【文徒】2017年(平成29)11月30日(第5巻225号・通巻1154号)

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1)【記事】メレディスのタイム買収とコーク兄弟
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】メレディスのタイム買収とコーク兄弟

メレディスがタイムを買収したことについて新聞や通信社はどのように伝えたか。一応、日本を代表する経済紙の記事から読んでみよう。
「デジタル化が遅れたタイムは、雑誌の売り上げが落ち込み、自力再建を断念した」(日経)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23957180X21C17A1EA2000/
「タイム買収が実現すれば、広告の獲得でフェイスブックやグーグルなどと競争する上で必要な規模の拡大が可能になる」(ブルームバーグ)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-11-27/P01VSR6K50XV01
「保守派を支援していることで知られる実業家兄弟、チャールズ・コーク(Charles Koch)とデビッド・コーク(David Koch)両氏が今回の買収を後押ししていた」(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3153109?cx_position=22
コーク兄弟はトランプ大統領も手を焼くほどの強硬派である。
「コーク兄弟はパイプラインからペーパータオルまで様々製品に関わる世界最大級の民間会社、コーク・インダストリーズを経営。同社サイトには、「何百万人もの米国人にとって『コーク兄弟』と『積極的な政治活動』は一対の言葉だ」と書いてある。
両氏はかねてから、大統領選など米国の選挙で経済的保守派の候補や政治テーマを支持してきた。そのほか、刑事司法制度改革を支援し、アメリカ自由人権協会(ACLU)にも高額の寄付をしてきた。
今回のニュース雑誌買収への関与で、投資を通じて報道内容を左右しようとするのではないかという懸念が浮上するのは必至だ」(BBCニュース)
http://www.bbc.com/japanese/42135767
町山智浩によればコーク兄弟は反オバマ運動ティーパーティの黒幕だったらしい。
https://twitter.com/TomoMachi/status/934996421144584192
アメリカの真の支配者とさえ評されて来たコーク兄弟を知りたければジェイン・メイヤーの「ダーク・マネー 巧妙に洗脳される米国民」(東洋経済新報社)を読むことをオススメしたい。反リベラルの風はアメリカでも吹き荒れていることがよくわかる。
https://store.toyokeizai.net/books/9784492444412/
チャールズ・コークの「市場ベースの経営 ――価値創造企業コーク・インダストリーズの真実」(パンローリング)も読むことができる。
http://www.panrolling.com/books/wb/wb242.html
田原総一朗がこんなツイートを投稿していた。
「タイム誌が身売りする。大変衝撃を受けた。ネットの時代で紙媒体はどこも苦しんでいる。日本でも僕が連載してた雑誌がいくつか廃刊になった。
日本の新聞各社も部数が大幅に落ちて対策に苦しんでいる。そのうち...」
https://twitter.com/namatahara/status/934986792452767745

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2)【本日の一行情報】

木村カエラもインスタグラムで「Zipper」(祥伝社)休刊を惜しんでいる。
「雑誌Zipper休刊の知らせを聞いて、なんだかいろんなことを思い出しました。
始めて載ることが出来たのは、読者モデルとして。
出るのが嬉しくて、本屋さんに急いで買いに行きました。
私の個性を受け入れてくれて、連載をして、出来たこの一冊。
毎回大好きなメンバーのみんなと作っていった1ページの集合体。
引っ張り出して読み返しました。好きなことを、私から出るアイディアを存分に表現させてくれました。あーなんかさみしい。でも、不滅。いや、伝説です。ありがとう」
https://www.instagram.com/p/BcAKldKH51D/?taken-by=kaela_official
これほど多方面から休刊を惜しまれている「Zipper」は単なるファッション誌ではなくカルチャー誌でもあったのだろう。木村は「Zipper」で「HOT CHICK!」を連載し、「COLOR」として一冊にまとめられている。
https://mdpr.jp/news/detail/1730775

