【文徒】2014年(平成26)4月24日(第2巻76号・通巻278号)

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1)【記事】TSUTAYA=蔦屋書店=CCCの憂鬱
2)【記事】アイティメディアから出版社が学ぶべきこと
3)【【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】TSUTAYA=蔦屋書店=CCCの憂鬱

現在、リアル書店の売上高ナンバーワンはCCCことカルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するTSUTAYAなのだそうだ。その理由はハッキリしている。CDやDVDなどパッケージメディアのレンタル事業に翳りが見え始めると、軸足を雑誌、書籍というパッケージメディアの販売移さざるを得なくなったのである。また、既存の地方書店をフランチャイズ方式によってTSUTAYAに「転向」させたというケースもある。更に代官山蔦屋書店を皮切りにメガ書店の展開も始めた。かくして、その圧倒的な店舗数を背景に書店業界のトップの座を獲得したということになろう。
紀伊國屋書店は全国主要都市に64店舗。丸善ジュンク堂書店三省堂書店といった有名書店も30〜60店舗程度だ。文教堂書店は大型店こそ少ないが店舗数が多く、96店舗となっている。これらに対してTSUTAYAは、742店舗という圧倒的な店舗数を誇っている」
しかし、出版商品の「総和」においてナンバーワンになったからといって決して安閑としてはいられまい。パッケージメディアのレンタルや販売だけで成長戦略を描くことは、まず不可能である。
紀伊國屋書店丸善の経営が厳しいのだとすれば、代官山蔦屋書店の経営はもっと厳しいはずである。そこでCCCは更なる多角化に踏み出した。ブックカフェなど飲食に関わる領域が、その典型であるだろう。恐らく、その多角化において、どんな事業を選択するかにおいてCCCはポイントカード「Tカード」によって集められたビッグデータを活用することになるのだろう。CCCが志向せざるを得ないのは、店舗の規模に見合った「リアルAmazon」であり、「エリアAmazon」に他なるまい。だから「蔦屋書店」ブランドを立ち上げ、店舗の巨大化を図らざるを得ないのである。海外展開を急いでいるのも、当然、国内市場の厳しさを反映してのことである。
批判的な見方をすればCCCはフライパンの上に乗ってしまったのである。否応なくフライパンの熱さによって踊らせ続けられる宿命を背負ってしまったということである。CCCは必ずしも「勝ち組」ではないはずだ。私はCCCに、かつてのセゾンやダイエーの影が見え隠れして仕方ないのである。
http://biz-journal.jp/2014/04/post_4671.html

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2)【記事】アイティメディアから出版社が学ぶべきこと

アイティメディアの大槻利樹はソフトバンクで出版に広告局長やマーケティング局長としてかかわって来たキャリアを持つだけに出版社にとって非常に示唆的な発言が多い。私などは共感してしまう。ちなみにアイティメディアは紙の媒体を一切持っていない。
「2000年にはネットバブルが崩壊する。ネットと出版を運営していた会社はネットが儲からないので出版に逃げ込んだが、当社は出版と分離していたので逃げ道がなかった。結果としてはそれがよかったと言えるのだが。(中略)…この苦しい時期にネットに集中し、広告モデルに特化することを決めている。出版とネットを両方やると、編集者はコンテンツを有料の出版に集めるようになり、無料のネットには魅力的なコンテンツが供給されなくなるからだ。これではダメだ。すべての情報をネットに無料で掲載し、多くの人たちにアクセスしてもらうことで、ネットの世界でアイティメディア知名度を上げていこうと考えた」
出版社で立ち上げたウエブメディアが面白くも何ともないというケースがあるが、それは有料の雑誌に優良なコンテンツを優先してしまうからである。
「編集部を支えるのは、技術開発本部という30人のテクノロジー部隊だ。社長直轄の組織で、コンテンツを配信するための編集プラットフォームと広告プラットフォームなどを提供している。こうした仕組みによって、複数のメディアがあっても一体で運営できている」
これが出版社だと技術を編集に従属させて失敗してしまうということになる。出版社のネット戦略に必要なのは技術を編集に従属させない組織づくりである。
http://toyokeizai.net/articles/-/35914?page=4

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3)【本日の一行情報】

講談社はマンガアプリ「Dモーニング」の配信一周年を記念して、何と5月1日から5週連続で無料増刊をリリースする。
http://natalie.mu/comic/news/114947
「モーニング」といえば福島第一原発作業員の経験を持つ竜田一人の描く「いちえふ〜福島第一原子力発電所労働記〜」第1巻が刊行された。電子書籍版も同時配信された。
http://morning.moae.jp/news/1113

◎倒産したインフォレストが刊行していた高校生・大学生向けの男性ファッション誌「Samurai ELO」が版元を三栄書房に移管して存続することになった。これによって4月24日に6月号が発売されることになった。
http://www.fashionsnap.com/news/2014-04-21/samurai-elo-saneishobo/
三栄書房は「ゴルフトゥデイ」も引き受けたことがある。

ふなっしーを起用しての「ふな散歩」というから、当然、船橋が紹介されるのかと思えば、さにあらず。何故にオレらのふなっしーが宝島社と佐賀県のコラボに協力しなくちゃならないのかよ。宝島社がふなっしーの公式ムック「ふなっしーララララ♪」を刊行する。
http://news.biglobe.ne.jp/trend/0421/nrn_140421_1660919950.html

◎「創刊20周年」ではなく「建国20周年」とは、今の時代の気分を反映している。「建国20周年」を謳うのはKADOKAWAの「月刊コミック電撃大王」。
http://dengekionline.com/sp/daioh20th/

