【文徒】2017年(平成29)11月29日(第5巻224号・通巻1153号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】 京都府立図書館員「書協要望書についての極私的メモ」が提起した議論
2)【本日の一行情報】
3)【人事】白泉社 11月24日付役員人事

                                                                                • 2017.11.29 Shuppanjin

1)【記事】京都府立図書館員「書協要望書についての極私的メモ」が提起した議論(岩本太郎)

京都府立図書館に副主査として勤務する福島幸宏が去る26日、Twitter上で《発掘してしまったので》と呟きつつ、電子図書館問題に関して自身が作成した「メモ」を自身のブログにて公開した。福島は京都府立大学などで歴史学を専攻(修士)。現在は府立図書館の企画総務部企画調整課に所属し、日本歴史学会の常任委員として活躍中だが、今年3月までは内閣府知的財産戦略本部デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会及び実務者協議会」や「メタデータのオープン化等検討ワーキンググループ構成員」を務めたという経歴の持ち主だ。
https://twitter.com/archivist_kyoto/status/934551713364656128
https://researchmap.jp/fukusima-y/
その「日本書籍出版協会文芸書小委員会の要望書についての極私的メモ」は、福島がFacebookでちょうど1年前の11月26日にエントリしたもの。それを今になって敢えてブログで公開したのは《本人がまったく覚えてなかった上に、例の文春さんの文庫本提案があっても大きな状況はあまり変わってない感じなので》との理由からだとか。
表題の通り書協の文芸書小委員会が各公共図書館館長あてに送った「公共図書館での文芸書の取り扱いについてのお願い」(昨年11月22日付)を主なテキストとして挙げ、なおかつ《書協はそれなりに手順を踏んで礼を尽くしている》と、過去に出版社側から出てきた要望や声明も踏まえながら敬意も表したうえで、図書館員としての《突きつけられているもの》についての直截な思いをこんなふうに綴っている。
《書協は、(よりよい社会を実現する→)出版文化が大事→図書館も協力を、と来てる。だからこそ、前提として応援しますという呼びかけと文科宛の要望がある》
《でも、これがイコール今の出版文化が大事、とは僕はならない。編集の力や多様な情報の保障や学知の発展や文化資源の保存は大事と思ってるけど、これが今の「出版文化の継続発展」で可能かは不明というか論証されてないのでは。(略)公立図書館は2016年冬になっても「大量生産された紙の本」を「貸し出す」ということに最適化されているし、実際にリソースをそこに割いている》
図書館界が、貸出数(と来館者数)以外の主要なベンチマークを持たない限り、そりゃ個々の現場で貸出数の維持や増進に向かって努力してるように見えるし、実際そう。今までの努力と動向は受け止めつつ、「利用」とは何か、がそろそろ問われてもよい》
末尾では「たとえばまともな『電子書籍』という投げ返し」として、こんな記述もある。
《一例として電子書籍とかで共同戦線張れないものか考えてしまう。まだアイデアないけど、今のままだと電子書籍はうまく行かないし、デジタルアーカイブも連動しそうなことは目に見えてる。(略)オーバードライブ導入して成功例になってるはずのカヤホガのフェルドマンもかなり苦労して現状にこぎ着けているようなので、そりゃ大変だろうけど、これを機会に考え始める人が増えるといい》
http://archivistkyoto.hatenablog.com/entry/2017/11/26/073705
こうして再び表に出してみたことで、少しずつこれを叩き台にした議論も始まりだしていくかもしれない。ただ、国際日本文化研究センター図書館勤務の江上敏哲は「まともな『電子書籍』」という見出しに対して《まず電子書籍を(所謂)「出版文化」の内だと認めさせんとな》と呟いている。
https://twitter.com/egamiday/status/934711518024810496
フリーライターデジタルアーカイブ学会員でもある鷹野凌も《国立国会図書館でやってる電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業見る限り「出版業界」の動きには正直期待できないなと思ってる》と、図書館側との「電子書籍」での共同戦線には懐疑的だ。
《図書館送信を利用するには、システムにその図書館のIDパスでログインする必要があるとか、端末は図書館員のカウンターから見える場所に設置されてなきゃダメとか、印刷するにも図書館員への申請が必要とか、端末利用時間が30分に限定されてる、といった制限が「出版業界からの要望で決まってる」という》
《で、電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業に話を戻すと、なんと2020年1月まで50カ月にもわたって「実験」が行われるというのんびりさん。(略)この実験結果をもって近い将来の「電子納本」制度を用意するみたいなんだけど、どういう代物になるか想像に難くないですよね。》
https://twitter.com/ryou_takano/status/934596191156805634
https://twitter.com/ryou_takano/status/934597628754411520
https://twitter.com/ryou_takano/status/934598719118258176
https://twitter.com/ryou_takano/status/934602150088359936
ちなみに、話は飛ぶが電子図書館といえば徳島市に「全部の蔵書が電子書籍」という私設図書館が27日にオープンしたそうだ。LEDで有名な日亜化学工業プログラマーをしていたという代表の佐野誠一が、自ら開発した専用アプリが入ったスマートフォンタブレット端末を使って、館内で蔵書を自由に閲覧できるようにしているという。貸し出しについては《著作権料の支払いなどが必要になるため》行っていないが、《図書館法に基づいた施設にするために、運営を担う社団法人を立ち上げた》とも。
http://digital.asahi.com/articles/ASKBW7T1NKBWPUTB00N.html?rm=599
徳島といえばメディアドゥの藤田恭嗣の故郷。現在メディアドゥが地元自治体との様々な共同事業を行っているところでもある。

