【文徒】2014年(平成26)4月25日(第2巻77号・通巻279号)

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1)【記事】今日の書店三景
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】今日の書店三景

1)これは買わねばなるまい。東京創元社から刊行された「ペナンブラ氏の24時間書店」。ニューヨークタイムズが「この小説は書物にまつわる技術発展に対する思索と、スリリングな冒険と、哀悼の表明からなる『本に宛てたラブレター』だ」と絶賛しているそうだ。
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20140423/E1398186400908.html
グーグル検索にもひっかからない本がぎっしり詰まっている梯子付きの高い高い棚というだけで、読む前からワクワクしてくる。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488010188
作者のロビン・スターンは、フラッシュムービー「EPIC2014」を作ったことで知られる。これは必見。
http://idorosen.com/mirrors/robinsloan.com/epic/
朝日新聞の記者の「もうマスメディアは必要ない?」という問いかけにロビン・スターンは次のように答えている。
「そうは言わない。今回の米大統領選がいい例だ。オバマ当選の瞬間、多くの国民がテレビにクギづけになった。ただ、マスメディアの比重は小さくなる。誰もが発信できる時代、一般の人の力は侮れないよ。だれもウィキペディアが百科事典を超えるなんて信じなかったが実現したのと同じだ」
http://globe.asahi.com/feature/081208/05_1.html
おい、おいっ!オレが2011年3月に出した「新大陸VS旧大陸」(イーストプレス)と同じことを言ってるじゃん。紙版でも、電子書籍版でも出ているから、読んでいない方は是非!
http://books.rakuten.co.jp/rb/11152242/
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-9986807794
「新大陸VS旧大陸」を作家の佐々木譲は褒めてくれたんだけどね。
http://hiwihhi.com/sasakijoh/status/135173861196046337
たった今、東京堂書店で「ペナンブラ氏の24時間書店」を買ってきたのだが、一階の新刊平積みコーナーに置かれていなかった。明らかに東京堂書店の一階平積みコーナーは劣化を始めている。

2)三省堂岐阜店が増床リニューアルした。従来のラインナップに加え、法律経済、ビジネス、趣味生活書を大幅に増量したそうだ。加えて「神保町本店で好評の『提案型』雑貨を、地元のお客様に向けて発信」する。隣にはスター・バックスが店を構える。ここでも神保町本店のようにタワー積みをやるのだろうか。私はアレを見ると吐き気がしてくる。本が可哀相だと思ってしまう私がヘンなのだろうか。
http://www.books-sanseido.co.jp/event/promo_20140422.html
北海道では紀伊國屋書店札幌本店2階にスターバックスがオープンして1ヶ月が過ぎた。
「ストアマネジャーの齋藤奈津美さんは『(2階にあるため)路面店とは異なり、カウンター席では目の前の人通りが気にならないと思います』と話す。札幌駅にもスターバックスは3店舗あるが『場所は近いですがこちらはより落ち着いた雰囲気なので差別化できていますね』と話す」
http://sapporo.keizai.biz/headline/2069/
私は全面禁煙になってからスターバックスに一度も立ち寄ったことがない。ジム・ジャームッシュの映画「コーヒー&シガレッツ」を持ち出すまでもなく、煙草とコーヒーの相性は良く、ゴダールの映画を持ち出すまでもなく、本と煙草の相性も良いのである。

3)ガジェット通信が三月書房を取り上げている。
http://getnews.jp/archives/562943
そこで知ったことなのだが、こんなマンガが集英社の「Kotoba」で読める。
http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/tachiyomi/130303.html#2
何故に三月書房のような美しい書店が東京にはないのだろうか。三月書房に立ち寄って村上開新堂でロシアケーキと呼ばれるクッキーを買うか、リベルテでクロワッサンを買って帰りたいものである。出版社の販売マンからすれば「常識」なのであろうが…(別に皮肉を言っているわけではない)。いずれにせよ、私からすると全国紙に書評が出るのと同じくらい三月書房に置かれることは嬉しいのである。

