【文徒】2017年(平成29)11月28日(第5巻223号・通巻1152号)

ndex------------------------------------------------------
1)【記事】ミニストップ成人雑誌」扱い中止問題で版元側の怠慢を指摘する声が噴出
2)【本日の一行情報】

                                                                                • 2017.11.28 Shuppanjin

1)【記事】ミニストップ成人雑誌」扱い中止問題で版元側の怠慢を指摘する声が噴出(岩本太郎)

コンビニ「ミニストップ」での成人誌取り扱い中止の件で、日本雑誌協会まで真っ先に取材に駆け付けたジャーナリストは昼間たかしだった(先日、本人に会った際に聞いたら「誰も行かないので行った」とのこと)。
雑協の編集倫理委員長・高沼英樹(光文社)の《熊谷市長(千葉市)のツイートは、民間の判断とはいうが、権力の介入ではありませんか》《このガイドラインでは、どの雑誌が成人雑誌に該当するか基準が曖昧です。『FLASH』(光文社)のような一般週刊誌から『ヤングマガジン』(講談社)のようなマンガ雑誌までもが対象になりかねません》などの、読者大衆からすれば、これまた上から目線のコメントを踏まえつつ、こうした《新たな形の規制強化に、どのような対応をしていけばよいのか?》と結んでいる。
http://www.cyzo.com/2017/11/post_143469.html
もっとも、先週や昨日の『文徒』でも既報の通り、実態としては既に成人雑誌がコンビニにとっての「お荷物気味」な存在であり、これを店頭から排除することで(加えて、それを大々的に広報発表することで)ミニストップ千葉市が逆にポイントを稼いだのだというあたりの構造は、ネット上での反響を見る限り世間からもすっかり見透かされてしまっているようだ。
発表当日にはさっそくゲームメーカー「オーバーフロー」代表の「ぬまきち」も具体的な数字を示しながらツイートしていた。
《コンビニがエロ本も辞めたがっているというのは数字には出ていて、これはエロ本だけでなく雑誌書籍全部もうやめたいのがコンビニの状況。コンビニでの書籍取扱はこのところ毎年1割減で返本率は51.2%。半分以上を突っ返すようになっており、今年もトラック協会とモメて配送拒否されそうになっている》
https://twitter.com/obenkyounuma/status/932960519853445120
そうした意味では、むしろ「こういう事態に至ったのは出版社側の責任だ」との声が目立つ。いや、それは「そんないかがわしいものを作っているから悪い」という類のものではなく、ようするに作り手側が「しっかりしたエロ本」を作っていればこんなことにならなかった、といった批判だ。
久田将義が責任編集している『TABLO』では筆者の岡本タブー郎が罵倒するかの如き勢いの成人雑誌・出版社批判を行っている。
《今コンビニに並んでいるようなエロ本は、全盛期の頃のエロ本とは全く違うものです。あれはエロ本ではなく『アダルトビデオのカタログ誌』です。ビデオメーカから借りてきたアダルトビデオのスチールを並べてタイトルとキャッチを付けているものがほとんどです。同じ情報またはそれより過激なサンプル動画はネット上に無料で転がっています。いちいち付属のDVDを出してPCやプレーヤーで見る必要は全く無いのです》
《例えば『人妻爆乳ナイト』(仮名)という雑誌が1店舗に3冊入荷していたとしましょう。2200×3で6600冊です。
全店舗入るとは限らないので少し減らして6000冊と思っておきましょう。今の雑誌の実倍率は40%がいいところですから、2400冊は売れると想定します。1冊550円だとしても132万円ですね。今の販売規模からすると相当でかいんじゃないでしょうか。
ちなみに同じことがセブンイレブンやファミマで起きたら、被害はもう甚大です。(略)私が怒っているのはどっちかって言うと、策を講じてこなかった成人雑誌側への"歯がゆさ"です。
余談ですが、雑誌と違ってネットはコンビニのことを堂々と書けて素晴らしいなあ!》
http://tablo.jp/serialization/taboo/news002516.html
では、そんな「堕落したエロ本」をわざわざ金を出して買うのは誰か? と言えば要するにネットに接続できない(あるいはネットを見る習慣がない)人々なのだろう。『J-CASTニュース』も「コンビニの『成人雑誌』議論SNSで過熱 でも...買うのはネット苦手な高齢者ばかり」と題し、各大手コンビニ担当者の「メインの客層は、50代以上の比較的高齢の男性の方です」(ミニストップ広報担当者)といったコメントも引き合いに出しながら皮肉っている。
https://www.j-cast.com/2017/11/25314697.html
つまり、ネット上でいくら議論が盛り上がっても、コンビニから成人雑誌が消えることで困る読者はそこに参加していない(できない)ということだ。「読者不在の議論だ」と言えばそうかもしれないが、これは如何ともしがたい。

                                                                                                                    • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

成人雑誌の件になると他の週刊誌、例えば実話系週刊誌までも一緒くたにして論じられることも多いが、『週刊大衆』も今だ巻き添え的に、こんな謂れなき批判をされることがあると先日Twitterの公式アカウント上でこぼしていた。
《エロ本規制の話になると「それより週刊大衆の車内中吊り広告をなんとかして!」というツイートを見かけます。弊誌では掲出を2015年4月から止めておりますので、永らく幻影を気にかけていただいているのか、と、複雑な気持ちになります。》
https://twitter.com/Weekly_Taishu/status/933571728889888769