                                                                                                                    • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

電通は社員からの自己申告をもとに一昨年4月〜今年3月の勤務時間を改めて精査した結果として、これまでの未払い残業代として総額で約23億円を社員に支給することを決めたとのこと。今年1月9月の連結決算に「勤務時間に関する一時金」として約23億6700万円を計上したそうだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171127-00050089-yom-soci
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2397254028112017CR0000/

◎日本電子書籍出版協会(JEPA)が「電子出版アワード2017」の一般投票受付を27日から開始した。11回目となる今年は「NetGalley」(出版デジタル機構)「Magaport」(電通)、「じぶん書店」(講談社・メディアドゥ)「東洋経済オンライン」「HOLICS」(DK media)「てをつなご。」(LINE×マガジンハウス)「星海社COMICS」(星海社)「NovelJam」(日本独立作家同盟)「ジャンプPAINT」(集英社×メディバン)などがノミネートされている。
http://www.jepa.or.jp/pressrelease/20171127awards/
http://www.jepa.or.jp/awardinfo/list2017/

◎北海道の日高地方東部3町(浦河、様似、えりも)で唯一残っていた書店「六畳書房」(浦河町)が27日限りで閉店。 2014年に町民出資型でオープンし、当時話題になった。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/147572

上智大学国際教養学部教授の中野晃一が、小学館SAPIO』の記者を名乗る人物からの取材申し込みを自身のTwitterアカウントで公表して話題に。10月25日の『ハンギョレ新聞』に中野が出した「自民党の勝利がすなわち”安倍支持”ではない」「安倍首相が右傾化を進めたのは事実であり、とりあえず彼を止めることが重要だ」などのコメントについて《韓国の反日的な宣伝活動に協力している、もしくは利用されているとの懸念が生じますが、その点についてはどうお考えでしょう》などと訊いてくる内容だったとか。
https://twitter.com/knakano1970/status/935143486617088003
https://matome.naver.jp/odai/2151179303982470501/2151179433982879803