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2)【本日の一行情報】

◎作家にとって編集者は欠かせないことがわかる。安達瑤のブログでこんな記述を発見。
「で、19時になったので、資料やiPadを持って外出。今夜は光文社担当T氏と打ち合わせ。場所は最近の定番、北千住の『じとっこ組合』。
ほどなく相方も来て、おれだけビールで二人はソフトドリンクで乾杯。先に渡してある章割りは概ねOK。
で、お願いしてあった資料のコピーを戴いたり、調べて判った結果の変更を伝えたり。
T氏は資料を探してくれたり集めてくれたり、先日の取材ツアーのお金を出してくれたりと、とてもこまめに面倒を見てくれる。
それにつけ込んでと言うのではないのだが、なんとか専門家に考証を頼めないか、お願いをする。原稿チェックと言うよりも執筆中に2度ほど質疑させてもらえば有り難いんだけど。どうしても資料本やネットで得た知識だけでは細かなところが判らない。おんぶに抱っこをするつもりはないけど、『こういう理解で間違いないでしょうか?』という確認をしたい。
三文小説家が個人で協力者を捜すより、光文社の名前があったほうが有利だろうと思うので。というか、我々にはこの方面の専門家のツテがまったく無いので」
http://adachiyo.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-4953.html
「じとっこ組合」は宮崎地鶏の専門店。

◎「週刊少年ジャンプ」で「HUNTER×HUNTER」の連載が再開されるというだけでスポーツ新聞のニュースになるんだよなあ。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/04/22/kiji/K20140422008023500.html

◎宮崎県の県情報誌「Jaja」と講談社のマンガ誌「モーニング」連載中の「メロポンだし!」(東村アキコ)がコラボした別冊「Jaja×モーニング」電子版の無料配信をeBookJapanが開始した。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/info/news/2014/04/23_jajaebook.asp

ファミリーマート全国10600店で「niconico」の各種サービスで利用できる電子マネー「ニコニコポイント」を発売開始した。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/release/20140423_645600.html

◎「デキる人は『出逢い』を必ずモノにする」(オープンアップス)という500円のアプリ本が1万9000もダウンロードされるようになった。
http://japan.zdnet.com/release/30069409/
この手の「錯覚ビジネス本」はスマホで読むのにピッタリだということである。オープンアップスなる電子書籍専門の版元は、この手の本をズラリと並べている。
http://openapps.co.jp/pc/?page_id=6
実用、ビジネス関連のコンテンツは紙である必要が全くなくなるのかもしれない。ひょっとすると日本はアメリカ以上の電子書籍大国になる?悪貨が良貨を駆逐するような電子書籍市場にならないで欲しいけれども。

◎これは「ViVi」の快挙だと言わねばなるまい。水原希子のカバーストーリーを撮影しているのが木村伊兵衛写真賞を受賞した森栄喜なんだって!ただし…この記事の次のような記述はいただけない。長くなるが引用しよう。
「男性ポートレートを撮り続けてきた森さんに撮影していただくのであればただシンプルに「女性としての」水原さんを撮影するのでは面白くない−−そんな発想から、映画『Je t'aime… moi non plus』をトレースし、ユニセックスなファッションアイテムであるデニムをテーマにファッション撮影が行われました。
『この映画の中で、ジェーンバーキンは愛するゲイのために男性のようにふるまうのですが、その愛しさや倒錯した魅力は彼女の出演するゴダール作品の中でも特に際立っており、鮮烈です。少年性を内に秘めた美しさが魅力の水原さんであればきっとこのコンセプトともフィットするのではと思ったのですが、正直仕上がりは想像をはるかに超えるものでした。1枚目のポラロイドが上がってきた際の現場の『これはきた!』という盛り上がりが強く記憶に残っています』(担当者)」
「Je t'aime… moi non plus」の監督はセルジュ・ゲンスブールジェーン・バーキンが出演しているゴダール作品は「Soigne ta droite」であり、日本公開時のタイトルは「右側に気をつけろ」である。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140423/prl14042310470029-n1.htm
ちなみに「Je t'aime… moi non plus」でジェーン・バーキンの相手役をつとめたのはアンディ・ウォホールに見出されたジョーダレッサンドロである。森美術館で開催されているアンディ・ウォホール展は5月6日までとなった。
http://www.mori.art.museum/contents/andy_warhol/

◎マンガ家の青木光恵が夫の小形克宏とともに2011年から立ち上げた個人電子雑誌「スマホで光恵ちゃん」。小形の発言からするとビジネス的には、まだまだ苦しいようだ。
「創刊号こそ累計で1500冊以上売れていますが、それは発売当時1冊120円だったバーゲン価格と、物珍しさからの数字だったようです。2号目以降はがくりと落ちて、平均すると600冊くらい。売り上げで家賃くらいは出せるけど、食べてはいくにはまだまだ足りない」
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1404/23/news013.html

