.com/

◎アマゾンの大学生などをむ対象として10%のポイント還元は再販契約違反であるとしてアマゾンに対する出荷を停止した出版社にネットでは、こんな声が寄せられている。
「本屋カルテルか。本を売りたいのか売りたくないのかよく分からんな出版業界って」
「悪法もまた法なりの理念で言うならまあ再販制度には違反だけどね」
「再版制度その物が時代錯誤」
「えっ?!中小が?そんなことしたら益々売れなくなると思うんだけど?!本屋の棚戦争にも勝てない出版社がAmazonでも本置かなくなったらしぬで?他に収益があるのかな?」
「一冊でも売りたい出版社としては_Amazonが身銭切って売ってくれるのは有りがたいんじゃないの?」
「アマゾンは日本の消費税を払わないでいいから、実質的な値引きをできるよな」
Amazonがおれたちの生活を豊かにしてくれた。税金より悪質な老害既得権益を破壊してくれてるって思えばおれはAmazonの肩を持ちたくなる」
http://blog.livedoor.jp/itsoku/archives/38354775.html

◎TORICOが運営する「漫画全巻ドットコム」は、秋田書店の「週刊少年チャンピオン」名作特集キャンペーンの第1弾として5月15日まで、鴨川つばめの「マカロニほうれん荘」を特集した「マカロニフェア」を開催している。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140418_645099.html
象徴的かつ挑発的にいえば、「マカロニほうれん荘」の連載に終止符を打ったあたりから、「週刊少年チャンピオン」の凋落が始まるのである。

横槍メンゴは「クズの本懐」(スクウェア・エニックス)3巻の発売を記念して、5月3日にヴィレッジヴァンガードフリークス渋谷パルコ店の1日店長を務める。
http://natalie.mu/comic/news/114744

アメリカの大手書店チェーンであるバーンズ・アンド・ノーブルのレナード・リッジオ会長は筆頭株主でもあるが、自身が保有している株式の4分の1弱を6400万ドル(約65億5000万円)で売却した。持株比率は、これで30%から20%に低下。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304126604579508982411595434.html

◎バタフライと講談社は、「Mobage」上で展開するソーシャルゲーム頭文字D」が、2014年5月をもって3周年を迎えることを記念して、「峠対抗プライド争奪戦」や「階級別タイムアタック」といった特別イベントを開催する。
http://gamebiz.jp/?p=129365

◎あの巨人が文庫本を読んでいる!「進撃の講談社文庫100冊」が開催されている。「進撃の巨人」ファンが「現代霊性論」を買っちゃうなんてことがあれば嬉しいよね。
http://bookclub.kodansha.co.jp/bunko/fair/
電子書籍書店でも開催されている。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/kds_shingeki100.asp
http://honto.jp/cp/ebook/2014/kodansha-bunko
http://k-kinoppy.jp/kodansha/KDS100_0418_list/web/
http://booklive.jp/feature/index/id/kdhf2014

講談社社員が、講談社から刊行された自分だけの「この一冊」を紹介する「このイチ!」に持田克巳専務が登場している。推薦するのは吉行淳之介の「鞄の中身」を推薦している。吉行の作品群を「私の唯一絶対の、座右の書」とまで激賞している。持田は「吉行氏の作品に出会った時、『大きな声で語られることより、もっと大切なことは日常の小声の中にある』というようなことに思い至」ったそうだ。
http://bookclub.kodansha.co.jp/konoichi/1404/02.html

カルチュア・コンビニエンス・クラブは「TSUTAYA」の台湾8号店目となる「TSUTAYA 亞藝影音 漢口店」を4月18日、台中市にオープンした。書籍も扱う複合店だ。
http://biz.searchina.net/id/1530257

◎「小悪魔ageha」の革新性を受け継ぐのは「LARME」(徳間書店)である。
http://kaya8823.hatenadiary.com/entry/2014/04/18/231117

スターツ出版毎日新聞社は、スターツ出版が運営し、7周年を迎えたケータイ小説サイト「野いちご」、毎日新聞社が発行し、100号を突破した中学高校生向け紙面「15歳のニュース」とのコラボ企画「15歳のニュース×野いちごコラボ連載小説」を5月10日よりスタートする。「15歳のニュース」紙面に、「野いちご」が生んだ人気ケータイ小説作家の書き下ろし作品を連載すると
ともに、「野いちご」内で中高生読者の悩みを募集し「15歳のニュース」紙面で作家が回答する。
http://prtimes.jp/data/corp/607/d607-20140418-4458.pdf

◎ニッセンが「すてきな奥さん」モニターとコラボして収納家具を発売したそうだ。
http://news.ameba.jp/20140421-128/
しかし、「すてきな奥さん」は5月号で休刊。いくら後継誌が即座に創刊されるといっても、マヌケな企画だ。

◎中日の人気マスコット、ドアラが18日に一話199円で日米同時リリースした「さいふをなくした」が売れている。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/04/19/kiji/K20140419008003950.html