◎相変らずユーチューバーが投稿した動画をめぐる騒動が絶えない。渋谷駅前で「フリーおっぱい」と書かれたスケッチブックを掲げた女性が約60名の見知らぬ人々に胸を揉ませた様子を収録した動画が炎上し、削除。
https://news.biglobe.ne.jp/trend/1127/blnews_171127_7268917364.html
サイゼリヤ」で注文した料理を大量に食べ残した様子をアップした動画で炎上したユーチューバーは、翌日にアップしたその「謝罪動画」についても「全く反省していない」などとさらに炎上。
https://www.j-cast.com/2017/11/27315011.html

◎昨日も取り上げたミニストップ成人雑誌取り扱い中止」をめぐる話題の続き。コンビニでの販売中止の動きは当然ながら成人雑誌の作り手である編集者たちの死活問題につながっている模様。
かつて一部コンビニに対して「プライベートブランド」の成人雑誌の企画を交渉していたという編集者も《今じゃ打ち合わせのテーブルにもついてくれない》とこぼす。AVメーカーから素材を借りて安上がりに作っていた手法も行き詰まりつつあるらしい。
《そのAVも出演強要問題が出てから、それまで緩かった出演者の権利保護が厳しくなって、出演作品の二次使用も許可が必要になり、使用しにくくなっています。だから素材供給と流通経路、まさに八方塞がりなんですよ。さらにエロ雑誌は作り手も買い手も高齢化しているので、いずれは絶滅するんでしょうけどね》
http://www.cyzo.com/2017/11/post_143693.html

◎『幸せの時間』などの中年恋愛漫画で一世を風靡した国友やすゆきも既に64歳。『週刊ポスト』に現在連載中の『愛にチェックイン』を最後に筆を置いて引退するらしい。『ハーバー・ビジネス・オンライン』がロングインタビューを行っている。
https://hbol.jp/154903

沖縄県内で子供の貧困問題に取り組む関係者41人が執筆した『沖縄子供の貧困白書』(かもがわ出版)は、10月末に発売されてから1カ月も経たないうちに重版が決まるほどの売れ行きとのこと。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/175196
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/a/0929.html

                                                                                                                    • -

3)【人事】白泉社 11月24日付役員人事

11月24日開催の定時株主総会、取締役会をもって以下の通り正式決定された。

鳥嶋 和彦
新:代表取締役社長
旧:代表取締役社長

菅原 弘文
新:常務取締役 編集・デジタル部門(第1・2・3編集部・出版部・MOE編集部・デジタル事業部・キャラクタープロデュース部)担当 兼 出版部・MOE編集部部長
旧:取締役 第3編集部・出版部・MOE編集部・キャラクタープロデュース部担当 兼 出版部・MOE編集部・キャラクタープロデュース部部長

馬場 建輔
新:常務取締役 営業・管理部門(販売宣伝部・ 制作部・コンテツビジネス部・総務部・経理部・編集総務部)担当
旧:取締役 販売宣伝部・ 制作部・総務部・経理部・編集総務部担当

八巻 健史
新:取締役 総務部・経理部・編集総務部担当 兼 総務部部長
旧:役員待遇 総務部・経理部・編集総務部担当

島田 明
新:取締役 第3編集部・コンテツビジネス部担当 兼 コンテツビジネス部部長
旧:役員待遇 デジタル事業部・コンテンツビジネス部担当兼コンテンツビジネス部部長

堀内 丸恵
新:取締役
旧:取締役

高木 靖文
新:役員待遇 デジタル事業部・キャラクタープロデュース部担当 兼 デジタル事業部・キャラクタープロデュース部部長
旧:デジタル事業部部長

白岡 真紀
新:役員待遇 第1・2編集部担当 兼 第1・2編集部部長
旧:第1編集部部長兼第2編集部部長

小見山 康司
新:役員待遇 販売宣伝部・制作部担当 兼 販売宣伝部部長
旧:販売宣伝部部長

木川 真希子
新:監査役

阿部 勇
新:顧問
旧:専務取締役

大塚 寛
新:顧問
旧:取締役相談役

前田 哲也
新:顧問
旧:取締役

大岩 健治
新:(退任)
旧:監査役

酒井 俊朗
新:社友
旧:顧問