【文徒】2014年(平成26)4月23日(第2巻75号・通巻277号)

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1)【記事】トーハンのフェアは魅力がない!
2)【【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.4.23 Shuppanjin

1)【記事】トーハンのフェアは魅力がない!

トーハンは4月20日付け読売新聞朝刊全国版で掲載された出版社5社の協賛による広告特集に連動して、トーハンの「ほんをうえるプロジェクト」がプロデュースしたブックフェア「元気に食べて長生きできる本」全国約500書店で展開している。NHK出版の本が5冊も占められているのが私には理解不能である。「ほんをうえるプロジェクト」の選書眼=編集力に私などは疑問を抱かずにはいられないのである。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/post_332/
トーハンはまた、こどもの読書週間(4月23日〜5月12日)の公式標語「いつもいっしょ、本といっしょ。」を踏まえていつもそばに持っていたい絵本20点を掲載した児童書リストを作成し、取引書店を通じて配布する。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/post_331/
こうした取次がイニシアティブを握っての「上からフェア」に魅力がないのは、どうしてだろうか。
そうそう2ちゃんねるにはトーハンについて次のような書き込みがあった。取次の経営もまた厳しいのは間違いのないところだ。
「私は8月末で退職した者です。 元職場は8名中4名が退職しました。9月以降は大変だったと思います。半分の社員がいなくなり、補充できた人を指導しながら、通常作業。頭が下がります。そんな社員の人たちことを思うと 悔しさでいっぱいです。 46歳からどんなにがんばっても給料が上がらないとは
どうモチベーションを維持しているのか心配です」
http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/books/1382534346/579
だからといって安易な悪あがきは止めるべきである。

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2)【本日の一行情報】

沖縄県凸版印刷が運営する電子チラシポータルサイトShufoo!」を県のオフィシャル広報メディアとして採用した。同日より沖縄県は、電子チラシによる県広報コンテンツの配信を開始した。更に沖縄県以外の全国の「Shufoo!」ユーザーに対しては、「美ら島沖縄」のダイジェスト版を配信する。
http://www.rbbtoday.com/article/2014/04/21/119078.html

双葉社末田雄一郎吉本浩二「昭和の中坊」新装版を刊行した。第1巻を紀伊國屋書店三省堂書店で購入すると、1巻のデジタル版のダウンロードコードがプレゼントされる。
http://webaction.sakura.ne.jp/action_blog/
「まんがstyle」には末田と書店員3名による座談会がアップされている。
http://manga-style.jp/press/?p=10316

◎「文藝春秋カフェ」が開業3周年を迎えていたのか!「和牛フィレステーキ 赤ワイン煮ソース」が1030円だったとは!
http://ameblo.jp/gaa-lunch/entry-11827865760.html

東洋経済新報社電子書籍「一橋ビジネスレビューe新書」シリーズを創刊した。創刊第一弾は次の10タイトル。本体価格500円。
1 「フェリカネットワークスおサイフケータイの事業モデル」
2 「富士フイルム 〜デジタルX線・画像診断システムの開発」
3 「ビズメディア 〜北米マンガ市場の開拓者」
4 「パナソニック 〜IH調理器の開発」_
5 「味の素 〜栄養改善をめざしたBOP市場への参入」
6 「京都市立堀川高等学校 〜理想の教育をめざした学校改革の軌跡」_
7 「キーエンス 〜驚異的な業績を生み続ける経営哲学」
8 「スルガ銀行 〜個人金融サービス・カンパニーへ進化し続ける地方銀行
9 「ハウス食品 〜カレー業界トップを維持する技術と戦略」
10 「リアル・フリート 〜美しい家電「アマダナ」が目指すデザイン・イノベーション
「ビズメディア」は小学館の関連会社である。
http://japan.cnet.com/release/30069169/

岩手県大槌町の「一頁堂書店」の開店のきっかけは東日本大震災だったそうだ。ブックカバーは震災前の大槌町の地図が使用されている。地元高校の先生による「ハセガワセンセーの本棚」や井上ひさしの「吉里吉里人」の舞台となった町だけに井上ひさしのコーナーが設けられている。e-honネットの売上を、地元の被災孤児の育英支援にする試みも行っているそうだ。
http://news.ameba.jp/20140421-181/