◎高級ブランドの「PRADA」は、イタリアの出版社フェルトリネッリ協力と組んで、「第2回プラダ ジャーナル 文芸コンテスト」を実施。大賞賞金は5000ユーロ、作品は「プラダ」のウェブサイトから電子書籍化される。テーマは「私たちが今日遂げつつある変容、そして明日私たちがどう変化していくのか」だって。アルベルト・モラヴィアの名前が何故か頭に浮かんだ。
http://www.wwdjapan.com/fashion/2014/04/19/00011375.html
モラヴィアの「軽蔑」は池澤夏樹が個人編集した河出版「世界文学全集」に収録されている。「倦怠」(河出文庫)には、こんな一節がある。
「私が彼女を抱けば抱くほど、彼女は私の手からはなれて行くのだったが、それはきっと、彼女を抱くことによって、なにか真剣な態度で彼女を所有するのに必要なエネルギーを私は浪費しているにすぎないからだった」
若き日の私はモラヴィアの「孤独な青年」や吉行淳之介の小説やアントニオーニの映画に触れながら「ベルトから下の階級闘争」を実践するようになった。むろん「潤んだ目付きで遠くを見遣りながら、声高に、平和や愛や、タタカイについて語る」(持田克巳)連中を尻目に、である。「孤独な青年」はベルトルッチの「暗殺の森」の原作である。

毎日新聞で連載された「憲法をよむ」が電子書籍化された。
http://mainichi.jp/feature/news/20140418mog00m040015000c.html

有川浩の「コロボックル絵物語」。佐藤さとるから有川浩にバトンタッチされた。絵は村上勉のままである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38994
http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2189062

◎「ゼミママ」が人気沸騰中。「進研ゼミ」のマンガに登場した「お母さん」を「ゼミママ」というんだそうだ。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1036191

文藝春秋電子書籍オリジナル「京都美味案内 おいしい!京都のできたて甘味 厳選30軒」が配信された。京都に行くときに便利そうだ。
http://www.atpress.ne.jp/view/45522

◎「文藝別冊 田原総一朗」で映画監督の原一男が田原にインタビューをしているのがメチャクチャ面白い。ヤッちゃうのが劇映画の監督(だからカミさんが女優というケースが多い)でやらないのがドキュメンタリーの監督ということになるのだが、田原はヤッちゃう局面でも射精をしなかったそうだ。これは「倫理」というよりも、スピノザの「エチカ」だ。
http://www.kawade.co.jp/news/2014/04/430.html
松岡正剛スピノザについて「突出」と「同化」の宿命を背負っていたと評したことがあるが、田原もまた「突出」と「同化」を背負いながら、田原の言葉で言えば「土俵」に立ち続けているのだろう。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309978277/

インプレスR&Dはアマゾンのプリント・オン・デマンドを通じて国立国会図書館の蔵書の電子化された画像データを印刷し、「NDL所蔵古書POD」として販売する。三省堂オンデマンドでも販売するそうだ。第1弾の20タイトルは次の通り。
「古今相撲大要」岡敬孝 編 1885年刊/1393円
「女哲学」笹の屋主人 著 1905年刊/1643円
「吾輩ハ鼠デアル : 滑稽写生」影法師 著 1907年刊/2324円
「武士道」新渡戸稲造 著 1908年刊/2769円
「赤い船 : おとぎばなし集」小川未明 著 1910年刊/2547円
「鉄道旅行写真入名所案内」久田弥平 編 1913年刊/1963円
「意匠文案満載必ず利くチラシの拵らへ方」清水正巳 著 1916年刊/2352円
「裸に虱なし」宮武外骨 著 1920年刊/2686円
「白木手拭集」白木屋呉服店意匠部 編 1921年刊/1045円
「運動漫画集」吉岡鳥平 著 1924年刊/1685円
「クロス・ワード・パヅル : 最新世界的遊戯学生智識競. 尋常3年程度」学習研究会編 1925年刊/1115円
「最新活版印刷業案内」大阪出版社 編 1925年刊/2505円
「宇宙開拓史講話」山本一清 著 1925年刊/2825円
「都会で流行の家庭美容美顔術」松井千枝子 著 1928年刊/1838円
「新漫画の描き方」岡本一平 著 1928年刊/2714円
「現代受験就職大宝鑑」受験と就職社編輯局 編 1928年刊/3131円
三陸沖強震及津浪報告. 昭和8年3月3日」中央気象台 編 1933年刊/3868円
「デパート女店員になる近道」1935年刊/1643円
古事記 : 国宝真福寺本. 上」1945年刊/1365円
「日本憲法民主化の焦点」金森徳次郎 著 1946年刊/1546円
http://www.rbbtoday.com/article/2014/04/21/119073.html
http://www.amazon.co.jp/gp/browse.html?node=3041856051

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3)【深夜の誌人語録】

無名の暮らしを淡々と送りながら、それでもなお千古の憂いを抱き続けたいものである。