宇多田ヒカルにとって初めてとなる歌詞集「宇多田ヒカルの言葉」(エムオン・エンタテインメント)が12月9日に発売されるが、そのキャンペーンの一環として宇多田ヒカルが推薦する書籍を集めたコーナー「宇多田書店」が次のような書店38店舗で展開されることになった。
【北海道】紀伊國屋書店 札幌本店/函館 蔦屋書店
【岩手】MORIOKA TSUTAYA
【宮城】TSUTAYA仙台荒井店
【福島】TSUTAYA 桑野店/TSUTAYA 福島南店
【石川】 明文堂書店 金沢ビーンズ/TSUTAYA 金沢野々市
【埼玉】蔦屋書店 フォレオ菖蒲店/TSUTAYA ハレノテラス東大宮
【千葉】幕張 蔦屋書店
【神奈川】TSUTAYA 横浜みなとみらい店/湘南 蔦屋書店
【東京】紀伊國屋書店 新宿本店(※)/HMV&BOOKS SHIBUYA/HMVエソラ池袋/三省堂書店 池袋本店/有隣堂 アトレ恵比寿店/八重洲ブックセンター本店8階/TSUTAYA BOOK APARTMENT/TSUTAYA 三軒茶屋店/SHIBUYA TSUTAYA/代官山 蔦屋書店
【静岡】TSUTAYA すみや静岡本店
【愛知】 三省堂書店 名古屋本店/草叢BOOKS 新守山店/TSUTAYA ウイングタウン岡崎店
【大阪】紀伊國屋書店 梅田本店/TSUTAYA EBISUBASHI/TSUTAYABOOKSTORE ららぽーとEXPOCITY
【兵庫】TSUTAYABOOKSTORE パークタウン加古川
【広島】エディオン蔦屋家電
【香川】TSUTAYA 宇多津店
【高知】TSUTAYA万々
【福岡】HMV&BOOKS HAKATA/六本松 蔦屋書店
【熊本】蔦屋書店 熊本三年坂
【沖縄】TSUTAYA 泡瀬店
https://www.oricon.co.jp/news/2101353/full/

◎「Title」の辻山良雄がブックガイド「365日のほん」を上梓した。版元は河出書房新社。とてもバランスの取れた選書である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000012754.html
ハンナ・アーレントシモーヌ・ヴェイユエリック・ホッファーと来て、カート・ヴォネガット・ジュニアというところに私は辻山の思想性を見たけれど。

◎「with」(講談社)1月号は深田恭子が表紙の通常号とAAAが表紙の増刊号の2パターンが発売される。付録も違い、AAA特集の内容も違う。二冊買いの読者も出て来るのだろう。ABC対策でもある。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001517.000001719.html

◎「TSUTAYAが『本との出会い』を変える。」をコンセプトに、絶版文庫本を全国のTSUTAYAの書店スタッフが中心となり、出版各社とともに新たに復刊にむけプロデュースするプロジェクト「復刊プロデュース文庫」第9弾は、新潮文庫の「ウェルカム・ホーム!」(鷺沢萌)に決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000409.000018760.html

トーハンは米AKAが開発したAIロボット「Musio」(ミュージオ)をモチーフにした真山碧のファンタジー小説「MusioⅠ:電脳メイロ」(AKA)とオリジナル文具をトーハン独占販売のMVPブランドとして11月25日より全国約400書店で販売を開始する。
http://www.tohan.jp/news/20171127_1105.html

トーハンは、店頭活性化プロジェクト企画として、光文社の女性誌8誌と連動し、「がんばるあなたに!ご褒美キャンペーン」を11月28 日(火)〜1月21日(日)の期間に、全国923書店で実施する。対象の光文社女性誌8誌の中から1冊購入すると「マドレーヌ ランチトートバッグ」をプレゼントされる。
http://www.tohan.jp/news/20171128_1099.html
https://www1.e-hon.ne.jp/content/cam/2017/gohoubi.html
これまで付録を頑なに拒否してきた光文社の女性誌トーハンとの店頭活性化プロジェクト企画とはいえ、宝島社が付録で得意とするトートバッグに遂に手を出したという理解もできよう。

トーハンと、ブックファーストは、ブックファースト中野店を11月21日に新装オープンし、文具・雑貨売場とカフェが一体となった「Cafe nota nova」(カフェ ノータ・ノーヴァ)を出店した。
http://www.tohan.jp/news/20171128_1107.html

トーハンは、テレビ番組「和風総本家」(テレビ大阪テレビ東京系列)のマスコット犬「豆助」の、初代から二十代目までを集めた初のベスト写真集「和風総本家 豆助っていいな。歴代ベストフォトブック」(ソラオト書店)をトーハン独占販売のMVPブランドとして、11月下旬より全国約1,000書店で販売する。
http://www.tohan.jp/news/20171129_1098.html