文藝春秋村上春樹「女のいない男たち」の発売直後に5万部の重版を決定。これで3刷35万部。紀伊國屋書店での発売カウントダウンイベントには約70名が集まった。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20140418-OYT8T50224.html?from=ytop_ymag

ボブ・ディランのコンサートには行かなかったが、コーエン兄弟の「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」は見に行かなければなるまい。ポスターをみうらじゅんが描いている。
http://www.cinematoday.jp/page/N0062346
みうらじゅん文藝春秋からエッセー集「人生エロエロ」を刊行したばかり。池袋のリブロでサイン会も行われる。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/2366

◎中山順司の「お父さんがキモい理由を説明するね」(泰文堂)はネット発の書籍。126万PV超えとなったコラムの書籍化だが、面白そうだ。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1404/21/news012.html

◎「週刊ダイヤモンド」4月26日号の表紙には度肝を抜かれた。「ソニー消滅!!尽き果てる“延命経営”」だぞ。2年前と同じスタッフが取材している。雑誌ジャーナリズムの醍醐味を堪能できる一冊だ。
「現状を改善できなかったのにもかかわらず、前体制の経営陣が多く残っていることが一目瞭然だ。結果を出せていないのに、なぜまだ居座っているのかという素朴な疑問が浮かぶが、それだけ人材難だということも言えるだろう」
http://diamond.jp/go/pb/dw140426_sony/?utm_source=k&utm_medium=a&utm_campaign=dwp1
ソニー凋落は経営中枢が聞く耳を持たなかったことから始まる。そう私は考えている。そんな体制に絶望して優秀な人材が同社を次々に去った。「ヤメソニー」インタビューが成立するのはこのためである。
http://diamond.jp/articles/-/51980

AKB48を「卒業」する菊地あやかが「MAQUIA」(集英社)の専属モデルになった。
http://www.nikkansports.com/entertainment/akb48/news/p-et-tp0-20140421-1288460.html

◎広島で大活躍した元プロ野球選手の高橋慶彦郡山市に本社を置く住宅販売のウェルズホームに広報部長として入社した。といって仕事は広報ではなく、東日本大震災福島第一原発で被災した子どもたちに野球を指導する仕事だ。
http://www.minyu-net.com/news/topic/140421/topic1.html

楽天Koboは4月21日に国内の出版各社と書店向けに「楽天Koboカンファレンス 2014 Spring」を開催した。
「今後の戦略はパートナーシップを重視した5つの戦略的エリアに注力。Aquafadasが持つソリューションを活用するなどした雑誌カテゴリの拡充のほか、セルフパブリッシングのサポートを視野に入れながら9月末をめどに楽天ブックスとのサイト統合を完全に1本化するほか、出版社向けBIツール(仮称:楽天ブックスダッシュボード)の提供、楽天チェックとの連携でKoboのモバイルアプリ経由のレベニューシェアモデルを構築していく考えが明かされた」
楽天Koboアワード 2014」の表彰も行われた。
「書店部門はベストパートナー賞に大田丸、ベストアカウント賞にトップカルチャー、ベスト書店賞にニューコ・ワンの蔦屋書店 熊本三年坂店が、出版部門は特別賞が紙と電子の同時刊行を会社の方針として掲げるサンマーク出版、ベストパフォーマンス賞が2013年度売上高の伸び率トップの西東社、ベストセールス賞が2013年度売上高トップの講談社を選出した」
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1404/21/news114.html
コミックス、実用書、ビジネス書は電子書籍の3強になると私は考えている。

◎「BookLive!」は5月7日までコミックス150冊が無料で読めるキャンペーンを実施する。
http://booklive.jp/feature/index/id/14gwnc
まずは無料で惹きつけ、その後、お客さんになってもらうという手法である。

崎陽軒は「シウマイ弁当」60周年を記念して、KADOKAWAとコラボ。4月25〜27日までの三日間にわたって「横浜ウォーカー」5月号の表紙をモチーフにした掛け紙とする。
http://www.kiyoken.com/pressrelease/2014/14yokohamawalker_shiben.pdf