アメリカの急成長民間企業500社におけるソーシャルメディア活用の実態が報告されている。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140420/551782/
最低ひとつ以上を活用している企業は全体の95%。最も活用されているのはLinkedInであり、全体の88%だった。続いてFacebookが84%、Twitterが74%と続き、さらにGoogle+が58%、ブログが52%、YouTubeが50%とつづく。LinkedInも日本に上陸している。仕事の意見やアイデアを交換するビジネスシーンに特化したSNSだ。
https://jp.linkedin.com/

◎ヴァズが運営するソーシャル・クッキング・サービスの「SnapDish」は、「Pinterest」が提供する「レシピピン機能」を国内で初めて導入した。これにより「SnapDish」に投稿された450万皿の料理写真から、レシピ付きの料理写真をピンすることで、「Pinterest」上でリッチな料理情報を見ることができるようになった。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000007310.html
ヴァズは読売広告社と関係が深い。
http://vuzz.com/
オレンジページ」や「レタスクラブ」の必要はなくなり、それこそ「SnapDish」の雑誌版が必要とされる時代になってしまったのかもしれない。発想を逆転させなければならないのだ。雑誌の情報をデジタル化して配信するのではなく、ネットの情報を編集力によって雑誌に落とし込むことを考えるべきではないのか。

◎ウォールストリートジャーナルがLINEについて次のように書いている。
「米国市場は、LINEの収益力と地元の好みに合わせる能力を試す大きな試金石になろう。一部のアナリストは、米国のユーザーは機能性を優先し、ゲームなどの多くの拡張機能に気を取られたくないと考えているという。
LINEの森川亮・最高経営責任者(CEO)はインタビューで、『(米国は)重要な市場であると同時に難しい市場でもある。われわれは性急に事を進めないつもりだ』と述べた」
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303595604579516722390929450.html
LINEがアメリカ市場で受け入れられるということは、フェイスブックを喰いちぎることができるかどうかだと私は考えている。

アメリカではコンデナストが写真の販売を始めている。
http://blogos.com/article/84988/

◎こういうリリースを21日に出しておきながら
http://taiyo-shokai.jp/_disclosure/20140421_2.pdf
その舌の根が乾かぬ22日に、こういうリリースを出す企業はダメだ。
http://taiyo-shokai.jp/_disclosure/20140422.pdf
毎日新聞の見出しによれば太陽商会は広告会社ということになる。
「架空の売り上げを計上して決算を粉飾したとして、証券取引等監視委員会は22日にも、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで名証セントレックス上場のサービス事業会社『太陽商会』(旧Now Loading、東京都渋谷区)に課徴金1200万円の納付を命じるよう、金融庁に勧告する方針を固めた」
http://mainichi.jp/select/news/20140421k0000e040181000c.html

集英社の関連会社であるホーム社が運営する無料のウエブマンガサイト「画楽ノ杜」の連載を中心にしたマンガ誌「画楽.mag」が創刊された。隔月ペースで刊行するそうだ。
http://animeanime.jp/article/2014/04/22/18387.html

◎滅多にビジネス書を読まない私だが、宋文洲が12年前に刊行した「やっぱり変だよ日本の営業」は他人にススメられて読んだのだが、日本流営業の無駄と無意味を糾弾しながらも、それは目から鱗の日本文化論に昇華されていて腰を抜かしたものである。その新版が刊行された。ただし版元は日経BPコンサルティングからダイヤモンド社に変更となった。
http://www.diamond.co.jp/book/9784478083505.html

みずほフィナンシャルグループが元経済財政担当相の大田弘子政策研究大学院大教授を取締役会議長したり、日立の前会長や最高裁判事社外取締役に招くというのだけれども、「肩書」を優先しているだけに過ぎないのではないのか。本当に改革をヤル気であれば、もっと違った人選をする必要があるはずだ。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2014042200612

◎「週刊朝日」にせよ、「サンデー毎日」にせよ、東大合格者の高校別ランキングを掲載した号が店頭に並んでいるのであれば、「週刊ポスト」に抗議と再発防止を申し入れても仕方あるまい。でも、「週刊ポスト」が同様のランキングを両誌の報道をもとに掲載して、しかも「表は各誌報道をもとに作成」と断っているのだから、それは引用の範囲なのではないだろうか。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140422-OYT1T50141.html
ちなみに、これは「インターエデュ」による無料の2014年東京大学合格者の高校別ランキングである。ランキングをただ見るだけなのであれば「週刊朝日」や「サンデー毎日」を買う必要がない時代なのである。
http://www.inter-edu.com/univ/2014/rank.php?u=t&m=all&p=1

岡崎京子展が来年1月から世田谷文学館で開催される。
http://www.inter-edu.com/univ/2014/rank.php?u=t&m=all&p=1

日本推理作家協会賞恒川光太郎氏の「金色機械」(文芸春秋)に決定。評論その他の部門では谷口基の「変格探偵小説入門」(岩波書店)などが選ばれた。
http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014042201002243.html

福島県郡山市に本社を構えるゼビオグループが企画・開発を行う総合ウェルネスブランド「VANAPH/ヴァナフ」は講談社が発行する女性誌FRaU」と2年間にわたって企画タイアップを行うことになった。第一弾としてブラトップを発売する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000188.000004149.html

◎「別冊フレンド」で「きょうのキラ君」を連載中のみきもと凛の「近キョリ恋愛」が山下智久主演で映画化されることになった。
http://eiga.com/news/20140423/3/

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4)【深夜の誌人語録】

ナルシズムとは自分の頭の中に飛び込んで溺れてしまうことだ。自分の頭の中に飛び込んで泳ぎ切ることが私の言うところの「個立」である。