◎対照的に韓国では今年夏になって『PLAYBOY』韓国版が創刊されるなど成年雑誌が活況を呈しているようだ。日本のグラビアアイドルも大人気で写真集が完売するほどの勢いだとか。その背景をライターで『S-KOREA』編集長の慎武宏がレポートしている。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shinmukoeng/20171125-00078365/

◎小説家志望者と編集者・デザイナーがチームを組み、3日間で作品を創作のうえ、電子書籍で販売までしてしまうイベントとして今年2月に初めて開催されて話題を呼んだ「Novel Jam」(主催:NPO日本独立作家連盟)の第2回目が来年2月10?12日に開かれるが、この詳細についての記者発表および参加者向け説明会が、今日28日の19時から外神田の「アーツ千代田3331」で行われるそうだ。登壇者は審査委員長を務める作家の藤井太洋フリーライターの鷹野凌など。コルクの佐渡島庸平も応援メッセージを寄せているそうだ。
https://www.noveljam.org/
https://ddnavi.com/review/417763/

◎座間事件被害者の「実名報道」をめぐる議論が続いているが、『弁護士ドットコムニュース』がこの報道での大手各紙、および一部地方紙の紙面における対応の違いについて整理のうえ紹介している。産経新聞は基本的に実名で一貫、それ以外の全国紙は初期は実名報道だったのを途中から匿名に切り替えているようだ。
https://www.bengo4.com/c_1009/n_7007/
以前にも紹介したが、西日本新聞では被害者の顔写真掲載をめぐって社内で議論があったことを紙上で明かしていた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171114-00010008-nishinpc-soci

◎建築専門誌の老舗『建築知識』が12月号で「建築基準法キャラクター図鑑」と題し、アニメ風の擬人化キャラで同法を分かりやすく解説する特集を組んだところ、売上が通常号の約3倍に跳ね上がったそうだ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1711/22/news154.html

◎鉄道雑誌の老舗『旅と鉄道』も増刊12月号の『アニメと鉄道』が増刷となる売れ行きだ。
http://railf.jp/news/2017/11/24/133500.html
同誌はもともと『鉄道ジャーナル』の姉妹誌として長らく季刊で発行されていたが、2007年に月刊化に踏み切ったのが失敗に終わって廃刊。後に同じ誌名のもと現在の「天夢人」編集、朝日新聞出版発行の形で復活(ただし鉄道ジャーナル社とは絶縁)している。鉄道人気が高まっているとはいえ、趣味・専門誌のノウハウでは一般読者への訴求が難しいようだ。

村上春樹の初期の短編集『回転木馬のデッド・ヒート』が電子書籍化され、24日より配信開始。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001519.000001719.html
著者が「事実をスケッチする形で」としたうえで書いた連作短編集だが、後年の『村上春樹全作品1979?1989』の「自作を語る」で、「全部創作である」と自ら「フェイク」であることをバラしていた。

◎少し前になるが、人文社会書の版元として1979年に設立された凱風社が11月8日付で破産開始決定。ビデオジャーナリストらによるJVJA(日本ビジュアル・ジャーナリスト協会)会員らによる写真集『3.11メルトダウン』や旅行作家・蔵前仁一によるエッセイなどの版元でもあった。
http://gazette365.com/2017/11/7147-7/

◎福岡県をエリアとするJFN全国FM放送協議会)系民放ラジオ局「FM福岡」が、地元で情報誌『epi』などを発行する文榮出版社の出版事業を買収することを発表。100%出資で同名の出版社を12月に設立し、現社長ら4人も新会社に移籍。来年3月をめどに事業を継承するという。
http://buneipublishing.net/
http://www.sankei.com/region/news/171123/rgn1711230042-n1.html
地域情報誌と地域FMの相性は良いかもしれない。最近開局するコミュニティFM局では、当初から地域情報を扱うフリーペーパーなどを創刊し、誌面の広告とラジオCMの営業をセットで行うケースもよく見られる。

◎元産経新聞記者で、後に弁護士に転身のうえ報道被害やメディアに関する法制度の検討などに関わった日隅一雄(2012年死去)を偲んで創設された「日隅一雄情報流通促進基金」が運営する「情報流通促進賞」の第5回贈賞式が12月15日に日比谷図書文化館で開催される。
http://hizumikikin.net

◎米『タイム』がメレディスに約28億ドル(約3100億円)で買収されることで両社間の合意が成立。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-11-27/P01VSR6K50XV01
ちなみに『ニューズウィーク』が2010年にワシントン・ポストから大手音響機器メーカーのオーナーに売却された時の価格は1ドルだった。

◎『ハフポスト日本版』がインターネット広告をテーマにした無料イベント「嫌われない広告は、ある。気持ちいいウェブ広告を本気で考える会議」を12月7日夜に六本木ヒルズ森タワーで開催する。
同誌編集長の竹下隆一郎のほか、文藝春秋『Number Web』編集長の柚江章、資生堂ジャパンEC事業推進部グループマネージャーなどが登壇の予定だ。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/22/webad_a_23284917/