学研教育出版の絵本「ぴよちゃん」(作・絵:いりやま さとし)は、現在24タイトルで累計235万部を突破する人気作だが、この絵本のイラストを使って、可愛いデザインのフォトブックを制作できるサービス「ぴよちゃんフォトブック」を、DNPドリームページのサイト上と「コミュニケーションプラザ ドットDNP」において期間限定で提供する。
http://dnp-photobook.jp/dotdnp/piyo.html

◎ジェイ・キャストが運営する商品案内サイト「東京バーゲンマニア」は、30〜40代女性を中心に支持を得ているが、大日本印刷が開発したO2Oアプリプラットフォーム「PASSMART(パスマート)」と連携し、「東京バーゲンマニア」の公式アプリとして配信を開始し、クーポン付き新聞折込みをスマホで実現することになった。オリコミ広告にもスマホの時代が到来したようである。
http://www.j-cast.co.jp/2014/04/post_174.html

◎吉野次郎の「なぜ2人のトップは自死を選んだのか」(日経BP社)はJR北海道の病巣を活写する。
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/228860.html
JR北海道もまた革マル派に蝕まれているのである。西岡研介の「マングローブ」(講談社)が思い起こされる。
http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2140047

◎浅香怜子の「琉球の花街 辻と侏伶の物語」はわずか120頁のブックレット。版元の榕樹書林は宜野湾市にある。
http://gajumarubook.jp/?pid=71487424
東京の書店で沖縄の出版社の刊行物を揃えたフェアを企画してくれないものか。

◎ネット業界は編集者も、ライターも不足しているようだ。この求人広告のセンスはとても良い。書き手は老人ホームのソーシャルワーカーからの転職だ。人材の多様性は創造力にとってはプラスに機能することだろう。出版業界は優秀な人材は多いのだが、多様性に欠け始めていることが問題だと私は思っている。
http://liginc.co.jp/news/notice/employment/84771

◎懐かしい雑誌がぎゅうぎゅう詰めだ。雑誌にも人手不足の時代はあったのである。「20世紀エディトリアル・オエデッセイ」(誠文堂新光社)は私を感傷的な気分へと誘う。
http://www.idea-mag.com/jp/publication/b043.php

河北新報東日本大震災の復興予算10億円を投じた「緊デジ」の問題点について厳しく追及した記事を掲載したことは既に報告しているが、やはり反響を呼んでいるようである。「空犬通信」で知られる空犬も関心を抱いているようだ。仙台を拠点とする出版社・編集プロダクションの「荒蝦夷」などは次のようにツイートしている。
「被災地の定義が分からないので算出できない……だったら復興予算10億円も使うなよ、このクズ。復興予算にたかったゴキブリめ。「緊デジ」は被災地ではいまや復興予算流用スキャンダルのトップだってわかってんのかな。がんばれ、河北新報!」
https://twitter.com/araemishi
荒蝦夷」のタイムラインを見ていると様々な人たちが怒っていることがわかる。「Kappo 仙台闊歩」編集長の長谷川茂も次のようにツイートしている。
「緊デジについて言いたいことがあるとすれば、出版業界のプライドの問題。電子化するのに何故復興予算をあてにしなくてはならなかったのか?6万点の電子化が喫緊の課題なのであれば、自らのお金と労力を使ってやるべき。出版業界は昔から国のお金なんかあてにしていなかったはずでしょ」
「緊デジについてもうひとつ。業界の自浄能力はどこにいったの? 他人の瑕疵は徹底的に糾弾するくせに自らのことは頬かむり。記者会見もない。それはおかしくないか? 小保方さんは糾弾するのにね。誰か心ある人はいないのでしょうか。この問題は被災地の人間ではなく、東京の人間がケリをつけるべき」
https://twitter.com/kappo_kawamoto
この問題では出版業界の品性と品格が問われているのかもしれない。

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3)【深夜の誌人語録】

事実と真実は違う。事実よりも見え難いのが真実である。