トーハンが平成29年度中間決算を発表した。売上高は201,661百万円、前年比93.6%の減収。営業利益は2,416百万円で前年比73.4%の減益。雑誌が前年比88.7%、コミックが前年比82.4%と前年を大きく割り込んでいる。日販と同様に、マンガ市場の縮小が再裏付けられた中間決算であった。
http://www.tohan.jp/news/upload_pdf/71h_kessan_shiryou.pdf
日販やトーハンの決算を眼前にして、大手出版社は大阪屋栗田をどうするかという問題に直面するだろう。少なくとも大阪屋栗田は今のままでは存続が近い将来、難しくなるだろう。楽天とも良好な関係にあるメディアドゥ傘下におくというウルトラCを提案しておきたい。紙の出版物の取次と電子書籍の取次をともにこなしてこそ、第三極と言えるのではないか。

◎やはり予約が殺到しているのか!講談社から発売される石田えりヘアヌード写真集「56」だ。NHKの「ニュースウオッチ9」で取り上げられたことも大きいよな。
https://mainichi.jp/sunday/articles/20171127/org/00m/200/002000d

◎2018年3月19日〜6月17日に森アーツセンターギャラリーで開催される「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃-」のビジュアルが公開された。
https://mainichi.jp/articles/20171126/dyo/00m/200/008000c

◎女性に圧倒的な人気を誇る小泉里子が光文社の女性ファッション誌「CLASSY.」で7年間にわたりつとめていた表紙モデルを12月号で卒業したと思っていたら、今度は撮影直前にヘアカットして小学館の女性ファッション誌「Domani」の表紙モデルを2018年1月号からつとめることになった。
https://mdpr.jp/news/detail/1724109
https://mdpr.jp/news/detail/1730542
もともと小泉は小学館育ちだものな。

◎女性向けメディアアプリ「MERY」にモバイルアプリ向けの分析・マーケティングツール「Repro」が導入された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000013569.html
Reproの会社概要を見ておこう。
「Reproはアプリの成長支援ツールを2015年4月にリリース、現在では世界46か国、4,000以上(2017年10月時点)のアプリに導入されています。 リテンション分析・ファネル分析をはじめとした定量分析機能、動画による定性分析機能を用いてアプリのUI・UXの改善が可能です。また、分析結果をもとにプッシュ通知やアプリ内メッセージ表示などアプリ内マーケティングを行なうことができます。2016年3月にはアプリ成長コンサルティング事業を開始し、アプリの成長支援ツール提供にとどまらず、アプリに関連する戦略立案・企画、開発から運用までを一貫して支援しています」
https://repro.io/jp/about/
「BizReach」は次のように書いている。
「Reproは、ユーザーの行動を動画で取得することで、ITビジネスの『売り場』を可視化し、リアルな分析が行えるツールだ。たとえばECアプリの中で、ユーザーにはどういった情報が重視されていて、どういう順番でコンテンツが読まれているのか、どこで迷っているのか、どれくらい時間をかけて読んでいるのかといった、アプリ内での動線や時間のかけ方をリアルに把握することが可能となる」
https://frontier.bizreach.jp/business-model/repro/
Reproと組んだのは正解ではないか。

◎関西では初となるスナック専門のクーポン付ガイドブック「スナックぴあ 〜扉を開けるパスポートブック 〜大阪キタ版」が発売された。。芸人の玉袋筋太郎が会長を務める「一般社団法人 全日本スナック連盟」の公認本だって!
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201711270000
スナックって時代遅れな雰囲気が良いんだよね。私に言わせれば歌謡曲、なかでも艶歌が似合うのがスナックだ。

◎「酒場STORY」(光文社)が発売された。
https://storyweb.jp/mook/19883/?utm_source=pr_171128&utm_medium=pr&utm_medium=earned&utm_campaign=pr_dsc_171128
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000082.000021468.html
居酒屋といっても「みますや」あたりになると結構、値段も張る。

◎アムタスは、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」(めちゃコミ)において、集英社との協業企画の一環として、「グランドジャンプ」増刊号「グランドジャンプめちゃ」を集英社より発売した。また、「グランドジャンプめちゃ」の発売と同時に、全ての掲載作品を「めちゃコミック」にて独占先行配信している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000022277.html

ライフネット生命保険出口治明の読売新聞における発言が鋭い。私は頷きっぱなしであった。
日経新聞はFT(フィナンシャル・タイムズ)の記事の転載を行っていますが、FTと日経記者の記事が同じ紙面に載ると、差がありすぎてかっこ悪い。これを契機として、日経の記者がもっと発奮して、FT並みの記事を書けるように成長してほしいですね」
http://www.yomiuri.co.jp/yolon/ichiran/20171109-OYT8T50005.html?page_no=1
http://www.yomiuri.co.jp/yolon/ichiran/20171116-OYT8T50026.html?page_no=1

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3)【深夜の誌人語録】

よそ見せずして視野は広がらないものである。