◎「月刊flowers」(小学館)に発表され、数々のマンガ賞を獲得した「娚の一生」が廣木隆一監督で映画化される。
http://natalie.mu/comic/news/115062
廣木監督で、脚本が望月六郎という「ぼくらの季節」を思い出す。「ViVi」の影響か。

◎「CanCam」専属モデルの安座間美優は「CanCam」から「AneCan」に「社内異動」することが決まった。
http://mdpr.jp/news/detail/1355445

◎こういう文章を読むと腹が立つ。
「つまり、国民の大多数は、政府や企業の発表をそのまま知りたいと思っており、独自の解釈や批評が入る雑誌やネットはあまり信頼していないということになります。この違いは、新しいメディア、古いメディアという違いではなく、コンテンツの質的な違いに起因するものです」
私は新聞も、テレビも信頼していない。
http://thepage.jp/detail/20140423-00000003-wordleaf

朝日新聞の今年の新入社員は東大生がゼロだったのか。東大生に敬遠されたということなのではないのかな。
http://news.mynavi.jp/news/2014/04/23/336/

◎倒産したインフォレストの「女子カメラ」は、ミツバチワークスから刊行されることになった。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000010053.html
ミツバツワークスはガールズブログサービス「Decolog」を運営し、そのブロガーたちを主役にしたスナップファッション誌「Decolog PAPER」を季刊で発行していることで知られる。
http://www.328w.co.jp/service/

◎「NYLON」が10周年イベントを開催したが、こういうイベントって大手出版社の女性誌のイベントとは明らかに違った「熱狂」があることをどう考えるかだ。
http://www.whatsin.jp/news/55109
名の知れた出版社の女性誌は、これまでの成功体験に胡座をかいているだけでは能がないのではないだろうか。最近の女性誌は「世界」と向き合っていないように私には見える。

ミハラヤスヒロ講談社のマンガ誌「モーニング」に連載しているサッカー漫画「ジャイアントキリング」とコラボしたコレクションを発表した。
http://www.fashion-press.net/news/10774

角川源義は、こんな家に住んでいたのか。
http://matome.naver.jp/odai/2139824677189736101/2139826171500317903

◎要するに幻冬舎は内藤忍と組んで海外不動産投資で儲けようという腹なんだろうな。
http://www.value-press.com/pressrelease/124941
内藤ってのはマネックス証券出身の投資屋である。昨年、資産デザイン研究所と海外資産運用教育協会を立ち上げている。口を開けばブンサン(分散)投資とかいって、さも安全であるかのように人の懐に忍び込み、気が付いたらスッカラカンてなことにならないようにしたいものである。
http://www.shinoby.net/

◎「CanCam」「Oggi」「Domani」「AneCan」「SAKURA」という小学館女性誌5誌と、“anySiS” “23区” “自由区” “組曲” “anyFAM”のオンワード樫山の5ブランドがタッグを組んだ、働く女性を応援するキャンペーン「Fashion to Heart」が今年もスタート。これで第6弾となる。
http://www.onward.co.jp/news/2014/04/fashion_to_heart_6.html
このキャンペーンに今回は資生堂も一枚噛んでいる。コラボ商品にドンピシャなメイクアップを資生堂の「ワタシプラス」が提案している。
http://toheart.insightlab.jp/beauty/

学研パブリッシングは、「TV LIFE」の別冊として「TV LIFE g{ジー}」を刊行。ワンランク上のグレードにこだわったオトナのグラビアマガジンという触れ込み。
http://release.itmedia.co.jp/release/lifestyle/2014/04/23/ad2b26fbc0af71765289c46da246b286.html
TBSの「MOZU」が20頁で特集されている。オレだったらテレビ東京の「大川端探偵社」を30頁で特集するけどね。
http://www.tv-tokyo.co.jp/ookawabata/

トーハンは注文の販売・物流事業を手掛ける子会社「ブックライナー」を通じ、今夏から書店、読者の負担がない「特別便」による「日曜・祝祭日の書店店着サービス」を開始する。これにより休日前々日の注文も確実に休日に店着するようになり、書店は来店客の多い日曜・祝祭日に商品を販売できるようになる。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/post_333/
今頃になって!ようやく!ではある。

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3)【深夜の誌人語録】

「他者」を己に繰り込みながら仕事をしたいものである。「他者」を繰り込んだ仕事には説得力が生まれるのだ。